↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻影と白幻を抱いた神々の英雄譚 —Saga "Vairo" et "Edius"—  作者: 狼駄
第7章 闇を背負いし覚悟 ーᚱᛖᛉᛟᛚᚠ ᛁᚾ ᛞᚨᚱᚲᚾᛖᛊー
88/88

第80話 無謀な野性 ≠ ᚹᛁᛚᛞᚾᛖᛊᛊ ≠

 レアット・アルベェラータを救出するべく弟子達に一言さえ告げずに戦之女神(エディウス神)の聖地、アディスティラに向かった暗黒神ヴァイロ・カノン・アルベェリアを待ち受けていた()()


 それは白銀の女神(エディウス)錬成(れんせい)した白い竜シグノに姿を寄せた、竜と人を混ぜた人ならざる白竜兵であった。


 人の殺気を獲らえて斬る愛刀『紅色の蜃気楼(レッド・ミラージュ)』を振るうヴァイロであったが人類種でなかった彼等には全く通じなかった。


 剣が使えずただの魔導士に堕ちたヴァイロの代わりに、剣と矢を以て敵兵達と交えたのは戦の天秤(てんびん)シアン・ノイン・ロッソの懐刀(二刀)

 ハイエルフの少年、レイチのナイフによる二刀流と、敵を牽制(けんせい)する役目を買って出たニイナ。


 そのニイナが敵に感じた不審(ふしん)可憐(かれん)な者だけを使役する戦之女神(エディウス神)が扱うには余りにも醜い白竜兵の存在意義。何より暗黒の神(ヴァイロ)を迎え撃つには敵が惰弱(だじゃく)過ぎた。


「コン・ゲラレイド・イズマ……北欧の誇り高き霜の狼達に告ぐ! 暗黒神ヴァイロの名の元に、かの者達へ氷の刃を降らせよ──『氷血の牙(ヴァン・ブラング)』!」


 紅色の蜃気楼(レッド・ミラージュ)の力で赤い霧に化け、身を(ひそ)めていたヴァイロが実体化。レイチとニイナに(かせ)いで貰った時間を使い成した詠唱術。


 篠突(しのつ)く雨を氷の刃と化し、自分達を囲う白竜(シグノ)の兵達に降り注ぐ。重力に吊られる豪雨が神に逆らう不届きな(やから)に牙を()いた。


「グギャッ!? アギャァッ!」


 無数に降る氷にその身を次々と刺され白の都と自分達を包む()を赤一色に塗り(つぶ)し倒れてゆく白竜(シグノ)兵達。人ならざる絶叫を上げた。


「何だ? もう終わりか、あっけなさ過ぎ……!?」


 黒のテンガロンハットを揺らして白竜兵の弱さへ嘲笑(ちょうしょう)を向けようとしたヴァイロの赤い瞳が見開かれる。

 散ったかに思えた敵兵達がその身を震わせながら再び立ち上がり始めたのだ。その足掻(あが)き、不死の亡者(アンデッド)を思わせた。


 グシャッ!

 醜さを極めた化物を亡骸(なきがら)に戻す。踏み潰した白き鎧。白の長髪、()()の象徴。この者、やがて圧倒的な()に沈む。今は進化の過程、現状は彼女に取っての()()()


「フフッ……雨の中、暗黒神(ヴァイロ)御自(おんみずか)ら出陣とは、これは痛み入る」


 豪雨が街の石畳を打ち鳴らす最中でも、()み渡る白に総てを帰す女性の声。ヴァイロから(うば)い取った嘲笑(ちょうしょう)を混じらせた。


「「……!」」

戦之女神(エディウス神)ゥッ!」


 雑兵(ぞうひょう)に等しき白竜(シグノ)兵を相手にしていたレイチとニイナの背中に走る戦慄(せんりつ)(まが)う事なき敵の女神。

 ヴァイロが絶叫、隠密行動を完全に放棄(ほうき)し、()の名を声で叩いた。


「此奴等は一体なんだッ!」


「下らん事を聞く……。我が白き竜シグノの錬成から生じた云わば()。散った羽根が勝手に歩き出しただけの事。宇宙の小惑星が地上に降れば凶器に転ずるのと同じ、取るに足らん連中だ」


 戦之女神(エディウス神)を呼ぶ声全てに(トゲ)があるヴァイロの怒号。 

 白銀の女神(エディウス)、シグノを彷彿(ほうふつ)させる自らの兵を()と一笑に()した。


「ご、(ゴミ)だと!? そ、それよりレアットを返して貰うぞぉッ!」


「返すぅ? これはまた異な事を。奪ったつもりはない。(むし)ろ拾ってやったのだ。あのラファン山中での騒乱(そうらん)から我らが(すく)い上げた」


 180cm近い身長と年齢20代後半のヴァイロが告げる台詞が全部狼狽(うろた)えから生じる罵声(ばせい)に聞こえる。

 相対する戦之女神(エディウス神)──少女の様な出で立ちで在りながら、神格の強さがヴァイロよりも上であるのを示す余力(よりょく)に満ち(あふ)れていた。


()()()()()()()()()。戦争で仲間達に傷が付くのが我慢(がまん)ならずに我を独りで殺しに来た……違うか?」


 暗黒神を名乗るヴァイロを指し『人間』と揶揄(やゆ)する戦之女神(エディウス神)。されども戦之女神(エディウス神)、男の神の器を欲している者。煽動(せんどう)を以て本音を霧に包む。


「だったら何だぁッ! ──『紅色の蜃気楼(レッド・ミラージュ)』!」


 浅はかな図星(ずぼし)を打ち抜かれたヴァイロが左手を雨中に(かざ)し愛刀の名を叫ぶ召喚。言葉の端々(はしばし)(のぞ)かす(あせ)り。左手に集まる赤霧が左右(いびつ)な赤の大剣を具現化させた。


 キャシャァァンッ!

 剣と剣、黒と白が交わる音が神の都に(とどろ)く。


「そうだ戦之女神(エディウス神)! 俺は本気だッ! 今こそ此処で貴様を討つッ! 例え刺し違えてでも!」


 紅色の蜃気楼(レッド・ミラージュ)を上から戦之女神(エディウス神)めがけ叩きつけたヴァイロの拙い(つたない)剣術。 


「ククッ! 剣が鳴いているぞ。まるで(おび)えた子供の様、素人の剣だ」


 下方より愛刀『竜之牙(ザナデルドラ)』で受けて立つ戦之女神(エディウス神)。下に居ながら着実なる強者の証を(わら)いで伝えた。


「……!」

「──ッ!」


 レイチとニイナ──。

 人類種を超えたハイエルフの二人が二柱の争いに割って入るヴァイロへの救援の時合(タイミング)を失う舌打ち。


()()()()ヴァイロよ、良き事を教えてやろうぞ。我は貴様の()を欲している。我に差し出すのであれば貴様の可愛い子供達の命は()らぬ。安堵(あんど)(さず)けてやろうぞ」


 やはり神の座を否定した上で神格の差をヴァイロに見せつける白銀の少女(エディウス)の白い歯。

 これは彼女の真実、敢えて(さら)した本音を(あお)りに変えた(たく)みな語り。


「ば、馬鹿にしやがってぇッ!! 誰がお前の言う事など信じるものかァッ!」

 ──クソッ! 何故だッ! 何故動かんッ(斬れない)


 交えた紅色の蜃気楼(レッド・ミラージュ)の圧と殺気を強めるヴァイロの刃が石像の(ごと)く固まった。例え敵の(からだ)に刃が直に触れずとも、殺気の強さで斬れる剣が通じない。


 戦之女神(エディウス神)がヴァイロの地元カノンへ攻め入った(おり)戦之女神(エディウス神)が振り下ろした剣を受け留めただけにも関わらず『俺の殺気勝ちだ』だと斬り払えたのだ。


「フフッ……迷いがある剣だ。我の中に眠る護りの女神(ファウナ神)はやはり斬れぬか。所詮(しょせん)貴様はファウナの従属(隷属)に過ぎん!」


 戦之女神(エディウス神)は、暗黒神ヴァイロの呪文と同じ『爆炎(フィアンマ)』等を無詠唱で扱った。

 然もヴァイロの弟子達の中で最も爆炎系に優れたアズールをして『俺の爆炎より優れていた』と舌打ちをさせた。

 戦之女神(エディウス神)の中には、ヴァイロが神の契りを結んだ護りの女神(ファウナ神)が潜んでいるのは確定事項。契約毎、斬り裂かねばならぬのだ。


「ば、馬鹿なッ! 俺は例え師ファウナに逆らってでも弟子達を必ず救うと誓ったッ!」


 ヴァイロの魂に次々と浮かぶ顔──。

 冷静さと少年の(もろ)さを(あわ)せ持つ一番弟子のアギド。

 守り()けながらも恋に揺るんだ美少女ミリア。

 真っ直ぐな爆炎を放つ赤の体現者アズール。


 そして──ヴァイロが同棲の愛を燃やす()()()()──()()()


 支え、支えられた弟子(子供)達の命を必ず護り抜く。例え()に沈んでも。ヴァイロの信念、他人に折られても、()()()()()道理がない。


「ウラァァッ!」


 ガツンッ!

 紅色の蜃気楼(レッド・ミラージュ)竜之剣(ザナデルドラ)

 交差する意志を同刻に叩いて弾いた()()()()を一切帯びていない純粋な打撃。白と黒、両方の神をも吹き飛ばす(ことわり)を超えた圧倒する野心。


「アアッ!? 何ちんたらやってやがんだ()()()()()ァッ! 餓鬼(ガキ)()()にもなってねぇぞッ!」


 暗黒神ヴァイロと戦之女神(エディウス神)の両者を叩いて離した()。曲がらぬ剛勇(ごうゆう)を以て、揺れるヴァイロに()えた。


「レアット!? お前!」


 赤い瞳を開いたヴァイロの瞠目(どうもく)。『生きていたのか!?』救出に来た相手へ愚か(馬鹿)を吐きそうになった。


「アアッ!? 勝手に()()()ァッ!」


 愚直(ぐちょく)を信条とする漢、レアット・アルベェラータ(ウィニゲスタ)が闇落ちし掛けたヴァイロの心を見透かす勝手に継いだ台詞。


「ククッ……来たか大気の男、レアット・()()()()()()


 此方も自身の()()()()()に揺れるエディウス。過去の記憶──友人の異能者の名(ウィニゲスタ)()()


「へッ! こんな楽しい()()を黙って見過ごせるかってんだァッ!」


 神格、正義、悪、主義、理由──。総て吐き捨てた蛮勇(ばんゆう)レアット。白黒(敵味方)()()()のど真ん中を叩き割る快男児(アウトロー)、見参!

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。