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盾1回復4の盾ですがなにか?  作者: なんちゃコフ
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52、You&Me

 それはどこから湧いてでてきたものであろうか。

 職業?

 約束?

 役割?

 義務感?

 どれも近いような気がしてそのどれもがしっくりとこない。

 ――そうか。

 溢れて来たんだ。

 そう、それは内側から、自身の内側から溢れて来たものだった。

 気持ち、思い、心。

 いつからか自身を動かさなくなっていたそれら。

 思考回路としての自分。

 何故だろう。

 ようやく、そう――。

 ようやく自分自身に対して素直になれた気がした。


「行こ?」


 アイギスは答える。

 こちらの思いに応えてくれる。


「あぁ」


 アイギスには感謝しなくてはならない。

 いや、日ごろからアイギスには感謝しっぱなしだ。

 ただ、これからはリンという一個人として、例え必要とされなくとも、人知れずとも。

 彼女らの幸せを願う者として、降りかかる火の粉を振り払おうではないか。


「リン」

「ん?」

「さみしくない?」

「あぁ、アイギスがいる」

「うん」


 アイギスは小さく頷く。

 それでいていつになく合わされる視線に少し照れ臭くも感じてしまう。


「いこうか」


 アイギスから目線を扉に移してはそう期待を込めて口にする。

 もう振り返らずとも迷いはしない。

 立ち止まらずとも進んで行ける。

 進むべき道は前にある。

 踏み出す――。


「ごはんー」

 

 そんな突拍子の無い言葉も二人の門出には相応しい。

 アイギスはその先へと思いを馳せる。

 そして自身もアイギスが思い描くこれからを楽しみしている。


 一度閉じられたはずの扉を前にして、最早躊躇うことはない。

 手を掛け、そして不意に重なるアイギスの手――。

 押し開ける。勢いそのままに、そうして二人は再びその世界へと飛び出した。






「アイギス」


 腕の中で今日何度目かという眠りについているお姫様へと起床するよう優しく声をかける。


「……?」


 ゆっくりとその瞼を上下させては眠気を誤魔化すように目元をこするお姫様。


「マリアは現れると思う?」


 馬車を降りてから記憶の内では三度目の森。

 入口から早々に道を外れては先回りする形での例の広場手前。

 自身の予想からすれば奥の巣窟しかり、広場での負傷者の件しかり。

 この場にマリアが現れるであろうことは十中八九時間の問題だ。

 その上でジーナとサラスの二人に対しても――やはりこの場所以上に危険な場所も知らないため――手助けが必要となるならばやはりここ以外にないだろう。


「……? うん」


 アイギスはそれが不思議なことであるように、まだ眠い目をパチパチとさせては至極当然のことであると主張する。


「そっか」


 それでどこまでも予想の域をでなかった可能性の問題に対して、理由を聞くまでもなくアイギスがそういうのであればと納得する。

 ただ――。


「待つの?」


 アイギスは控えめに、それでいて強制することなく問いかける。

 それは、疑問と言う形で投げかけられた一つの選択肢。

 いわば、何を、という部分に焦点を当てるならば、分かりやすくもアイギスはマリアがここへと来る前にその原因を解消してはどうかと言っているわけだ。

 ――考える。

 いや、その考えは既に終えたというべきか。

 結論は出ているために後はそれを言葉にするだけだ。


「無理、だと思う」

「……?」


 アイギスはそこに至るまでの過程に興味があるのか、首をかしげては頭上に疑問符を浮かべる。


「色々考えたけど、殺しはすべきじゃないと思う」

「うん」

「今の時点で約束を無いものとして扱うのは少しばかり抵抗がある」

「うん」

「約束を守った上で強行するとなると危険が生じる」

「うん」

「無理を通せばどこかでいずれ破綻を生む」

「うん」

「それがアイギスに及ばないとは限らない」

「リン」

「ん?」

「いいよ」

「……どれかな」


 どれであろうともよくはないのだが、思い当る節が多すぎるというのも考え物だ。


「わたしも、殺しも、約束も。ぜんぶ」

「……それは、えっと……」


 アイギスの言っていることは分かるのだが、……これは自分自身の問題だ。

 アイギスがそれを背負うことも背負わせることもアイギスに限らず誰に対しても許すわけにはいかない。


「リンはわたし。わたしはリン」

「難しい事を言うね……」

「ううん。リンは?」

「……同じようなものだけど、それは――」

「問題ないよ?」

「約束は?」

「してないよ?」

「効力は?」

「してないよ?」

「根拠は?」

「だってしてないもんっ」


 アイギスは言いながら自らの頬を(ふく)らませる。

 初めて見たその表情に一瞬ドギマギしてしまうもすぐに冷静さを取り戻す。


「でも――」

「してない!」


 珍しく、いや、初めてアイギスが声を張り上げたような気がする。

 それはきっと気のせいではないだろう。


「アイギス……」

「リン」

「アイギス……」

「リン」

「アイギス」

「リン」


 どこまで行っても平行線。

 お互いに譲る気はない模様。


「分かった。それじゃあこうしよう。マリアに直接聞いてみる」

「リン」

「本人に確かめていいと言えばそこまでだと思う」

「リン」

「それに――」

「リン」


 どうやら今回のアイギスは本気らしい。



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