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寿命スロット×俺は命だけ偽造する ―異世界で5秒から始まる延命サバイバル―  作者: 雪ノ瞬キ


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4/30

4話:星導逆流

 ギルドの軽食席。

 向かいのミミがパンをちぎりながら俺の話に耳を傾けていた。


「この近くに古代の地下道がある。そこで魔石を集める依頼を受けた」


「うん。わかった。悠斗の戦いは見ているから、私は『エド式』魔法で援護する」


 そういや俺は、そもそも他人の魔法を全く知らないでいた。

 ひたすら自分の命をこねくり回して、作るのと食らうのに精一杯だった。

 

 今も俺の視界の角には、残りの寿命がカウントダウンされている。

 ストックが心もとない。話しながらこね始める。

 

【稼働残:1日+数時間|予備①:50秒|予備②:34秒|】

【製作】偽命(24秒)→破棄/偽命(34秒)→予備②に格納


「その言ってた帝都エドって……魔法が中心なのか?」


「そうだよ。こことも魔法体系が違うけど、魔力と魔石は共通しているみたいね」


「つまり、遜色なく使えると?」


「ええ、そうよ。おかげで生き延びられたわ。でも途中知らない魔法でリスに変えられたけどね」


「ああ、あれか」


 悠斗が何か手元でロクロを回す仕草をミミは見つめていた。


「気になるか?」


「ええ、とっても」


「俺は言った通り死んでいる。だから偽命を作って継ぎ足さないと生きられない」


「え? それじゃ長寿?」


「いや、せいぜい五日。ほとんどが数十秒だ。秒針のカスみてぇな命ばっかり」


「綱渡ね」


「ああ、そうだな。あと二つ。……足りねぇ」


――この足りなさが、命の残量を数える癖をまた強くする。


「ね、もしもだよ。もしも、タイムアウトになっちゃったらどうなるの?」


「死ぬ。でも三分だけ、死体のまま猶予がある。

その間に偽命をこね直して、無理やり押し込む。間に合わなきゃ、終わりだ」


「それって」


 少し重苦しい話だが仕方ない。

 ――息がひとつ、詰まった。

 これからこいつは俺とくむ気でいるのか。


「なあ、俺とくむのか?」


「え? そのつもりでいるんだけど?」


 “当たり前”って顔だ。

 そうは思われてもな、俺毎回偽命作りで必死だぜ?


「いつ時間切れになるかわからねぇ奴に、構っていていのか?


「仲間なら……当たり前でしょ?」


 一瞬、胸の奥で何かが鳴った。

 ……仲間か。まさか、ここでその話を聞くとは思わなかった。

 同郷同士は同情を誘い裏切られてばかりだからな。

 こいつはどうだろうな。


「わかった。ミミの戦術はこれまでどうやってきたんだ?」


 まだ信用したわけじゃないが、様子を見るため続けた。


「私の場合、攻撃はエド式神。支援魔法は、星導せいどうよ。悠斗も知っているように、足音消したりするのが星導」


「式神って、陰陽師のやつだろ。名前だけは知ってる」


 と言っても俺は、陰陽師のことは名前ぐらいしかわからねぇ。


「陰陽師がどういうものかわからないけど。元いた世界では、エド式魔法〈星導術せいどうじゅつ〉と言って、使い手は星導士せいどうしと呼んだわ」


「なるほどな」


 ミミは実はエリートか。

 対して俺は、生き延びるだけで精一杯――まったくだ。


「たぶん相性がいいはずよ? 私が弱点に印。悠斗が顎で食らう。それでいきましょ」


「そうだな。前衛と後衛が明確だし、いざとなれば式神だっけ? そいつで攻撃もできるって奴だな」


「ええ、そうよ」


「浅場で試す。……死ななきゃ、な」


「うん、お願いね」


 ああ、そういう顔もするんだな。

 俺は無表情のまま頷いたが、心臓だけは少しうるさかった。


「あっそうそう。俺偽命作りながらやるけど、戦闘には支障はないから安心してくれ」


 話しながら作るが、できるのは秒単位ばかりだ。

 だから今はストックに50秒程度の物しか入っていない。

 致命傷を受けた時の差し替え回復にはいいんだけどな。その後は1日単位が欲しい。


 俺とミミの二人はギルドを出ると道なりにさらに奥へと進んだ。

 この先にある開けた場所から、古代地下道へ続く扉がいくつかある。

 

 誰にも遭わずに辿り着いた。

 六人乗りの馬車が十台は並ぶ広さだ。


 扉と呼べるか怪しい鉄格子が、左右と正面に一つずつ。


 特に理由はないが左からいくか。

 取っ手は冷たく、鉄が小さく軋んだ。

 その音が、骨の内側まで響いた。

 闇が息をしてる。俺を見てる気がした。肺が、止まる。

 

 扉の先には、この部屋の数倍の幅を持つ通路。天井も高い。

 ミミはしゃがみ込み、指で目地をなぞった。

 

「床の目地に、浅い星導紋。誰かが後から増設した管理紋……?」

 

 ミミが眉間を寄せた。 指先が目地を探る、悪い癖だ。

 

「なんだ、広いな。どうなっているんだ」

 

「ええ。これはすごいわ」

 

 ここも石畳だが、こっちの方が滑らかに見える。

 それどころか、空気が重い。内臓の奥みたいな湿りがある。

 なんだ? ここは?

 壁は一定間隔で光苔に覆われ、視界を確保していた。


 壁際からゆっくりと姿を現したのは、背丈三メートルはくだらない魔獣だ。

 体は黒くテカリ、筋骨隆々だが頭部はシャチの顔つきをし、多数の鋭い牙を覗かせる。

 

「索敵ってわけには行かなそうだな」

 

「穿糸!」

 

 ミミは、札を捻って投げる。

 一瞬のうちに相手に張り付くとぼんやりとその箇所が光り出した。

 

「あの場所が弱点よ」

 

「ああ、わかった」

 

 悠斗は右腕に顕現した魔獣の顎の膂力で一気に迫る。

 ミミが目尻に一筆、弱点へ淡い点灯。

 札を二つ折りにして親指で跳ね上げ、人差し指で空に『一』を切る。

 

『――穿て。〈釘神〉』

 

 黒鉄の釘が掌から浮き、印へ走る直前に減速。

 肩へ半分だけ沈み、影と床を結ぶ楔線がパチと張った。

 巨体が半拍、がくりと止まる。血がにじむだけ、だが動きは確かに止まった。

 

「今」

 

 ミミが短く合図。楔線が弾け、釘は粉塵になって落ちる。

 その空白に、悠斗の顎が無音で噛み込んだ。

 刹那、胸の奥で心音が軋んだ。――寿命が削れる音だ。


「思考加速!」


 世界が灰に落ちる。体感は数十倍。止まった画の間で動けるのは俺だけだ。

 ミミの印が灯る肩口へ顎を差し入れ、嚙み切って――そのまま嚥下する。

 

【呪蝕検出】嚥下/格上魔獣核由来

【寿命消費】−約1日

【稼働残】→ 5時間台


『解除!』――加速を切る。色と音が一気に戻る。

 

「グォーーー!」

 

 咆哮が鼓膜を裂くのと同時に、胸郭の内側が裏返る。

 痛みが、息より先に走った。

 

「ガァーーー!」

 

 喉が勝手に鳴る。

 肺がひっくり返るみたいだ。十数時間を丸ごと剥ぎ取られた感覚――くそ。


 相手が動いていたら完全に致命傷になる。

 ……肩甲骨の奥が、まだじわじわと焼けていた。


「まさか……」

 

 喉が焼ける。 食らうことで寿命を削るタイプか――?


 なら飲み込まなければいいだろう!

 

 もう一つの光る場所は脇腹で、ふらつく魔獣の脇腹を食らいちぎる。

 

【呪蝕検出】咬断(嚥下なし)

【寿命消費】−1〜2時間

【稼働残】→ 4時間台

 

「グォー!」

 

 最後に頭部をもぎ取り。そのままうつ伏せに倒れた。

 

「ガァー!」

 

 バカな! 飲み込んでいないのにこれが起きるとは。

 嚙み切るだけでもかなりの寿命を持っていかれる。

 

 二回噛んだだけで、もう四時間ちょい。 マズい。

 かなりまずい。

 ……戻るか? いや、迷うと死ぬ。

 前だ。息が追いつかねぇ。

 

 すると、ミミが古代地下道の壁面に手のひらの大きさの紋様に興味を示していた。

 

「これもしかして。星導紋かしら?」


 管理紋に札を、つい当ててしまった。

 

「何も起きないわね……え?」

 

【警告】星導干渉:系統衝突(管理紋→外来式)

 

「……星導が“逆流”してる。管理紋と私の系統が噛み合ってない」

 

 光が逆流した。

 床の色が裏返り、通路の壁のブロックが一つずつ裏返っていく――悠斗の足元だけが別の床へ滑った。


「なんだと――ミミ、逃げろ!」


 叫んだ瞬間、足の感覚が消えた。

 まるで世界の下敷きにされたみたいに、底へ引きずられる。


 俺はそこが見えない穴に落下していく。

 

【目標|悠斗】 残4時間/予備50秒・34秒温存→上層退避。


「悠斗ー!」


 叫んだのも束の間、ミミの周囲の壁も変化し、元きた道と先まで続いていた道は消え、左右の分かれる道だけが残る。

 ミミ――また指先が動いた。

 

 ミミは指先を離さず管理紋を撫でた――その小さな癖が、外来式との衝突を誘発した。

〈露視〉を駆使し、悠斗の居場所を追う。偽装・屈折・結界の先にある存在する者を感知できる。

 今は逸れた悠斗を探すべくミミは行動を開始した。

 

【目標|ミミ】 露視で痕跡追尾→最短合流。


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