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恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第2部  作者: トモサン


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62/106

恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第2部 62

…どうして、いいか、わからないといっても、私も、どう答えていいか、わからない…


 それが、率直な気持ちだった…


 水野透(とおる)と、米倉好子の結婚は、失敗だった…


 それが、現時点での、透(とおる)の結論なのかも、しれない…


 が、


 だから、すぐに、別れれば?


 というのは、違うと思う…


 誰もが、パートナーといっしょにいて、


 「…これは、違った…」


 と、いうのは、ありがちなことだ…


 しかしながら、すぐに、結論を出して、別れれば、それを繰り返す可能性が高いからだ…


 だから、すぐに結論を出さない方がいい…


 時間をかければ、互いに関係を修復できる可能性もあるからだ…


 離婚は、簡単…


 昨今は、離婚が、ありふれている…


 結婚した夫婦の3組に1組は、離婚するそうだ(苦笑)…


 たしかに、嫌な相手と、無理にいっしょにいる必要もないが、簡単に別れるのも、どうかと、思う…


 なにより、一度離婚した男女は、二度目の結婚も、半分が、別れるそうだ…


 つまりは、結婚に向いてないというか…


 同居する相手に合わせられない、自分勝手な人間だと、思う…


 そして、そんな自分勝手な人間だと、透(とおる)には、世間に思われたくない…


 私は、この透(とおる)が、好きだった…


 だからかも、しれない…


 この水野透(とおる)が、結婚と離婚を繰り返す、自分勝手な人間だと、思われて欲しくない…


 どこかで、好子さんとの離婚を望んでいる自分がいる反面、透(とおる)の評判を気にする自分も、いる…


 これは、複雑…


 実に、複雑な気分だった…


 が、


 透(とおる)は、どうか?


 透(とおる)は、どう思っているのか、わからない…


 この水野透(とおる)は、私のことを、どう思っているのか、本当のところは、わからない…


 が、


 少なくとも、私を嫌いでは、ないのだろう…


 少なくとも、こうして、私に電話をかけてくるぐらいだ…


 こうして、私に、電話をかけて、愚痴をこぼすぐらいだ…


 嫌いなはずはない…


 私を嫌いならば、わざわざ電話をかけてきて、愚痴をこぼすわけは、ないからだ…


 そして、私が、そんなことを、考えていると、


 「…高見さんも、これで、金崎実業に、復帰できるかも…」


 と、意外なことを、突然、言った…


 思わず、


 「…エッ? ナニッ?…」


 と、呟いた…


 どうして、いきなり、私の会社の復帰話になるのか?


わけが、わからなかった…


 話が、見えなかった…


 「…なにを、いきなり…」


 私は、言った…


 言わざるを得なかった…


 「…米倉と水野は、提携を解消した…」


 透(とおる)が、電話の向こう側から、言う…


 「…それは、わかっています…」


 「…いや、わかってないよ…」


 透(とおる)が、笑った…


 「…わかってない? …なにが、わかってないんですか?…」


 「…金崎実業は、どこに属しているの?…」


 「…水野グループです…」


 言いながら、自分は、今、自分が、勤務する、親会社の社長の息子と、電話で、話しているんだ!…


 当たり前のことに、気付いた!…


 金崎実業の社員として、親会社の水野本社に、行ったことは、まだ一度もない…


 だから、どうしても、実感が湧かなかった…


 が、


 実は、私は、とんでもない人物と、今、話している…


 とんでもない、身分の人間と、今、親しくしている…


 それまで、あまり実感として、湧かなかったことを、あらためて、実感した…


 「…で、今、その水野グループは、米倉と提携を解消した…」


 「…それが、どうして、私の金崎実業の復帰と関係あるんですか?…」


 「…高見さん、鈍いな…」


 「…鈍い? …なにが、鈍いんですか?…」


 「…秋穂さ…」


 「…秋穂さん?…」


 「…そうだ…秋穂は、誰の娘だ?…」


 「…澄子さんの…」


 「…つまり、米倉の人間だ…」


 「…なにが、いいたいんですか?…」


 「…秋穂が、高見さんを、金崎実業から、追い出そうと、画策していたとしたら、すでに、その必要はなくなったということさ…」


 「…おっしゃる意味が、わかりませんが…」


 「…秋穂…いや、澄子が、高見さんを、金崎実業から、追い出そうとしたのは、ハッキリ言えば、ボクのためさ…」


 「…透(とおる)さんのため?…」


 「…高見さんが、金崎実業に勤めている…水野の関連会社に勤めている…それが、邪魔なのさ…」


 「…邪魔? …どうして、邪魔なんですか?…」


 「…ボクが、高見さんを好きだったことを、知っているからさ…」


 「…エッ?…」


 「…高見さんが、同じ水野グループに在籍していては、困る…辞めてもらって、いなくなれば、いい…それが、澄子の考えさ…」


 「…澄子さんの…」


 「…ボクと好子を離婚させ、高見さんも、水野グループから、追い出す…そして、娘の秋穂を、ボクと、結婚させる…そういう筋書きさ…」


 …なんて!…


 …なんて、ことを!…


 考えも、しなかった…


 想像も、できなかった…


 たしかに、言われてみれば、わかる…


 要するに、透(とおる)を手に入れるため、すでに、透(とおる)と、結婚している好子さんだけでなく、好子さんと、よく似た私も、透(とおる)から、遠ざける…


 透(とおる)が、私も、好きだったことを、知っているからだ…


 そして、自分の娘である、秋穂と結婚させる…


 と、


 そこまで、考えて、気付いた…


 それは、米倉と、水野が、提携していることが、前提…


 なぜなら、近い将来、水野と米倉は、合併するからだった…


 が、


 今、状況は、変わった…


 劇的に、変わった…


 米倉の借金は、なくなった…


 水野は、米倉を救済するために、合併しようとした…


 そのための提携だった…


 が、


 その借金が、なくなり、米倉は、水野との提携も、解消した…


 だから、澄子にしてみれば、娘の秋穂を、透(とおる)と、結婚させる必要が、なくなったわけだ…


 そして、私は、といえば、秋穂が、金崎実業の人事の松嶋を使って、私を、会社から、追い出そうとした…


 が、


 水野と米倉の提携が、解消した今、その必要も、なくなったということだろう…


 あくまで、水野と米倉が、提携するから、その後継者同士が、結婚した…


 水野透(とおる)と、米倉好子が結婚した…


 が、


 状況が、変わった…


 水野と米倉が、提携を解消した今、透(とおる)と、好子が、結婚生活を続けるか、どうかも、怪しくなった…


 まして、秋穂が、好子さんから、透(とおる)を奪って、結婚するなど、愚の骨頂というか…


 そもそも、状況が、変わった…


 だから、透(とおる)に、こだわる必要はなくなった…


 もし、こだわるとすれば、それは、五井だろう…


 米倉を救済しようとする、五井に対してだろう…


 米倉は、たしかに、財務状況が、劇的に改善したかもしれないが、それは、まだ世間に知られていない…


 そして、世間に知られる前に、五井に、株を買われて五井の配下に入った…


 それゆえ、もはや、澄子は、透(とおる)には、興味がないだろう…


 そして、そんな諸々のことを、考えれば、たしかに、私もまた、金崎実業に戻れるかも、しれない…


 そう、気付いた…


 すると、どうだ?


 嬉しくなった…


 天にも、昇るほど、嬉しくなった…


 と、言いたいところだが、まったく、そんな気分には、なれなかった…


 それは、まだ、本決まりでも、なんでもなく、透(とおる)の考えに、過ぎないかも、しれないからだ…


 いや、


 そうとも、限らない…


 たとえ、本決まりになっても、嬉しいのか、どうかは、わからない…


 私は、キャリア志向の人間でも、なんでもない…


 ただ、結婚もせず、大学を卒業して、金崎実業に、勤めた…


 それだけだ…


 33歳の今まで、勤めた…


 それだけだ…


 卒業した大学も、中堅…


 世間には、知られているが、偏差値も、お世辞にも、高くない…


 そんな私が、キャリア志向でも、なんでもないのは、至極当然だった…


 キャリア志向の人間=出世する人間…


 私は、出世とは、無縁…


 なんの関係もなかった(爆笑)…


 が、


 かといって、恋愛志向というか…


 合コンを繰り返して、少しでも、条件のよい男を探す…


 そんな人間でも、なかった(笑)…


 私は、私だった…


 高見ちづるだった…


 ハッキリ言えば、なんとなく、大学を出て、就職して、今日まで、生きてきた…


 それ以外のなにものでもなかった(苦笑)…


 そして、それが、私の望んだ生き方なのか? と、誰かに、問われれば、返答に窮する…


 決して、これは、自分の望んだ生き方ではない…


 私が、望んだのは、就職して、30歳ぐらいには、結婚したい…


 そんな漠然とした夢というか…


 誰もが、持つ、夢だった…


 が、


 現実は、違った…


 金崎実業に、就職しても、コレといった男とは、巡り合わなかった…


 陰では、私を、


 「…高見は、美人だから、理想が高い…」


 とか、


 「…きっと、美人だから、この会社のレベルの男じゃ、嫌なんだよ…」


 という悪口も、聞こえてきたが、そうではない…


 たまたま、自分の好きなタイプの男と巡り合わなかった…


 少なくとも、私自身は、そう思っている…


 心の底から、そう思っている…


 が、


 他人は、そうは、思わないかも、しれない…


 ずっと、以前のことだが、学生時代の知人と、話していたときに、


 「…オマエ…偉くなりたいだろ?…」


 と、知人が、会社の上司に言われて、思わず、絶句したことがあると、私に、告げたことがある…


 その友人は、新卒で、入社した会社が、自分に合わず、悩んでいた…


 それが、上司に、

 

 「…オマエ…偉くなりたいだろ?…」


 と、言われて、思わず、目が点になったそうだ(爆笑)…


 一日でも、早く、会社を辞めたいと、毎日思っている人間に、

 

 「…オマエ…偉くなりたいだろ?…」


 なんて、まったく、どうかしている…


 的外れも、いいところだ…


 思わず、その場で、吹き出しそうに、なったが、まさか、吹き出すわけにも、いかず、困ったそうだ…


 そして、その後、どうして、その上司が、そんなことを、言ったのか、考えたそうだ…


 そして、自分なりに出した結論は、普段の会社での自分の態度が、横柄に見えただろうということだった…


 ハッキリ言えば、その会社に、いたくないから、態度も、どうでも、よくなる…


 長く、その会社にいたいのならば、周囲の人間とうまくやろうと、考える…


 が、


 真逆に、早く辞めたいと思えば、当然、そんなことは、考えない…


そして、それは、自分でも、気付かない間に、知らず知らずのうちに、態度に出る…


 そういうことだと思ったそうだ…


 その結果、態度が、横柄になり、それを、見た上司が、コイツは、偉くなりたいに、違いないと、思ったのだろう…


 考えて、見れば、実に、笑える…


 要するに、自分が、考えていることと、周囲の評価が、まるで、違う…


 そういうことだ…


 そして、それは、私も、同じ…


 この高見ちづるも、同じだった…


 私自身は、たまたま、金崎実業で、気になる男と、出会わなかった…


 が、


 他人は、そうは、見ないということだろう…


 いわば、自己評価と、他人がする評価と、まるで、合わない…


 その見本のようだった(爆笑)…


 そして、そんなことを、考えると、このまま、金崎実業に、復職して、いいものか、どうか、悩んだ…


 復帰できるのは、嬉しいが、復帰したところで、毎日が、どうなるかは、わかっている…


 きっと、なにもない平凡な毎日が続くだろう…


 かといって、これと言った取り柄のない、私が、金崎実業を辞めて、どう生きてゆくかと、問われれば、これもまた返答に、窮する…


 転職が、うまくゆく保証は、どこにもないからだ…


 金崎実業は、私にとって、天国ではないが、それほど嫌でも、ない…


 嫌ならば、大学を卒業して、新卒で、入社して、もうすぐ34歳になる今の今まで、金崎実業に、いるわけがない…


 さっき例に挙げた、学生時代の知人とは、違う…


 ちなみに、その知人は、当然のことながら、その会社を退職した…


 それから、他社に転職した…


 私は、その知人のことを、考えると、つくづく、運、不運は、あると、思う…


 その知人は、まったくの平凡な人物だった…


 どこにでもいる、平凡な人物…


 が、


 就職した会社が、自分に合わないと、嘆いていた…


 そして、そんな例は、枚挙にいとまがない…


 実にありふれている…


 なにより、私がいた、金崎実業でも、就職して、会社が合わず、辞めた人間を、それなりに、見てきた…


 そういうことだ…


 何事も、自分の思い通りに、いかない…


 人生は、自分の思い通りに、ならない…


 歳を取れば、取るほど、そう思う…


 そして、そんなことを、考えていると、透(とおる)が、


 「…高見さん…ボクと結婚したい?…」


 と、直球で、聞いてきた…


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