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第119話 グースワースの増強大作戦

【ファルスーノルン過去:新星歴4818年1月4日】



正月にすべての運を使い果たしたのではないか、と心配になったが。

数日間にわたり、たっぷり心の栄養を補充できた俺はネルとともにグースワースに転移した。


ネルには


『もう、しょうがないですね。……皆とても奇麗でしたし』


とか拗ねられたりもしたが。


俺が執務室に飛ぶと、大切な部下たちがそろっており、(ひざまず)き一斉に頭を下げる。


「心優しき慈悲深き我が主ノアーナ様。我々部下一同、本年も力の限りお仕えさせていただく事、どうぞお許しいただきたく」


代表しムクが口を開く。


丁寧な口上に、俺は思わず戸惑ってしまう。

だが伝わる想い、俺は大きく頷いた。


「ああ、こちらこそ頼む。皆、席に座ってくれ。少し話をしよう。せっかくだ。俺がうまい紅茶を御馳走しよう」


俺は数度手を振るしぐさをする。

美しい色の紅茶が上品な香りとともに湯気を揺蕩(たゆた)らす。


ナハムザートとムク、そしてダールにルナの四人。

俺とネルがテーブルに座り、ちょっとした焼き菓子とともに紅茶を楽しんだ。


今からいくつか伝えることがある。

まずは肩の力を抜いてもらおう。


「っ!?……おいしいです」

「…はあ。ここは凄いですね。こんなに美味しい紅茶、初めてです」


そういえば俺がこの二人に紅茶をご馳走したのは初めてだ。


(…嬉しいものだな。他人が喜ぶ姿というのは――さて)


俺は紅茶に感動しているダールとルナを眺め、静かに頷いていたんだ。



※※※※※



数分後。

皆が落ち着いたタイミングで俺はルナに視線を向けた。


「ルナ、体の方は問題ないか?……まだ数日だが。…ずいぶん絞れたな。よく頑張った」


ルナは今、家事手伝いのほかにネル特製の地獄の体型改造キャンプをこなしていた。


明らかに絞れた身体。

そして表情は以前とは比較にならないほど充実していた。


――勿論真核に悪意の気配はない。


「はい。ありがとうございます。………もっと頑張ります」


目に涙を浮かべにっこりと心からの笑顔を俺に向けるルナ。


神々や茜、ネルに比べれば特別ではない。

だが努力する姿はとても美しいものだ。


「ああ、お前はきっと美しくなる。楽しみにしているぞ」


感極まり手で顔を隠し泣く姿に、俺は胸が熱くなるのを感じた。


何故かネルは俺を睨み付けているが……


解せぬ。


「コホン。…ダール、どうだ。少しは落ち着いたか?大分ナハムザートに扱かれているようだが」


ルナに優しい眼差しを向けていたダール。

突然名を呼ばれ、ビクッとしながらも俺に視線を向けた。


ダールも真核には問題ないが…どうやら悩みがあるようだ。


まあ、心当たりはある。


(―-いつか何とかしてやるさ。…しばらくは頑張ってみろ)


「はい、ノアーナ様。ありがとうございます。まだ慣れませんが、ナハムザートさん、いやナハムザートには良くしてもらっています。感謝しかありません」


ダールの言葉に大きく頷くナハムザート。


「ノアー……へへっ、“大将”――ここいつは拾いもんですぜ。なかなかに筋がいい。うまくいけば戦力になれます。鍛えがいがあるってもんです」


楽しそうに話し、満足気な表情を浮かべた。

俺も思わずつられて笑顔になる。


「ナハムザート、今年も頼む。――期待している」

「はっ!」


(……大将呼び………なんかいいな)


満足した俺は。

改めて真っすぐにムクに視線を向けた。


「ムク。お前の命がけ忠心に俺は助けられた。ありがとう。これからも俺を助けてくれ。………だが、無理をして欲しくないのが俺の本音だ」


ムクは突然涙を流す。

奇麗な姿勢で立ち上がり、俺を真直ぐに見つめてきた。


「このムク。やはり何も間違っていなかった」


涙が滝のように流れ落ちる。


「こんなにも嬉しいことはございませぬ。さらなる力をお与えくださるばかりか、こんなにもお優しいお言葉を頂けるとは。わたしは幸せ者です」


そして見惚れるような美しいお辞儀をするのだった。


「これからもどうか我が忠心、お受け取りくださいませ」



「ああ、期待している」


俺の部下――いや、大切な仲間だ。

俺は心がジンワリと熱くなる感覚に酔いしれていたんだ。



※※※※※



楽しいお茶の時間を終え。

俺はこれからのグースワースについて話を始めた。


「皆も感じている通り、どうもドルグ帝国はきな臭い。まあダールもルナも被害者のようなものだ。思うところはあると思う」


思わず俯いてしまう二人。


「それで今までは神々とその眷属で世界を見張っていたが、彼らはやはり隔絶した存在だ。俺の悪意はどうやら相当にたちが悪い。もっと生活に密着した視点でないと対処が難しそうだ」


俺はネルに視線を向け彼女に瞳を見つめた。


「ネル、すまないがお前にはグースワースの責任者代理を頼みたい」

「はい、承知しました……ギルガンギルの塔へは……」


「ああ、極力ここを離れないでほしい。やはり人の身で神々といつもいるのは真核にダメージが溜まっていくんだ。今まで俺のわがままでネルには辛い思いをさせた。すまなかった」


ネルは人族の部類としては相当の強者だ。

だがどうしても神々といると真核が疲弊してしまう。


「わかりました。ノアーナ様……寂しい思いをさせないでくださいませ」

「ああ、なるべくここに帰ってくるよ。可愛い俺のネル」


抱き寄せて優しいキスをする。

ルナが真っ赤になっているが俺は気にしない。


「ムク、お前には執事長を任せたい」

「はっ」


「町へ出向き、情報を収集してくれ。ルナも同行させろ。――お前が守れ」

「かしこまりました」


「ルナ、お前の苦労した辛かった生活の経験を俺に貸してくれ」

「はいっ。一生懸命やります」


涙ぐみながらも真直ぐに見つめるルナに俺は頷いた。


「ナハムザート、お前はダールとともに騎士団を名乗れ。そして有望なものを勧誘してくれ。10名ほどだ」


「っ!?……お任せください。……かつての仲間に声をかけてもいいですかね?」

「ああ、もちろん面接はする。そして………」


俺は魔力を込め、ナハムザートを包み込む。

想いを乗せ能力を解放した。


――カチリ

何かがはまる音とともにナハムザートの真核から光があふれ出す。


「お、おおっ!?…こ、これは…」


心の底から湧き上がる全能感。

そして馴染んでいく新たな魔力。


ナハムザートに『魔王に近しもの』の称号が付与された。


「…これでお前も転移ができるはずだ。もちろんムクもな。ダールは魔法の素養が高いから努力しろ。しばらくはナハムザートと行動を共にしろ」


「はっ」

「っ!?ありがとうございやす」


「ネル、リナーリアを仲間に迎えたい。可能か?」


俺の腕の中にいるネルがビクッと体を震わせる。

そして何か拗ねたように俺を見つめてきた。


「……リア……ですか?……ふう」

「ん?何か問題があるか?……まあ、あの凄まじい回復術だ。どこかのお抱えなのだろう」


ネルは俺の腕から離れ、ため息をついて再度俺の目を見つめる。

気のせいか…うるんでいる?


「いえ、彼女はどこにも属していません。今はサルスノットの町で町長のエルスイナ様のところにいます」


「っ!?懐かしい名前だ…ハイエルフのラミンダか。……取り敢えずあいさつに行った方が良いな」


そしてなぜかジト目で俺を見るネル。

……うん?拗ねてる?


「心配です」

「んっ?」


そして抱き着く。

まるで俺を逃がさないかのように。


「リアは、リナーリアはちょっとおかしいけど――可愛いのです。…心配です」


そして強く体を押し付けてくる。

柔らかい感触に、思わず俺は顔に熱が集まった。


「一緒に行きます。でも……明日ではだめですか?……今は……二人でいたいのです」


俺は抱く腕に力を込めた。

ネルが甘い吐息を吐く。


「皆、悪いが今日はここまでだ。ムク、お前も念話ができるはずだ。カイトと打ち合わせをしておけ。明日朝また集合だ。それでは解散」


そう言って俺はネルを抱きしめたまま寝室、いや俺の部屋に転移した。



――悪いがもう。

我慢できない。



※※※※※



俺は焼きもちを焼いた可愛すぎるネル。

俺は夢中になった。


激しく想いを乗せ、大切なネルを絶対に守りたい俺の想いは。


出会った時に解放された『魔王の運命の人』の横に。

新たに『魔王に近しもの』の称号を付与していたんだ。



※※※※※



うっかり遮音の魔法をかけ忘れていた俺。


たまたま俺の部屋の前を通ったルナがなぜか真っ赤になったようだが。



すまんが。

俺は反省しないがな。


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