第58話 新たな『怠け者』の様な脅威
落ちていたオーブ。
感じたことのない魔力が漏れ出していた。
俺は指示を出し、アースノートが権能で作成した『チキチキ検査君26号』(命名アート)で検査した。
結果
強弱と違う概念の3種類の呪いの基のような魔力が判明。
欲の増幅
怨嗟の増幅
研鑽の消去
今までにない術式だ。
俺は紡いでいない。
予想される効果は「我がままになり、人を軽視し憎み、やる気が失せる」だ。
しかもおそらく気付くことができずに“増幅されて”人にも伝播する。
そして『緑を纏う琥珀色』の魔力が抵抗する。
(…サンプルが少ないので断定はできないがな…)
魔素という元素を中心に構成されている世界。
おおむね自身の魔力と術式と想いで発動され、維持するために魔素が消費される。
一部例外はあるがそんな仕組みだ。
俺が紡いだのだ。
間違いない。
そして大きさに比例し物理に干渉する。
だがこのオーブの魔力は、いうなれば逆の効果をもたらす。
自身の魔力は必要ない、というか関係ない。
想いに反応し、魔素を吸収し精神に干渉する。
――しかもきっかけを与えるだけだ。
そして周りに侵食する。
厄介なことこの上ない。
※※※※※
「茜、お前は初めから俺の色を持っていた。俺が驚いたのを覚えているか?」
「うん、光喜さんすごく驚いていた。どうしてだろうって思っていたけど」
「俺しか持っていないからだ」
「っ!…」
さわやかなはずの風。
纏わりつくように、皆の心をかき乱す。
「俺の色は基本この星、ファルスーノルン星の核と同じだ。だから影響を与えないため発現しないように概念と摂理を組んである」
「仮に俺に子供ができても継承しないようにしてある。まあ例はないがな」
「ああ、うん」
おい!
全員頷くな!!
「コホン、続けるぞ。そうすると結論は一つしかない」
全員が何かに気づいたように、思わず身震いする。
「理由も原理も分からんが、あの時零れた『想いの欠片』は、いくつか世界を超えたらしい」
「そして茜に取り付き、――転生してきた」
茜は驚きで固まってしまう。
アルテミリスが駆け寄りそっと茜を抱きしめた。
「エリス、権能だ。衰退を最大効果でこの一帯に発現させろ。ここを中心に200mだ」
「う、うん――分かった」
「アグ、エリスに力の権能を使いサポートしろ。2刻ほどの継続だ。エリスの権能の発動と同時に戻るぞ」
※※※※※
エリスラーナの権能が発動。
周囲の森や教会の建物――
一瞬でその色を無くし、崩壊が始まる。
俺たちは即座にギルガンギルの塔へ帰還した。
※※※※※
ギルガンギルの塔、会議室。
重苦しい空気に支配されていた。
ショックを受けた茜だが、今は回復しているようで。
俺は内心安どのため息を吐いていた。
※※※※※
「解っている事を共有しよう。ああ茜、気にするなよ。むしろ誇れ。お前のおかげで滅びを止める手段が浮かんだんだからな」
香る芳醇な紅茶。
それを飲み、俺は大きく息をついた。
「やっぱり俺の想いの欠片は大層性悪のようだ。最初は圧倒的な物理、そして次は精神干渉――忙しくなるな。主におまえたちが」
俺の言葉に神々は嫌な顔をする。
まあ今まで取り敢えず平和だったんだ。
しかも対応できていた。
だが。
今回は、神々ではほとんど感知できない。
「…俺の魔力の一部が吸収され、茜の魔力が最初弾かれ、2回目が吸収された理由だが」
皆がごくりとつばを飲み込む。
茜が目を見開きこちらを見つめてきた。
そうだろうな。
今回のキーマンだ。
そして…
「俺の想いの欠片、以前説明したときに『殆ど変わらない』そう言ったな。そう厳密に言うと『違う』んだ。含有量が違う。――そう、悪意の含有量だ」
不味いな――勝ち筋が消えていく。
――相当な被害…想定できてしまう。
「俺の魔力の一部が吸収されたのは、吸い出されたときに足されて混ざったからだ。そして茜の魔力は“混じる前”の濃度の濃い――純粋なものだからだ」
俺はため息をついて椅子の背もたれに体を預ける。
そして改めて紅茶を口に含み、のどを潤して。
続けて決意を込めた眼差しを向けた。
「皆に聞いておきたいことがある」
「俺のことを愛してくれるか?心から」
全員が驚愕の瞳で俺を見つめた。
(もう――このままでは対応できない…覚悟の時、だな)
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