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没収されたものを買いなおす

 私の部屋は細長くて、床の上は、コルクボードのような厚さ五ミリほどの黒い正方形のシートで敷き詰めていた。そこへ監察官がやってきて、指紋発見器のようなランプを持って床の上を照らしていった。その薄赤い光が、部屋の突き当たりの暖炉の形をした収納の下部を照らし出し、そこだけシートが二重になっているのを明らかにした。

「ダメですよ」

 このシートは二重にして使用することを禁じられていた。監察官はさらに部屋中をチェックしていった。出入り口と直角の壁の前のところにもいくつか二重に敷いているところがあった。その上には、鍋や食器などを置いていた。

「食事スペース替わりだからいいでしょう」

 私はそう言って食い下がったけれど、許可されずすべて一重に敷いてそのうえのものは没収された。

 そのあとスーツを着て出かけることにしたけれど、やはりシャワーを浴びてからと思って一旦着たものをハンガに戻していると、長老がやってきて何やら猛烈に小言を言い始めた。私は聞き流していたけれど、そのうちこんなことを言いだした。

「今度一発殴るからな」

 私はカチンときた。

「なんなら今殴ったらどう? その代わりこっちも殴り返すけれどね」

 ボクシングのファイティングポーズを作ったら、長老が日焼けした筋肉質の腕でサイドから殴りかかってくるので、その体を抱え込んで投げ飛ばした。すると不自然な体勢のまま動かなくなったので、背骨でも折れて死んでしまったかと思った。

「おーい、誰か来てくれ」

 階段の下に叫ぶと、いとこがひとり上がってきた。私はいとこに手伝わせて、隣の和室に敷いた布団の上に、死んだ長老を横たわらせた。こころなしか死後硬直が始まっているようで、関節が動かしにくかった。その間中いとこはずっとぷりぷり怒っていた。そういえば、長老に随分なついているいとこだったなと思い出した。

 私が階段を下りていくと、いとこが突き落としそうな勢いでついてきたので、両手両足を使ってはしごを降りるように慌てて降りていった。階下の茶の間では、親戚たちがテレビを見ていた。それは見ようと思っていたドラマの総集編だったので、見落としたかなと思った。私は服を脱いでシャワーを浴びた。シャワーといっても、湯船の残り湯を組み上げる式の簡易なものなので、そんなに気持ちが良くはなかった。私が再び階段を上がっていくと、死んだはずの長老が和室から出てくるところとすれ違った。

 私は改めて外出の準備をした。スーツのポケットに小銭が入っていたので、一旦壁際のカゴの中に空けた。そこには鍵束や小銭がごちゃごちゃと混ざっていて、小銭だけでも相当ありそうだった。ふと見ると、その横に似たようなカゴがあり、そこにも鍵や小銭が上に載っていたが、私のものではなかった。私と似たような習慣のものがいるのだと思っていたら、そこに折りたたみ式の携帯電話も置いてあった。宴会のあと誰かが忘れていったのだろう。しかしあれは随分前のことだから、もう電源が切れているかもしれない。試しに両手を使って開いてみると、光ったのでだいじょうぶのようだった。充電器は見当たらない。誰かに電話をかけて、これが誰のものか聞こうとも思ったけれど、このタイプのものは使ったことがなかったので、気後れした。それでそのまま放置して、出かけることにした。

 柱のところに嵌め込んである十台ほどのモニターの内一つがついて、さっきの番組をやり始めた。最初に見たことのないつまり架空のアニメやドラマが流れその映像をバックに、漫才師役の役者たちが漫才をする演技をした。これがついたということはちゃんと予約録画ができていることだから、後で見ることができると思った。

 狭い路地を抜けていくと、ホテルのような建物のロビーが明るく迎えていた。私はスマートフォンの地図アプリでここが目当てのところだと確認した。ここで禁制のシートを売っているのだった。これがないと病気になってしまうので、どうしても買いたかった。

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