♥ 人獣族との暮らしの中で 10
美味しい料理を6人で囲んで楽しい夕飯の時間を過ごす。
窶れてゲッソリとして元気のなかったハクトさんとミカトさんも美味しい料理を食べて元に戻ったみたい。
笑い声の絶えない家族の団欒。
良いなぁ…。
こんなに楽しい食事を家族と出来るなんて、夢にも思わなかったもん。
ぼくの両親は裕福な暮らしを維持する為に共働きをしていて、朝早くから夜遅くまでバリバリ全開で仕事の鬼だ。
御互いに仕事が愛人や浮気相手だと言っても過言じゃないくらい、仕事に没頭していた。
子供と一緒に家族団欒を過ごすよりも、仕事を選んじゃう仕事大好き人間なんだ。
現代ならではのお似合い夫婦だよね。
ぼくを子供会のキャンプに参加させたのも両親だった。
ぼくは行きたくもない子供会のキャンプへ強制的に参加させられて…行かされる事になったんだ。
キャンプは楽しかったけど、ぼくは本当は…お父さんとお母さんと一緒に過ごしたかったんだ…。
キャンプ中──、何をしている最中に異世界へ来ちゃったんだろうけど……何が起きたのか全く思い出せないけれど、ぼくは2度と両親には会えないんだ。
仕事が大好きな仕事人間の両親は、子供会のキャンプでぼくが行方不明になったら、大好きな仕事を放り投げて心配してくれるのかな?
それともぼくが居なくなった事なんて気にしないで、より一層大好きな仕事に打ち込むのかな?
授業参観も父母参観も運動会も発表会にも両親は大事な仕事と重なって1度も来てはくれなかった。
ぼくは両親からどう思われていたんだろう??
厄介者だったのかな?
産まれて来たらいけない子だったのかな?
両親と楽しく団欒して過ごせた記憶が無いんだから、ぼくは要らない子だったのかも知れないね。
もし、そうだったら…ぼくが居なくなって、きっと両親は清々して喜んでいるに違いない。
だって大好きな仕事に好きなだけ没頭する事が出来るんだもん。
邪魔者は退散ってヤツかな?
ぼくは異世界に来て、セロロと出逢えて良かったんだ。
血の繋がりはないし、赤の他人だけど、それでも楽しく笑い合える家族になれるものなんだね。
セロロに助けてもらえて、セロロの家族になれて──、ぼくは幸運だし、幸せだと思う。
セロロ
「 オシュト,オロト,ハクト,ミカト──、荷造りをするように。
1週間後に≪ 集落 ≫を出るからね 」
茜梶 惠
「 えっ?
どうして≪ 集落 ≫を出ていっちゃうの? 」
セロロ
「 うん?
メグムも一緒だよ 」
茜梶 惠
「 ぼくも?? 」
セロロ
「 ≪ 集落 ≫を出て≪ 亜人領国 ≫≪ 中立領地 ≫≪ 魔族領国 ≫へ向かう事にしたからね 」
茜梶 惠
「 えっ…… 」
もしかしてぼくが「 行きたい 」って言ったから?
茜梶 惠
「 えと──、でも、5人も抜けちゃって大丈夫なの??
それにセロロは≪ 集落 ≫の相談役で忙しいんだよね? 」
セロロ
「 問題ないよ。
引き継ぎはするからね。
使い魔に衛らせているし、仮に怪物や人類から襲われても返り討ちに出来る。
ワタシが≪ 集落 ≫に留まる必要はないんだよ 」
オシュト
「 主殿、何故この時期に≪ 集落 ≫を出られるのですか? 」
セロロ
「 メグムには、この世界を自分の足で歩いて、自分の目で見て、耳で聞いて、直に学んでほしからね。
籠の中で教えるのは終わり。
旅をしながらでも授業は出来るし、生死を懸けた実戦式の方が早く身に付くからね 」
ミカト
「 主殿は、お優しいっすね!
スパルタ大歓迎っすよ、オレはね! 」
ひぇっ──、スパルタぁ?!
ハクト
「 ミカト……お前がすると虐待になるなら止めとけ〜〜。
今まで通りでいいんじゃねぇの 」
オロト
「 そうだぞ、ミカト。
メグムは亜人とは違うんだ。
異界人のメグムは此方側の人間とも違うんだ。
スパルタは良くない。
加減してやれ 」
ミカト
「 現生のサバイバルするんだぞ。
生っちょろい事、言ってんなよ。
なぁ、メグつぁんよ 」
茜梶 惠
「 えぇ〜〜〜………。
お…お手柔らかにお願いします? 」
オシュト
「 ミカト、あまりメグムをからかうなよ。
メグム、ミカトの冗談だから本気にしなくていいぞ 」
茜梶 惠
「 は…はい…(////)」
冗談……本当に冗談なのかなぁ……不安だよぉ…。
ハクト
「 1週間あれば、十分な荷造りが出来るな。
オレは馬車を作るぜ。
徒歩じゃあ大変だからな 」
ミカト
「 オレは保存食でも用意すっかな。
干し肉と燻製肉でも作るわ 」
オロト
「 メグムは自分と荷造りをしてみよう。
自分達は手ぶらでも構わないが、メグムは違うだろうからな 」
茜梶 惠
「 はい。
お願いします 」
オシュト
「 ワタシは旅の必需品を揃えよう。
ハクト、馬車を作るなら馬を用意する事も忘れるな 」
ハクト
「 分かってるよ。
任せとけって! 」
セロロ
「 メグムには初めての旅になるね。
長旅になるから大変だけど、慣れると楽しいよ 」
茜梶 惠
「 うん…。
セロロ、有り難う(////)
ぼく未だ成人してないのに…… 」
セロロ
「 気にする事ないよ。
亜人類の子供達を守る為の掟だからね。
メグムは亜人類じゃないから気にしなくて良いよ 」
茜梶 惠
「 うん… 」
そんなわけで1週間後、ぼくはセロロ,オロトさん,オシュトさん,ハクトさん,ミカトさん達の5人と一緒に≪ 集落 ≫を出る事になった。
明日からはオロトさんと一緒に旅に必要な荷造りをする事になったんだ。
荷造りなんて修学旅行と子供会のキャンプ以来だよ。
ちゃんと荷造り、出来るかなぁ?
一寸だけ不安はあるけど、実はかなりワクワクしていたりするんだ。
どんな旅になるのかな?
どんな出逢いがぼくを待ってくれてるんだろう??
異世界を旅する事が出来るなんて、夢みたいだよ。
夕飯が終わった後、ぼくはオロトさんとオシュトさんの後片付けの手伝いをした。
後片付けが終わった後は、夜飯の時間までオシュトさんの授業を受ける事になった。
大陸地図を使った歴史の授業だ。
≪ ファブレッタ大陸 ≫には現在、13ヵ国もあるそうだ。




