♥ 旅を始めよう 2
セロロ
「 メグム、寝る時はこれの中へ入って寝るといいよ。
身体の冷えを防いでくれるからね 」
茜梶 惠
「 有り難う、セロロ! 」
セロロが木箱を開けて出してくれたのは、中がフワフワのモコモコになっている毛布の寝袋みたいなものだ。
毛布を半分に折り畳んで下と片方の端を縫い付けて作ったような感じの寝袋で、身長の低いぼくには長くて横幅もある。
寝返りも楽に打てそう。
寝袋みたいな中に裸足のまま入ると、フワフワとモコモコに包み込まれるみたいにフィットしてくる。
裸足が守られてるみたいな感じになって暖かい。
雪が降るぐらいに寒い日でも電気毛布や湯タンポが要らない程だ。
う〜〜〜ん……、一体何の毛皮が使われているんだろう?
それは兎も角、ぼくはセロロや使い魔みたいに不眠でも平気なわけじゃないから、朝まで確り寝る事にする。
頭が隠れるぐらいに寝袋にスッポリと入ったぼくは、セロロ,オロトさん,オシュトさん,ハクトさん,ミカトさんへ「 おやすみなさい 」をして就寝した。
?
「 ──じゃあ、薪拾いに行く人は集まってね〜〜 」
?
「 これで全員かな?
これから森の中へ入って薪拾いを始めます。
出来るだけ、乾いてる木の枝を集めるようにね 」
?
「 準備は出来た?
──じゃあ、薪拾いに出発!
はぐれないで付いて来てね 」
──あ……これ、子供会で行ったキャンプ場だ。
そっか……そうだった…ぼくは籤引きで薪拾いの係りになったんだった。
キャンプ場の敷地内の森の中へ入って、薪を探して拾って集めるんだ。
薪拾いに参加する子供はぼくを入れて6人で、手渡された袋の中に拾った薪を入れる。
配られた軍手を両手にはめて森の中へ入ったんだっけ。
薪拾いってつまらなくて面倒なイメージがあったけど、思いの外楽しくて夢中になって木の枝を拾い集めていたっけ。
誰が1番最初に木の枝を袋一杯に集められるか競争なんかしちゃったりしてさ、結構真剣になって拾っていたなぁ。
都会では聞く事のない知らない野鳥の鳴き声を聞きながら、TV画面の中でしか見た事のない野うさぎや野リスなんかもチラホラ見掛けながら森の中を歩いていたっけ。
排気ガスが蔓延している身体に有害な都会の空気なんかよりも綺麗で美味しい大自然の空気を目一杯吸いながら、森の中を歩くのは気持ち良かった。
行くのが嫌だった子供会のキャンプだったけど、キャンプを通して知らない子と仲良くなって友達にもなれたし、楽しい思いもしたから参加した事に対しては後悔はない。
夢中になって薪を拾っていた途中で集合の合図が聞こえたから急いで戻ろうとした時──。
そうだ、地震が起きたんだ!!
スッゴく大きな地震で、揺れが激しくて、とてもじゃないけど立っていられない程の強い揺れ。
ぼくは袋を放り投げて、近くの木の下に避難して、揺れが収まる迄の間、必死に木へしがみ付いていたんだ。
何れぐらい木にしがみ付いていたのかは分からないけど……、揺れが収まって木から離れたぼくは、皆と分かれた集合場所へ向かって歩き出した。
だけど……どんなに歩いても誰にも合わないし、キャンプ場も見えて来なくて……その変わりに違う建物が見えて……。
そうだ、ぼくは迷い込んだんだ。
多分だけど…ぼくが迷い込んだ場所は、亜人類が暮らしている≪ 集落 ≫の1つだったんじゃないのかな??
人間とは異なる姿を目にしたぼくは悲鳴を上げちゃって、亜人類に見付かって──、保護してくれたのかも知れない。
だけど…当時のぼくは亜人類語や大陸語なんて知らなかったし、不思議な言葉で話し合っている亜人類の姿が異常で異質で物凄く恐かった。
“ 捕まった ” と思ったし、もしかしたら “ 食べられちゃうんじゃないか ” っていう恐怖しかなかった。
連れて行かれた場所で幼馴染みで同じ薪拾い係りだった将吾と再会したんだ。
言葉が通じる日本人は将吾だけで──、将吾と話し合って「 逃げよう 」って事になった。
サッカー部に入っていたから走る事には自信があったし、長距離走は得意だったからぼくは将吾の提案に乗ったんだ。
まさか食事を持って来てくれた子に危害を加えて逃げ出す事になるとは思ってもみなかったけど……。
案の定、怒った亜人類が血相を変えて駆け寄って来るのが見えて──、 “ 責められる ” って思ったら怖くなって、将吾と一緒に≪ 集落 ≫から逃げ出したんだ。
“ 追われる ” って思ったし、 “ 捕まったら酷い事をされるんじゃないか ” って考えが頭の中をグルグルと駆け巡っていた。
捕まらない為に将吾と一緒に走って走って走って走って走って走って走ってひたすら走って──、いきなり将吾から突き放されて、囮にされたんだ。
日本に居る筈のない亜人類が居るんだから、此処は日本じゃないんだろう。
──あの巨大な大地震の所為なのかな?
あの地震の被害に遭ったのはぼくと将吾だけじゃなかったと思う。
残りの18名も大地震の被害を受けて、異世界へ来ちゃった口なのかな??
ぼくは本当に運が良かった。
五体満足な身体でセロロに発見してもらえて助けてもらえたんだから……。
残りの13名は五体満足な身体で暮らせているのかな??
≪ 王都 ≫にある神殿へ行けば会えるんだろうけど……、ずっと神殿の中で過ごすのは嫌だし、身体に焼きゴテを押されるのも嫌だし、洗脳だってされたくない。
ぼくと同じ異界人に会うのは諦めよう。
≪ 王都 ≫に連れて行かれていない異界人がもしかしたら居るかも知れないし。
旅をする中で探して見ても良いかも知れない。
異世界では黒髪と黒瞳の人間は珍しいみたいだから、もしかしたら見付けられるかも知れない。
視界がユラユラしている。
ぐにゃりぐにゃりと視界が歪んでいく。
ガタガタと揺れているのを感じる。
何の音だったかな??




