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恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第2部  作者: トモサン


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61/106

恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第2部 61

…同情詐欺…


 まさに、言い得て妙な言葉だった…


 透(とおる)は、好子さんが、好き…


 が、


 好子さんは、透(とおる)を、好きではなかった…


 たぶん、嫌いではない…


 が、


 好きでも、なかった…


 しかしながら、好子さんの実家の米倉は、破綻寸前…


 このままでは、路頭に迷うことになる…


 そこへ、旧知の水野が、救いの手を差し伸べた…


 透(とおる)との結婚を条件に、米倉を救うべく手を差し伸べた…


 だから、好子さんとしては、その手を握るしかなかった…


 他に、米倉を救う選択肢は、なかったからだ…


 当たり前だった…


 一方、透(とおる)としては、それは、善意だった…


 このまま、米倉、いや、好子さんが、路頭に迷うことを、見るに見かねて、好子さんに、救いの手を差し伸べた…


 透(とおる)が、幼いときから、好子さんを好きだったからだ…


 だから、好子さんを助けるべく、動いた…


 が、


 それが、同情詐欺とは?


 たしかに、困った相手に、同情して、金を出した…


 そして、それが一転して、米倉の業績が、回復した…


 だから、同情詐欺といえば、そうも、言えなくないが、あんまりといえば、あんまりな言葉…


 さすがに、言い過ぎではないか?


 私は、思った…


 だから、


 「…透(とおる)さん、さすがに、同情詐欺は、言い過ぎでは?…」


 と、やわらかに、たしなめた…


 すると、透(とおる)は、沈黙した…


 「…」


 と、しばらく、口を開かなかった…


 だから、私は、待った…


 ジッと、透(とおる)が、話し出すまで、待った…


 すると、だ…


 「…たしかに、同情詐欺は、言い過ぎだったと、思う…でも…」


 そこで、言葉を切った…


 「…でも、なんですか?…」


 私は、痺れを切らして、聞いた…


 「…あんなに、わがままな女だとは、思わなかった…」


 透(とおる)が、電話の向こう側から、ため息交じりに、苦笑した…


 「…エッ? …わがままな女?…」


 「…そうだ…」


 「…どう、わがまま、なんですか?…」


 「…どうと、言われても…」


 言い淀んだ…


 たしかに、わがままと、言っても、どう、わがままなのかは、わからない…


 だから、こちらとしても、どうわがままなのか? 


 聞くのは、当然なのだが、いきなり、聞かれても、透(とおる)は、すぐには、答えられないのかも、しれない…


 これも、当たり前のことだ…


 だから、


 「…どう、わがままのか? 突然、聞かれても…」


 と、言いながら、透(とおる)は、しばし、沈黙した…


 しばし、悩んだ…


 それから、


 「…とにかく、自分勝手なんだ…」


 と、息せき切って言った…


 「…どう自分勝手なんですか?…」


 「…とにかく、自分を通す…」


 「…自分を通す?…」


 「…要するに、何事も、自分の思い通りじゃないと、気が済まない…」


 透(とおる)が、吐き出すように、言った…


 「…生粋のお嬢様だ…考えてみれば、それが、当たり前だ…お金に苦労せずに、過ごしてきたんだ…おまけに、美人…だから、なんでも、自分の思い通りに、しようとする…」


 たしかに、言われてみれば、わかる…


 おそらく、この透(とおる)の言う通りだろう…


 米倉好子は、生粋の金持ちのお嬢様…


 お金に苦労したことなど、一度もないに違いない…


 おまけに、美人…


 ルックスもいい…


 だから、余計に調子に乗る(笑)…


 金とルックス…


 いわば、生きるのに、一番大切なものを、持って生まれた…


 生きてゆくのに、なにが、大切かと言えば、まずは、お金だ…


 お金が、なければ、生きてゆけないからだ…


 次は、ルックス…


 男女とも、ルックスは、いい方がいい…


 男女とも、周囲に、チヤホヤされるからだ…


 だから、居心地がいい…


 その反面、そのルックスを妬んで、周囲に敵を作る可能性も、あるが、それでも、ルックスがいいに越したことはない…


 そして、最後は、頭…


 頭の良さだ…


 が、


 これは、金やルックスに比べれば、優先順位が、落ちる…


 なぜなら、頭の良さは、必ずしも、生かせるとは、限らないからだ…


 例えば、東大を出て、企業に入社しても、誰もが、出世するわけではない…


 そういうことだ…


 いかに、頭が良くても、それが、生かせない環境に置かれることは、誰もが、ある…


 だから、自分の頭の良さが、うまく生かせる仕事に就くことが、できれば、ラッキーというか…


 恵まれていると、思わなければ、ならない…


 そういうことだ…


 だから、私の中では、頭の良さは、3番目…


 お金が、一番…


 ルックスが、2番…


 その次だ…


 そして、そんなことを、考えながら、自分は、つくづく平凡だと、思った…


 たしかに、ルックスは、好子さんに、負けない自信がある(苦笑)…


 が、


 私は、お金持ちでも、頭が、良くもない…


 ただ、ルックスがいいだけ…


 ただ、美人に生まれただけだ…


 だからだろう…


 私は、美人に生まれたが、それほど、調子に乗ってない…


 が、


 あの好子さんは、たしかに、違うだろう…


 おおげさに言えば、すべてを持って、生まれた女…


 お金とルックスを持って、生まれれば、誰もが、調子に乗る…


 だから、そんな人間は、いかに、自分を抑えることができるか?


 それが、問題だ…


 それが、できなければ、わがまま放題の人間になってしまうからだ…


 たぶん、好子さんは、それができない…


 もう、三十路を過ぎているのだから、自分でも、そんなことは、わかっていると思うが、それが、できないのだろう…


 環境が、変わっても、自分を変えることは、誰もが、難しい…


 好子さんは、透(とおる)に救ってもらったのだから、透(とおる)に従わなければ、ならないが、それができないのだろう…


 あるいは、自分としては、それをしているつもりでも、透(とおる)から、見れば、それができていないのだろう…


 米倉のような大金持ちに生まれれば、生まれるほど、平凡に生きるのが、難しい…


 ハッキリ言えば、生活レベルを落とすのが、難しい…


 それまで、行きつけだった店やスポーツクラブなど、いわば、セレブ御用達の店に行けなくなるのは、我慢できないに違いない…


 そして、この透(とおる)は、米倉以上のお金持ちの水野家の一族だが、純粋に、水野家の人間ではない…


 父親の良平が、外に作った子供…


 愛人の子供だ…


 だから、おそらく、子供の頃は、平凡な家庭に育った…


 あるいは、貧乏な家庭に育ったかも、しれない…


 だから、好子さんを、わがまま放題なお嬢様と思うのだろう…


 この透(とおる)には、あの好子さんと違って、平凡な家庭に育った強さがある…


 だから、余計に、好子さんをわがまま放題のお嬢様と断罪するのだろう…


 私は、思った…


 「…好子が、あんなに、わがまま放題の女だとは、思わなかった…」


 電話口で、透(とおる)が、愚痴る…


 私は、


 「…」


 と、なにも、言えなかった…


 「…」


 と、黙っていた…


 いくらなんでも、その言葉に、同意することは、できなかった…


 相槌を打つことは、できなかった…


 私は、透(とおる)の姉妹や、昔からの知り合いでも、なんでもないからだ…


 さすがに、その通りと、思っていても、なにも言えなかった…


 が、


 その透(とおる)も、さすがに、言い過ぎたと、思ったのだろう…


 「…」


 と、沈黙した…


 さすがに、赤の他人である、私に、言い過ぎたと思ったのかも、しれない…


 だから、私も、黙った…


 互いに、気まずい沈黙の時間が流れた…


 不気味な沈黙の時間が流れた…


 それから、


 「…高見さん…」


 と、透(とおる)が、呼びかけた…


 「…なんですか?…」


 「…オレは、これから、どうすれば、いいと、思う?…」


 意外な言葉だった…


 「…どうすればって?…」


 「…このまま、好子と夫婦生活を続けるか、否か?…」


 「…そんなこと、私に聞かれても…」


 正直、困る…


 なんて、言っていいか、わからない…


 「…水野は、米倉と、別れた…だから、会社同士の付き合いは、なくなった…つまり、

好子と結婚を続ける理由も、なくなった…」


 「…」


 「…なにより、オレは、好子が、路頭に迷うのを、見るのが、嫌で、親父に、好子と結婚するから、米倉を救ってくれと、頼んだ…しかし、今、その必要がなくなった…米倉の借金がなくなり、米倉と水野の提携も、解消した…だから、好子と結婚生活を続ける意味もなくなった…」


 透(とおる)が、一気に、ぶちまける…


 それから、一転して、沈黙した…


 なにも、言わなくなった…


 だから、私は、わざと、


 「…透(とおる)さん…」


 と、言葉をかけた…


 「…なんだ?…」


 「…透(とおる)さんは、子供の頃から、ずっと、好子さんが、好きだったんでしょ?…」


 「…ああ…」


 「…それが、結婚できた…夢が叶ったわけでしょ?…」


 「…」


 「…その夢を、そんなにあっさり手放して、いいんですか?…」


 私が、幾分、きつい調子で、言うと、透(とおる)が、黙った…


 「…」


 と、無言だった…


 「…どうなんですか?…」


 私は、追い打ちをかけて、聞いた…


 すると、電話の向こう側から、小さな声で、


 「…最初は、嬉しかった…」


 と、ポツリと漏らした…


 「…でも、それは、最初だけ…」


 「…最初だけ?…」


 「…なんといっても、子供の頃から、好きだった…憧れていた…だから、最初は、ただ嬉しかった…」


 「…」


 「…でも、長くいっしょにいると、それまで、見えなかったあらが見えてきたというか…自分でも、自分の気持ちが、どんどん冷めてゆくのが、わかった…」


 「…」


 「…まるで、子供が、親に駄々をこねて、おもちゃを買ってもらったのに、すぐに飽きたのと、同じというか…」


 「…」


 「…自分でも、ビックリするほど、好子に対する思いが、冷めていった…」


 「…」


 「…笑っちゃうよな…」


 透(とおる)が、自虐する…


 そして、その透(とおる)の気持ちは、よくわかった…


 誰もが、見るのと、暮らすのは、違う…


 極端な話、街中でよく会う、美男美女と、なにかのきっかけで、暮らすことになったとする…


 すると、当然、それまで、見たことのなかった姿を知ることになる…


 いっしょに、暮らしたら、だらしなかったり、お金に汚かったり、真逆に、信じられないほど、神経質だったりと、見た目では、わからなかったことが、結構出て来るものだ(笑)…


 だから、透(とおる)の言葉は、驚くに値しない…


 が、


 透(とおる)は、水野家の跡取り息子…


 好子は、米倉の正統後継者だ…


 いわば、二人とも、お金持ちのカップル…


 だから、結婚して、すぐに、


 「…なんか、思ったのと、違った…」


 と、言って、離婚することは、できない…


 世間の目があるからだ…


 二人とも、金持ちの有名人だからだ…


 世間的な知名度は、ないが、財界では、有名だからだ…


 それが、私のような一般人とは、違う(苦笑)…


 だから、いざ結婚して、失敗したと悟っても、すぐに、離婚することは、できない…


 当たり前のことだ…


 そして、私が、そんなことを、考えていると、


 「…オレも、この先、どうしていいか、わからない…」


 と、透(とおる)の苦悶の声が、聞こえてきた…


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