第47話 転生者茜の大冒険with魔王さま2
【ファルスーノルン過去:新星歴4817年4月19日】
――ギルガンギルの塔――
「アルテ、お前が想定している場所と、俺が想定している場所をすり合わせたい。ああ、皆とも共有しよう」
全員に念話を送る。
数分後――
俺たちは会議室に集合した。
※※※※※
「みんな、俺はこれから茜としばらく世界を見て回ろうと思う。それで気になる箇所に封印を施すつもりだ」
俺は皆を見渡す。
「なので今から言う場所以外に、気になるところがあれば教えてくれ。共有したい」
俺の言葉に、皆から魔力が沸き上がる。
がたっと音を立てて、ダラスリニアが立ち上がる。
「…私も……行く」
ほぼ同時にエリスラーナも声をあげる。
「いく。連れていかないは不敬」
そしてアグアニードやモンスレアナもその魔力を揺蕩らせた。
――想定の範囲だ。
アースノートは自分が離れられないことを承知しているせいか「ぐぬう…」
とか言ってるし。
だんだんヒートアップしてきたところで、俺は皆に話しかけた。
「茜にこの星の『暮らしている人々の様』を見せてあげたいんだ。いうなればお忍びだな。…お前たち神が同行したら住民がひっくり返るぞ?基本待機で頼みたい」
「でしたらノアーナ様だと心臓が止まってしまいませんか?」
やや不満げに、モンスレアナが俺に視線を投げた。
「いくら存在値を落とされたとはいえ…わたくしたちよりはまだまだお強いのですから」
「心配ありません。ノアーナ様に虚実を施します」
アルテミリスが感情の籠らない声で言う。
俺は改めて大きく息を吐き、皆に視線を向けた。
「俺には権能を調整できる能力があるから問題はないんだ。それに封印を行う時は応援を頼むからそれで我慢してくれ。第一お前らに頼んでいる仕事もあるだろうに」
昂っていた皆の魔力が霧散、はあーとため息が聞こえる。
――何とか納得してもらえたようだ。
いつの間にか退屈していた茜がもぐもぐチョコレートケーキを2つ食べ終わっているけど。
相変わらずのマイペース娘め!
※※※※※
「話を進めるぞ。まずは『大いなる深淵の泉』アルカーハインだな。そしてアナデゴーラ大陸東部の古代エルフの森『エンチャート大森林』」
俺は紅茶を口に含み、ほっと小さく息を吐く。
「極東の島国の3つ首岬の祠群の一番奥の祠、ノッド大陸ノズドワール地方の『キャルルートルンの正教会』」
皆もそれぞれ紅茶やお菓子を口にしながら、頷く。
「ああ、近場を忘れていたな『超古代迷宮ラーナルナ』の管理人控室。と、これで俺が気になっている5か所だ。ほかにあったら頼む」
ざっと上げた地点は、一番怪しいところ。
一度は皆が探索に行っている所ばかりだ。
反応はなかったが…
今回は安全のために封印するつもりだ。
「いえ、私の想定と同じです。さすがですね。安心しました」
アルテミリスが無表情に答えてくれた。
良かった。
俺も安心した。
「んー。あとひとつ、気になるかなー。場所じゃなくて移動してるけどねー」
アグアニードが腕を組みながら、思い出すように話始めた。
「この前―、うちのイアードが灰色の石持ってて暴れだしたんだよねー。反応はゼロだったけどー」
…石?
「んで、どこで手に入れたかって聞いたら『移動する猫族旅団イミト』で買ったらしいんだよねー。最初黒かったらしいしー?」
「本人はー『最後の一個』を売りつけられたらしいから、いいとは思うけどー」
「あっ、もちろんシバいといたから心配ないよー」
移動する猫族旅団イミトはアルカーハイン大陸に出没するキャラバン隊。
珍しいものを求めて集団で常に移動している、商売人の集合体だ。
「わかった。心にとめておこう。――ほかは良いか?」
頷く皆。
徐々に重苦しい空気が霧散していく。
「…良さそうだな。準備出来次第出発する。後は頼むぞ」
※※※※※
――今日からしばらくの間。
わたしは光喜お兄ちゃんとお出かけ、じゃなかった、冒険の旅に出ることになった。
うん。
とっても楽しみ。
「茜、最初はアナデゴーラ大陸東部の古代エルフの森『エンチャート大森林』に向かうぞ。せっかくだから近くの町に寄ってから行こうか」
そういうと光喜お兄ちゃんは私の手を取り転移する。
周りは深い森におおわれており、獣道のような細い道がずっと続いていた。
「よし、それじゃ今から俺は『ノル』だ。そして茜は『モミジ』。…俺たちは隣のミユルの町から来た幼馴染でパーティーを組んでいる銅級の冒険者だ。いいな?」
光喜お兄ちゃんは【虚実】の権能で今は15歳くらいの茶色い髪の男の子に偽装している。
二人とも皮の胸当てにマント、ブーツをはいた格好をしているんだ。
わたしはアーチャー?えっと弓を使う人で。
こう、じゃないや『ノル』はロングソードとバックラーを装備している、だね。
うん大丈夫。
さあ、いっぱい頑張ろう!
そして――
私も…皆の役に立つんだ。




