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調和の守護者 リリィ&コピ第五部  作者: マスター


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第162話 地下から来る水

第161話では、下畑の生き残り根が求めていた「土水槽」を調べました。


土水槽は、雨水をためるだけではなく、地下に水を残し、周囲の土へ湿りと冷えを渡す場所でした。


さらに、土水槽と下畑の生き残り根は、今も弱くつながっていることが分かります。


ところが最後に、雨が降っていないにもかかわらず、土水槽の水位が上がり始めました。


台帳には、


水が増えるなら、地下から来る。


とあります。


第162話では、土水槽の底口と、地下から来る水の正体を追います。

土水槽の上には、何もない。


乾いた土。


枯れ草。


古い石列。


それなのに、地下の水は増えていた。


コピが測定値を確認する。


「水位、前回測定から約二センチ上昇」


オルガが眉を寄せた。


「雨なし?」


「ありません」


「井戸からも?」


井戸見のマレが首を振る。


「渡していません」


ナジが紙風車を下へ向けた。


もちろん回らない。


「じゃあ、本当に下から?」


セナは白い土問い石を地面へ置いた。


「まず、底口を聞く」


ラサが台帳を開く。


水が増える時、槽を開くな。

水を汲むな。

底口を聞け。

底口が冷たく返れば、深水。

温かく返れば、熱水。


オルガが顔をしかめた。


「熱水は嫌だね」


ガル老人が頷く。


「南の熱とつながっていたら、土水槽は使えん」


リリィは土水槽の地図を見る。


南には砂の口と地下熱。


東には共同畑。


北には果樹園と根蔵。


地下の水がどこから来るかで、意味は大きく変わる。


「底口はどこですか」


ガルは石列の東端を指した。


「底を見る穴ではない。音を入れる穴だ」


オルガが小さく笑う。


「やっぱり見るんじゃなくて聞く」


「開ければ水が逃げる」


セナが答えた。


砂を薄く払うと、小さな陶管が見つかった。


口は細い。


人の指も入らない。


コピが測定糸を近づける。


「音響確認を行います」


一度目。


こん。


返りは弱い。


二度目。


こおん。


長い。


三度目。


……すう。


冷たい空気が、わずかに戻った。


ナジが顔を上げる。


「冷たい」


セナも白石を見る。


表面が薄く曇った。


コピが告げる。


「底口から低温反応。流入水は周辺地下温度より低い。熱水の可能性は低いです」


オルガが息を吐く。


「まず一安心」


ラサは記録する。


底口、冷たい返り。深水の可能性。南の地下熱との直接接続は低い。


だが、セナはまだ地面を見ている。


「どこから来てる?」


コピが地下反応を追う。


土水槽の下。


そこから東へ。


さらに少し北へ。


細い水分反応が続いている。


「地下水分帯は村の外へ伸びています」


ガルが目を細めた。


「石原かもしれん」


ナジが聞く。


「石原?」


「村の東にある、何も育たん石だらけの土地だ」


セナが顔を上げる。


「雨が降ると、すぐ乾く場所?」


「そうだ」


ラサが気づく。


「すぐ乾くのではなく……下へ入っていた?」


コピが答える。


「可能性があります」


リリィは頷いた。


地表に水が残らないから、乾いた土地だと思っていた。


でも、その水が地下へ入り、時間をかけて土水槽へ届いているなら。


石原は、水のない場所ではない。


水を地下へ渡す場所だ。


「台帳に石原は?」


ラサが探す。


すぐに見つかった。


東の石原を乾き地と呼ぶな。

雨を飲む地なり。

石を退けるな。

土で埋めるな。

そこより深水は戻る。


セナが小さく息を吐いた。


「また、役目を忘れてた」


ガルが頷く。


「石だらけで何も育たんから、役に立たない土地だと思われた」


オルガが言う。


「実際は、水を地下に入れる場所だった」


ラサは大きく記録した。


東の石原。雨を地下へ渡す場所。埋め立て禁止。石の撤去禁止。


その時、ロアンが気まずそうに手を上げた。


「……一つ、言わないといけない」


全員が見る。


「石原の端を、畑にしようとしてる」


セナの顔が変わった。


「いつから?」


「去年から。石をどけて、土を入れてる」


ガルが杖を強く握る。


「何をしている!」


ロアンは頭を下げた。


「役目を知らなかった」


ラサがすぐ言った。


「止めます」


ガルも黙る。


「責める前に、今の状態を見ます。知らなかったことも、変更した場所も記録します」


リリィは東を見る。


「石原へ行きましょう」


***


東の石原は、本当に何もない場所だった。


大小の石。


その隙間に乾いた砂。


草はほとんどない。


一部だけ、石が取り除かれ、土が盛られている。


セナがその境界で止まった。


「ここだけ、熱い」


コピも確認する。


「盛土部分の地温が高く、地下への水分通過性が低下しています」


ナジが石の残っている側へ行く。


「こっちは冷たい」


白い土問い石を置く。


すぐに薄く曇った。


盛土側では、ほとんど変化しない。


ロアンが顔を伏せた。


「塞いでたのか……」


セナは言った。


「全部じゃない。まだ石原は残ってる」


「戻せる?」


「急いで土をどけない」


ロアンは苦笑した。


「もう分かってる。まず見る」


セナが少しだけ笑った。


「うん」


ラサが台帳を読む。


石原を塞いだ時、一度に戻すな。

雨道を一筋ずつ返せ。

石の影を見て、冷えが戻れば次へ進め。


オルガが言う。


「ここでも少しずつ」


リリィは頷いた。


「今日は一筋だけ」


盛土を全部撤去しない。


端に残っている古い石の列を一つだけ露出させる。


掘り下げない。


水も流さない。


石の隙間を塞いでいた乾いた土を、表面だけ薄くよける。


すると。


すう。


隙間から冷たい空気が上がった。


ナジが紙風車を近づける。


ゆっくり回る。


「冷たい風!」


コピが告げる。


「地下への通気回復。水分浸透路の一部が再開した可能性があります」


ロアンが小さく言う。


「これが雨道……」


セナが頷いた。


「たぶん」


ラサが記録する。


石原、第一雨道。試験的に通気回復。


小さな成功だった。


土水槽の水を汲まない。


石原を全部戻さない。


ただ、水が地下へ戻る道を一筋だけ思い出させた。


その時。


コピの表示が変わった。


「土水槽の水位変化」


オルガが緊張する。


「下がった?」


「いいえ」


少し間があった。


「上昇が止まりました」


セナが石原を見る。


「道が開いたから?」


コピが答える。


「因果は未確定ですが、地下水圧が分散した可能性があります」


ガルが低く言う。


「水槽へ集まりすぎていた水が、また土へ散ったのかもしれん」


リリィは頷いた。


水を集めればいいわけではない。


地下に残し、散らし、必要な場所へゆっくり渡す。


ここでも同じだった。


だが、ラサが台帳をめくる手を止めた。


「まだ続きがあります」


彼女は読んだ。


深水が戻り、石原が息をすれば、空を見よ。

雲なき時にも石が濡れれば、次の雨は地の下から始まる。


ナジが空を見る。


雲はない。


青い空。


雨の気配もない。


その時、セナが足元を見た。


「待って」


石原の一つ。


白っぽい平石の表面に、小さな水滴がついている。


オルガが息をのむ。


「雨、降ってないよね?」


コピが測定する。


「降水なし。石表面温度低下。結露を確認」


ナジが目を丸くする。


「石が濡れた」


ガル老人は空ではなく、地面を見た。


「地の下から、雨が始まった……」


リリィも石原を見る。


地下水が戻った。


石原の冷えも戻り始めた。


そして雲のない空の下で、石に水滴が生まれた。


村が忘れていた水の循環は、地下だけで終わっていなかった。


次は、地面から空へ。


風待ち村の水と風が、ようやく一つの輪になろうとしていた。

第162話では、土水槽の水位が上がった理由を追いました。


底口から返ったのは冷たい反応で、南の地下熱ではなく「深水」が流れ込んでいる可能性が高いと分かりました。


さらに地下の反応を追うと、水の道は村東側の石原へ続いていました。


石原は何も育たない無用な土地ではなく、雨を地下へ渡す場所だったのです。


しかし一部では、畑にするため石をどけ、土を入れていました。


そこで全てを一度に戻すのではなく、古い雨道を一筋だけ開きました。


その結果、地下への通気が戻り、土水槽の水位上昇も止まります。


小さな成功です。


そして終盤、雲のない空の下で、石原の石に水滴が生まれました。


台帳には、


雲なき時にも石が濡れれば、次の雨は地の下から始まる。


とあります。


次回は、地下の冷えと地表の水滴が、風待ち村の空と風に何を起こすのかを追います。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:G(ChatGPT)

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