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『時のはざま』解決っっ!!

 『裏掲示板』でなにやら怪しい待ち合わせをしていた歌子……。 マツリと話して、店の中へと戻っていった!

 店の中では、小春がテーブルに座ってくつろいでいた。 おもての掲示板から戻ってきて、また200年前のナツミたちのテーブルに座っているみたいだ。 コップのジュースをストローでちゅぅーっと飲んでいる。

 そこへ、こっちは裏掲示板のほうから戻った歌子が近づいてきた。


「歌子」

「あ、小春。 金色の帯をした子、見なかった?」


 金色の帯……。 歌子はさっき、裏掲示板で誰かと待ち合わせを約束しているようだったが、その人のことだろうか。

 小春は分からないらしく、首を振って答える。


「金? ……いや」

「あ、ハナちゃん、来てんの?」


 同じテーブルに座っていたナツミが、横からその話に反応してきた。

 ハナ? ……ハナとは、300年前の降霊能力を持った一族の、ハナのことだろうか。 彼女たちは何の話をしているんだろう?

 歌子がうんと頷くと、小春も反応してがたっと席を立っていく。


「ほんと?」


 どうやら小春やナツミまで含めて、何かの話を知っているみたいだ。

 今この店に、一族のハナがこの店に来ているのか? 300年前の『時のはざま』の話に関することだろうか。 もしかしてハナは、事件の直接的な証人か何かなんだろうか。 それで呼び出されて、この街に来たとか……。

 いずれにせよ、やはり裏の動きがあったということだろう。


 ナツミは話を聞いて席を立ち、その場を離れかけると、隣に座っていた千代ちよが呼び止めてきた。


「ナツミ。 自分で片づけて」


 そういってテーブルの上を指している。 どうやらナツミが使っていた食器類を指しているようだ。 この店では、自分で片づける形式らしい。

 ナツミは鼻息を吐きながら、イラついたように振り返った。 いつもの感じで、軽くあしらうように言う。


「は? いいじゃん、代わりにやっといて」


 それを聞き、いきなり千代が立ち上がって大声を上げた。


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッッッッっっっ!!! ナツミィィィィィゥッッッッ!!! 自分でヤレッッッッ!!!!」


 恐ろしい鬼のごとく激しい形相ぎょうそう仁王立におうだちして、叫び声をあげている。 なんということだ、千代はこんなに怖かったのか。 ふだん散々(さんざん)振り回されて、ストレスがたまっているんだろうか。 それとも、夜も近いし寝ぼけているのかも。


 ナツミは思わず顔をしかめると、テーブルのほうに戻ってきた。


「うるっさww ……あーもう、めんどくさ」


 ぶつくさ言いながらも、食器を片づけていく。



 歌子と小春は先を行き、店の階段を上っていた。 この店は、2階のフロアもあるのだ。 中央が吹き抜けていて見晴らしが良く、店全体が見渡せるようになっている。


「結局、ハナが2人を殺したってことじゃ、ないの?」


 先を行く歌子を追いながら、小春が話しかける。 ハナが殺した……? どういうことだろう、犯人はもう確定しているのか?

 小春も裏事情を知っているように見えるが、全て分かっているというわけではないらしい。 しかし『時のはざま』の事件は自分なりに推理していて、事件の犯人はハナだと考えているようだ。


 ハナが2人を殺した犯人……。 情報を整理して状況を見ると、その可能性はあるんだろうか?



 まず、『時のはざま』の作り方だ。 『時のはざま』は、比較的簡単に作ることができる。

 コガネが祭りの会場に来た時に誰もおらず、かつ祭りの途中で人が忽然こつぜんと消えたようにする……。 そうするには、祭りの会場のそばにあった大きなくらを使えばいい。

 あの蔵は新しく作られたばかりで、中には何も入っていなかったから、あの場所に人が丸ごと移ればいいのだ。


 祭りの日の夜には雨が降っていたから、村人たちが自ら移動して、蔵の中で祭りの続きをした可能性はある。

 しかし、だとしたら料理のあとや酒の入れ物を、外に残したままにするというのは考えづらい。

 誰かが意図的に、無理やり村人を蔵に押し込めたと考えるのが自然だ。


 方法として考えられるのは、300年前の状況においては睡眠薬だろう。

 睡眠薬を村人全員に飲ませることが出来れば、眠った人を蔵に移動させればいい。 祭りの会場に置いてあった酒や水の入れ物に、睡眠薬を混入していけば、後は勝手に飲んで眠ってくれるというわけだ。



 睡眠薬を知っていた人物は限られる。

 当時流れた『夢見酒ゆめみざけ』のうわさとは睡眠薬のことを指しているだろうから、村人たちは睡眠薬のことを知らなかったと考えられるからだ。

 加えて薬のことを知らなかったハナの口ぶりから察するに、他の家族の人も知らなかったのだろう。


 ならば睡眠薬を知っているのは、診療所しんりょうじょで働いていた医者の先生と、現代の街のおさ……ハルと、当日初めて知ったハナだ。


 今回300年前の診療所に行った時、イトは薬のチェックをして問題がないと言っていた。 村人全員を眠らせる量だから、睡眠薬は大量に必要なはずだ。 だとすると、あの時刻には睡眠薬がちゃんと診療所にあったことになる。

 しかしハルはあの時刻には、当時すでに祭りの会場に行っており、それからはずっと会場にいたという。

 それなら祭りの会場でハルを見ていた人はいくらでもいるだろうから、ハルには睡眠薬を持ち出すタイミングはない。


 医者の先生は島の外に出ていたのなら、恐らく違う。 そうなると疑いがかかるのは、たしかにハナだ。



 今度はハナが犯人だと仮定して、できごとの流れを推理してみる。


 一族の家に睡眠薬を置き忘れたのは、今回は千代ちよだったが、当時はハルだった。 ハルも同じように病人が寝ている部屋に戻ってきて、薬に興味を示していたハナに睡眠薬のことを話したのだろう。

 これを使って祭りの酒に混入すれば、2人を簡単に殺せる……。 衝動的しょうどうてきにそう考えたハナは、診療所へと向かう。

 今回の300年前では、診療所の中にはイトや千代たちがいた。 診療所の中で、通信の向こうから弥生が指摘してきしていた物音ものおと、そして閉めたはずなのに半開きになっていた扉とは、ハナが睡眠薬を盗もうとしてこそっとのぞいていたからだと考えられる。

 今回はイトや千代たちがいたから盗めなかったが、300年前の当時は誰もいなかったので、ハナは容易よういに睡眠薬を盗むことができた。

 そして祭りの会場に行って、置いてある酒と水の入れ物に睡眠薬を混ぜていく。 ハナは賢そうだし、悪戯いたずらで砂を入れていたアホな子供たちよりはうまくやれるだろう。


 しかし祭りが始まったと思ったら、殺す目的の2人の姿だけがいない。 2人は東の森でデートしていたわけだが、ハナはそれを知らなかったのだろう。

 気づけば祭りの会場にいる人たちは、睡眠薬の効果で眠りだす。 同時に雨が降ってきたから、雨にれないように、村人たちを新しく作られた大きな蔵の中に入れていく。


 全ての人を蔵の中に入れ終わり、ハナは目的の2人を探しに出る。 2人が地下道を通って、東の洞穴ほらあなや森の辺りでデートする可能性は、同じ家に住んでいて、娘であるハナには分かったかもしれない。

 ハナは地下道を通って、東の洞穴と森の近辺へ行く。 2人を見つけてなんやかんやあり、地下道を逆戻りして追いかけ回す。 そして村に戻って来て、コガネが目撃したシーンに繋がる。

 祭りの場所の人はみんな蔵の中にいるから辺りには誰もおらず、『時のはざま』の出来上がりだ。 そしてそのまま2人を追いかけて、どこかで殺す……。


 なるほど、確かにこう考えると自然な流れに見える。


 一方で、殺害の動機どうきを考えてみると、どうだろう。


 殺害動機は、一族のふるまいだと推測できる。 一族は村の力関係の頂点に位置していて、権力にすがりついていた。

 連続した失踪しっそう事件が相次あいついだのがその時期だという話を合わせて考えると、一族の人たちが自身の権力の維持のために、一族以外の能力が発現はつげんしそうな子供たちを殺していったと推理できる。

 それを『神隠かみかくし』などと言って神秘的しんぴてきなものと結びつけ、さらに自らの権力を高めることに利用できた。


 ハナ自身は知らないが、能力者はその後一族以外からも現れることになる。 ハナの父親とコガネの母親という、一連の事件の実行役が消えたなら当然のことだ。


 失踪は、医者の先生の『診察しんさつ』をかくみのにした可能性がある。

 医者の先生は、一族と近しい関係にあったと考えられる。 自分の診療所も立派に作ってもらうなど、一族の人との共謀きょうぼうがあったのではないか。

 『診察』を名目めいもくにして毒薬を飲ませ、能力が発現しそうな子供たちを次々に殺していったという推理も考えられる。


 こう考えてみると、確かにハナが犯人だという推理はにかなっているように見える。

 しかし、歌子はそれを否定するように、首を振った。


「だから、違うんだって。 本人は、そう信じ切ってるみたいだけど」


 本人? ……歌子はハナ本人と話をしたんだろうか。 本人が信じ切っているとは、どういうことだろう。 やはり何かが、見えない所で進行しているようだ。



 2人が店の2階のフロアを歩いていると、パタパタと足音を鳴らしてナツミが追いついてきた。 片付けは済ませて来たんだろうか、すっきりした表情を浮かべている。

 店の奥に行くと、陰に隠れたところに、目立たないように作られた扉があった。 どうやら隠し部屋のようだ。 歌子はその扉を押して、中へと入っていく。



 部屋の中には、1人、うずくまっている女の子がいた。 頭を抱えてうなだれていて、まるで牢屋ろうやに入れられている囚人しゅうじんのような様子だ。

 女の子は、入ってきた歌子たちに気づいて顔を上げた。 顔を見ると、たしかに300年前で見たハナだ。 恰好かっこうは現代風のよそおいをしていて、街に適応している。 腰には金色の帯をしているから、待ち合わせていたような人とはハナのことだったらしい。


「……どうだった?」


 そう聞いてくるハナの顔は、疲れ切っていた。 若いのにぐったりと年老いたような表情をしていて、眉間みけんにしわが寄っている。

 歌子は部屋に入っていきながら答えた。


「調査は、まだ終わってないよ」

「どうなってるの? 今。 どこまで分かったの?」


 ナツミもある程度状況を知っているらしく、裏事情の会話に入っていく。 歌子は部屋の扉を閉めながら答えた。


「よく眠れる薬を持ち出して、祭りのお酒と水に混入したのは、決まってる。 おさがあとから、気づいたみたいだから。 でも、殺したのは、ありえない。 ……だって、その後も2人とも生きてて、逆にハナのほうが死んだらしいから」


 死んだのがハナ? 殺されたと思った2人は生きてる? でも、お酒に睡眠薬を混ぜたのはハナらしい。

 一体、どういうことだろう……。


 酒に睡眠薬を混ぜたのが確定というなら、さっきの推理の前半部分のハナの行動はおおよそ正しいんだろう。

 でも、2人に探しに出てからの行動は違うらしい。

 東のほうに行って、2人を見つけて、追いかけて殺したのではないのか?

 コガネが『時のはざま』の中で見たという、2人が村の中を走っている光景……。 あの様子を説明するには、そう考えるのが自然だからだ。


 2人が生きていて、逆にハナが死んでいる……。


 一方で、そう仮定すると合点がてんがいくこともある。 今回の300年前の散歩で、家の玄関でハナと会った時のコガネの様子だ。

 あの時コガネは、長く会ってなかった人に久しぶりに会ったかのような様子だった。 それは祭りの日以来、ハナと話していなかったからだと考えると、どうだろう。

 何かを納得していたのは、その祭りの日がハナの命日めいにちだったからこそ、まだハナが生きていることに気づいた……というのであれば、すじが通るからだ。


「なんだ、じゃあ、あんたじゃないじゃない」


 小春は話を聞いて、ほっとしたように言った。 とりあえず目の前にいるのが殺人者じゃないと分かって、心から安堵あんどしたような感じだ。

 2人がその後も生きていたというなら、それは決定的な証拠しょうこだ。 ハナは少なくとも、人殺しはしていないことになるからだ。

 しかし、当のハナは納得がいっていないのか、叫ぶように否定した。


「違うの! 絶対、私なんだ。 ……だって、何度も何度も、そのときの夢を見るの」


 夢を見る? 2人を殺した瞬間ということだろうか。

 ……しかし、変な感じだ。 ハナは一体どうしたんだろう? 実際に殺したかどうかぐらい、自分で憶えてないんだろうか。

 事実かどうかの話ではなく、夢を見ると言ったり……。 表情も疲れていて、錯乱さくらんしているようにも見える。


「どんな夢?」


 ナツミがその辺に座りながら、聞いていく。 よく分からないが、2人を殺す瞬間の夢でも見るんだろうか。

 ハナは少し間を開けると、話しだした。


「……村に戻ってきたら、みんなを入れた蔵を開けるんだ。 そして、一人一人、祭りがあっていた外の場所に、戻していくの。 ……雨がずっと降って、暗いから、どれだけ時間がたったかも分かんなくて、急いでてさ」


 聞いた感じでは、2人を殺した後のイメージらしい。 事実かどうかは分からないが、ともかく2人を殺して村に戻ってきた後の話なんだろう。

 2人を殺して村に戻って来ると、自分が蔵に入れていた人たちは蔵の中でいびきをかいていた。 その人たちを、一人一人引っ張り出して、祭りの会場へと戻していく。

 外は真っ暗で、雨は降り続いていて……。 ……ん?


「雨降ってんのに、みんなを外に出すの?」

「……そうよね」


 ナツミと小春が、へんに現実的に考えている。 雨が降ってぬかるんだ土の上に、いびきをかいている村人たちをバシャーンと置いていくんだろうか。 何ともひどいことをするものだ。

 ハナは2人のツッコミを無視して、話を続けた。


「腕に血が付いたまま、子供の体を抱き上げて、みんなの腕を引っ張って……。 ……その時、いかに自分が変だって、分かるの。 そしたら、なぜか泣いてしまって。 ……自分のすべてが激しく嫌になって……みんなが生きてる暖かな場所が、ひどく遠い所にあるように思えて……」


 2人を殺した後の血が、自分の体にべっとりとついている……。 その状態のまま村人たちの体を引っ張って、無理やり動かして……。

 なるほど、結構生々しいイメージのようだ。 妄想もうそうなのかもしれないが、実際にあったかのようなあざやかさを感じられる。

 そして、話の後半部分も気になる。 村人全員に睡眠薬を飲ませるなど、めちゃくちゃな殺害計画を立てる自分に、そして村人の体を『モノ』のように扱う自分に、我に返って自己嫌悪におちいったということなんだろうか?


 改めて情報を整理するとどうだろう。

 ハナは睡眠薬を村人に混ぜたということは確定らしいから、2人を殺す殺意はあったということなんだろう。 しかしこのハナの様子を見ると、どうもハナは殺すことを望んでなかったようにも見える。

 ……うーん、まだ情報が足りない。 それに、ハナの様子も不可解ふかかいだ。 ハナはなぜ、そこまで自分が殺したと信じ切っているんだろうか。


 3人は、だまってハナの話を聞いていた。 話が終わって、ナツミが口を開く。


「……でも、実際に殺してるところは、見えないんでしょ?」


 ハナは、うつむいたまま黙っている。

 そこへ、バタンと部屋の扉があいた。 見ると、現代の街のおさ……ハルとイトだ。 振り返った歌子は、手短てみじかに言葉をかわす。


「どうだった?」

「やっぱり、違うよ。 ハナは、一人で死んだだけだって」


 どうやらやはり、ハナは1人で死んだのが正解らしい。 しかし当のハナは理解できないみたいだ。 呆然ぼうぜんとして、え?とつぶやいている。

 座ったままナツミは納得するように頷いた。


「うん、だろうね」

「どういうことなの?」


 小春が細かい事情を聞いていく。 ハルは扉を閉めていきながら、説明を始めた。


「骨っていうのは、少し後に、事故で死んだ2人だって。 本人たちを降霊こうれいして確認したから、間違いないよ。 ……それに前にも言ったけど、みんな朝になって蔵の中で起きたのを、憶えてるし」


 ハルもずっと祭りの場所にいて、睡眠薬を飲んで眠ってしまった。 朝になって起き上がると、なんとびっくり、蔵の中で村人全員でおとまりパーティーをしていたことに気づいた……。

 経験した本人がそういうのなら、間違いないんだろう。 ハナの考えたさっきの夢の話は、やはり事実とは違うらしい。


 加えて、降霊洞穴こうれいほらあなで見つかった骨は、その本人たちをわざわざ降霊して確認までしたらしい。

 骨が見つかった地下の部屋は、半分ほど土に埋もれていた。 事故で部屋の壁が崩れて、巻き込まれて埋もれて死んでしまったようだ。 誰かに殺されたわけではないらしい。 どうりで、首がもげてなかったりしてなかったわけだ。


 イトが、続けて説明する。


「それで、ハナの親たち2人も実際に降霊して、話を聞いて確認したの。 そしたら、東の洞穴で隠れて2人でイチャイチャしてたら、ハナががけから落ちたのを見たって。 崖の上で、何かを迷うように一人で右往左往うおうさおうして、足をすべらせて落ちたみたい」


 2人は東の洞穴に行っていたらしい。 祭りの会場に来ることもせず、森から場所を移してイチャイチャしていただけのようだ。 『もうあなた、落ち着きなさいよ』『ははは、これを見てごらん?』そんな感じだったんだろう。 まったく、みんなが祭りをやっている間に、2人だけで祭りを開催かいさいしたんだろう。


 あの東の洞穴はちょうどいい広さで、どこか居心地いごこちがよかった。 200年前にはソラたちが一時的に住む場所として使うなど、秘密基地としては最適なんだろう。


 東の洞穴は、色んなところに出口がある。 例の混乱が起こった時に、精神科の患者かんじゃを探してスズネが入った時は、海がすぐそばにあって足場あしばが不安定な場所に出口があった。 もしかしたら、あそこから落ちたんだろうか。

 落ちる様子を見たというなら、2人は洞穴の中で陰に隠れていたのかもしれない。

 2人を見つけられずに苛立いらだっているハナが、そもそも殺すかどうかを迷いだしていたら、自分が崖から落ちて死んでしまった……。 そんな感じだろうか。


「うわ、死に方、ダサッ」


 ナツミが思わず呟く。 ハルが引き継いで、説明していく。


「そう。 その場で2人は、暗い海の中を、なんとか探そうとしたんだって。 朝になって、みんなが起きた後には、今度は村中で探したりしたんだ。 ……私も一緒に探したの、憶えてるしね」


 落ちたハナに気づいて、2人は暗い海の中を必死に探す。 しかし見つからず、急いで地下道を通って村に戻った。


 コガネが話した、『時のはざま』の中での様子が思い出される。 コガネの母親とハナの父親の2人は、村の中をさけんで走り回っていたようだった。

 助けてと、誰かいないのかと、恐ろしげな声で叫んでいたわけだが、あれは誰かに殺されると逃げていたのではなく、海に落ちたハナを助けようと、助けを求めていた声だったのだ。

 2人を追いかける犯人の姿が語られなかったのは、そもそも犯人など存在しなかったからだ。


 そして、朝になってみんなが蔵の中で目が覚めて、2人に頼まれて海にハナを助けに行った。 しかし、もうすでに時は遅かった……。


 ハナは死んでいて、2人は生きていた。 殺されると逃げていたのではなく、助けようと走り回っていた。 すべてが逆転していて、変な話だ。




 ことの発端ほったんは、新たな人たちがたくさん降霊された、例の混乱の時だったらしい。

 はー、そういう推理ねぇ……。 いや、分かってたわよ。 (小春)

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