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『消えた死体』の話っ!

 宴会の席で、300年前の話を聞いていた歌子。 でも、スズネが気になって、外に出てきたよっ!!

 外に出ていくと、夜が深まっているというのに、明かりはたくさんついていた。 まだまだ賑やかさは冷めないようだ、酔っぱらった人なども見える。


 街の様子を眺めながら歩いていると、隣に、物静かすぎるクルミがついてきた。 周りを見て、一緒にスズネを探してくれてるみたいだ。


「どっか、いる?」


 歌子が独り言のように、ぼそっと呟く。

 街は広いけど、スズネの馴染なじみのない場所には行かないだろう。 そんなに遠くには、行ってないんじゃないかな。

 そう思いながら2人で歩いていると、いきなりその辺の人に、声をかけられる。


「おーい! お前、酒は飲んだか~?」


 ひょろひょろした声で、こっちに向かってくる男がいた。 ……あれ? なんか、見たことあるな、この人。 酔っぱらってふらふらと歩いて。

 ……って、わたしのお父さんじゃんっ!!

 この酔っぱらった人が、私の父親なんだ。 今はお酒を飲んでるみたいだ、手元にお酒を持って、こっちに歩いてくる。


「あーもう……。 お父さん、情けないなあ、やめてよ」


 いつもうちに帰ってこないのに、何をへらへらと笑っているんだろう。 お母さんがどれだけ寂しいか、この人は知らないんだ。

 ため息をついていると、父親は酒の入った小さな器を、こっちに手渡してくる。


「ほら、お前の分」

「はいはい。 ……ねえ、たまにはうちにも、帰ってよ。 お母さん、何も言わないけど、寂しいんだから」


 ちょっと強めに言ってみる。 どうせ気にしないんだろうな、今まで何度も言ったことあるけど、聞く耳は持たなかったし。

 案の定、父親は軽い調子で続ける。


「あー? ひっく。 ……あぁ、そうだな。 帰っても、追い返されるかもな! あんたみたいな軟弱なんじゃく野郎は、こっちからお断りよ! ってな! はっはっは!」


 近くの男たちが、それを聞いてゲラゲラと笑っている。 一緒に飲んでいた人たちだろう、幽霊も生身なまみも一緒になって、酒を手にしている。 何人かは素っ裸になっているようだ。 もう、何やってるんだか。

 歌子はげんなりしてため息をつくと、無言でその場を通り過ぎていった。


 引き続き街の様子を見ながら歩いていると、隣のクルミが何かに気づいたようだ。 別のほうを指して、小さな声で言ってくる。


「……あれかな?」




 小さな岩の上に、スズネが座っていた。 一人で体を丸めて、うつむきがちに座っている。 視線の向こうには、楽しそうな宴会の様子が広がっていた。 その明るさから遠ざかって、睨むように見つめて、一人で暗いところにいる。

 ……一体、何やってるんだろう? 牛乳でも飲みすぎて、ムカついてるんだろうか。


「スズネー!」


 歌子が呼びかけていくと、こっちに気づいたスズネは振り向いた。


「……あ、歌子」


 振り向いたスズネの顔は、いつもの明るい顔と、そんなに変わらない。 だけど少し暗くて、悩んでいるような顔にも見える。


 隣に腰を下ろしていき、並んで座って、一緒の方向を眺めてみる。 明るい灯のもとで、酒を飲んで騒いでいる人たちの姿が目に入った。 めっちゃ楽しそうだけど、ここでも裸になっている人たちがいる。 うーん、どういう神経なんだろう。


 歌子はそんなことを思いながら、チラッチラッと隣を見た。 スズネはさっきと同じように、にらむように騒いでいる男たちを見ている。 タイミングをうかがって、聞いてみる。


「……どうかしたの?」


 スズネはあまり表情を変えずに、淡々と答えた。


「いや、別に。 なんで?」

「うーん、いや……」


 なんかちょっと怖いよ、とは、言いづらい。 大体、私が悪いことをして怒ってるかもしれないし。

 ……他にやることもないし、さっき憶え屋で受け取った石ころのことでも話すかな。


「あ、そうだ、200年前の話、分かったよ」


 歌子は懐をまさぐっていき、例の石ころを取り出す。 表面には、文字がびっしりと書かれてあった。

 さっそく読み上げていこう。 ……うーん、ちょっと読みにくいな。 ふつうの灰色の石ころの表面に、黒いすみで書かれてるから、色が分かりにくい。


「『飛び降りて死体が見つからなかった事件というのは、多分、にえのことだと思います。 当時、日照りが続いて、コメが取れない時期が続きました』」


 スズネは顔を腕にうずめていく。 聞いてくれてるのか、聞きたくないという意思表示なのか、判別しづらい。

 ……あ、向こうから雨子が歩いてきた。 心配になって、探しに来てくれたのかも。 近づいてきて、一緒の岩に座ってくる。


「『知っての通り、こういう時には我々は降霊術を使って、大昔の知恵のある人にどうすればいいかを聞きます。 しかし当時は、歴史上でも珍しい、降霊能力を持った人がひとりもいない時期でした。』 ……うーん、そうだったね」


 その時期のことは、知っている。 ひどい災害がたくさん起こったにもかかわらず、降霊をすることもできなかった時期。 誰にも何も頼れずに、恐ろしく不安だったに違いない。


 スズネも生きてた頃を思い出しているようだ、頷いて答える。


「うん。 修行中の巫女みこしかいなくて……、あと修行を終えてる人も実は1人いたんだけど、なんか、力が十分じゃなかったらしくてね」


 修行を終えてなお、降霊術を使えなかった人がいたのか。 その人も、大変な気持ちだったことだろう。


「『長く続いた日照りが終わり、雨がようやく降ったと思うと、今度は大雨が続きました。 雨はひと月以上続き、どんどん激しくなり、嵐になっていきました。 そういう中で、生け贄をたてようという話になりました。 それに自ら進み出たのが、ソラという、10ぐらいの少女でした』

 ……ソラ? 私たちの口座に最近来てる子は、関係ないよね? 名前、ソラちゃんだったような……」


 冒険隊について書いていった、遠い地方の喋り方が入ってる不思議な子……。 名前は、ソラっていうらしいんだ。 他にもいくつかメモを残していってて、そのうちの一つに書かれてたの。


 スズネは気づいたように声を上げた。


「あっそうか! そうだ、喋り方も同じだし、たぶん同じ子だ」

「へえ、そうなんだ! じゃあ、当時話したことあるの?」


 驚くように歌子が聞くと、スズネは首をかしげる。


「いや。 ……ソラって、たしか、山側のほうに住んでたんだよね。 私、海側だったから」


 生活する場所が大きく離れたなら、話す機会もないだろう。 たまに合同の行事ぎょうじとかがある時に、見る程度かな?


 横の雨子は、ふーんって感じで聞いている。 あんまり興味ないみたいだ、暇そうな表情で、尻をボリボリいている。


「『ソラは、陸の果てから来た人たちの、一人娘でした。 かなり北の方から来たようで、肌が白く、また大陸由来……のような、でもなんか違うような、変な服をまとっていたのが、印象的でした』」


 なにそれ、よく分かんないけど。 でもスズネは思い返しながら、うんうんと頷いている。 へー、この表現で正しいんだ。

 歌子は首をかしげながら、読み続ける。


「『ソラは、嵐の間、一瞬だけ晴れ間が出た時に、海のほうに出ていきました。 がけには村の偉い人が、数人だけいました。 ソラは静かに飛び降りました。 その直後、その友達だった女の子が、他の人を振り切って走ってきました。 大声で名前を叫んで、崖下へ走っていき、姿を探していました。 私たちも一緒になって、海の中を探しました。 しかし、そこにはもうソラの姿はありませんでした』」


 読み終えると、歌子は黙って石ころをしまっていく。 横のスズネは、じっと顔をせたままだったが、やがて独り言を言うように、ぼそっと呟いた。


「……なんで、そういうこと、出来るんだろう」


 たしか50年前に、その風習は廃止になった。 でも確かに、なんで、昔はやっていたんだろう?


「うーん……。 まあ、昔は、知識もそんなに無かったし……」

「いや、そうじゃなくて、ソラがさ。 自分から、進み出るって……」

「あぁ、そっち」


 ソラ自身のことか。 てっきり、生け贄の風習の話だと思ってしまった。

 ……でも、ソラのこともよく分かんないな。 生け贄に自分から進み出る……。


「うーん、そうだね、私もわかんない」


 私は、自分の気持ちを正直に言う。 私だって、自分から進み出ることはしないだろう。 ……でもそれって、私が現代人だから、そう思うんだろうか? そんな風習が当たり前な状況だったら、そうでもないのかな。

 ズネは暗い顔で続ける。


「それに、その風習も。 なんで、そんなこと、しなきゃいけないの? 意味わかんないし」


 どくづくように、スズネが言う。 へえ、いつも明るいスズネでも、こんなネガティブなこと言うんだ。


「たしか、50年前に、すべて廃止になったんだよね?」


 一応、雨子に確認を取ってみる。 雨子は、50年前に生きてた人だ。 もしかしたら、目の前でそれが廃止になったのを、見たのかもしれない。

 雨子はやはり経験していたらしい、あっさりと頷く。


「うん。 あ、でも私の時は、もう全然やってなかったけどね。 ……ヤミコちゃんが、生け贄だった子を、大量に降ろしたりしたし」

「え、なにそれw」


 ちょっと面白そうな声で、スズネが食いついていく。 私も、その話を思い出した。


「あ、それ知ってる! ヤミコさまの悪戯いたずらの、ひとつだって」


 ヤミコさま……この街で一番えらい人は、昔は一人の巫女だったらしい。 血筋など何もなく、普通の家庭で育った少女だったと聞く。

 雨子も50年前に生きてた人だし、年齢もあまり違わないんだから、もしかしたら、ヤミコさまと友達だったのかも?


 雨子は昔を思い出すように、楽しそうに話す。


「その親も含めて、悪戯で大量に降霊したことが、あったね。 それを目の前で見てさ、もうやらないでおこうって、みんなで話し合って、決めたんだ」

「ふーん……。 ……じゃあ、なんで昔はしてたの?」


 スズネが、不思議そうに聞く。 どうしてそんなことをするのか、純粋に分からないみたいだ。

 雨子は、考えるようにうなっていった。


「うーん……。知恵は増えたっていってもさ、偉い人を降霊しても、解決できないことって、たくさんあるじゃん? だから、その200年前の事みたいに、どうしようもないことが起こると、何かにすがりたくなる……とかじゃない? 分かんないけどw」


 雨子は、はぐらかすように笑う。 だって、そんなん聞かれても、私じゃないし、知らないしーっ!!ww

 対照的にスズネは真面目な顔だ、じっと考えるようにそれを聞いて、呟くように反論する。


「……でも、人が1人死ぬだけで、何も解決になってないじゃん」

「うーん、たしかにw」


 雨子はへらへらと笑いながら、ノリではぐらかしつづける。

 ……いやー、その通りだよね。 昔の人って、頭悪いんじゃないの? ははっww ……ていうか、この話飽きてきたな。 ちょっと、話題を変えよう。

 まだ納得のいっていないような顔のスズネを置いて、雨子はさくっと話を変えていく。


「ところで、さっきの……ソラちゃんだっけ?」

「あ、うん」

「その子のよそおいって、結局、どういうのなの? ……なんか、よく分かんなかったけど」


 変な服……とか言っていたが、分からないままだ。 聞かれたスズネは、当時を思い返してみる。

 ……うーん、1回か2回しか見てないけど、あの格好はけっこう強烈で、目に焼き付いてんだよな。


「いま私たちが着てるのに、少し似てるんだけど。 でもなんか、違うんだよなー……もっと自由で、色んな模様とか形が、ごちゃごちゃして。 うーん、何にも縛られてないっていうか……」


 他のもので、的確に表現できるものが無いから、もどかしい。 それを聞きながら雨子は想像するように目を閉じると、楽しそうに言う。


「へー。 なんか、それって、未来っぽくて、いいねw」

「あぁ、たしかにw」


 そうだ、未来っぽい。 スズネもなぜか、そんな気がした。


「……そんな部屋も、あったらいいな」


 ぼそっと呟いたのは、歌子だ。


「部屋?」

「うん。 自由な新しい感じの部屋で……あっ、壁が無くて、空と雲が見えてて……。 いつもみんな集まってさ。 色んなことを話したり、考えたりして……」

「あ! それいいね」


 私たちの活動の、拠点きょてんみたいなものだ! 盛り上がっていると、スズネがふと思いついたことを言う。


「ふーん。 ……じゃあ、それも、憶え屋でやれば?」

「……え? 憶え屋で?」


 憶え屋で、空想の部屋を……。 どういうこと?


「うん。 だって、口座ってどんなに自由に使ってもいいんだよね? だったら、そういう部屋の見た目とかも、口座の一部として作っちゃえば?」


 口座の一部として、部屋の見た目を作る……。


「……え? どんな感じになるの?」

「だから、まず口座に入るじゃん? そしたら、そこの見た目を、言ってもらうの。 『きれいな木材で作られてる部屋だ。 壁には雷とか雲のかっこいい模様が描いてて』……とかいって」


 テーブルがあって、コップが置いてあって……。 見た目の情報も記録帳の中に書いておいて、職員の人に読み上げてもらうってことか。

 『そこの本にはなんて書いてる?』って聞くと、それに応じて本の中身を喋ってくれたりとか……。

 そうすると、あたかも架空の部屋が実際にあるみたいに、感じられる。 なるほど、そういうことかっ!


「あぁ! そういうこと」

「それ、楽しそう! さっそく、やってみようっ」


 憶え屋って、そんな使い方もできるんだ! 可能性が広がっていって、どんどん自由になっていく気分っ!!

 新たなアイデアに盛り上がっていると、別のほうから私たちを呼ぶ声が聞こえた。


「スズネーっ! 何してんの、あんたたち!」

「あ、小春」


 小春が、ミツバたちを引き連れて歩いてきた。 探しに来てくれたみたいだ、小春は鼻息を鳴らしながら、しょうがないわねって顔をして歩いてくる。


「もう、せっかくの酒が、冷めちゃったじゃん。 ……ん、なに、ここで飲みたいの?」


 歌子は気づくと、手元には父親からもらった酒があった。 そういえば、そうだったな。 手を振って、慌てて否定する。


「え? あぁ、いや、そういうわけじゃ、ないけど」

「じゃあほら、早く中に入りなさい。 何してんの、こんな石の上で。 そんな趣味なの?」

「なんだ、趣味って」


 ぐっと騒がしくなった岩の周りで、歌子はスズネのほうを見てみる。 スズネも笑ってて、楽しそうだ。 今日はちょっと、気分が乗らなかっただけなのかも。 まあ、そういう時もあるよね。


 みんなでワイワイ話していると、今度は近くにユメが通りがかった。 仕事が終わったのか、ブラブラして辺りを眺めている。

 気づいた小春が、声をかけた。


「ユメ! あんた、仕事、終わったの?」


 ぼんやりと歩いていたユメは、こっちを見て立ち止まる。


「あぁ、うん」

「じゃあ、あんたも来なさい。 ほら、クルミも行くよっ! なに、ぼうっとしてんの」


 小春は元気に、みんなをまとめていく。 ごちゃごちゃと話しだして、騒がしくなる声とともに、ゆっくり一行は歩きだした。


「よーしっ! 飲みなおすわよっ!」

「お前、酒の味、知ってんのか?」

「知ってるわよ! それぐらい。 ……飲んだことは、ないけど」

「ねえのかよw」


 いつもの感じに戻りながら、一行はどこか別の宴会場を探していく。

 さあ、まだまだ酒飲むわよっ!! 夜遅くまで……ふあー、でも、なんか眠くなってきたわね。

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