1-1 老警官、のどかな町を巡回する
多分、長編にはならない・・・・とは、思いますが、新しい物語を上げていきます。
某派出所マンガの様な、破天荒な事は起こらないですが、まったりと楽しんでいただければ幸いです。
ここは、大都市から離れた、山裾にあるのどかな農村。
電車で大都市へ通勤するにも微妙であるせいか、ベッドタウンになることもなく、家と畑がまばらに散らばる、平和な田舎町である。
大都市近郊であることから、意外にも農業が活発で、じじ、ばば、父、母、息子と三世代で切り盛りしておるところも沢山ある。安定して仕事が出来ると言う事で、若いもんもそこまで都会に逃げることなく、それぞれに農業を継いでいこうと頑張っておる。
ああ、ワシかね。
ワシはこの田舎町の「駐在さん」与野 源次郎という。歳か、歳は61、あと1年もしないうちに定年じゃ。一応、警部補なんだが、ありがたいことにこの階級のまま定年を迎えられるから、年金も心配はなさそうだ。この駐在所には55歳の頃からお世話になっておる。
実は、この町はワシの生まれ故郷なんだ。警察に奉職してからは都会で凶悪犯やらとやりあっておったけど、50を越えてからどうも気力が湧いてこなくなってね。年寄りはそろそろ若いもんに道を譲ろうと考えておった。そんな時に自分の故郷の駐在さんが、定年でいなくなるっちゅー話を聞いてな、無理を言って移動させてもらったのよ。
上司には愚痴られたぞ。貴方の経験はまだ若いもんの教材になる。田舎に引っ込むなんて勿体ない。とな。でもな、最後は血生臭いヤマを担当するより、田舎でのんびり駐在さんやりたいんだ。と押し切ってきたわ。女房に話をしたら、半分呆れ、半分ホッとしておったわ。
そうだよなぁ、事件が長引けば家にも帰らん。夜中寝ていようが呼び出しはある。警官の女房なんてやるんじゃなかった。って昔は愚痴っておったわ。
まあ、こっちに異動してからは、毎日、家で寝ることが出来るし、呼び出されることもない。子供達も独立したんで、女房と二人、夜は色んな昔話で盛り上がっておるよ
実は女房も同じこの町の出身でな。帰れると聞いて喜んではおったのよ。幸いにも親の家の敷地は広くて、ワシらが住む小さな家くらい建てる余力があったんでな、兄貴に無理を言うて建てさせて貰ったわ。
兄貴も自分と子供達で農業を継いでおって、帰ってくるわと言うと、
「源次郎、定年になって暇になったら、ワシらの畑手伝え。まだ耄碌するには早いだろうが」
と帰郷を喜んでくれていた。
仕事か?ああ、こんな田舎じゃ「どうやったら日々平凡に時を過ごせるか」を考えるのが仕事じゃな。毎日、自転車で見回りしながら地域の人間と世間話をする。世間話とは言っても、そこに何かの「引っ掛かり」があれば、そいつを探る。
こっちに来て早々だったな。山裾の方に何やら車が出入りするようになった。と話に出てきてな、ものは試しにと巡回に行ったら、産廃の不法投棄の現場でな。応援呼んで張り込んでいたら、性懲りもなくまた不法投棄にやって来て、現行犯逮捕。
調べたら、複数の自治体を股にかけて不法投棄を繰り返してての、余罪はゴロゴロ出てくるし、不法投棄に加担した企業も沢山出てきて、大きなヤマじゃった。
その後はもう、平和なもんじゃ。
今日も残り少ない警察官人生を歩ませて貰っとる。最近は本署の若い衆が交代でやってきて、ワシの一挙手一投足を注視しとる。署長に言われたんだと、「げんさんの動きをしっかり観察しろ。あの人の動きには無駄がない。本当の意味での警察官は、ああでなければならん。若いうちに見ておけばこれからの警察官人生がもっと良いものになるだろう」なんてな。
今、ワシの元に来ておるのは警察学校を卒業したてのまだ「何物にも染まってない」子じゃ。田代元春、今年ハタチになる初々しい奴じゃ。まあ、この街じゃハタチの小僧なんぞ、「みんなの孫」状態でな。あちこちから声掛けられて、必死に相手しとる。
ああ、あと1年もしないうちに、こんな生活も終わってしまうのか・・・。寂しいの。
現在、連載中でも「中身」がジジイなんですが、今回も「ジジイ」が主役です。
(仕方がない、書いてる本人もジジイなんでw)
同時進行・・・・なんとかやって見せます。




