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第62話 やっと出来た封印

【ファルスーノルン過去:新星歴4817年4月30日】



再び訪れたキャルルートルン正教会。

エリスラーナの衰退の権能で、まるで数千年経過したように激しく寂れ果ていた。


「っっ!!!!??」


転移したとたん、全員が悍ましい反応に反射的に魔力を放出。

物理的干渉を伴い突風が生まれ、教会付近の地面がえぐられ吹き飛んだ。


「っ!?なにこれ?私にもわかるよ…うっ、気持ち悪い…なに?…妬み……憎悪!?」


茜が体を抱きしめガタガタと震える。


吹き飛んで土がむき出しになっている場所からおびただしい数の人骨のような骨に、嫌な気配のする鎖につながれた手のひら大の球が大量に姿を現していた。


骨を見るに小さいものが多い。

おそらく子供に呪詛を掛け儀式を行ったのだろう。


「うわーあり得ない!?…なんて、くそっ、酷すぎるよーもー」

「……民間の…土着の呪いの儀式……狂ってる」


そこからは視認できるほどの暗鬱な魔力が立ち上っていた。


地表間近。

永続結界の残滓である、魔術式の刻まれた織物のようなものが散乱していた。


「…隠ぺいしていたんだな。エリスの衰退で結界を維持する魔力が枯渇して、表層に漏れ出したんだろう……くそっ!俺は何を見ていたんだ」


すっとアルテミリスが優しげな表情で俺の腕をとる。

柔らかな優しい気配が俺の沸き立つ嫌悪感を包む。


「貴方様お一人のせいではありません。私たちもともに背負うと決めたのです。どうか悲しまないでください。解呪して封印を施しましょう」


にっこり笑いかけるアルテミリス。

俺は心が軽くなるのを感じた。


「ありがとう…そうだな。やれる事をしよう。何しろこんなにたくさんの悪意があるんだ。どこまで影響するかわからん」


そうだ。

俺は一人じゃない。


大きく深呼吸をし、俺は腹に力を入れる。


「アート。範囲を最大にして探知してみてくれ。アグ、協力頼む」

「エリスとダニー、レアナ。解呪を頼む…『創造』」


それぞれができることを。

何よりも皆、この非道を許していない。


この世界最強集団。

その全力はまさに神話。


改変が始まる――



※※※※※



やがて包まれていた悪意は浄化。

あたりは大小さまざまな美しい花が咲き誇る、生命溢れる大地に代わっていった。


「きれい…」


思わず茜がつぶやく。

そんな様子を優しい表情を浮かべアルテミリスが見つめているのが印象的だった。


「何の慰みにもならないだろうが…俺のわがままだ。安らかに眠ってほしい」


俺は胸に手を当てそっと目を閉じた。

皆も同じように静かに黙とうをささげた。



そして遂に。


最後の封印は施された。



※※※※※



『ノアーナ様、こっちに来てくださいます?!ヤベーものがありますですわ!なんでこんな糞みたいな…頭にウジがわいているのかしら』


封印後。

探知範囲のギリギリのところで違和感を覚えたアースノートがアグアニードと向かっていた。


アースノートの念話。

俺はその場所に転移した。


正教会からおよそ10キロメートル。

小高い丘。


その周りには不自然に斜めに数十本の木が突き刺さるように立っていた。


棺桶のような粗末な箱の上に突きささっている、5m位の杭が酷く嫌な気配を纏う。


杭は風化したのか黒っぽい煤のようなもので呪いの言葉がびっしりと書き込まれていて、血を連想させた

おそらく磔にされたのであろう、根元には人骨が散乱していた。


そして何らかの術式が施されていたようで、アグアニードが減退を使用したため露見していた。


俺は。

感知できない、だが深くうごめく纏わりつくような悪意の塊に、たとえようのない焦燥感のようなものを感じていた。


「アート、何かおかしな反応はないか?…胸糞悪いがここからは俺は魔力の残滓すら感じられないのだが」


「それがよくわかんないのですわ。見た通り、モノからは反応もありませんわ。――でも確かに微弱な反応が…!!!??くうっ…あああああっっ?!!」


話している最中に、突然アースノートが苦しみだす。


「ぐあああっ…!!??…くううっ!!」


近くにいたアグアニードも跪き、絶叫をあげる。


「!!?っ…クソっ…ちっ」


俺は二人を抱え全員に念話。

同時に封印を施した正教会へ転移した。


『非常事態だ。全員教会に来てくれ』


転移する瞬間。

突き刺してあった木がそれぞれ『欠片の魔力』を吸収。


赤黒い不気味な立体の魔方陣の形成を始めているのが見えた。



※※※※※



俺たち以外には特に問題はなかったようで。

アグアニードとアースノートも落ち着いてきた。


「いやーマジにやばいよーアレ。無理やり吸われたー急激にー…くそっ、レジストする暇もなかったー」


一度真核に宿った魔力は、周囲の魔素があれば少しずつ回復する。

吸収された2柱も徐々に青くしていた顔が元通りになりつつあった。


「俺も吸われた。おそらく例の『欠片の魔力』だけ吸い出すようだな。…まずいな。飛ぶ瞬間立体的な魔方陣が形成され始めていた。召喚の陣だ。――何かを呼ぶらしい」


いまだ蹲り小刻みに震えているアースノート以外、全員が驚愕に染まった表情でこちらを見る。


「えっ光喜さん、それって不味くない?…何が出てくるの?」

「おそらくだが、アンデッドタイプだろう。まあ戦力的には問題はないんだがな。これ以上吸収されなければ問題はないだろう。この大陸にはほとんど住民はいないはずだから、被害も出ないだろうし」


茜と話していると突然怖気づくような魔力の奔流が迸る。

アースノートが地獄の底から絞り出すような声を上げた。


「………殲滅ですわ」

「っ!!!!」


ゆらりと幽鬼のように立ち上がるアースノート。


突然着ぐるみの中に手を入れガサゴソし始め、


「ゆるさない!ノアーナさまからいただいた愛の結晶をっ!!許さない!!甘くささやいてくれたノアーナ様が私に!!ああっ「愛してる」ってささやいて耳をやさしく食みながら…絶対に許さない!!」


完全に目がイっちゃってるアースノートは、可視化できるほどの魔力に包まれる。


「許さない許さない、許さないっ!!――『殲滅剛力丸』3号から24号!!」


突如現れるオリハルコン製の大型ゴーレム22体!

全て違う装備なのか様々な武器が、わちゃわちゃと装着されている。


「あーしへの愛を!!一滴でもおおおっ!!奪う泥棒猫はああっっ!!――『究極結界君』20号!!」


マジか?

…ヒヒイロカネ製だと?


どうやら結界特化型らしく、やたら長そうな腕を何重にも折りたたんであるアームを左右にそれぞれ6本装着している10mはある巨大ゴーレム?……いやもうなんか『巨大ロボット』じゃん…


うわー。


「チリひとつ残らずうううううっっ!!――究極守護天使『乗れるんです君』!!」


まるでガン〇ムのような、アダマンタイトとヒヒイロカネで形成された色鮮やかな人型の15mくらいありそうなゴーレ…


もういいいや…


ロボットの胸部が出現とともに開き、アースノートが飛び乗る。


ロボットの目が怪しく光る。

スピーカー?から大音量で怨嗟の声が響き渡る。


「殲滅してやるううっっ!!」


ミスリルゴーレムと結界ロボットが転移したように消えると、ガ〇ダムもどきがバーニアから大量の魔素を吹き出しながら爆音とともに飛び立った。


風に揺れる花々を後に残して……


えっ?!!



「…どご――――――んん……」

「……ズガアア――――ン……」




飛んでいった方角から激しい爆発音が聞こえたり。

突然数度、閃光が柱のように立ち昇ったり…


わずか数十秒であたりは静けさを取り戻した。



俺たちの前では相変わらず、花々が風に揺らめいてた。


えっと。

うん。


アートやべえ。


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