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恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第2部  作者: トモサン


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32/106

恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第2部 32

「…ピンポンって?…」


 つい、言ってしまった…


 つい、口走ってしまった…


 が、


 透(とおる)は、一向に、気にしたそぶりは、見せなかった…


 気にした反応は、見せなかった…


 むしろ、


 「…やっと、わかった…」


 と、笑った…


 無邪気に、笑った…


 が、


 当然ながら、私は、笑えなかった…


 この高見ちづるは、笑えなかった…


 この高見ちづるが、好子さんに、似ているから、澄子さんが、嫌いで、それが、高じて、私を金崎実業から、リストラさせようと、したとしたら、あんまりだ…


 一体全体、私が、なにを、あの澄子さんにしたというんだ?


 知っているのなら、教えて、欲しい…


 私は、思った…


 だから、


 「…一体、どうして?…」


 と、透(とおる)に、言った…


 「…どうして、私が、好子さんに、似ているだけで、金崎実業をクビにならなきゃ、いけないんですか?…」


 「…それは、ボクにも、わからない…」


 あっさりと、電話の向こう側で、言った…


 「…わからない?…」


 あまりにも、あっさりと、透(とおる)が言うものだから、むしろ、拍子抜けしたというか…


 「…そう、わからない…ただ、澄子が、暗躍したのは、間違いない…」


 「…」


 「…まあ、もっと言えば、高見さんの休職に、一枚噛んでいるのは、間違いないと思うか…」


 だいぶ、歯切れが、悪くなった…


 「…正直、それ以上は、わからない…」


 透(とおる)が、言った…


 「…でも、どうして? …どうして、私が?…」


 言わざるを得なかった…


 聞かざるを得なかった…


 たとえ、透(とおる)が、答えを知らずとも、聞かざるを得なかった…


 「…それは、たぶん…」


 「…たぶん、なんですか?…」


 「…高見さんが、邪魔なんじゃないかな?…」


 「…私が、邪魔?…」


 意味が、わからなかった…


 私は、米倉一族でも、なんでもない…


 当然、水野一族でも、なんでもない…


 それが、どうして、邪魔なんだろうか?


 「…どうして、私が、邪魔なんですか?…」


 「…それは…」


 「…それは、今、こうして、オレと話しているのが、その証拠さ…」


 「…証拠?…」


 「…水野でもない、米倉でもない、赤の他人にもかかわらず、水野にも、米倉にも、食い込んでいる…」


 「…」


 「…おまけに、ウチのオヤジとは、懇意の仲…」


 「…懇意の仲って?…」


 「…要するに、気に入られていると、いうことさ…」


 「…わ、私が、気に入られている?…」


 余りにも、意外な言葉だった…


 考えもしなかった…


 「…そうさ…そうでなければ、オヤジが、何度も、高見さんに、会うわけがない…オヤジは、当たり前だが、忙しいんだ…」


 当たり前だった…


 水野グループ総帥の水野良平が、忙しくないはずが、なかった…


 そんな良平が、何度も私に会った…


 だから、言われてみれば、当然だが、私を嫌いなわけは、なかった…


 好きとまでは、言えないかも、しれないが、嫌いなはずが、なかった…


 「…だから、邪魔なのさ…」


 透(とおる)が、ダメ出しした…


 「…邪魔?…」


 「…そう、邪魔…」


 「…」


 「…オレが、思うに、高見さんが、うろちょろするのが、邪魔というか…厄介というか…」


 「…」


 「…要するに、あの澄子が、なにを狙っているのか、わからないが、高見さんが、出て来ることで、邪魔でも、されたら、困る…だから、排除しようとしたんだと思う…」


 透(とおる)が、まとめた…


 「…とにかく、気をつけることだ…」


 「…気をつけるって? どう気をつければ、いいんですか?…」


 「…それは、オレにも、わからない…」


 「…わからない?…」


 「…そうだ…ただ、オレから、言えることは、ただ、ひとつ…」


 「…ただ、ひとつ?…」


 「…巻き込まれるな…」


 「…巻き込まれるなって?…」


 「…水野と米倉の争いに、巻き込まれるな…」


 透(とおる)が、力強い口調で、言った…


 「…いいな…」


 と、私に、念を押した…


 そして、それを最後に、電話を切った…


 私は、切られた電話を、握り締めながら、考えた…


 ケータイからは、


 「…プッ…プッ…プッ…」


 と、電話が、切れた音が鳴っている…


 「…巻き込まれるなって…」


 思わず、独り言を呟いた…


 「…そんなことを、言っても、すでに、巻き込まれている…」


 すでに、電話は切れたにも、かかわらず、一人呟いた…


 「…すでに、巻き込まれている…そうでなければ、金崎実業を休職になったりしていない…」


 部屋に誰も、いないにも、限らず、一人呟いた…


 それに、だ…


 すでに、今も、水野透(とおる)から、電話があったではないか?


 透(とおる)の父親の良平にも、会った…


 再会した…


 しかも、良平は、私を待っていただけでなく、自宅にまで、招かれて、妻の春子さんにも、会わせてくれた…


 水野財閥の実質的なリーダー、水野春子にも、会わせてくれた…


 これでは、もはや、私は、関係ないとは、言えない…


 水野、米倉、双方とも、なんの血縁関係がないにも、限らず、もはや、私は部外者とは、言えないのではないか?…


 そう、思った…


 そう、思いながら、考えた…


 やはりというか…


 私は、今度も、水野と米倉の争いに、巻き込まれるのだろうか?


 と、考えたのだ…


 たしかに、退屈はしない…


 これまで、およそ10年間、金崎実業に勤めていたが、要するに、毎日、同じことの繰り返し…


 とりたてて、面白いことも、なかった…


 気の合う同僚もいたが、金崎実業に10年もいる間に、女性の同僚は、ほとんど、いなくなった(笑)…


 その中には、結婚を機に、退職した同僚もいれば、単に、職場が合わなかったり、また会社のステップアップを狙って、もっと、大きな会社に転職した同僚も、いる…


 私自身は、別に、金崎実業を辞めるつもりもなく、ただ漠然と毎日を過ごしていたというか…


 とりたてて、私自身に上昇志向もないのも、大きかったのかも、しれない…


 私は、自分で言うのも、なんだが、ルックスは、他人様から、褒められるが、学力は平凡…


 だから、大学も、中堅の私大出身だ…


 それゆえ、変な上昇志向もなかった…


 おまけに、就職氷河期…


 就職できない友人も、いた…


 だから、就職できただけで、御の字というか…


 ラッキー!…


 就職できただけで、十分、満足だった…


 が、


 世の中には、そうでない人間も多い…


 しかも、


 しかも、だ…


 数が少ないとはいえ、せっかく、入社しても、早々に退職する人間も、少なからず、いた…


 もちろん、仕事が合わないとか、職場が、合わないとか、いう理由ならば、いい…


 まだ、納得できる…


 が、


 変に自分の実力を、勘違いして、


 「…ここでは、自分の実力を生かせない…」


 と、豪語するものもいて、仰天したものだ…


 明らかに、平凡な人間にも、限らず、自分の実力を勘違いしている(笑)…


 そんな人間を目の当たりにして、ただ、ただ、驚いたものだ…


 そして、世の中には、色々な人間がいると、あらためて、思った…


 私は、これまで、そんな人間には、会ったことが、なかったからだ…


 これは、どうしてか、考えた…


 考えて見れば、理由は、簡単で、そこまで、愚かな人間が、周囲にいなかったのが、大きい…


 単純に、高校も大学も、偏差値が、それほど、低くは、なかった…


 だから、ハッキリ言えば、偏差値が、低い人間が、周囲にいなかったのが、大きい…


 これは、偏見になるかも、しれないが、どうしても、偏差値の低い人間の方が、自分の実力がわからず、上昇志向が強い人間が多い…


 要するに、学歴と仕事は別と、自分に都合よく考える…


 たしかに、その通りなのだが、偏差値の低い人間は、末端の仕事をこなすだけで、上に上がれない人間が多い…


 要するに、手は早くても、頭は、イマイチだから、上に上げれない…


 が、


 当人は、その事実に気付かない…


 だから、不満が溜まる…


 そういうことだ…


 考えてみれば、その当人の気持ちは、わからないでもないが、そういうひとたちを、これまで、目の当たりにしたことがなかったから、驚いた…


 そして、それは、金崎実業に、10年もいる間に慣れた…


 やはりというか…


 ときどきは、そんな人間に出会ったからだ…


 だから、冷静に考えれば、漠然と10年間、金崎実業に、勤めていたわけではないかも、しれない…


 それは、やはり、金崎実業に、勤めていなければ、わからなかったことも、大きいからだ…


 が、


 もしかしたら、それは、金崎実業でなくても、同じかもしれない…


 大なり小なり、似たような体験は、どんな職場でも、体験するものだ…


 それを、思えば、私は、幸運な方かも、しれない…


 就職した当初は、大学時代の友人や知人に会って、会社の状況を説明したが、私は、恵まれた方だった…


 いわゆるブラック企業ではなかったからだ…


 決して、劣悪な環境ではなかった…


 だから、それを思えば、まだましというか…


 自分は、恵まれていると思った…


 なにより、私よりも、はるかに優秀でも、就職に失敗した友人、知人を、何人も、見たことが、大きい…


 就職は、ただの学力テストではない…


 面接も含まれる…


 だから、ただ、テストの成績がいいからでは、受からない…


 また、受かったとしても、その職場や仕事が、自分に合うかどうかは、誰にもわからない…


 やってみなければ、わからない…


 それを、思えば、私は、幸運だったと、言わざるを得ない…


 金崎実業に入社して、十年間、なんとか、やって来た…


 小さな不満を上げれば、きりがないが、やってこれた…


 これを、考えれば、自分は、幸運…


 紛れもなく、幸運だった…


 幸運か、否かは、他人との比較が、大きい…


 学生時代の友人、知人と、ときどき会って、感じたものだ…


 上を目指せば、きりがない…


 幸せは、できるだけ、小さいことで、幸せを感じるようになるのが、正しいというか…


 今日もまた、平凡な一日が終わった…


 それで、良かったと、思えるならば、いい…


 分不相応な高望みは、しない…


 毎日が、ただ、平穏に終わる…


 それで、良しとすれば、いい…


 だが、


 やはりというか…


 それでは、物足りない…


 刺激が欲しい…


 私は、どこかで、常に、そんなことを、望んでいた…


 そして、この半年に、それが、現実になった…


 米倉と、水野を通じで、それが、現実になった…


 すると、どうだ?


 争いは、まっぴらだと、思った…


 争いは、テレビの中のドラマか、マンガや小説の中で、たくさんだと、思った…


 そんな気持ちになった…


 我ながら、虫のいい話だが、それが、本音だった… 


 要するに、退屈な毎日を送るのは、嫌だが、

実際に、トラブルに巻き込まれるのは、もっと、困る…


 そういうことだ…


 実に、虫のいい話だった(笑)…              


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