35話
「ねえ、保養所の中を探索しようよ!」
あたしは保養所内がどうなっているのか気になり、比那田さんに迫った。
あたしの上目遣いの笑顔が眩しいのか、比那田さんは手で遮るようにして、頬を赤くしている。
「わ、わかりましたわ。では、みんなで館内を散策しましょうか」
陶原さんはにこやかな笑顔で見守っている。そして、恵野さんはと言うと、無表情で無反応。いいの? 悪いの?
恵野さんの反応があたしにはわからないまま、みんなでぞろぞろと部屋を出る。他の二人は恵野さんとの付き合いが長そうだし、わかっているのか?
いつか、あたしにも恵野さんの心の内が分かる日が来るのであろうか……?
館内を歩き回ると、落ち着いた感じの談話室がある。あたしは偉い人になった気分で、ソファーにどっかりと座る。
(ふぅ~)
保養所と言う所に来たことがないので、なんとなく楽しい。
しばらく談話室でだらりとした後、他の所も見て回った。
するとこじんまりとした体育館を発見!
ドアを開けて中に入ると、比那田さんが説明をしてくれた。
「体育館では、卓球とバドミントンができますわ。道具は受付カウンターで借りれます」
「へぇ~、じゃあ、やろうよ!」
あたしはテンション爆上がりである。
旅行というと、大抵は家族旅行。だが、今日は友達……と言えるのは謎だが、とりあえずクラスメイトと一緒の旅行というのが新鮮である。
「ちょっと借りてくるね」
そう言うと、陶原さんと恵野さんが道具を取りに行った。
恵野さんは陶原さんに懐いているのか?
まあ、謎であるが、二人が道具を借りて来てくれた。ご丁寧に、バドミントンと卓球の両方の道具を。
「雉子島さん! 私とバドミントンをやりましょう!」
そう希望してきたのは比那田さん。今度は比那田さんが目を輝かせていて眩しい。じゃれてくる子犬が尻尾を振るように、比那田さんの尻尾も見えるのではないかと、思わず比那田さんの背後を見てしまう。
「どうかしました?」
「いえ、別に」
きょとんとした比那田さんの言葉をはぐらかし、早速、道具を手に取りバドミントンを始める。
比那田さんがサーブを打ち、あたしが華麗に打ち返す。
そして、また打ち返されてラリーが続くかと思いきや……。
ぽとり。
シャトルは比那田さんのラケットを避けるかのように、地面に落ちた。いや、正確に言うと、比那田さんのラケットの方が避けたんだけど……見事な空振りでした。
(あ~、比那田さん。運動苦手そうだしな。まあ、姫輝もそうみたいだけど)
あたしは比那田さんに近づき、ちょっとコツを伝授してみる。
そして、プレー再開。
今度はそこそこラリーが続いた。
しばらくバドミントンで遊ぶと、他の二人から交代要請が出た。
あたしもそろそろ卓球の方をやりたかったので、丁度いい。
比那田さんは、それなりに打ち返せるようになったので、名残惜しそうであるが、素直に交代をした。
「雉子島さん! 今度は卓球で勝負ですわ!」
いや……今度は卓球も何も、バドミントンは少なくともあたしの一方的な勝ちで、勝負にすらなっていなかったんだけど……。
野暮なことは口にせず、あたしも素直に従う。
せっかくのクラスメイトとの交流なのだ。ぼっちと思える姫輝に友達を作っておいてあげようではないか。
まあ、余計なお世話と言われそうだが。
比那田さんが再びサーブを始める……も空ぶった。
「ちょっ! 今のは無しです!」
気を取り直して、比那田さんはサーブを打つ。まただめだったらどうしようかとハラハラしつつ身構えていると、今度は飛んできた。へろへろしているけど。
あたしはそれを打ち返す。
「や~!」
比那田さんは気合と共に、ボールを打ち返……せなかった。盛大に空振りである。
「……ちょっとタイム……」
そして、あたしはまたコツを教える。
再び、プレー再開。
スポーツ卓球ではないが、温泉卓球程度にそこそこラリーが続くようになった。
(……姫輝にも卓球とバドミントンを仕込んでおかないとな……)
姫輝の課題が増えた。
いつも読んで頂きありがとうございます。
今回の比那田さん。
まんま作者です!
作者も保養所に行き、バドミントンと卓球で、空振りやホームランを打ったりとしていました(汗)。
時間稼ぎに小出しにしていて申し訳ありません(汗)。
ただいま、ドライアイに対する闘病?を試みております。
ドライアイの無い以前は、作者は視力も良い方なので、困ることはありませんでした。
目の健康のありがたさを気づかされました。
そんな作者ではありますが、応援して頂けると嬉しいです。




