11 大神官イシュメル
「ミヅキ様、お疲れ様でした」
「イシュメルさん……」
転移先で、私を出迎えてくれたのは、大神官のイシュメルさん。
「あの…私………」
「ここで立ったままだと疲れますから、部屋に案内しますね。あぁ、大丈夫ですよ。ここは、喩え王族であろうとも、大神官の許可が無ければ、何人たりとも入る事のできない、不可侵の領域ですから」
その事に安心して、私はイシュメルさんと一緒に、魔法陣の描かれていた部屋から出た。
*時は遡って、昨日の夜*
「黒羽───」
と、黒羽を呼んだ後、私はオールデンさんにお願いをした。
魔法陣で転移した時、私1人だけ、どこでも良いから王城ではなく違う場所に飛ばして欲しい──と。
『王城には帰らず、それからどうするのだ?元の世界に還るのか?』
「元の世界には還りません。もう、あそこには、私の居場所はありませんから。」
ーいや…この世界にも私の居場所は無いのかもしれないー
『この世界で居場所が欲しいなら、私が用意しよう。取り敢えず、転移先をイシュメルの所にするから、イシュメルと相談すると良い。しかし……今回の者達は、呆れた者ばかりだったな……』
「………」
『まさか、創世神が召喚した聖女に、あのような行いや考えを持っているとは……代わって、私が礼を言う。私の世界の国を救ってくれて、感謝する。ありがとう。』
と、私は創世神であるオールデンさんから感謝の言葉をもらった。
『しかし……このままではなぁ………』と、オールデンさんはポツリと呟いた後、神様らしくない笑顔を浮かべていた。
神様であっても、世の理があるから、直接人間に関わる事はできない─と言っていたから、オールデンさんが何かをする訳ではないと思うけど、何かを企んで?いるのは……確かだ。
ー神様にも、腹黒が…居るんだなぁー
『私にとっては褒め言葉だな』
と、オールデンさんはまた、神様らしくない笑顔を浮かべた。
******
そのお願い通り、私は1人だけ、イシュメルさんの居る神殿へと転移して来た。
それから、イシュメルさんに連れて来られたのは、神殿奥にある、大神官の居住の塔内にある応接室だった。この大神官の居住の塔が、不可侵領域なんだそうだ。
「元の世界には帰らず、この世界に残ると聞きましたが……」
「はい、その通りです。ただ、まだ何も決まってないので、イシュメルさんに相談しようと思って…聖女の能力以外、何もないけど…」
「私も大神官と言う肩書きがありますが、オールデン神の言葉を完全に聞き取る事ができないのです」
ーすみません。知ってましたー
「私は…色んなモノに、色が付いて視えるんですよ」
なんと、イシュメルさん、物に限らず人にも色が付いて視え、その色によって、その人となりが解ったりするそうで、オールデンさんの声が聞き取れなくとも、その声にも色が付いているから、その色で何となく理解できるらしい。ただし、声に色が付いて視えるのは、神様であるオールデンさんだけなんだそうだ。
「ミヅキ様に、青色と赤色のお友達が居ますね?」
私以外には見えない筈の、妖精のアイルとフラムの事だ。
「そのお友達にお願いしたら、快く受けてくれまして……」
「え?お願い?」
そう言えば、転移する前からアイルとフラムの姿を見ていない。
「この王都から離れた、結構な田舎なんですけど、私の生まれ育った領に、私の生家があるんですが、良ければそこに住みませんか?取り敢えずそこで過ごしながら、これからの事をゆっくり考えて、それから動き出すのも良いかと…それで、お友達にはその私の生家に、ミヅキ様に必要だと思う物を運んでもらったりしているんです。勝手にお友達を使ってしまい、申し訳ありません」
「謝らないで下さい!あの2人がイシュメルさんのお願いを聞いたと言う事は、あの2人は嫌がってないと言う事ですから」
アイルとフラムは見た目は本当に可愛いけど、自分の嫌な事は絶対しないし、嫌いなモノに対しての拒絶もハッキリしている。そう、特にフラムはフラヴィアに近付く事が無かった。フラヴィアが私に対して悪感情を持っていると言う事を、分かっていたからなのかもしれない。そんなフラム達がお願いを聞いたと言う事は、イシュメルさんの事は好きなんだろう。
ー私も好きだけどー
「それじゃあ、お言葉に甘えて、そこに住まわせてもらって良いですか?」
「ええ、勿論ですよ」
「あの…それで……私の事なんですけど…」
「えぇ、大丈夫ですよ。“ミヅキ様は元の世界に還った”のでしょう?」
「ありがとう…ございます」
無能な私を探す事はないだろうけど、この世界に残っている事を知られるのは嫌だから、還ったと言う事にしてもらった。
ーあ、そうだ、イシュメルさんには…ー
そう思い、心の中で『解除』と呟くと、私の体がキラキラと白い光に包まれた。




