第二章 おかえりのある部屋 第三十五話 コンビニの灯り
# 第二章
## おかえりのある部屋
### 第三十五話 コンビニの灯り
コンビニの前には、いつもの白い灯りが落ちていた。
深夜前の静かな時間。
車の音だけが、遠くで流れている。
藤堂は制服姿のまま、コンビニの壁へ軽く寄りかかっていた。
玲司を見つけた瞬間、少しだけ目元が柔らかくなる。
その変化を、玲司はもう見逃さなかった。
「……こんばんは」
玲司が近づきながら言う。
藤堂は小さく笑った。
「こんばんは」
たったそれだけ。
でも。
声を聞いただけで、胸の奥が少し軽くなる。
玲司はコンビニ袋を軽く持ち上げる。
「飲み物買ってきた」
「ありがとうございます」
藤堂が受け取る。
指先が少し触れる。
もう慣れたはずなのに、まだ心臓はちゃんと跳ねる。
二人並んで、コンビニ横の小さなスペースへ座る。
夜風が少し涼しい。
藤堂が缶コーヒーを開けながら、小さく息を吐く。
「疲れました……」
玲司は少し笑う。
「顔に出てる」
「玲司さんもです」
そう言われて、玲司も小さく息を吐いた。
たしかに今日は疲れていた。
でも。
こうして会うだけで、少し楽になる。
不思議だった。
藤堂が隣でぽつりと言う。
「最近、“会える”のが普通になってきましたね」
玲司は夜空を見上げながら頷く。
「うん」
前は。
インターホンが鳴るだけで特別だった。
再配達の不在票一枚で、少し嬉しくなっていた。
それが今は。
“会いたいから会う”になっている。
その変化が、少し愛しかった。
藤堂が、そっと玲司の手へ触れる。
自然だった。
もう、確認はいらないみたいに。
玲司も、そのまま指を絡める。
静かな夜。
コンビニの明かり。
繋いだ手。
たったそれだけなのに。
どうしようもなく満たされる。
藤堂が、小さく笑う。
「やっぱ好きです」
玲司は吹き出した。
「急だなあ」
「今思ったので」
そういうところだ。
思ったことを、ちゃんと伝える。
だから。
玲司も少しずつ、素直になっていく。
玲司は繋いだ手を少し握り返す。
藤堂が驚いたみたいに玲司を見る。
玲司は少し照れながら笑った。
「……俺も好き」
その瞬間。
藤堂が、少しだけ息を止めた。
コンビニの灯りが、二人を静かに照らしている。
疲れていたはずなのに。
今はもう、帰る場所ができたみたいだった。




