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9 帰城

「ジェナさん、おやすみなさい」

「今日もお疲れ様でした。おやすみなさい」


ジェナさんは、私を部屋まで送ってくれた後、私が部屋に戻った事を皆に伝えて来ます─と言って、部屋には入らずそのまま元来た廊下を戻って行った。


パタンと扉を閉めると


『やっちゃう?』

『やって良い?』


部屋には戦闘態勢に入ったアイルとフラムが居た。手の平サイズの小さな小さな青色と赤色の妖精。ものすごく怒っているのは分かるが、怒っている顔もまた……可愛いしかない。


“ぷんぷん”と言う擬態語がよく似合う。


「アイル、フラム、落ち着いて?私の為に怒ってくれてありがとう。でも……()()は、私にとっては思惑通りの流れなの」


『『え?』』




私が聖女の能力以外は要らないと言ったのは、浄化の旅が終わった後、色んな意味で()()()()()を避けたかったから。

世界は違うけど、何か特殊なモノを持っていると、ソレを欲しがる人が必ず居る筈。

折角、魔法のある世界に転移できるのなら、私だって本当は魔法を使ってみたかった。


でも──


勿論、頼まれて受けた事だから、聖女としてキッチリ浄化はする。でも、浄化した後は?聖女としてではなく、1人の人間として、誰に囚われる事も使われる事もなく、自由に過ごして行きたい。なら、“役立たず”と思われた方が好都合だと思ったから、聖女の能力以外の付与は断ったのだ。


ただ──


今迄一緒に訓練して、一緒に旅に出た仲間に、メリット、デメリットとしか見られていなかった事には、正直…ショックを受けている。仲良くなれたと思っていたけど……彼らからしたら、そうではなかった。


でも、そんな事よりも───



『王家では受け入れられないけど、聖女様は聖女様だから、邪険にする事もできない。ジュリアスなら、同行メンバーの中では公爵の子息と身分も良いし、騎士団の中でも有望株だから、()()()()って事だ』


あのバーナードさんの言葉に、何の反応もしなかったジュリアスさん。それが答えなんだろう。




『そっか。なら………()()()()を…考えてくれないかな?』


どんな気持ちであんな事を言ったのか。ある意味、ジュリアスさんも被害者と呼べるのかもしれないけど……


ーやっぱり……イケメンなんて……大嫌いだ!ー


黒羽(くう)───」


私は小さな声で、黒羽を呼んだ。











*翌日*




翌日の朝食は、食堂へは行かず、部屋に持って来てもらって食べた。

今日の予定は特になく、準備ができ次第、転移魔法陣のある王家所有の邸に行き、王城へと帰るだけだ。


朝食を食べた後、暫くするとジェナさんが迎えに来てくれて、領主さん達に挨拶をした後、王家所有の邸へと向かった。




「ミヅキのお陰で早く帰る事ができたわ。本当に、ミヅキに感謝だわ」

「そう…思ってくれるなら……ありがとう」


ニコニコ笑っているフラヴィアさん。昨日の話を聞いていなければ、その言葉通り素直に受け取って、私も普通に笑えていただろう。


「ミヅキ、本当にありがとう。きっと国王(父上)も喜んでくれると思う」

「そう…ですか?それなら…良いですけどね」


ー私は“デメリット”でしかないんだよね?ー


本当に、素直に笑えない。

そんな私の異変に気付いているのかいないのか。ジュリアスさんは、私にチラチラと視線を向けるだけだった。


それから、移動の馬車内では、ミリウスさんとフラヴィアさんとバーナードさん3人が中心にお喋りをしていたけど、私の耳には何も入って来なかった。








「浄化の旅、お疲れ様でした」


王家所有の邸で私達を出迎えてくれたのは、魔道士団長だった。団長もまた、ここにある魔法陣で、この邸に転移して来たそうだ。


「7人一気に転移は無理なので、2回に分けて転移していただきます」と言われ、1回目にミリウスさんとジュリアスさんとバーナードさんとネッドさん、2回目にフラヴィアさんとジェナさんと私、団長さんはその後、私達の荷物と一緒に転移するとの事だった。


ジュリアスさんとは、今日は一言も言葉を交わしていない。


ミリウスさんとジュリアスさんとバーナードさんとネッドさんが、床に描かれている魔法陣の上に立ち、団長さんが手に持っている魔石に魔力を込めると、その魔法陣から光が溢れ出し、キラキラと輝きを増した後、そこに居た4人の姿は無くなっていた。

そして、続けてフラヴィアさんとジェナさんと私が魔法陣の上に立つ。


「王都に帰ったら、ゆっくりお茶でもしよね」

「……そうだね…」

「……」


魔法陣が展開する前に、嬉しそうに笑いながらお茶の約束をして来たのはフラヴィアさん。私は曖昧な返事しかできなかったけど、ジェナさんは何故か何も答えなかった。何故か?と気にはなったけど、足元の魔法陣から光が溢れ出した為、思考はそこで途切れた。



ーさようならー



心の中でそっと呟くと、辺り一面光に覆われた。





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