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終焉を継ぐ者  作者: 異世界の神様
継承者の目覚め
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12/12

第12話 消えたもの

いつも『終焉を継ぐ者』を読んでいただきありがとうございます。


 本日の更新が少し遅くなってしまい、申し訳ありません。


 楽しみに待っていてくださった方がいましたら、本当にありがとうございます。


 第12話では、これまで森の中だけだった異変が少しずつルークス村へ影響を及ぼし始めます。


 平和だった日常に現れた小さな異変。


 その先に何が待っているのか。


 ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。


 それでは、第12話をお楽しみください。


 翌朝。


 レインは村の騒がしさで目を覚ました。


 普段なら鳥の鳴き声しか聞こえない時間だ。だが今日は違う。外から慌ただしい声が聞こえてくる。


「何かあったのか……?」


 急いで身支度を整え、家を出る。


 村人たちは皆、村の外れへ向かっていた。


 不安そうな顔。


 困ったような顔。


 どこか落ち着かない空気。


 嫌な予感が胸をよぎる。


 近くを通った村人へ声をかけた。


「何かあったんですか?」


 男は振り返った。


「ああ、レインか」


 そして重い声で言う。


「牛が一頭いなくなった」


「牛が?」


「ああ。囲いの中から消えた」


 レインは眉をひそめる。


 逃げたのだろうか。


 そう思ったが、男は首を横に振った。


「柵は壊れてねぇ」


「足跡も見当たらねぇ」


「なのに消えたんだ」


 その言葉にレインの表情が曇る。


 静かな森。


 フィアが感じた気配。


 昨夜の遠吠え。


 ここ数日の異変が頭をよぎった。


 急ぎ足で現場へ向かう。


 囲いの周囲には人だかりができていた。


 その中に見慣れた銀髪を見つける。


「フィア」


「レイン」


 フィアも既に来ていた。


 二人は囲いの中を見る。


 確かに牛が一頭いない。


 残された牛たちは落ち着かない様子だった。


 何度も鳴き声を上げている。


 まるで何かに怯えているようだった。


「変」


 フィアが呟く。


 レインも同感だった。


 柵は壊れていない。


 血もない。


 争った跡もない。


 それなのに牛だけが消えている。


 あまりにも不自然だった。


「どいてくれ」


 低い声が響く。


 ガルドだった。


 村人たちが道を開ける。


 ガルドは囲いの中へ入り、地面を調べ始めた。


 誰も声をかけない。


 皆が結果を待っていた。


 しばらくしてガルドは立ち上がる。


「どうだ?」


 村人の一人が聞く。


 ガルドは少しだけ考え込んだ。


「分からねぇ」


 その答えに周囲がざわつく。


「だが普通じゃねぇな」


 重い言葉だった。


 レインはガルドの顔を見る。


 いつもより険しい。


 それだけで事態の深刻さが伝わってきた。


 やがて村人総出で捜索が始まった。


 牛が逃げた可能性もある。


 森へ入った可能性もある。


 だから皆で探した。


 レインも手伝った。


 フィアも一緒だった。


 だが見つからない。


 畑の周辺。


 川辺。


 村の外れ。


 牛が通れそうな場所は一通り探した。


 それでも見つからない。


「本当にどこ行ったんだ……」


 レインは額の汗を拭った。


 ただ逃げただけなら何かしら痕跡が残るはずだ。


 草が踏まれているとか。


 泥に足跡が残っているとか。


 それすらない。


 まるで最初から存在しなかったかのようだった。


 フィアは森を見ている。


 何かを探しているようだった。


「やっぱり森か?」


 レインが聞く。


 フィアは少し考えた後、頷いた。


「たぶん」


「理由は?」


「分からない」


「だろうな」


 思わず苦笑する。


 だが否定はできなかった。


 ここ最近のフィアの勘は妙によく当たる。


 だからこそ気になってしまう。


 その時だった。


「レイン!」


 声が聞こえる。


 振り返ると牛の飼い主が立っていた。


 顔色は良くない。


 朝から探し続けているのだろう。


「何か見つかったか?」


 必死な声だった。


 レインは首を横に振る。


「まだです」


 男の肩が落ちる。


「そうか……」


 悔しそうだった。


「あいつは十年以上世話してきた牛なんだ」


 男は空を見上げる。


「小さい頃から育てた」


「病気になったこともあった」


「暴れて困らせられたこともあった」


 少しだけ笑う。


 だがその表情はすぐ曇った。


「だから無事でいてほしい」


 レインは黙る。


 今まで牛は牛でしかなかった。


 だが村人にとっては違う。


 生活を支える大切な存在なのだ。


「見つかります」


 レインはそう言った。


 男は小さく頷く。


「そうだな」


 そう言うと再び捜索へ戻っていった。


 その背中はどこか小さく見えた。


 捜索は続く。


 だが時間だけが過ぎていく。


 太陽は高く昇り、朝の涼しさは消えていた。


 それでも村人たちは探し続けた。


 誰一人として諦めようとはしない。


 レインはふと広場を見る。


 普段なら子供たちが走り回っている時間だ。


 だが今日は違う。


 皆どこか大人しく、遠くから様子を見ている。


 村の空気がおかしいことを感じ取っているのだろう。


 いつもの笑い声も少なかった。


 ルークス村全体が静かだった。


 まるで森の異変が少しずつ村へ広がっているようだった。


「なんか嫌だな」


 レインはぽつりと呟く。


 フィアは隣で頷いた。


「うん」


 短い返事。


 だがその表情は真剣だった。


 レインは空を見上げる。


 青空だった。


 天気は良い。


 村も変わらない。


 それなのに胸の奥の不安だけが消えない。


 もし本当に森の異変と関係があるなら。


 もしフィアの感じた気配が原因なら。


 これは牛一頭では終わらないかもしれない。


 そんな考えが頭をよぎった。


 昼になっても。


 午後になっても。


 牛は見つからなかった。


 痕跡すら見つからない。


 日が傾き始める。


 村人たちの表情からも余裕が消えていた。


 もしこれがただの迷子ならいい。


 だが誰もそうは思えなくなっていた。


 夕方。


 捜索は一旦打ち切られた。


 成果はない。


 牛は見つからない。


 原因も分からない。


 残ったのは不安だけだった。


 レインは広場のベンチへ腰を下ろす。


 フィアも隣へ座った。


 しばらく沈黙が続く。


 やがてフィアが言った。


「関係ある」


 レインは顔を上げる。


「森のことか?」


 フィアは頷いた。


「たぶん」


 短い言葉。


 だが妙な説得力があった。


 レインも否定できない。


 静かになった森。


 感じた気配。


 消えた牛。


 全部が繋がっている気がした。


 その時。


 ガルドが近付いてきた。


「二人とも」


 レインは立ち上がる。


「何か分かったのか?」


「いや」


 ガルドは首を横に振る。


 そして森を見る。


 遠くに広がる深い森。


 夕日に照らされて赤く染まっていた。


「だが、このまま放ってはおけねぇ」


 低い声だった。


「明日、森を調べる」


 レインは息を呑む。


 フィアも黙って森を見つめていた。


 原因はまだ分からない。


 何がいるのかも分からない。


 だが確かなことが一つだけあった。


 異変は終わっていない。


 むしろ。


 ここから始まろうとしていた。

第12話を読んでいただきありがとうございました。


 今回は、これまで感じていた違和感が初めて形として現れた回でした。


 消えた牛。


 巨大な足跡。


 そして森に残された謎の痕跡。


 まだ全ての答えは見えていませんが、レインたちは確実に異変の中心へ近付いています。


 また、これまで「気味が悪い」で済んでいた問題が、村そのものに関わる出来事になったことで、物語も少しずつ動き始めました。


 次回からはいよいよ森の本格的な調査が始まります。


 レインたちが何を見つけるのか、楽しみにしていただけると嬉しいです。


 感想や評価、ブックマークなども大きな励みになっています。


 それでは、第13話でお会いしましょう。

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