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神竜戦争 儚き愛の狭間に…心優しき暗黒神の青年と愛する少女達の物語  作者: 狼駄
第8章 最終決戦その4 白と黒の決着の果てにあるもの
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最終話 150年後に至るまでの道程

 此処はフォルデノ王国の騎士団が互いを高め合う訓練場だ。そこに『ファグナレン』と名乗る一見20代中盤位に見える身長175cm程はありそうなナイフ使いがいた。

 銀髪ショート、細く如何にもキレ者といったその顔つき。ただ耳がやたらととがっている。

 そう……彼はエルフ族、それも最高位のハイエルフ。つい1年前のとある戦争時には『レイチ』と名乗っていたのだ。


 これがシアンの言っていた本来の彼の姿と名前という訳だ。フォルデノ王国は以後騎士団を強固にするために、強き者であれば武器は制限しない。むしろ次々に取り入れたいという意向を示す。

 それを知ったファグナレンは入隊を希望。あっという間に頭角とうかくを現し、ナイフやダガーといった短剣を扱うことを希望する連中の模範もはんとなった。

 それどころかファグナレンという名前が勝手に一人歩きし、短剣の剣術を極めた者は同じ名前を名乗る可笑しな伝統が生まれる。

 ハイエルフのファグナレンは、やがてフォルデノ王国を去って以後、行方が知れない。

 約150年後、しくもレイチが死闘を繰り広げたあの断崖絶壁だんがいぜっぺき。同じものを背にした砦における戦闘にて、黒髪で赤い目の男がファグナレンを名乗り『ベランドナ』というハイエルフの女性とコンビを組んで、美しく踊るようなダガーさばきを披露ひろうする。


 その際ベランドナの方は、何だかとても()()()()と思ったらしい。

 このベランドナ、森の女神(ファウナ)の術である『雷神カドル』や、勇気の精霊である戦乙女ヴァルキリーを自在に扱えた。

 あの少女のようなハイエルフと同じ事、いやそれ以上の身体(さば)きで、ファグナレンの後陣こうじんはいすことはなかったという。


 またこの戦いにおいて『ビアット』という少年が、その断崖絶壁を馬で一緒に降りる先導せんどうをする。

 その際にカノンに所在するとある鉱山の採掘権を自分に寄越よこせと主張したという。

 この少年、あの巨大剣二刀流の大男と名前の響きが似ているが、血の繋がりまであるかはさだかではない。


 さらにこの戦闘には、柄の長い戦斧(バトルアックス)を軽々と振り、総指揮をした騎士がいる。名を『ジェリド・アルベェラータ』と言った。


 ◇


 ラオ自治区は元々(りょう)もりもちいる文化があった。そこへフォルデノ王国のすみで喫茶店をいとなんでいた女店主が「フォルデノが物騒ぶっそうになった」とボヤき、ラオに移り住む。

 この女、槍の名手ということで、結局珈琲(コーヒー)よりもその手腕しゅわんに目を付けられ、槍の扱いを指導する立場になってしまう。

 彼女はあくまでも「ラオの騎士は此処を守るために戦うべし」と言い切って()()()と呼称させる。

 ジャベリンやランス、ハルバードといった槍ばかりを扱う何ともかたよった戦力が整ってゆく。

 晩年ばんねんこの女は『エトラ・ノイン・ロッソ』と名を改め、一線を退しりぞくと「吟遊詩人ぎんゆうしじんの真似事ですよ」と言いながら、神竜戦争という話の語り部(かたりべ)生計せいけいを立ててゆく。

 彼女の語りは実に好評をはくす。何しろ一人で『レイチ』『ニイナ』『ライラ』……そして『シアン』という登場人物の声を使い分けるのだから、ウケない訳がなかった。


 そして150年後、ロッソの姓を受け継ぐ赤い髪の勇猛ゆうもうなるランス使いが現れる。海の中で最も獰猛どうもうと言われるシャチにちなんで『赤いしゃち』と呼ばれるようになってゆく。


 ◇


 フィスチノという女の姿をした化物に蹂躙じゅうりんされたロッギオネ神殿のある聖都せいとアディスタラ。

 その奪還だっかんに活躍した僧兵とその母である戦の女神(エディウス)の司祭が、あの最高司祭と同じ『ガエリオ』姓を名乗っていた。

 また突然「賢士けんしルオラ様のお導きだ」と騒ぎ立てながら戦った修道兵副長の名が『ルッソ・グエディエル』であったという。

 この男、少し頭が弱く猪突猛進ちょとつもうしんなところは、あの黒い二刀の修道騎士に似ていたが、その導きとやらの後は、()()と呼んでも良い働きをした。

 弱体化こそしていたものの、ロッギオネにおける賢士、修道騎士、司祭、僧兵達は未だ健在であったという訳だ。


 ◇


 そしてマーダが語った150年後に出現するという、全ての人間達との意識を共有し、如何いかなる能力も当人の思うがままに使えるという真の扉の力を扱える()()()が本当にアドレス島へ現れた。

 ただしこれには10人の他人と判り合わねばならないという試練を達成せねばならない。

 この青年と初めて手合わせをしたマーダは、暗黒神を名乗り『真空の刃(アディシルド)』などを用い、相手を苦しめた。

 この際、何故か詠唱はしていたという。

 またマーダに従う女魔導士が『爆炎フィアンマ』などをとなえ、これも相手を苦境に立たすのだが、相手の青年が自分の意識を失った状態で、マーダすら知り得ない攻撃で辛くもこれを退けたという。


 ◇


 マーダを退けた候補者の青年は、8人の人間達と判り合うことに成功する。その中には実に3人もの敵が混ざっていたいう。

 加えて一人の女性と結ばれ子をさずかるという本来とは違った形で9割5分の達成率まで辿たどり着き、マーダとの最終決戦にいどむ。

 この際、この候補者が新月の守りを扱える少女、紅の爆炎使いの少年、先読みの少年、そして竜の娘の魂とすら会話を交わすことになるのだが、別の物語(ゆえ)に、これにて幕引まくひきとさせて頂こう。


 ― 神竜戦争 はかなき愛の狭間はざまに…心優しき暗黒神の青年と愛する少女達の物語 終演—

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