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第60話 授与の儀式2

茜を伴い会議室に転移してきた俺は、アグアニードに声をかけた。


「調子はどうだ?問題ないか?」

「っ!ノアーナ様、うん、おいらもう元気―。すごい力だよーこれ」


「そうか。なじむまで無理はするなよ。エリス、俺の隠れ家に来てくれ。ロックは解除した」



※※※※※



俺が消えた後、茜は魂が抜けたように茫然としていたらしい。


俺は隠れ家に飛ぶ。

すぐにエリスラーナは来た。


濃い青い瞳を瞬かせ、顔は真っ赤だ。


「のっのあ、さま、あう…え、えっと…」

「エリス、お前は可愛い。とても可愛いよ…どうしたい?そのままでいいのか?」


「!っ…このままで……大人の体は……怖い…」


エリスラーナは古龍の化身だ。

俺たちの出会いは――殺し合いだった。



※※※※※



――およそ5000年前:古龍の里、森――



「この辺のはずだが」


俺は神を創造するため、素体となる優秀な人材を探していた。

試行錯誤の末、想いの制限を取り払ったこの世界。


多くの場所で反動により争いが起こっていた。


古龍の里は魔竜族との戦いでほぼ壊滅。

そのため俺は戦禍渦巻くこの場所に来ていた。


見渡す限りの惨状。

許容していたとはいえ、俺は悔恨の念に囚われる。


あたりはブレスの影響なのだろう。

山は削れ、木が薙ぎ倒され。


所どころから焦げ臭いにおいが立ち込めていた。


多くの古龍と魔竜の死骸が引き裂かれた状態で打ち捨てられている――

まさに地獄。


様々な物が焼ける匂い。

血の匂い。


俺は顔をしかめたものだ。



「!っ…!?…!!!アッ…!!?…!!」


見張り小屋だろうか。


山の陰に石造りの小さな小屋があり、屋根は崩れ、周りに火の手が近づいていた。

叫び声の様なものと、下卑た叫び声が聞こえ、俺は向かった。


そこは人化した魔竜族の男が4人ほどで、人化している古龍族の女性たちを組み伏せている最中だった。


「どうせ殺されるんだ!へっへ、最後に俺だって…へへ……」

「くうっ…ああっ…ぐっ、下郎がっ!…ああっ…い、いやあ…」


「おい!殺すなよ!次は俺だ…へへっ…いい女だなあ…」

「ぎゃははは、んーお嬢ちゃんはあ、後でなあ…」


興奮した男が一人の腹を折れた剣で切り裂いた。

血しぶきが上がる


「ぎゃああああ――――!??ああ―――…」


その様子。

小さな女の子が涙を流しながら、見ていた。

唇から血を流しながら。


「チッ…下種どもがっ!」


俺はすぐに4人の存在を消し去り、少女の前に立つ。


両腕を鎖でつながれながらも――折れた剣をつかみ、睨み付けてくる少女。

後ろにはこと切れた20歳くらいの女性が胸を引き裂かれていた。


「かあさまを!っっ、よくもっ!…うああああっ!!」


存在値が急激に上がる。


憎しみ。

悲しみ。


そして弱い自分を責める自責の想い――


彼女の渾身の一撃を、俺は避けずに受け止めた。

胸を突き破り背中から赤黒い血とともに、折れた剣が生える。


俺はそのまま彼女を優しく抱きしめた。


「すまない。君しか助けられなかった。…これは俺の罰だ」

「っ!!…うああ、……うあああああああ――――――――」


見た瞬間理解はしていたのだろう。

俺が敵でないことは。


でも……彼女の意地を、俺は受け止めたかった。



※※※※※



俺は遠い目をして優しく語りかけた。


「あの時の一撃は見事だったな…死ぬほど痛かったよ」


「っ!!…おぼえて…」


「当たり前だ。お前の渾身の、悲しみを晴らす、最高の一撃だ。お前は俺のものだ。受け止めるに決まっている」


思い出したのか。

エリスラーナの美しい青色の瞳から涙がこぼれた。

俺は優しく抱きしめ、涙をぬぐう。


「そして今エリスは、俺の腕の中にいてくれる」

「っっ!……ノアーナさま…」


「俺のこと好きでいてくれるかい?」

「ん!…大好き」


優しく彼女の小さい唇にキスをした。

子供にするような優しいキスを…


何度も

何度も


…………………


俺の中にある、茜との抱擁で得た大きな力。

悪意を弾く、希望の力――


ゆっくりとエリスラーナに取り込まれていった。



※※※※※



「ん。ノアーナ様…いつか…必ず…」


目に強い決意を込め、エリスラーナは転移していった。



(焦る必要はないよ。――俺はいつまでも待っているから……)


一人ソファーに座り。

おれはこの先に想いを馳せた。



(世界を――お前たちを…守る)


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