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067 再会

「起きましたか」

「ここは……ユーリ様? ……はっ!す、すみません!突然のことに身動きすら取れず……」

「あれはしょうがないすよ。俺のミスでした」

「そんなことは……!」

「事実です。殺すのを躊躇し、味方を窮地に立たせる。初心者冒険者と同じミスですね……申し訳ない。ウィズィには昇給をお願いしておきます。覚えてたらね」


 俺の謝罪に、兵士はどんな顔をしたらいいか分からないようだ。

 変な空気になったので、話を変える。


「少し休んだら、すぐに行動を再開します。さっきの部屋でまだ眠ってる下位兵もそろそろ起きるだろうし」

「了解しました!」


 行動方針を共有するが、あまり急ぐ必要は無さそうだ。なにせ……


「いてっ」

「大丈夫です? そのへん戦いの跡で木片が危ないことになってるんで気をつけてください」

「忠告感謝します……」


 先に言えよ、という目で見られてしまった。すまん。

 ラノアは、エリクサーを飲ませた時に気を失ってから未だ眠ったままだ。体力もエリクサーの効果で回復してるはずだし、フローラさんの時は気絶なんてしなかったし……わからないなぁ。


 しばらく休むと魔力がある程度回復し、兵士達も顔色が良くなってきた。立ち上がって進む意思を伝える。


「できれば、この子を背負って連れて行ってもらえないすか?」

「しかし……敵、なのでは?」

「どうでしょう。襲ってきたのは間違いないし、スキルによる洗脳という訳でもなさそうでしたけど……」

「……俺が、背負います」

「あなたは……」


 立候補したのは、校門での最初の挨拶で、俺が本当にSランクなのか疑ってきた兵士だ。

 真剣な様子でこちらから目を離さない。割とイケメンだ。奥さんとかいそう。


「……やってくれるならなんでもいいです。任せました」

「分かりました」


 兵士達と話していて思ったが、ラノアが目覚めた時、襲ってくる可能性って割と高そうだよな。一応軽く縛っておこう。



 ༅



「良かったのですか? あんなにゆっくりと休んでしまって……逃げられてしまったのでは?」

「いや、問題ありません」

「……と言うと?」

「説明が難しいですね……行けば分かりますよ」


 そんなことを話しながら地下の道を歩く。抜け道にしてはだいぶしっかりした造りで、崩落の心配もなくなるくらい舗装されていた。2つほど分かれ道もあったが、気配の移動した道順をギリギリ覚えていたのですぐに目的の場所に着いた。


「お、やっと来たな」

「待たせたみたいで悪いな?」

「勝手に待ったのは私たち。悪いのは、シグ」

「待たされる私たちの身にもなって下さい。後で甘味を奢ってくださいね」

「えぇ!? そりゃないぜ、お前らも賛成したじゃねぇか!」

「発案者なのですから責任を取るのは当然では?」

「シグは言葉の重みを理解していない。憐れ」

「味方なんていなかった!」


 やかましく言い合う3人組の足元には、俺がラノアと戦う前に『気配感知』で追っていた、アジトの奥にいた2人の気配の持ち主が転がっていた。


「……ここはどういう場所なんだ?」

「え、俺が答えるの? ……はいはい、分かりましたって。あー、ここはだなぁ、確かスラム街がスラム街になる前、ある組織が実験場に使っていた地下空間……だったよな?」

「固有名詞が全て曖昧ですが……まあ間違ってはいませんね。その組織が転身したり、分裂したり合併したりを繰り返して黒豹になったようだ、というくらいは伝えておいた方がよいのでは?」

「あ、はい、ソウデスネ……」

「シグがそんな細かいこと覚えてるわけない……」

「リーダーなのですから、もう少し伝達には気を付けるべきだと思いますけどね」

「やめて! 2人して責めないでぇ!」


 質問を投げると、答えてはくれるがどんどん話がそれて最終的にコントに落ち着いた。


「シグ」という名前のその人物は、人の名前を覚えるのが苦手な俺でもしっかりと覚えていた。ギルドで戦った、“世界を救う”ことを目的にする冒険者パーティ。……直接戦闘したシグ以外の2人は名前覚えてない。会話の途中で出てくるのを待っておこう。


「とにかく! コイツらの処理をお前たちに任せたかったんだ!」

「シグ、この前別れ際に『今後会うこともないだろう』とか言ったから勢いで乗り切ろうとしてる」

「シグは自覚の無い馬鹿ですからね。“紫龍”すら出していないとはいえ互いに余裕を持ってそれなりにやり合えた強者なのです。再会する可能性は割と高い。当然です」

「よし、ユーリ!話を変えよう! このままはマズい!」

「巻き込まないでくれません?」

「急に敬語! 壁を作らないで!」


 こいつ、こんなにいじられキャラだったか……? 話を変えないと永遠にコントを見せられそうだ。

 ……だんだん、アゲハにいじられてる時の俺に見えてきたしな。うん、仕方ない。乗ってやろう。


「……んで。処理を俺たちに任せたいんだって?」

「そう! 公爵家のツテがあるあんたらに任せた方がいいだろう? 俺たちは俺たちの目的の為に手を出したが、()()()()までは興味が無い。それなら、欲しい奴に分け与えるのもやぶさかじゃない」

「どこでそれを……まあいい。助かるよ」

「単純な話。高ランク用の情報網は、私達も利用できる」

「ああ……なるほどね」


 ギルドで会った時、最初に声をかけてきた年下くらいの女性が答えを教えてくれる。聞けばなんでも答えてくれそうだったからな、あの情報顧問のかっこいい人。納得だ。


「あ、そういえば……そいつ、黒豹のボスなのか?」

「ええ、そうですよ。しかし、5人しかいない上位兵のうち2人を外で動かしている時に襲われるとは、この方も運がないですね」

「ボス自体は弱かった。上から目線で襲ってきた上位兵はそれなり。私達がわざわざ出張らなくても、1番強いのを倒した貴方が倒してたと思う」

「1番強い……? ラノアのことか」

「そう。私とシグは、その子と相性が悪すぎるから」

「アンティ? その情報は主観がすぎるのでは……?」

「いやいや、俺は銃以外を使えばそれなりにやれたって、マジで。ていうか暴論すぎだろ!」


 ああ、なるほど。自分が苦手だから、そいつが1番強い! ってことか。もう1人の女性がツッコミを入れる気持ちも分かる。

 そのやり取りを見ているシグは呆れた様子だが、混ざっては来なかった。いじられすぎて疲れたのかな?


「私たちが()()()()()のはボスだけですので、他の拠点や残党を潰すのはそちらにお任せします」

「分かった。もう行くのか?」

「ええ。目的は達せられました。いえ、欲していたものは無かったので、達せられませんでしたと言うべきでしょうか……?」

「そんなんどーでもいいでしょうが。じゃあな、えーと、ユーリ、だったか? ……また会うかもしれんが、その時はよろしく頼む」

「前回の失敗から学習したみたい。これはもう会わないフラグかもしれない……」

「アンティ、あまり揶揄(からか)うものではありませんよ。次に再開した時、『お、今度は外れなかったじゃーん』と畳み掛けるべきです」


 延々とコントを続けながら3人は奥へ歩いて行った。

 ……別れ際までペースを崩さなかったな。アイツらは。何をしてたんだか。結局、3人組の残り1人、刀を携えた女性は名前を思い出すことはできなかった。後でルチルかアゲハに聞いておこう。あと、「シグ」と「アンティ」の名前はできるだけ意識して覚えよう。



「…………あ。兵士さんたち。置いてけぼりにしてすみませんでした。転がってるのを回収してさっきのところに戻りましょう。いろいろ書類なんかを回収しないとですから」

という訳で。ゆっくり休憩できた理由は、シグ達の気配がボスの逃げる先にいる、とラノアと戦う前から分かっていたからでした。


全話のあとがきで書いたラノアを助けようとした理由の4分の1は、この事実による余裕があった、というものです。主人公にとっては割と大きい理由でした。



覚えてない人もいるかもなので、シグ達がどんな人だったか現時点での情報と開示できる情報を軽くまとめておきますね


シグ(本名未判明)……赤龍、青龍という二丁の銃を使う。非戦闘時は腰に差して持ち運ぶようだが、武器はどうやらシグの能力で生み出されたもののようだ。リーダーでありながらいじられキャラらしい。


アンティ(本名未判明)……素の力が強い。背が低め、赤縁のメガネに紅い瞳をしており、淡々とした口調が特徴的。ギルドの時は持っていなかったが、今回は身長より大きい杖を持っていた。


リコリス……刀を携えた女性。口調は丁寧、身長は165センチくらいありそう、貧乳。和服美女だった。


本編でまだ出ていない情報は、アンティの杖、リコリスの和服と貧乳、身長です。



ボスとの戦闘なくあっさり終わってしまいましたが、ここから数話空いてから戦闘描写が少し続きそうなので許して欲しいです。

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