↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
調和の守護者 リリィ&コピ第五部  作者: マスター


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
35/66

第160話 下畑に眠る失敗

第159話では、根渡しの道を守る「道守り」が決まりました。


一人に任せるのではなく、土読み、井戸見、畑側、現管理家、風車読み見習いが一緒に見守り、止め役のラサが急ぐ判断を止めます。


そして初めての「影渡し」を実施。


根や水を直接動かさず、果樹園から共同畑へ、湿りと冷えの向きだけをつなぎました。


影渡しは成功します。


しかし、共同畑のさらに下から別の音が返りました。


そこは「下畑」。


台帳には、


そこには、村が忘れた失敗が眠る。


と記されていました。


第160話では、その失敗を追います。

共同畑の下から、音がする。


こむ。


少し間を置いて、


こむ。


セナは土問い石を見つめていた。


白い石は曇ったまま。


赤い石は熱くない。


黒い石も安定している。


表面だけなら、問題はない。


「影渡しは止める」


セナが言った。


麦倉のロアンが聞く。


「せっかくうまくいったのに?」


「だから止める」


ラサも頷いた。


「止め役として同意します。下畑を確認するまで進めません」


ロアンは一瞬迷い、それから頷いた。


「分かった」


オルガが少し笑う。


「みんな、止まるのが上手になったね」


ナジが紙風車を胸に抱いた。


「前なら、とりあえず開けてた?」


ガル老人が苦い顔をする。


「昔はな」


ラサが台帳を開いた。


下畑が鳴る時、上から掘るな。

水を落とすな。

種を起こすな。

失敗を先に読め。


「失敗を読む?」


リリィが尋ねる。


ガルは共同畑の石境を見た。


「下畑には、昔の記録札が残っているはずだ」


「入れるんですか?」


「入るな」


セナが即答した。


ガルも頷く。


「横に聞き窓がある」


オルガが笑う。


「今日は窓か」


共同畑の外縁を調べると、半分埋もれた石板が見つかった。


小さな穴が三つ。


その奥に空洞がある。


コピが観測機を入れる。


暗い。


狭い。


そして、地下の棚に薄い石札が並んでいた。


ラサが息をのむ。


「読めます」


映像を拡大する。


最初の札。


乾き三年目。

種を急ぎて開く。


次。


畑息を直に通す。

芽は出る。


ナジが言った。


「成功した?」


ラサは黙って、次を読む。


七日後、根焼け。

十二日後、半数枯死。


空気が重くなった。


セナは目を伏せる。


「やっぱり……」


さらに次の札。


残る種を深く埋める。

水を多く入れる。


オルガが小さく言った。


「それも、今はやっちゃだめって分かってるやつだね」


ラサは続ける。


土締まる。

水抜けず。

根腐れ。


ロアンが顔を伏せた。


「全部、助けようとしてやったのか」


ガルが答える。


「そうだ」


悪意はない。


飢えを避けたかった。


早く畑を戻したかった。


だから急いだ。


その結果、さらに失った。


ラサが最後の札を読む。


声が少し震えた。


失敗を土読みの責とする。

下畑を閉じる。

記録を伏せる。


セナの表情が止まった。


誰も何も言わなかった。


彼女の母より、さらに前。


同じことが起きていた。


失敗した。


誰かを責めた。


記録を隠した。


そして、また繰り返した。


ラサはゆっくり記録板を開いた。


「これも戻します」


セナが聞く。


「誰が失敗したかも?」


「はい。でも、責めるためではありません」


ラサは石札を見た。


「何をして、何が起きたのか。そのまま戻します」


セナは長く黙った。


やがて頷いた。


「それなら、いい」


ナジが小さく言う。


「失敗も、消しちゃだめなんだね」


リリィは頷いた。


「うん。成功だけ残したら、同じ失敗を避けられないから」


コピが下畑を測定する。


「追加情報があります。下畑内部に植物反応」


全員が顔を上げた。


「植物?」


オルガが聞く。


「枯れた根?」


「一部は枯死しています。ただし、完全に乾燥していない根系があります」


セナが驚く。


「まだ生きてる?」


観測機が奥を見る。


乾いた土。


割れた種壺。


古い根。


その一角だけ、細い根が残っていた。


白くない。


緑でもない。


薄い茶色。


でも、乾き切っていない。


ガルが息をのむ。


「生き残り根……」


ラサが台帳を探す。


「ありました」


下畑に根残れば、捨てるな。

失敗の中で残った根は、今の土を知る。


セナの目が変わった。


「今の土を知る……」


コピが補足する。


「過去の環境変化を生き延びた根系であれば、現在の乾燥・熱・土壌条件への耐性を持つ可能性があります」


セナはすぐ言った。


「まだ決めない」


「はい」


コピが答えた。


オルガが笑う。


「そこも学習したね」


下畑は、ただの失敗の墓ではなかった。


失敗した場所だからこそ、残ったものがある。


リリィはセナを見る。


「取り出しますか」


「取り出さない」


答えは早かった。


「まず、上の共同畑と同じ影を渡す。生き残り根がどう返すかを見る」


ラサが記録する。


下畑、生き残り根あり。回収禁止。影のみ試験候補。


ロアンが言った。


「昔なら、すぐ掘り出してたな」


セナが頷く。


「だから、今はやらない」


その時。


下畑の奥で、かすかな音がした。


こ。


さっきの低い土音とは違う。


もっと細い。


セナが聞き窓へ耳を向ける。


「根の音……?」


コピが測定する。


「微細な水分移動を検出。生き残り根周辺で変化」


ラサが台帳をめくる。


そして、一行を見つけた。


生き残り根が水を呼ぶ時、上畑の水を与えるな。

古い水道を探せ。


オルガが眉を寄せる。


「古い水道?」


ガルの顔色が変わった。


「下畑には、中央井戸とは別の水があった」


井戸見のマレが驚く。


「別の井戸?」


ガルは首を横に振った。


「井戸じゃない」


共同畑のさらに東。


乾いた地面を指す。


「雨の時だけ水をためる、地の底の水溜まりだ」


セナが呟く。


「土水槽……」


ラサがすぐ振り向く。


「知っているのですか」


「名前だけ。母さんが一度だけ言ってた」


コピが東側を走査する。


しばらくして、地図に新しい反応が出た。


「共同畑東側地下に、大型空洞反応。微量水分あり」


ナジの目が丸くなる。


「水、残ってる?」


「可能性があります」


リリィは東を見た。


下畑には、失敗が眠っていた。


だが、その失敗を生き延びた根も残っていた。


そして、その根は中央井戸ではない水を呼んでいる。


村が忘れたもう一つの水。


土水槽。


根渡しの前に、今度はその水が生きているかを確かめなければならなかった。

第160話では、共同畑の下にある「下畑」を調べました。


そこには、乾き年に種を急いで起こし、畑息を直接通したことで根を焼いてしまった記録が残されていました。


さらに水を多く入れたことで土が締まり、根腐れも起こしていました。


そして、その失敗は土読みの責任とされ、下畑ごと記録から隠されていました。


今回、ラサは失敗そのものも村の記録へ戻すことを決めます。


しかし下畑には、過去の失敗を生き延びた「生き残り根」が残っていました。


すぐには掘り出さず、まず状態を見ることにします。


終盤では、その根が水を求める反応を示しました。


ただし台帳には、


上畑の水を与えるな。

古い水道を探せ。


とあります。


その先には、雨の時だけ水をためていた「土水槽」がある可能性が出てきました。


次回は、村が忘れたもう一つの水、土水槽を追います。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:G(ChatGPT)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。