栗の花 その5
丁度例の企画が纏まり、そろそろ修善寺の『あおば』への出張というか旅行の日取りが出たのが今日だった。先方との交渉の結果、連休明けの平日なら一部屋用意が出来る、ということで来週の海の日の翌日から一泊で正式に日程が決まった。
山本くんの恨めしげな顔をスルーし、社長の羨ましげな顔に既読を付けず、前回以上の報告書を提出しますからと役員連中に大見得を切ってきた。
あとはクイーンにどう説明するかである。こないだの事もある。恐らく普通に誘っても高級旅館は二度とごめんだと断られる気がする。私には身分違いだとか言いそうだ。
と言うか、俺も二人で宿泊する勇気がない。彼女と日本を代表する程の旅館に二人きりで泊まるなぞ、色々な意味で困難である。
恐らく前回以上にクイーンは緊張し、自分を見失ってしまうであろう。露天風呂で気が緩み、歌うだけでなく泳いでしまうのでは? 豪勢な食事に緊張し酒ばかり飲み、そのうち酔っぱらって大暴れとか? 挙げ句の果てに『鳥の羽』関係者は出入り禁止……
前回の箱根よりもハードルは格段に上がっているこの状況をどう打開するか。すなわち、どうすればクイーンを連れて円満な業務を遂行できるであろうか。如何にすれば、クイーンは宿泊を楽しめ俺も満足な報告書を提出できるのであろうか?
そのヒントは前回娘の葵が示してくれいる。




