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恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第2部  作者: トモサン


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103/106

恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第2部 103

たしかに、新造さんの言う通り…


 もし、二人が、若い時分に、一人の男を争ったとしたら、その傷は、深い…


 ハッキリ言って、深い…


 そして、なにより、問題なのが、二人が、財界の有名人だと、いうこと…


 芸能人ではないが、有名人だと、過去、現在、誰が、誰と付き合っていたのか、世間の知るところとなる…


 世間の知るところ…つまりは、自分は、その相手を知らないが、相手は、自分を知っている…


 そういうことだ(笑)…


 だから、余計に、嫌…


 世間に知られるのが、嫌に決まっている…


 それが、わかっているから、余計に、あの春子も、諏訪野和子も、神経質になるのだろう…


 今、この新造さんが、言ったように、真偽不明の噂でも、それが、世間に広まるのは、困る…


 なまじ、世間に広まって、誰もが、知るところになれば、それが、まるで、真実かのようになってしまう恐れがあるからだ…


 昔、兼好法師こと、吉田兼好が、徒然草に書いたが、ウソでも真(まこと)でも、それが、世間に流布され、その結果、立派な書物に書かれでも、したら、ウソでも、ホントになってしまう…


 そう、書いていた…


 そして、それは、そうだろうと、私のような門外漢でも、思う…


 そして、恐るべきことは、700年前に書かれたことも、今の時代でも、書いていることは、立派に通用するということだ(笑)…


 私が、そんなふうに、考えていると、


 「…でも、まあ…真偽不明の噂だから…」


 と、新造さんが、笑いながら、言った…


 そして、


 「…だけど、それが、ホントかと、思われるぐらい、二人が、仲が悪いのは、財界で、有名な事実だ…」


 と、付け足した…


 「…だから、もしかしたら、春子のオバサンが、高見さんを試そうとして、金崎実業を追い出そうとしたのを、五井の女帝が、知れば、それを、逆手にとって、なにか、仕組んでも、不思議じゃない…現に、高見さんは、五井の女帝に会ったんだろ?…」


 「…ハイ…お会いしました…」


 「…だったら、関わっている可能性が、高いよ…五井の女帝も、春子オバサンが、高見さんを、試そうとしているのを、人づてに聞けば、どんな女なのか? と、高見さんに、興味を持つだろうから…」


 新造さんが、あっさりと、言った…


 私は、それを、聞いて、動揺した…


 それでは、まるで、私が、あの秋穂となにか、関係があるようだと、気付いたのだ…


 もちろん、私は、あの秋穂と、なんの関係もない…


 しかし、私の存在が、きっかけで、秋穂を利用しようとしたのでは? と、気付いたのだ…


 なぜなら、私と好子さんは、似ている…


 そして、なぜ、似ているかと、問われれば、同じ一族だから…


 私もまた、米倉一族…


 祖父の、そのまた、祖父が、米倉の創業者の兄弟だった…


 つまりは、今現在では、他人に近いほど、血が薄くなったが、私も、また米倉一族だった…


 そして、あの秋穂もまた、また、私や好子さんと同じような顔立ち…


 女優の常盤貴子さんの若いときに、似た顔立ち…


 だから、秋穂は、利用されたのかも…


 そう、気付いた…


 そして、それは、驚きだった…


 文字通り、驚きだった…



 そして、その後は、新造さんと、たわいもない、話をして、別れた…


 私は、米倉が、五井入りをして、どうなるのか、聞きたかったが、さすがに、聞けなかった…


 私には、なんの関係もない、話だからだ…


 また、たとえ、聞いたとしても、新造さんは、答えられないに、違いなかった…


 米倉の五井入りが、決まったのは、つい、先日…


 だから、なにか、急に変化があるはずがなかったからだ…


 変化が、あるのは、この後…


ゆっくりと、時間が経てば、色々わかってくるだろう…


一年後、二年後と、時間が経てば、わかってくるだろう…


ただ、私は、好子さんのことが、気になった…


 この前、会ったとは、元気だったが、どうだろうか?


 新造さんの前でも、元気だろうか?


 私の前では、元気だったが、私は、所詮、他人…


 好子さんの身内ではない…


 だから、身内の新造さんの前でしか、見せない顔もあるからだ…


 「…好子さんは、お元気ですか?…」


 「…元気だよ? …どうして?…」


 「…だって、透(とおる)さんと、結婚して、半年ばかりで、離婚して…」


 「…仕方ないよ…」


 あっさりと、新造さんは、言った…


 私は、新造さんが、あまりにも、あっさりと、言うものだから、かえって、反発したというか…


 やはり、私も女…


 好子さんと同じ女…


 だから、離婚が、どれほど、女にとって、心に、傷を負うか、知っているからだ…


 だから、新造さんに、


 「…そうじゃない…」


 と、言いたかったが、新造さんが、私の意図を察したのか、機先を制する形で、


 「…好子は、米倉の正統後継者だ…」


 と、新造さんが、言った…


 「…だから、結婚も、離婚も、自分の思い通りにならないことは、分かっている…」


 「…どういうことですか?…」


 「…好子は、おおげさに言えば、米倉の天皇陛下だ…天皇陛下が、自分が、好きだからって、誰とでも、結婚できるわけが、ないだろ?…」


 「…」


 「…好子は、それが、よくわかっている…だから、受け入れるしかない…」


 「…受け入れるしかない…」


 「…自分の立場を…自分の運命を…」


 新造さんが、ゆっくりと、言った…


 たしかに、言われてみれば、わかる…


 政治家や、お金持ちは、案外、不自由…


 自分の好きなひとと、結婚できない人間が、多いと聞く…


 それは、男女ともに、政略結婚が、多いからだ…


 だから、有名政治家の息子や娘が、一般のサラリーマンの息子や娘と結婚するのは、稀…


 あまり、聞いたことがない…


 だから、そういう家庭に生まれた人間は、ある意味、不自由…


 自分の好きなひとと、結婚ができない…


 そして、その代わりに、生まれながらに、高い地位を得る…


 生まれながらに、お金を持った生活ができる…


 他人様よりも、良い生活をする…


 そういうものかも、しれない…


 他人様よりも、良い生活を送れる代わりに、縛りも、また多い…


 縛り=自分の自由にならないことも、多い…


 そういうことかも、しれない…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 そして、そんなことを、考えながら、帰途に着いた…



 家に帰って、実に、ホッとしたというか…


 やはり、新造さんに限ると、思った…


 あの新造さんと話すと、実に、ホッとする…


 心が安らぐというか…


 つくづく、いいひとだと、思った…


 が、


 さすがに、恋愛感情は、湧かない(笑)…


 これは、どうしてか?


 と、自分でも、思った…


 おそらく、いいひとと、恋愛感情は、違う!


 と、思った…


 いいひとと、言うのは、たとえば、お風呂で、いえば、ぬるま湯…


 浸かっていると、実にホッとする…


 気持ちが安らぐ…


 が、


 恋愛は、違う…


 ドキドキする…


 刺激がある…


 米倉正造が、代表例…


 なにを、考えているか、さっぱりわからないが、正造といると、ドキドキする…


 それは、まるで、ジェットコースターに乗るようなもの…


 常に、刺激がある…


 常に、刺激に溢れている…


 だから、好きなのかも、しれない…


 だから、気になるのかも、しれない…


 ふと、気付いた…


 恋は、非日常…


 日常ではない…


 だから、ジェットコースターに乗るように、刺激的でありたい…


 目まぐるしいほどの非日常を味わいたい…


 そういうことだ…


 そして、それは、短期間…


 あくまで、ジェットコースターに乗るような短い時間…


 いつまでも、続くものではない…


 仮に、普通の男でも、普通の女でも、ビックリするような美男美女と恋愛すれば、最初は、刺激的だが、やがて、それが、普通になる…


 刺激がなくなる…


 辛い物を食べれば、最初は、その辛さに驚くが、いつも、それを食べていれば、それが、普通になる…


 それと、同じだ…


 要するに、その刺激に慣れてしまうから、いつのまにか、なんとも、感じなくなってしまう…


 それと、同じだ…


 今さらながら、思った…


 だから、私にとって、米倉正造は、刺激的だと、あらためて、考えた…


 現に、あの新造さんは、正造さんを毛嫌いしている…


 なまじ、兄弟だから、正造の表の顔も、裏の顔も、知っているのだろう…


 それが、私と、新造さんの違い…


 私、高見ちづると、新造さんの違いかも、しれない…


 そして、後日、あの秋穂の正体が、わかった…


 新造さんが、連絡してくれたのだ…


 「…オレの思った通りだった…」


 と、スマホの向こう側から、新造さんが言った…


 「…思った通りって…」


 「…秋穂と名乗る女の正体だ…」


 「…正体?…」


 「…あの女は、高見さんと、同じく、米倉一族の女…米倉の血を引く女だ…」


 「…エッ?…」


 「…それを、正造が利用したんだ…」


 「…利用した? …どういうことですか?…」


 「…春子オバサンに頼まれて、高見さんを、リストラしようとした…それを、知った諏訪野和子は、その裏で、秋穂を使った…」


 「…どう、使ったんですか?…」


 「…秋穂を、澄子の娘だと、思い込ませたんだ…」


 「…思い込ませた? どうやって?…」


 「…正造が、そう教えたんだ…」


 「…エーッ!…」


 驚きで、思わず、声を上げた…


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