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065 少年

 コンコン、と扉を叩く。先程まで中にあった気配は更に下へと移動していたが、中には入れ替わるように不審な魔力が残っている。罠か、上位兵と呼ばれる敵か。

 扉を開ける前に『気配感知』を使ってより正確に部屋の内部を調べようとした時、中から声をかけられた。


「入れ……」


 短く発せられたその声は、かすれていて性別すらまともに判別できなかった。

 結界で守りを固めつつドアを開ける。地下に降りてきた時のように先制攻撃はされなかった。


「……お前は……」

「俺は……黒豹……おレハ……」


 ボロボロの服に、静脈のどす黒い血のように赤い髪。黒く濁った瞳。年齢は……どう見ても10代前半。最初に「入れ」と言った時には感じられた感情のようなものは、どこにも見当たらない。

 ブツブツとつぶやく言葉が辛うじて耳に届く。こいつが……黒豹? ボスなのか? とてもそうは見えないが……


 目の前の少年は操られているのかと警戒して『気配感知』を使うが、うまく発動できない。いや、発動はできてるけど見えない……? 初めての現象だ、なんだこれ?


「おい、俺の言葉は聞こえているか?」

「……実験を始める。……新タな……終わりダ……メシを…………入れ。」

「ッ!?」


 少年が弾かれたように飛びかかってくる。さっきまでは体に隠されていて見えていなかったが、短刀を持っている。『気配感知』にはかからなかったから魔道具ではないはず。やはりうまく見えなかったが、そこは大丈夫なはずだ。

 魔道具でもないものに結界は破られないだろう……そんな、タカをくくった判断は過ちだったとすぐに思い知る。さっきレブラスに切り裂かれた結界は、今度はこの少年に突破されてしまった。


「『魔道』・【天道】ッ!!! あんたらはそのまま部屋の外で待機っ!!!」

「属性を……じかンだ……被検体23号……シッパイ……」


 咄嗟に『魔道』で素早さ重視の身体強化をし、ウィズィの兵士達に指示をしながら短刀の太刀筋をかわす。……動きは速いが、刃物の扱いは下手だな。適当に振ってるように見える。……余裕が少しあるな。『無属性魔法』の身体強化もかけるか? ……いや、あれは詠唱がいるし持続時間も長くない。やめておこう。

 少年の自我が残っているのか判断が難しいな。ブツブツと呟いている内容も気になる。どうするか。


「あ、そうか。『鑑定』」


 ステータスを『鑑定』すれば、状態異常の内容が見れたはず。操られていないにしろ、スキルを確認しておくのは悪くない。


 ────────────────────────

 〜ステータス〜


 名前:ラノア/被検体23号/23号

 性別:女

 年齢:13

 種族:ヒューマン

 職業:なし

 状態:魔力中毒、魔力欠乏、栄養失調、精神崩壊、魔力炉異常、魔力路肥大、魔力器官欠損

 レベル:3

 HP:7/24

 MP:-/-


 ・ベーススキル[P]

『魔素吸収(-)』

 ・ベーススキル[A]

『魔力吸収(-)』『身体強化(5)』

 ・ギフトスキル[P]

 無し

 ・ギフトスキル[A]

 無し

 ・オリジンスキル[P]

 無し

 ・オリジンスキル[A]

『落日』


 称号

「人体実験の被検体」「死神」────────────────────────


 ……胸糞悪い。人体実験の被検体をけしかけるなんて……いかにも性悪の悪党共が考えそうな手だ。

 魔力中毒と魔力欠乏の同時発症……ミーシャの時と同じだ。黒豹の狙いはこれか? いや、今は置いておこう。


『魔素吸収』に『魔力吸収』か。さっき結界を簡単に破られたのはこいつのせいっぽいな。結界みたいに、体外に魔力で作用するスキルは使わない方がいいか。『落日』ってスキルの効果も分からない。「死神」っていう称号は多分このスキルによるもののはず、警戒しないと。

 というか、魔力中毒状態で『魔力吸収』なんて使ったら体が持つはずがない。……いや、なんだこのMP表記は?


 ああクソ、訳がわからん! こっちの世界の知識はまだ浅いんだよ!



 ──ガシャァァン!


 突然、剣の束を地面に落としたような音が扉の外から聞こえてくる。

 扉の外には、待機を命じたウィズィの兵士がいたはず……


「おい! 大丈夫か!……っ、クソ!」


 外の心配をしている間にも、目の前の少年は素早い動きで襲いかかってくる。『魔道』で素早さを引き上げてる、レベルが200近くも離れてる俺に負けず……あれ?…………俺が遅くなってるのか?

下の☆を★にしてくれると嬉しい!

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