表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/25

プロローグ

本日より投稿開始します。

今回はコメディタッチの学園ものになります。

楽しんでいただけますと幸いです。

 ヘンリッカ・タイカ・ヴィーアライネは、プライドが高い。


 そのプライドの高さは神が降り立つといわれる天に届く霊峰タイヴァスをも凌駕し、神界にすら到達するといわれているらしい。


 例えばまだ幼い頃、算術が出来ぬことを馬鹿にした子どもに激昂し、徹夜で勉学に打ち込み三日で相手を見返した。

 例えばやはりまだ幼い頃、苦い野菜を食べられないことを指摘されまた激昂し、そのひとつき後に家の料理人と共に食べやすい調理法を開発し得意げに貪る姿を見せつけた。


 歳を重ねていくらか分別はついたものの彼女のプライドの高さを証明するエピソードを挙げるならば枚挙に暇はない。

 魔術に優れた貴族の最高峰であるヴィーアライネ公爵家の第四子として生を受け十五年。彼女は自らの血筋に誇りを持ちその血筋をさらに尊きものへと導くために血のにじむような努力を重ねてきた。

 最高の才能には、最高の努力と最高の教育を。学びを得るためなら努力も金も惜しまない。

 彼女の貪欲さにヘンリッカにいずれ家庭に入ることを望む父はけしていい顔はしなかったが、その努力と教育にかけた金の甲斐あって彼女の魔術の才は同年代どころか今や年上すらも舌を巻くほどのものだ。


 ヘンリッカよりも才能がある人間がいるとすれば、それは同じ血が流れる彼女が敬愛してやまない二人の兄たちだけであったし、とかく魔術においてヴィーアライネの上に立つ者がいることを彼女はけして許しはしなかった。


 だからこんなことはあり得ない。あってはならないのに。


「あ、あれ……。私、もしかしてなんかやっちゃいました?」


 しんと静まり返る講堂の中央で、少女はヘンリッカが今朝飲んだばかりのミルクティーのような髪を揺らして、戸惑うように笑った。

 大きな珊瑚色の瞳が目を惹くが、それしか特筆すべきことのない平凡な少女だ。つい先ほど呼ばれた名前から察するに彼女は最下位の爵位すら持たぬ平民で、当然ヘンリッカが見たこともない少女だった。

 網膜に否が応にも焼き付けられた先ほど見たばかりの光景を信じられぬ思いで反芻する。

 あんなことをやってのけたくせに、何故この少女はまるでただ息を吸い込みましたとでもいうようなとぼけた表情で笑っているのだろうか。


 胸に沸き立つのは悔しさと、怒りと、嫉妬。


 己の内を焦がす炎を感じながら、ヘンリッカはギリリと奥歯を割れるほどに噛みしめた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ