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調和の守護者 リリィ&コピ第五部  作者: マスター


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第149話 乾いた果樹園の土読み

第148話では、乾き年の種が待っているものを探るため、畑の土を調べました。


畑は水不足だけではなく、表層の下に硬い層があり、熱もこもっていました。


リリィたちは土を掘らず、水も入れず、土耳で状態を聞きます。


さらに乾き草を薄く敷き、土の熱を少し和らげました。


しかし、畑の下にも「畑息」と呼ばれる地下風の道があることが分かります。


台帳には、こうありました。


畑息を戻す時、風守りだけで決めるな。

土を見る者を呼べ。


村の外れの乾いた果樹園には、土読みの家系の娘が一人残っているという話が出ます。


第149話では、その土読みの娘を訪ねます。

乾いた果樹園は、村の東外れにあった。


果樹と呼ぶには、木は細い。


葉は少なく、枝先は白く乾いている。


地面には、ひびが入っていた。


けれど、畑とは違う。


完全に死んだ土ではない。


ところどころに、低い草が残っている。


ナジが紙風車を低く向けた。


「ここ、風が弱い」


オルガが周囲を見る。


「でも、熱くはないね」


コピが測定する。


「表層は乾燥。ただし、畑中央より地温は低いです。地下に細い通気反応があります」


ラサが記録板を開く。


「土読みの家は、どこですか」


案内してくれた年配女性が、果樹園の奥を指した。


「小屋がある。あの子は、たいていそこにいる」


「名前は?」


「セナ」


小屋は低く、半分土に埋もれていた。


屋根には乾き草が敷かれ、壁には小さな穴がいくつもある。


リリィが近づく前に、扉が開いた。


中から出てきたのは、十代後半ほどの少女だった。


短い髪。

土色の外套。

手には細い木杖。


目つきは鋭い。


「帰って」


最初の一言が、それだった。


ラサが一歩前に出る。


「セナさん。話を聞かせてください」


「村の記録係?」


「はい」


「なら、なおさら帰って」


ナジが小さく言う。


「怒ってる……」


オルガがそっとナジを後ろへ下げる。


「まず聞く」


セナはリリィたちを見た。


「畑息を開けに来たんでしょ」


ラサが息をのむ。


「知っているのですか」


「知らないと思って来たの?」


セナの声は冷たい。


「風守りが風を戻せば、次は土を使いたがる。畑が弱れば、種を起こしたがる。全部、順番通り」


リリィは静かに言った。


「今日は開けません」


セナの目が少し動く。


「なら、何しに来たの」


「土を聞きに来ました」


セナは黙った。


それから、少しだけ木杖を下ろした。


「……聞くだけ?」


「はい。掘りません。水も入れません。種もまきません」


オルガが付け足す。


「ついでに、ナジも穴に近づけません」


ナジが不満そうにする。


「分かってるよ」


セナはナジを見た。


「紙風車の子?」


「うん。ナジ」


「勝手に風を読んでる子か」


ナジは少し胸を張った。


「今は見習い風車読み」


セナはほんの少しだけ目を細めた。


笑ったのかもしれない。


ラサが記録板を構えた。


「畑息について、教えてください」


セナはすぐには答えなかった。


果樹園の土に、木杖をそっと置く。


叩かない。


刺さない。


ただ、触れる。


「畑息は、畑の下を通る風じゃない」


ラサが手を止める。


「違うのですか?」


「風だけなら、根は乾く。畑息は、風と土の間の隙間。根が息をする場所」


コピが静かに補足する。


「土壌内の空隙、通気、水分保持の均衡を指す概念と考えられます」


セナはコピを見た。


「難しく言わなくていい。土が息できる隙間」


ナジが頷く。


「分かりやすい」


オルガも頷く。


「うん、今の方が分かりやすい」


コピは少し間を置いて言った。


「表現を更新します」


ラサは書いた。


畑息。風そのものではない。土が息をする隙間。


セナは果樹園の土を指した。


「ここの土は乾いてる。でも、まだ隙間がある。村の畑は違う。上が固まりすぎて、下の熱が逃げない」


リリィが尋ねる。


「戻せますか」


「急げば壊れる」


即答だった。


「畑息を開けると、下の熱が上がる。種を起こしたい人は喜ぶ。でも根は焼ける」


ガル老人が遅れて口を開いた。


「昔、そうなった」


セナの目が鋭くなる。


「ガルさんは知ってたんですね」


ガルは視線を逸らさない。


「少しだけな」


「その“少しだけ”で、土読みは村から外された」


空気が重くなる。


ラサが聞いた。


「外された?」


セナは短く笑った。


「風を戻したい人も、畑を広げたい人も、土読みを邪魔だと思った。『まだ早い』『そこは掘るな』『水を入れすぎるな』ばかり言うから」


オルガが小さく言う。


「止め役に似てる」


「止め役より嫌われるよ」


セナは淡々と言った。


「土は結果が遅いから」


ラサはその言葉を記録した。


土読みは、遅い結果を見る役。急ぐ判断と衝突しやすい。


セナは村の畑の方を見た。


「畑息を戻す前に、土が受けられるか見ないといけない」


リリィは頷く。


「見せてもらえますか」


セナは少し考えた。


「ここでなら」


果樹園の隅に、丸い石が三つ置かれていた。


その中心に、乾いた草が薄く敷かれている。


セナは木杖を草の上に置いた。


「土を叩かない。押さない。草の上から聞く」


ナジがしゃがみかける。


オルガが肩に手を置く。


「見習い、距離」


「はい」


セナは木杖を指先で軽く弾いた。


こん。


音は小さい。


けれど、土の下から低く返る。


こむ。


ナジが目を丸くした。


「返事した」


セナは頷く。


「ここは、まだ息がある」


コピが測定する。


「果樹園の土は、表層乾燥の下に微細な空隙が残っています。熱も分散しています」


セナが言う。


「村の畑は?」


コピが前回のデータを表示する。


「畑中央は硬化層あり。熱こもり。地下風反応あり。ただし土の隙間は少ない」


セナは首を振った。


「今、畑息を開けたら、下の熱だけが上がる」


麦倉の男が、後ろで焦った声を出した。


「でも、畑を待っていたら、今年の実りが減る」


セナは彼を見た。


「だから、土を壊す?」


男は黙る。


ラサが前に出た。


「止めます」


広場ではない。


けれど、止め役の声だった。


「今は、畑息を開けるかどうかを争う時ではありません。先に、土が受けられる条件を記録します」


セナはラサを見た。


「……記録するの?」


「はい。消しません」


セナは少しだけ表情を緩めた。


「なら書いて。畑息を戻す前に、三つ見る」


ラサが筆を構える。


「一つ目」


「土の熱」


「二つ目」


「土の隙間」


「三つ目」


セナは北の祠の方を見た。


「種が待てるか」


ナジが聞く。


「種が待てるか?」


「土が整う前に種が起きたら、根が迷う。根が迷えば、土はもっと締まる」


コピが頷く。


「発芽と土壌環境のタイミング不一致による失敗と解釈できます」


セナがすぐ言う。


「難しく言わない」


「種が早すぎると、土が困る」


「それでいい」


オルガが笑った。


「コピ、今日はよく直されるね」


「学習しています」


ラサは記録した。


畑息を戻す前に見る三つ。

土の熱。

土の隙間。

種が待てるか。


リリィはセナに尋ねた。


「村の畑で、同じように聞けますか」


セナは少し黙った。


「行けない」


「なぜ?」


セナは答えない。


代わりに、年配女性が口を開いた。


「セナの母親が、村の畑で責められたんだよ」


セナの手が木杖を握る。


「余計なことを言わないで」


女性は静かに続けた。


「砂の年の後、畑を戻そうとした時、土読みは『まだ種をまくな』と言った。でも村は急いだ。結果、畑は硬くなった」


麦倉の男が顔を伏せる。


「それで……」


「土読みのせいにされた。『止めたから遅れた』『言い方が悪い』『何もしなかった』ってね」


ラサは筆を止めた。


セナは笑わなかった。


「だから、私は村の畑には入らない。土を見て、また責められるのは嫌」


リリィはセナを見た。


責めることは簡単だ。


でも、それでは役は戻らない。


「セナさんが行かなくても、土を聞く方法を教えてもらえますか」


セナは少し驚いた。


「私が行かなくても?」


「はい。無理に戻すことはしません」


ラサも頷いた。


「記録します。村が使うなら、理由も条件も残します」


セナは長く黙った。


やがて、果樹園の小屋から小さな布袋を持ってきた。


中には、丸い小石が入っている。


白、赤、黒。


三色の石。


「土問い石」


ナジが目を輝かせる。


「石で土を聞くの?」


「土の上に置く。沈み方と冷え方を見る」


コピが測定する。


「材質の熱伝導と重量差で、土表面の硬さと温度変化を観察する道具と考えられます」


セナは頷いた。


「それでいい」


ラサが受け取ろうとする。


しかし、セナは手を引いた。


「貸すだけ。持っていかないで」


ラサは深く頭を下げた。


「分かりました。必ず返します」


その時、ナジの紙風車が止まった。


完全に。


風が消えたように。


コピがすぐ表示を見る。


「村中央の風車、回転低下。北祠の封印壺内部音、再発」


ラサが顔を上げる。


「種が?」


「はい。外部操作なしで、再び微小移動音」


セナの表情が変わった。


「遅い」


リリィが聞く。


「何がですか」


セナは村の畑を見た。


「土が整うより、種の返事が早い」


ガルが低く言う。


「風ではなく、土を問え……そういう意味か」


セナは土問い石を握った。


「村の畑を見ないと、種が先に起きる」


ラサは息をのむ。


「でも、あなたは……」


セナは苦しそうに目を伏せた。


「行きたくない」


北の祠から、遠く小さな音がした。


ことん。


風は止まり、土はまだ硬い。


そして種だけが、待ちきれないように返事をしていた。

第149話では、村の外れの乾いた果樹園に残っていた、土読みの娘セナを訪ねました。


セナは、畑息を「風そのもの」ではなく、土が息をするための隙間だと説明します。


村の畑は、水不足なだけではなく、土が硬く締まり、熱がこもっている状態でした。


このまま畑息を開ければ、下の熱だけが上がり、種の根を傷める危険があります。


土読みが見るべきものは三つ。


土の熱。

土の隙間。

種が待てるか。


しかし、セナの母は過去に「まだ種をまくな」と止めたことで村人に責められ、土読みは村の畑から遠ざけられていました。


セナ自身も、村の畑へ戻ることを恐れています。


終盤では、北の封印壺が再び音を返しました。


土が整うより先に、種が反応し始めています。


次回は、セナが村の畑へ戻れるのか、そして土問い石で畑の状態を見られるのかを追います。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:G(ChatGPT)

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