真実が明かされた時 「私達の真実・・・」
カサ・・・。
白い部屋の中、ページをめくる音のみがする。
カサ・・・。
先程、ラルーさんから、「今日月希姫救出作戦を決行するね!」
と言われて、とにかく、ソワソワして落ち着きません。
カサ・・・。
妙なことにもメイナさんも来ないし・・・。もし、メイナさんに
何かしたらラルーさんでも、許しませんよ!
カサ・・・・。
さっきから、扉の向こう側が騒がしいです。
気になります。一体、ラルーさんは具体的に何をしているのでしょう?
恐怖的な場面しか浮かばないから、心配で心配で・・・。
バタンッ!!
「ひうッッ!!?」
突然、乱暴に扉が開く。
それに驚いて私は身体を震わす。
妙な声を上げてしまったので、とても恥ずかしい・・・。
「月希姫!!無事か!?」
だが、そんな声が聞こえ、ゆっくり扉の方を見ると、
ずっと、待っていた私の大切なお父さんの姿が・・・。
「うぅ・・・お父さん!!」
「え!?」
耐え切れず涙を流し、救動さんに抱きつく。
それに驚きの声を上げる救動さん。なんとも痛快。
「月希姫、酷い痣だな・・・」
その後ろのお兄さんの姿を認識した時に、
お兄さんは言った。
「な!?これは一体誰にやられたんだ!?」
「救動さん、目が怖い・・・」
お兄さんの言葉を聞いた救動さんはすぐに私の姿を見て、
大声で言う。
メイナさんにも言われた、ここには鏡があるわけでもないので、
自分の姿がわからない。よって、どれだけ酷いのか全くわからない。
「まぁいい、すぐに逃げるぞ」
救動さんは私の手を引いて、部屋から出ようとしたが、
じゃらじゃら・・・。
私の足の鎖は私を逃してはくれない。
「また鎖か・・・どうしたものか・・・」
救動さんは困り果てた表情をする。
「安心しろ、ラルーがこんな事もあるだろうと、
俺にこんな物を貸してくれた」
お兄さんはそう言うと、背中に背負っていたリュックサックから、
はみ出た布に包んである細長い何かを取り出す。
布から取り出したそれを見て私は驚愕する。
剣だ・・・。
「それで・・・何をするの・・・?」
恐る恐る私は聞く、あれ?
この部屋でこのやりとり・・・デジャヴを感じる・・・。
「もちろん、鎖を叩き切る」
「え・・・!?」
サッとお兄さんは私に近寄ると、足の鎖に狙いを定め、
剣を振りかぶった。
「お兄さん、怖いよ!?」
「問題はない、直ぐに終わる」
バキンッ!!
そう言った直後にお兄さんは剣を振り下ろした。
大きな音を立てて鎖はあっさり切れる。
「よし、では行こう!」
救動さんは私をすぐに抱えてお兄さんと部屋を出る。
電気が付いていない暗い通路をスイスイと進む。
少し向こうから「ザクッ・・・ザクッ・・・」って、
いってますが、大丈夫・・・?軽く私は戦慄を覚える。
「そなたらは一体何者だ?」
不意に目の前に、白い顔を覆い隠す仮面を着け、
白い和風の着物に身を包んだ、妖しさ満点の黒髪の男性が現れて、
そう言い放った。
「だ、誰ですか?」
私はつい、その怪しすぎる容姿の男性が気になりすぎて
聞いてみてしまった。
「ど、どうするんだ、誰にも会っちゃいけないんだろ!?」
救動さんは激しく動揺している。
その後ろにこっそりとさっきの剣を握り締め、仮面の男を睨むお兄さん。
「・・・我はイヲナと申す者、博士殿の助手をしている」
とても古風な口調で自己紹介をする仮面の男・・・イヲナさん。
妖しさが増したような・・・。
「悪いが、俺たちを見たからには死んでもらう」
お兄さんは剣を構え私達の前に出て言った。
「そうか、その白髪の少女が月希姫だな?
そしてお前たちが月希姫を連れ出しに来た刑事と家庭教師か、
本来、我は月希姫の話を聞く予定だったが、
先ほど、最初の作品に理由を聞いたばかりだからな・・・」
考える仕草を取り、イヲナさんはしばらく黙っていると、
「無用な殺生は止めておきたかったが、これはいい機会
月希姫を奪うのならば、我はそなたらを止めねばならない
よって、今、ここで殺し合いをせねばならない・・・
意味が、分かるだろうな?」
仮面をつけてても感じ取る事が出来た。
静かな殺気を・・・。
「救動さん!私を下ろして!」
「!?」
私はとっさに動いた。
救動さんの腕の中で暴れ、わざと地面に落ちる。
痛い・・・でも、救動さんとお兄さんを守らなければ・・・!
相手は只者ではないと私の直感が告げている。
だから、お兄さんが戦っても勝てるとは思えない。
直ぐに私は立ち上がり、手を振り上げた。
奥の手を私は使う事にした。
「イヲナさん・・・警告します
私は・・・常識じゃありえない力を持っています
だから・・・貴方は簡単に死んでしまうでしょう
でも、もしここで黙って私達を見逃してくれるのなら・・・
見逃しましょう・・・」
「ほう・・・期待は出来なかった外れが、
思わぬアタリだったのは確かだな・・・」
「答えてください・・・!!」
「いいだろう、その力とやら、使ってみよ・・・」
相手はまだ私を舐めているようだ、
仕方ない。
突然、辺りが冷たく凍てつき始める・・・。
すると宙に氷のつぶてが現れる。
そして、氷のつぶては一気に大きく鋭い形に固まると、
イヲナさんめがけ飛ぶ。
「・・・」
黙って何もしないイヲナ、え?死ぬよ・・・?
私は、そう思った、が、
イヲナさんの目の前まで来ると、氷のつぶてが
粉々に砕けた・・・。
「え・・・!?どういうッ・・・・!!」
私は戸惑いを隠せなかった。
イヲナの手にはいつの間にか剣が握られており、
けれども、一体何が起きたか何も解らなかった。
「驚いた、初心でここまで出来るとは・・・
だが、未熟なのは変わりないようだ
今、私が氷のつぶてを切ったのを目で捉えられないとは・・・
まぁ、仕方ない・・・」
つまりは、目で捉えることができない程に速さで氷を切ったという事だ。
でも、人間がそんな事が出来るはずがない。
よって、イヲナも私やラルーさんと同じように力を持っている事だ。
次の攻撃を考えないと・・・私は色々な策を考えていると、
「月希姫ッッ!!」
後ろから救動さんが声を荒げ、私を呼ぶ。
「え?」
私は反射的に後ろを向く。
!?
救動さんとお兄さんが・・・鎖に縛られ倒れている・・・・。
この鎖には見覚えがあった。これは・・・。
長年私を束縛して離さなかった・・・私の部屋の鎖だ・・・!
「月希姫、隙が多過ぎるな」
「!?」
また、後ろから声が聞こえ反射的に振り返ると・・・。
す ぐ そ こ に イ ヲ ナ が 迫 っ て い た ・ ・ ・
そして、それを最後に私はイヲナの手で気絶させられた・・・。
「起きろ、月希姫」
身体を揺すられ、誰かが私を呼ぶ。
重いまぶたを開くと、そこには白い仮面が・・・。
「ひッ・・・!!」
驚きで私は覚醒する。
「落ち着け、私はお前を殺さぬ」
「え・・・?」
イヲナは意外な事を言い放った。
「お前には最初の作品の人質になってもらう」
「!?」
もっと最悪な事を言った。
イヲナは私の首元にナイフを突きつけ、
私を無理やり立たせる。
とても広い部屋の中央だ・・・。
ここは・・・メインホール・・・?
普通なら、直ぐにメインホールだと分かっただろう。
だが、そうは出来なかった。何故なら・・・。
真っ黒焦げに部屋全体が燃えた跡でボロボロで、元の綺麗な部屋とは
想像がつかない。
「最初の作品!まだこの屋敷にいるのだろう?
では、今すぐ、メインホールに来い!!
お前が救出すると言った、月希姫と刑事、家庭教師の命が
かけられているぞ!」
イヲナはそう叫び、ナイフに込める力を強めた。
私の後ろで救動さんとお兄さんが倒れている姿が見える。
情けない、私は何も出来ないんだ・・・。
「ああ・・・?なんだとぉ・・・?」
だが、突然頭上から、低く、怒りに満ち溢れ、
この世のものとは思えぬ声が響く。
怖かった。
とても、喉の奥が引きつり、心臓を鷲掴みにされたような感覚・・・。
それでも、私は上を向いた。
「!?
・・・あれは・・・誰・・・・ダレ・・・・?」
全く誰だか認識が出来なかった。
それは、真っ白な神々しく光を放ち、まるで蛇のようにうねる髪・・・。
正しく、本で読んだ「怪物 メデューサ」
赤い瞳は妖しく、深い血のような色・・・
恐怖的な光を放ち、赤く光り輝いていた・・・。
二階の階段の手すりに、猫みたいに手を置いて足を立てて座り込み、
イヲナを睨んでいた、未だかつてない恐怖を、戦慄を、
私は覚えて、固まってしまった。
「テメー・・・調子に乗ってんじゃねーんだよッ・・・!!」
そう言い、それは大鎌を握り締め、二階の手すりから飛び降り
イヲナのナイフを握る右手を切り落とした・・・・。
すると、私の手を掴み引っ張り上げると、大鎌でイヲナの首を撥ねようと
振り上げる。
「いいのか?刑事が死ぬぞ」
イヲナはそんな恐怖を全く感じていないのか、冷静に言い放ち、
無事な左手に握る銃を救動さんに向ける。
「・・・」
そのまま、それは動きを止めた。
え・・・?
私はゆっくりそれを見た・・・。
黒いマントを羽織り、白いシャツに黒いベストを着て・・・。
黒いスカートから覗く足は黒い靴下を着けて・・・。
黒いストラップ付きの大きめのブーツ・・・!
「ら、ラルー・・・さん・・・?」
「・・・要求は何だ・・・」
私の質問を無視して、相変わらず低い声でイヲナに聞く。
「刑事と家庭教師を返して欲しくば・・・
最初の作品の身柄を我らに渡せ、これを決めるのは月希姫、
お前だ」
「!?」
「分かった・・・期限はいつまでだ」
私は驚いた、それでも淡々と話を進めるラルーさん・・・。
「明日の正午
場所はここ、いいか?」
「・・・言う事は言ったでしょう、消えなさい」
「どうしてだ?
他に質問はないのか?」
「あのね・・・!私は今、他人にこのおぞましい顔を晒す事になって、
大変、不愉快なのよ・・・!!そんな私の気持ちもちょっとくらい、
汲んでよね・・・・!!」
「・・・よかろう」
それだけ言うと、イヲナさんは救動さんとお兄さんと共に消えた・・・。
「そ、そんな・・・!」
私は絶望のあまりその場に座る込む。
でも、ラルーさんはまた私の手を無理やり掴み
引きずりながら、私を外に連れ出す。
「い、痛いよ・・・!
ラルーさん・・・!どうしたの!?」
「月希姫!黙りなさい!
今、私は不機嫌、不愉快、のダブルダメージ喰らって、参っているのよ!
どうにか、代償を払わずに刑事さんと家庭教師君を取り戻す方法を、
今、必死に考えているんだから!!」
「・・・!!」
ラルーさんの言い分を聞き、私は黙ることにした。
そのまま屋敷の広い庭を抜け、立派な門を飛び越えると、
ラルーさんは近くに止められていた車に乗り込む。
「お嬢様!」
中からなんと、メイナが顔を出す。
「メイナ!?無事だったの!!」
「ええ、私は無事です。ですが・・・
どちら様・・・?」
メイナさんは顔を初めて晒した、ラルーの姿を見て、
誰かと聞く
メイナさんもラルーさんの素顔を見ていなかったんだ・・・。
「ラルーよ・・・メイにゃん・・・」
「メイにゃん!?」
突然、ラルーさんはメイナさんのあだ名?を言い放った。
意外と可愛いあだ名でびっくり。
「ラルー!
って、救動の刑事と守城はどうしたんだ!?」
運転席に座る、男性が顔を出して、ラルーさんに聞く。
銀色の髪に黄金の瞳のとても美しい人だ・・・。
思わぬ、格好良い人に胸がドキッとする。
「・・・最悪の結果よ・・・カルム・・・
刑事と家庭教師君を・・・・人質として、イヲナに拐われた・・・」
暗い顔のラルーさんが静かに答えた。
私も車に乗り込む。
「・・・!
そんな!一体、何を要求しているんですか!?」
「・・・私の身柄よ・・・」
「!?」
ラルーさんはメイナさんと運転席の男性に何が起こったのかを
説明しだした・・・・。
「メインホールで人を全員殺戮して・・・
終わった時に、イヲナが突然現れたの・・・
今回の目的は月希姫と話すことだけど、
問題の元凶の私に聞いた方が早いという事で、
イヲナは私に質問したの、
何故、月希姫を見逃したか?
何故、ここで殺戮をしているか?
それに私は全て、正しく答えた
そして、イヲナと殺し合いをしたわ
危険だからメイにゃんを避難させた、けど・・・
イヲナの話を聞いている内に、私はどんどん怒りを募らせ・・・
そして、私は怒り狂った・・・全力でイヲナを殺す
その為に部屋全体を炎で満たし燃やし尽くしたわ・・・
でも、イヲナはいつの間にか逃げていて、だから、私はイヲナを探して
屋敷内を徘徊したわ、途中、魂想 隠生を見つけたから殺して・・・
メインホールに戻ってみれば、ふざけた事をイヲナはほざいていた
そうして・・・・今の状況になっていたわ・・・」
なるほど・・・だからメインホールが焼け焦げていたんだ・・・。
って、ラルーさん凄ッッ!!
そして、そんな怒り狂ったラルーさんから
逃れてみせたイヲナさんもやはり只者じゃない・・・!!
「・・・!
ラルー、ご主人様を本当に殺したの!?」
「ええ、正真正銘、確かに魂想 隠生を殺したわ
殺すときに「私は魂想グループの社長、魂想 隠生なんだぞ!
ひッ!た、頼む!殺さないでくれ、金ならいくらでもくれてやる!
だからぁぁぁ!!!」
って、泣き喚き散らしてたから、確かよ」
「なんか、生々しい・・・無駄に演技力ありすぎ・・・!
そして、死んだ人の事、悪く言うのは悪いけど、言わせてもらうわ、
つくづく最後までクソみたいなクズね、魂想 隠生・・・。
って、魂想グループの次期社長はどうするの!?
はっっ!!月希姫・・・?月希姫か!月希姫が社長!!」
メイナさんがとても生き生きしている・・・。
初めて見た・・・。・・・。
そっか・・・。あの男を、ラルーさんは殺したんだ・・・。
「あの・・・。」
「何・・・?」
「礼を言わせてください。
あの男を殺してくれて・・・・。ありがとうございます・・・!!」
私はラルーさんに礼を言い、土下座をする。
私、土下座なんて人生初・・・。
「別にいいのよ、私、殺すのが仕事、けん趣味ってトコだから。」
「父親を殺されて、それを感謝する娘・・・。
こんな現実、変えないとね・・・。」
メイナさんは意味深に呟く・・・。
「そうだ・・・。こっちのとは初対面なのよね・・・?
自己紹介をしないとね?」
ラルーさんはそう言って、運転席の男性を指刺す。
「初めまして、俺はカルムと言うんだ。
まぁ、ラルーの世話をやってるってトコだ。」
運転席の男性・・・。カルムさんは自己紹介をした。
「私は・・・。魂想 月希姫と言います。
魂想グループ次期社長です。」
「本気で魂想グループ次期社長の座を狙っている!?」
カルムさんはナイスなツッコミを入れてくれた。
この人とは楽しくやっていけそうだ・・・。
「ほら、早く、私の家に行きましょう。
これ以上、ここに留まっていたら足がつく。」
「分かった。」
ラルーさんの指示で車を運転するカルムさん・・・。
「しかし・・・。どうして、メイナさんがここに?」
「私・・・。実は、ラルーの計画に協力していたの、
それで、私はここにいるっているわけ、
でも、大変ね更に人質を取られるなんてね・・・。」
「・・・。大丈夫・・・。なのかな?」
「大丈夫よ、ラルーがどうにかしてくれるわ。
これでも、ラルーの実力は確かだし、とっても頭が切れるから、
驚きの作戦でどうにかしてくれるわ。」
メイナさんは今まで私に決して見せることのなかった優しい笑みを浮かべ、
私を慰めてくれた。
嬉しい・・・。
「・・・。月希姫・・・。その痣・・・。」
突然、ラルーさんが私に声をかける。
「あの男に拷問された痕です。でも、大丈夫です。」
「・・・。ちょいと、こっちに来にゃ。」
「・・・?」
ラルーさんは私の頬に手を当てると、
ブツブツ何かを呟き始めた。
「・・・!?凄い・・・!」
横から見ていた、メイナさんが驚く。
何が起きているの?
「ほい、痣、全部、治したから。」
短く、ラルーさんは言うと体育座りで窓の向こうを見つめ、ボーッと
し始める。
え?痣を治した・・・?
「ら、ラルーさん・・・!ありがとうございます!」
また私は礼を言う。
傷まで治せるなんて、ラルーさんはとても凄い・・・!
「さぁ、盛り上がっている様子だけど、
家に到着したから、話は家の方でしてくれ。」
カルムさんはそう言うと、
車を止めた。
ドアを開けて私は最初に降りた。
「・・・。」
その次にメイナさんが降りる。
「・・・。」
思わず黙り込んでしまったのは、どうやらメイナさんも同じようだ。
「なに突っ立てんの?早くなさい。時間がとても惜しいわ。」
「ねぇ・・・。アンタ・・・。
こんな豪邸に住んでるの・・・?」
「?そうだけど?」
「何、それがどうしたの?って顔すんのよ!?」
メイナさんが全力のツッコミを入れる。
それも無理もない。
大きな湖の真ん中に浮かぶ小島にそびえ立つ古風な洋式のお屋敷は、
とても雰囲気があって、絶対、高い価値があるのだろう。
というか、どうやってこの湖を渡るの?
見たところ舟はないみたいだし・・・。
「ほら行きましょう。」
そう言って、ラルーさんは無理やり私とメイナさんの肩を掴み、
湖に向かう。
え?おかしいぞ?真っ直ぐ湖に向かっているぞ?
「通行りょ・・・。」
「ほい。」
突然、黒いマントを羽織り、フードを深くかぶる、とてもラルーさんに
似ている人が灰色の器を持って、何か言いかけて現れたが、
ラルーさんが何かをその人に向かって投げたので、
それを追いかけて、走り出す、謎の人・・・。
「え?え?待っ・・・!」
すると突然、ラルーさんは走り始めた!
ちょっと?このままだと、湖にドボンですよ?
「待たない!」
「えぇぇぇぇぇ!!?」
そしてついに湖に向かって高くラルーさんは私達を持ったままジャンプする
ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?
うわぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・!!!!!!
「あれ?」
だが、何も水に落ちる衝撃を感じなかった。
妙に思い、辺りを見回す。
・・・。あれ?私達・・・。浮いてる・・・?
「違うわよ。」
私の考えを理解しているラルーさんが、すぐに否定する。
そして、下を指刺す。
?
私は下を見る。銀色のメタリックカラーの地面が現れている。
「どういう・・・?」
「簡単に説明するなら、空飛ぶ絨毯ってトコかしら?」
「ええええええええええええええ!!!?」
「ま、そういう事だから、安心なさい。」
これは空飛ぶ絨毯と言いたいのか・・・?
どちらかというと、空飛ぶ鉄板では・・・?
「なるほど・・・。そういう事ね・・・?」
すると、後ろからメイナさんが顔を出す。
青ざめて、若干震えている・・・。
「大丈夫・・・ですか?」
「大丈夫・・・。タネを聞いて落ち着いた・・・。」
「お二人さーん。そろそろ、到着よー。」
ラルーさんは慣れているからなのか、堂々と立って、
前方を指刺す。
私もその方向を見る。先程見た時よりも、
高く、大きく、そして古くそびえ立つ孤島の屋敷・・・。
迫力満点だった・・・。
ようやく、空飛ぶ絨毯ならぬ空飛ぶ鉄板から開放された私とメイナさんは
早速、屋敷に入った。
大きな扉を開けて玄関ホールでもう度肝を抜かされた。
中世の鎧がずらりと壁に沿って整列し、武器を掲げている。
真っ赤な上品なカーペットは、とても大きく絶対、高い値段が付くだろう。
大きな階段が右側の方にあって、二階へと続いている。
真正面に大きな扉があるが、右の方にも左の方にも広い廊下が続いていて、
たくさんの部屋の扉がいっぱい見える。
どれがどの部屋だか分からなくならないのかな?なんて、
素朴な疑問が浮かぶ。
壁や床は黒色に統一されているので、
部屋に置かれた物は大体が赤や白、銀色と、
カラーバランスを整えてある。高級感満載である。
「ここにしばらく滞在していなさいメイにゃん。
一日限りだけど、くつろいでいってね月希姫。」
そして、こんな立派な屋敷の主 ラルーが仕切って、
私達を真正面の扉に案内する。
真正面の扉の向こうの部屋には
大きな細長い白いテーブルがデーンと置かれた、
恐らくリビングなのだろう。
黒いもふもふのカーペットが敷かれており、これを土足で
踏んでいる私は申し訳なくなった・・・。
縦に置かれたテーブルの向こうには白い不思議な形をしたソファが
置いてある。ソファが置かれている場所は数段階段があり、少し
地面より高い。
「メイにゃんはここで少し待ってて、月希姫、こっちにカァム。」
ラルーさんはメイナさんを無理やりテーブルの椅子に座らせて、
私の肩を掴み、ソファの左側の方にある扉の向こうに引きずる。
そこは今までとても綺麗で高級感溢れる雰囲気の部屋とうって変わって、
滅多に使わないのかホコリが積もっている。
ずっと高く階段が壁に沿ってグルグルと続いている。
上の方を見てみればこれはとても高い塔だという事が分かる。
ラルーさんはその階段を登り始める。
でも・・・。私は耐え切れず言った。
「あの・・・!教えてください!私に真実を・・・!」
「・・・。何を突然、言い出すのかしら・・・。」
「ラルーさんは全て、知っているのでしょう!?
何も知らずにのうのうと生きている自分はもう嫌です!
お願いです・・・・!!」
「・・・。」
私は必死に言った。
「・・・。そう・・・。じゃ、条件付きでいいかしら。」
「え・・・?」
「もしも・・・。真実を聞いている時、聞き終えた時、
貴女が動揺したり、真実を認めたくないと言う素振りを見せたら・・・。
貴女にはまだ早いという事で、私が貴女の記憶を消す・・・・。
それでもいいかしら?」
「!?・・・・。分かりました・・・。
絶対、受け入れてみせます・・・!!その真実・・・!!」
「ふーん・・・。覚悟は十分ってトコかしら・・・。」
階段の途中、まだ、階段を登らずに立ち尽くす私を見下ろし、
ラルーさんは語りだした・・・・。
「知っているかしら?世界は一つではないという事・・・。
俗に言う、パラレルワールドよ、
私は・・・。私が持つこの力はとても強力なものでね・・・。
時と時空さえ捻じ曲げ、越える事ができるのよ。
だから、興味本位で私は別世界を廻り始めた・・・・。
様々な世界に私は感動し、絶望し、喜び、とにかく充実していたわ。
でも・・・。私はある日・・・。殺戮衝動に駆られた。
あろうことかそこは何万人もの人が住む立派な王国だったわ。
一度、私が殺戮衝動に駆られると、周りにいる人間全てを殺さずには
いられなかった。だから・・・。
王国を滅ぼしてしまった。その時、私はその王国の姫をこの手で・・・。
殺した。忘れられなかった。記憶はおぼろげでも、
その瞬間だけは決して忘れる事など、出来ないわ・・・・。
姫は白い髪で赤い瞳・・・。私と同じ姿をしていた。
そんな姫は死に際に叫んだのよ・・・。
「貴女の世界の私達は救われない。愚かな神に思う上がる者のせいで、
私は救いたい。でも、貴女は・・・。どうなの?」
それはまるで私の心を見透かしたかのような一言だったわ。
それが・・・・。もう一つの世界の・・・。月希姫よ。」
「・・・!」
「その姫はどうやってかは解らないけど・・・。
もう一つの、私の世界にいる自分自身にアクセスし、自分の人生、
自分の因果、何から何までを貴女に掛け合わせたのよ・・・・。
だから、貴女はハズレの欠陥品だったのに、突然、アタリになった。
私は最初、貴女たちは邪魔男にその身を提供する、酔狂なイカレ人間だと
思ったわ。でも、その姿はかつてこの手で殺めた姫に似ていた。
だから、話を聞こうと思った。でも、話を聞いてみれば、
ただうまいように利用されてただけじゃない!!
私はそれがきっかけで、貴女たちを守る、そう決めたの。
もう一つの世界で貴女たちを殺した、私の責任を、取るって・・・。」
「・・・。」
「あのね、月希姫。この力の正体はね、
イカれた博士が編み出した力で、その力を人の肉体に加える事で、
その人は自由自在にこの力を使えるようになる。
それこそ、人類が夢に見た夢の研究だわ!そのイカれた博士は
魔法とかに憧れ、それを人工的に使えるように研究した。
それには作品となる被検体が必要だった。そして、
そのイカれた博士はまず一番最初に自分の娘を実験に使った。
それは見事成功。だから、同じ方法で別の人に同じ手術を加えた。
でも、何故かそれは失敗した。何故なら、娘は生まれつき白い髪の赤い瞳の
少女で、別の人は正常な人間だった。博士は力が使える人間は限られていると推測し、実験を重ね、力が使える人間の特徴を特定した。
それは、因果が多い事、女である事、白い髪の赤い瞳のアルビノである事、
だから、博士はアルビノの哀れな少女達を実験にかけ、
更に研究を進めに進め・・・。月希姫のように、
人工的に才能のある少女を生み出す程に至った。
この力には無限の可能性が秘められている。不老不死も、
金銀財宝も、世界征服も、何から何までが夢ではないのよ!!
だから、各国からたくさんの支援を受けた・・・。でも・・・。
その博士の娘は、それを許さなかった。
自分は普通に生きたかった。
自分がみんなとは違うから不幸になった。
それなのに、そんな研究の結果にあらゆる国は満足した。
そんな現実を激しく憎み、そんなイカれた研究を止める為に、
娘は自分の父親を殺す。そう、決意した・・・。
その娘ってのがね・・・。私なんだよ・・・・。
月希姫、貴女は、刑事と家庭教師君を救う。
その為に私の命を差し出す。いいわ、喜んでこの命、
貴女に預けましょう。だから、絶対に幸せになりなさい。」
「!?ラルーさん・・・・!!そんな事・・・!!
私には出来ません!貴女は私より酷い運命に苦しんでいるのに、
それを利用するなんて・・・!!」
「・・・。大丈夫よ、どうせまた、捕まったら脱走すればいいんですもの!
私は、月希姫とは違って、強いからね・・・!」
「その言い方は、ひどいんじゃ・・・?」
「ふふ、大丈夫そうね、なんとでも言ってなさい。」
ラルーさんは意地悪な笑みを浮かべ、階段を登り始める。
ラルーさんは、とても辛い過去を持っているのに、
戦っている。確かに、私なんかより、ずっと強い・・・!
・・・。まさか私は、意図的にこの力に目覚めるように
監禁されていたなんて、夢にも思わなかった・・・。
もう私もラルーさんも人間ではないのかもしれない・・・。
「あの・・・。」
「ん?何かしら?」
「イヲナさんは一体、何者何ですか?
ラルーさんが言った条件だと、イヲナさんは私達みたいな力は持てない。
でも、私と戦った時、普通なら出来ないはずの事をしてみせた。」
「・・・。どうやら、私が知っている条件は私達のシリーズの場合の物で、
イヲナは、また異なるシリーズの者らしいのよ・・・。」
「異なるシリーズ・・・?」
何だろう、その物言いだと、私達、お店の商品みたいな言い方だ・・・。
「邪魔男は・・・。いずれ私達のシリーズを各国に戦力として売り出す
つもりみたいなの・・・。全く、イカレているわ・・・・。」
「売る・・・?」
本当に商品だったんだ・・・。
「イヲナわね、邪魔男の助手をしていて、自らその身を差し出した
酔狂なイカレ人間の前例だわ。高い実力を持っていて、
今まで真正面で何度も戦ったけど、決着が着いた事がないわ。
それでも、イヲナは邪魔男の味方だから、いつか必ず始末をしなければ
いけない存在よ。」
「・・・。救動さんや、お兄さんは・・・。
大丈夫なんですよね・・・?そんな人の元で・・・。」
「大丈夫よ、大事な人質なんだから、傷つけるような、
アホな事だけはしないはずだわ。イヲナは確かにイカれてるけど、
賢明でもあるから・・・。」
「・・・。賢明、ですか・・・・。」
確かに、イヲナは賢明である
人質は卑劣な手段だ。それでも、今まで真正面から戦っても
決着がつかなかったそんな相手を、思い通りにするためには
賢明な判断でもある・・・。イヲナは強く否定は出来ない。
だって、私は救動さんとお兄さんを救う為に誰よりも辛い経験を
し続けたラルーさんを差し出すつもりになっているのだから・・・。
「さ、早く来なさい。」
ラルーさんは階段の随分上の方までいつの間にか登っていて、
全く登らない私を急かす。
私は階段を登り始める。なるべく早足で、
大丈夫。ラルーさんは強いから、例え捕まっても
さっき言ったように、また逃げられる。
「ああもう、まどろっこしいなぁぁ!!」
「え?」
あれ?我が目を疑いたい光景を目にしているよ?私、
ラルーさんが、上の方の階段から、私めがけ飛び降りているよ?
え?え?え?状況について行けない・・・!!
だが、そうしてる間もラルーさんは落ち続け・・・。
私の目前まで迫って・・・・。
ドカッッッッッ!!!!!!
強すぎる衝撃に一瞬目の前が真っ白になる。
感覚全てが遮断される。
視界が元通りに戻り、
状況を認識する。私は幸い、階段の踊り場で倒れていて、無傷だ。
身体の上に何かが乗っている。でも、それほど重くはない。
だいたい、数キロ程度の重さだと思う・・・・。
私は自分の上の何かを見るために目を向ける。
え?
またもや驚愕した。
ラルーさんだった。私の上に乗っているのはラルーさんだ。
ラルーさんは何くわぬ顔で私の表情を眺めている。
別にそれは何の問題でもない。
問題は、ラルーさんの体重が数キロ程度に感じられるという事だ。
嗚呼、とうとう私の感覚が壊れたようだ・・・。
「どうしよう・・・。ラルーさん・・・!私、おかしくなっちゃった!」
耐え切れず私は叫ぶ。
「大丈夫、私の体重が数キロ程度にしか感じられないという事でしょう?
大丈夫よ、正真正銘、私の体重は6キロだから。」
「は?」
「いや、本当なんだって、
人体は普通、成人した身体で一桁の体重になったら栄養失調どころの
問題ではない。大きな病である。けれど、私のこれは私自身が
望んでわざとこうしている仕様なのよ。」
「・・・。あの・・・。」
「何かしら?」
「・・・。ラルーさんに出来ない事って、ありますか・・・?」
「・・・。うーん・・・。そういえば、ないわね?
その気になれば私は何でも出来る。体重をコントロールするのも、
炎で全てを焼き尽くすのも、影を支配し影の王国を作るのも、
人類全てを殺戮するのも、何だって私には出来るわ。」
「いくら血迷っても最後のだけはしないでくださいね・・・?」
「分かっているわよ、私はこう見えて、世界や人類には
まだ期待しているから。」
良かった、この人ならやりかねない事だったから・・・。
って、「まだ期待している」?
ていうことは、もう期待が出来なくなったら、
殺るって事・・・?ええええ!?どうしろと!!
「ほら、到着したわよ。」
「?」
不意に声をかけられて私は前を向く。
いつの間にか私は階段を登り、最上階まで来ていたの・・・?
「私が瞬間移動させたのよ。」
補足的にラルーさんは言う。
もう私はラルーさんの口から驚愕の言葉が飛び出ても驚きませんよ!
「ここは、一日限りの客人をもてなす為の特別な部屋。
ゆっくり、くつろいでね。」
そう言って、ラルーさんは最上階の部屋の扉を開く。
その部屋は今までの部屋と打って変わって、水色よりも薄い色を
基調にした部屋だった。正面の壁は大きな窓で、優しい日の光が入り、
開け放たれた窓から風が薄いピンクの透けたカーテンを揺らす。
右側の壁には美しい風景画が掛けられている。その絵画より奥の方に
立派な装飾が施されたタンスが置いてあり、その上に長方形の白い布が
敷かれ、その上にガラス細工の対となった白鳥が羽根を広げている。
その間に同じくガラス細工の翼を生やした美しい天使が弓を持って、
佇んでいる。左側の壁の方にベットが置かれている。
そのベットの横の小さな丸いテーブルには
メモ用紙とお洒落なペンが置かれている。
「・・・。ここは、窓から見える風景がとても綺麗なのよ。
だから、美しい風景を際立たせる為に、薄い色で統一したの。
こだわりの部屋だから、月希姫も落ち着いてリラックス出来ると思うの、
いいかしら?」
「・・・。とても・・・。素敵なお部屋です・・・!」
「そう、なら良かったわ。じゃ、私はメイにゃんを案内するから。
何か用があったら、部屋から出ず、大きな声でもなくてもいいから、
私か、カルムを呼んで頂戴。」
「はい・・・。」
ラルーさんはそれだけ言うと、退出した。
私は、開かれたままの扉を閉めて、また部屋を見回す。
確かに、窓の外の風景を際立たせるルームデザインだ。
落ち着く・・・。
そんな、素敵な部屋の真ん中まで私は歩み寄ると、
まるで、糸の切れた操り人形のように、力なくへたり込んだ。
ラルーに説明された事を思い出し、整理する。
私は、何も真実を受け止める事が出来た訳ではない。
全く、理解が出来なかった。受け入れるも何も、ピンとも来ないのだ。
「それって・・・。私は人間じゃないっていう事・・・。
なんだよね・・・?」
動かない頭を働かせるために、あえて呟いた。
私は人間ではない。私は人間ではない。
私自身は実感がないから、もう気にしなければ問題はない。
でも、救動さんはどうなの?お兄さんは?
私は、未だにちっとも内容を思い出せない報告書を思い出そうとする。
けれど、それと同時に私は、報告書を読んだ救動さんと、
お兄さんの顔を思い出す。青ざめて私を恐れる救動さん・・・。
何もなかったふりをしたお兄さん・・・。
二人は、私を恐れた。
急激に私の視界が歪み、目頭が熱くなる。
涙が、また流れる。
もう変えようのない事実。
「私は・・・・。化け物なんだ・・・!!
人の姿かたちをしていても中身は人とは異なる・・・。
現に、私は有り得るはずのない力を持っている・・・!!
こんな!こんな化け物で、私は救動さんと家族・・・?
救動さんもお兄さんも、こんなおぞましい化け物、嫌だよね・・・?」
嗚呼、ラルーさんがフードを深く被り、誰にも顔を晒したがらなかった、
その理由を初めて私は理解した。
白い髪、赤い瞳、この容姿こそ、私達が化け物である根拠。
化け物なのに、人のように幸せになろうとした愚か者。
「こんな・・・化け物が・・・!
・・・。うぅ・・・。私は・・・!
幸せになりたかった、でも、こんな化け物じゃ・・・!
幸せになんて、なれない・・・!!」
私は、変えようのない真実に絶望した。
嘆き、悲しみ、ずっと、泣き続けた・・・。
心が痛い。苦しい・・・・。
カサ・・・。
だが、そんな時に聞こえた音・・・。
扉の方を見てみると、扉の隙間から一枚の紙が差し込まれている。
・・・?
私はその紙を疑問を抱き、見てみる。
その紙には・・・。
「誰が、私達は人間じゃない。化け物だって、言ったのかしら!?
私達は人間だわ!心があるでしょう!?肉体だって、皆とは
異なるわけじゃないでしょう!?それが人間の証拠だわ!
勝手に私の説明をひねくれて解釈しないで!!月希姫、貴女は、
正真正銘、人間だわ!私がそれを知っている!貴女は貴女自身を
否定してはいけない!いい!?力を持っているから化け物ではないわ!
力を持っているから幸せになってはいけない訳がないでしょう!?
もし、本当に化け物で、刑事さんと家庭教師君が貴女を恐れているなら、
貴女を救出に行く訳がないしょうが!!そこを、よく考えなさい!!」
乱暴な言葉の文章が書かれていた。
でも、この温かみがある文字は・・・・。
私に力の使い方を教えてくれた、いつだって私に自信を与えてくれた
あの本の文字その物だった。ラルーさんは、私を心配してくれているんだ。
「ラルーさん・・・!ありがとう・・・!」
その文字を見ると、みるみるうちに私の取り乱し、絶望に染まった心は
暖かく、幸せな気持ちに変わる。
ラルーさんは幾度となく私を救ってくれた。私を幸せにしてくれた・・・!
涙は止まらないけど、私は、今、全てを理解した。
救動さんもお兄さんも、ラルーさんもメイナさんも!
私を救う為に必死に命をかけているんだ、そんなみんなの気持ちを無視して
勝手に絶望に浸っているわけにはいかない・・・!私は、幸せに
ならなければいけないんだ・・・!!
「あれ・・・?」
突然、紙が裏返して落ちる。
そこには、まだ文章が続いていた。
「PS、ご飯の時間だから、
メイにゃんと別れた大きなテーブルの部屋に来なさい。」
もうご飯の時間・・・。
お礼を言いに行こう。そう思って私は、立ち上がった。
もう、私は、絶望などには屈しない。
そうだ。ラルーが見せた恐怖の夢の方がまだ怖いじゃないか、
私は今よりももっと怖い目に合っているんだ、これしき、平気だ!
「一体、何が有ったんですか・・・!?」
私は、幸せ気分で長い階段を降り、リビングに入ると、
驚愕の光景に遭遇。
見知らぬ男の人3人を足から天井に吊るされている・・・・。
「ああ、月希姫、来たわね。
こいつらが家庭教師君を襲った犯人だからさ、罰として
今夜の晩飯の隠し味にしようと思って・・・。」
「止めてください!人が隠し味になったご飯なんて食べたくはありません!
恐怖的にも程がありますよね!?」
「アハハハハ、冗談に決まっているじゃない。
どんなに私が狂ってるからって、人を食べるわけないでしょう?」
「ありそうな事だから、心配しました・・・。」
「私だと、ありそうな訳!?」
そうラルーさんは容赦なく、銃を取り出し、
男の人を吊るしている縄を驚異の命中力で撃ち、切った。
テーブルの上に落ちる3人の男の人は身体を強く打ち付けて、
悶え苦しむ。そんな彼らを、やはり、ラルーさんは容赦なく、
ナイフで手や足を刺す。
逃げられないようにする為だ。
「そういえば・・・。何で、お兄さんは襲われたんでしょう?」
「それはね、恐らく、私が流したデマのせいだと思うの。」
「デマ?」
「そう、「最初の作品に協力する内通者がいる」ってね。」
「・・・。ラルーさんのせいで、お兄さんが襲われたんですか・・・!?」
「・・・。ごめんなさい。」
ラルーさんは手を合わせて謝罪する。
ラルーさんのせい・・・。
「もう、終わった?」
メイナさんはテーブルの下から顔を出す。
「そんな所で何をしているんですか!?メイナさん!」
「いやね、部屋に案内されて、のんびりしてたら、
凄い音がするから、驚いて来てみれば、ラルーが男の人達を
容赦なく刺すわ、吊るすわで、怖くてテーブルの下に避難したのよ・・・」
メイナさんが非常に可哀想だ・・・。
「あの、思えば不審な事がまだ山積みなんですよね・・・。
ラルーさん、答えてもらえませんか・・・?って、何してんですか!?」
私は冷静にまだ解決していない謎を思い出して、
ラルーさんの方を見てみると・・・。
男の人3人を連続で背負投げをした後、
その内の一人の首を一気に締め上げていた。
「何ですか!その無駄のないキレのある動きは!!?」
「そりゃ、私は殺し屋だからね?動きに無駄がないのは当然だわ?」
「ラルーさん、殺し屋だったんだ・・・!?リアルに怖いです!」
「うん、実際に他の殺し屋からも恐れられているからね・・・。」
グキッ・・・・。
骨が折れる音がした。
どうやら、私と話していて手加減を忘れてしまい、
首の骨を折ってしまったもよう。
ありえない・・・・。
「あちゃー。やっちゃった・・・。カルム!掃除屋に連絡して頂戴!」
ラルーさんは、カルムさんに掃除屋さんを呼ぶように促す。
「・・・。こういう時は、私は一体どのような反応をすれば
いいのでしょうか・・・?」
「無反応が正解さ。」
そう言いつつ、ラルーさんは首を折って殺してしまった男の死体を
ポイ、と放り捨てる。まるで使い物にならなくなった人形を投げている
みたいだった・・・・。
「えと・・・。
まだ解らない事があるので、答えてもらえないでしょうか?」
「もちろん、答えるわ。」
「まず・・・。最初の謎です。
私が救動さんの手で初めて外に出る事が出来た時です。
不思議な事にも、私が監禁されていた部屋の扉はいつも鍵がかかっていて
閉ざされているはずなのに、救動さんが来る前には既に扉は開け放たれたの
です。」
「・・・。それは恐らく、
もう一つの世界の貴女の祈りによる現象でしょうね?」
「もう一つの世界の私の祈り?」
「残念ながら、具体的にどういう物なのかは解らないわ。」
「そうですか・・・。」
ラルーさんは生きている残りの二人の男の人をまた手足を縛り始めた。
「もしかして、もう一人の私の祈りは・・・。
あなたに復讐する事なんじゃないでしょうか・・・・?」
「あら、何でそう思うのかしら?」
私は自分の予想をラルーさんに伝えてみた。
すると、すっごくニッコリ笑ってラルーさんが私に迫ってきた。
笑みが黒いです・・・!怖いです・・・!
「えっと・・・!それは、
駐車場の時に無意識にあなたを刺したから・・・。
それと、予兆と思わしき変な夢を見たからです・・・!」
「予兆と思わしき変な夢?」
あれ、そっちの方にかぶりついたよ?
「えっと・・・。少女が揺れるロウソクの向こうにいて・・・。
その子が「忘れてはいけない」って言うんです。だから、私は
その言葉の意味を聞き返すと、突然、狂ったように笑い出したんです!
それに何故か夢の中の私は必要以上にその子を恐れてたんです・・・。」
「・・・。なるほど・・・。月希姫、恐らくそれは、
もう一つの世界の貴女の祈りとは関係はないわ。貴女の予想はハズレ。
復讐ではない事が判明したわ。」
「え・・・!?じゃ、あの夢は一体・・・!?」
「あの夢はイヲナが最初の作品対策として、貴女に見せた物だわ。
だから、夢の中の少女を私に似せたんだわ。
イヲナは貴女にそれを恐れさせたんだと思うの。
そう現実で私と遭遇した時、
私を敵と見なして殺すように仕組んだんだと思う。」
「!?じゃ、私がラルーさんを刺したのは、イヲナさんのせい!?」
「そういう事ね。」
イヲナさんって、怖い・・・。
精神攻撃ですよね?これ、軍事利用されない事を祈ります・・・。
「あの・・・。では、何で私達がただ利用されただけだと解ったんですか?
夢の事は知らなかったみたいだし・・・。」
「それは、貴女が私を刺した時、貴女は紅色の夜と言ったからよ。」
「紅色の夜・・・。」
「この世界の貴女が紅色の夜を知っているはずがない。
それなのに、貴女はそれを口にした。つまりは今自分を刺しているのは
月希姫ではなく、誰でもない。無意識に私に敵意を抱くように
仕組まれているんだって。」
ラルーさんは黒い笑みをようやく止めてくれた・・・。
怖かった・・・。
「へぇー。お嬢様とラルーの間には色々、大変な事があったのね・・・。」
メイナさんは、関心するように頷きながら言った。
「お嬢様って、もう呼ばなくてもいいんだよ?メイナさん。」
「いえ、私は決めました。お嬢様に仕える事にしました。まぁ、
監禁されていた頃みたいに24時間ずっと、パーフェクトには
仕えられないだろうけど・・・。」
「・・・!!完璧じゃなくてもいいです!ありがとうございます!」
「監禁されていた頃は24時間体制のパーフェクトだったんだ・・・。
でも、今でもそうできるんじゃない?メイにゃんなら、」
ラルーさんは今度は二人目の男の人の首を絞め始めた。
何で人を殺しながらおしゃべりしようとするのかな・・・?
「私は・・・。もう普通には生活出来ないからです。
私はあまりにも長い事、恐ろしい環境下で生きてきた。
その為に私の常識はおかしくなってしまいました。
だから、表で生きようとすれば必ずボロが出て、そのせいで、
裏を守る為に暗殺とかされたら、たまったものではありません!
なら、いっそのこと裏で生きてた方が楽でしょうから、ラルーの提案を
引き受ける事にしたの・・・!」
「・・・。人殺しのメイド?」
「・・・。人殺しのメイド。」
どうやらメイナさんの二つ名が人殺しのメイドに決定したらしい。
「でも、お嬢様の用件を何よりも最優先しますので、
用件があれば直ぐに私に言ってください!」
「分かりました・・・!」
でも、メイナさんも私のそばにいてくれる事になって私は・・・。
とても嬉しい・・・!
「さて、ご飯の時間だからね、ご飯持ってくるよ。少し待っててね?」
ラルーさんはそれだけ言うと、二人目の男の人をいきなり壁に叩きつけて
落とす。呆気なく男の人は死んでしまった。
ラルーさんの腕力は一体どうなっているのでしょう・・・?
「・・・。慣れなきゃいけないのかな・・・。
ラルーの人の殺し方に・・・。」
悲しげにメイナさんは言う。
あ、そうか。ラルーさんに殺しを教わる訳なんだから、
メイナさんは当分はラルーさんの殺戮に
付き合っていなきゃいけないって事か・・・。
・・・。メイナさん、頑張れ・・・!
ささやかにメイナさんに応援のエールを送る。
「ほい、今晩のご飯だよー。」
そう言って、お皿を幾つも力を使って空中に浮かべながら
ラルーはテーブルを指刺すと、宙を飛んでいたお皿はテーブルに
置かれる。料理は湯気が出て、暖かいミネストローネ。
「とても美味しそうです!」
「ありがとう、私の得意料理にして大好評の絶品料理よ。」
「何か、揺るぎない絶対的な自信があるんですね!?」
私は椅子に座り、ミネストローネが一番多く入っているお皿を取る。
それを見たラルーさんが私にスプーンを渡す。
「ラルー!掃除屋を連れて来たぞ!」
「ありがとう、カルム。掃除屋さん、少し待ってください、
最後の一人を仕留めますから。」
カルムさんが男の人を連れてやって来たのを見てラルーさんは
最後の一人を掴む。
ラルーさん、あらかじめ掃除屋さんを呼んでおくなんて・・・。
すると、ラルーさんはどこからともなく大鎌を取り出したかと思うと、
一瞬で横に薙ぎ払った。それと同時に最後の一人の首は私の足元に
ゴロゴロと転がってくる。
「・・・・。」
思わず絶句。
目と目が合ってしまった。首と、
「大丈夫?月希姫。」
「・・・・。」
「・・・。大丈夫そうね!さ、掃除屋さん、早く回収して頂戴!
これからディナーなの!」
「死体を前に食事の話題を出す人は初めて見たよ・・・。
恐るべし“狂気の死神”」
掃除屋さんは苦笑しながらため息混じりに言うと、
とても慣れた手付きで死体を回収し始める。
どうしよう、ミネストローネ、美味しそうなのに首を見た途端、
食欲が失せたよ・・・。
「お嬢様、記憶から一旦追い払った方が身のためです。」
メイナさんは食欲を失せてしまった私を察して、アドバイスをしてくれる。
うん、そうする事にします・・・。
私はスプーンを掴み、ミネストローネをすくう。
小さい四角に刻んだジャガイモとニンジンはトマトのスープを際立たせる。
私はそれを口に含む。
とても美味しい・・・!とても美味しかった。
涙が出そうになった・・・。
「ラルーさん、ミネストローネとても美味しいです!」
「ありがとう、さ、どんどん食べていって。ほら、
メイにゃんも!」
「・・・。変な物は入れてないでしょうね?」
「入れるわけないじゃない。」
メイナさんは疑惑の目をラルーさんに向ける。
でも、ラルーの返事を聞いて、諦めたのか椅子に座りラルーさんから
スプーンを受け取るとミネストローネを食べる。
「・・・!美味しいですって・・・!?
ラルー、アンタどうゆうチート技使ったの!?」
「ちょっと!私はどれだけ疑われているの!?間違いなくそれは
私の実力よ!」
メイナさんは目に涙を貯めながら言う。
どうやら涙が出そうになったのは私だけではなかったようだ。
「あ・・・。ラルーさん、
イヲナさんは精神攻撃ができるんですよね?」
「ええ、そうよ。」
「じゃ、このままじゃ、まずいです。
私は精神攻撃に対する耐性はゼロだから・・・!」
「大丈夫よ、ほら、いつぞや私、月希姫に頭突きしたでしょう?」
「あれ、めちゃくちゃ、痛かったです・・・。」
「アハハハハ!そう?
その痛い頭突きはイヲナの干渉を遮断するためにしたのよ。」
「え!?頭突きでイヲナさんの干渉を遮断出来るんですか!?」
「出来るからわざわざ家にまで行って頭突きしたのよ?」
「じゃ、もう心配はないんですね?」
「ええ。」
ラルーさんの返事を聞いて私は胸をなで下ろす。
良かった。しかし、ラルーさんの頭突きを思い出したら、
頭突きを受けた額が痛み出した・・・。痛かったなぁ・・・。
「じゃ、死体を回収したから代金を貰うよ。」
掃除屋さんはそう言って死体を入れた黒い大きめな袋を持って、
立ち上がる。
すると、ラルーさんは札束を掃除屋さんに渡す。
・・・。凄い金額だったと思う・・・。
「さて、私は明日に備え寝る事にしたから、
お休みなさい。メイにゃん。月希姫。何かあったらカルムに言って頂戴。」
ラルーさんはカルムさんを指差してそのままリビングにあるもう一つの扉
の向こうに行ってしまう。
「・・・。カルムさん・・・。」
「何だ?」
私はカルムさんを呼んでみる。
「カルムさんとラルーさんって、どういう関係なんですか?」
「・・・。うーん・・・。
そうだな・・・。月希姫の親代わりが救動の刑事なら、
ラルーの親代わりは俺って所だ。」
「え!?ラルーさんのお父さん!?」
「ラルーの本当の父親は月希姫の父親と同様に
娘を愛さず、酷い仕打ちをした出来損ないだ。
ラルーは血のつながりとか親とかのくだらなさを誰よりも知っている。
だからこそ、アイツは誰も信用出来なかった。
ずっと孤独だった。そんな中でアイツは唯一俺を信用してくれた。
だから俺はアイツを守るって、
アイツの為に何だってするって決めたのさ。
それを言い換えれば俺はラルーの親代わりって訳だ。」
「何だってするから親代わり・・・?」
「普通、親は子供のためなら何だってするものだ。
現に、救動の刑事は刑事なのに法を破ってまでお前を救いに行ったろ?」
「!!」
「いい親が出来たな、月希姫。
頑張って幸せになってやりなよ、それが救動の刑事への恩返しだ。」
カルムさんは言う。
救動さんの為に幸せになれ、と・・・。
私は親がいるという幸せを一度だって感じたことはなかった。
親がいた為に私はずっと、この白い部屋に閉じ込められているんだって、
苦しんでいた。
でも、カルムさんは私に教えてくれた。
親代わりの救動さんはとてもいい人だと、
子供の私のために法を破ってまで救いに行ったのだと、
そして、私は初めて感じた。
嗚呼、救動さんが私のお父さんになってくれて、
とても良かった。私は初めて親がいるという幸せを・・・。
初めて実感したんだと・・・!
「・・・。はい、カット!」
「へ?」
「今のシーン、いいシーンだったよ!
月希姫、カルム!永久保存版だね!」
いつの間にラルーさんはビデオで私達を撮っていた。
「・・・。ラルーさん・・・!今の消してください!
恥ずかしいです・・・!!」
「嫌よ!永久保存版だって、言ったでしょう?
消すわけがないわ!」
は、恥ずかしい!何故かは解らないけど、恥ずかしい!
「俺、上手く映ってた?
てか、月希姫はちゃんと撮ってやってるよな?」
「もちろん、撮ってるわよ。」
何故かカルムさんはカメラ映りを気にする。
カルムさんはとっても格好良いから平気だと思うよ・・・。
でも、私は・・・!!!
「ラルー、アンタ寝るんじゃなかったの?」
「いい話の気配を察知してビデオを回してたのよ。」
「そういうの察知出来るものなのね・・・。」
メイナさんはラルーさんの頭に空手チョップをする。
でも、全然痛くないと言わんばかりに満面の笑みを浮かべるラルーさん。
「そもそも、最初から寝るつもりなんてなかったわ。
こっそり、カルムを銃で蜂の巣にするつもりだったのよ?」
「え!?俺を蜂の巣にするだって!?ラルー、いくら俺が吸血鬼で
傷が治るからって、それはひどいんじゃ・・・?」
「え」
「え」
驚愕の事実がカルムさんの口から放たれる。
もう驚愕しないと決めたのに、思わぬ不意打ち・・・!
「ああ、そういえば説明してなかったわね、
このカルムは吸血鬼よ。」
「・・・・。あの、映画とかでよく出る、あの?」
「うん、映画のアレだよ。」
メイナさんはカルムさんとラルーさんを見比べながら言う。
吸血鬼って、もしや18世紀のヨーロッパに現れたという吸血鬼?
「信じられないけど、吸血鬼だからイケメンだと説明されたら
納得がいくわ・・・。」
メイナさんは皮肉混じりに言う。
「はぁ・・・。なんか疲れたからもう今度こそ本当に寝るわ・・・。」
そう言って、ラルーさんはまた部屋に戻る。
その言葉が若干信じられないのは私だけではないだろう。
「・・・。まぁ、私も寝る事にしたわ。」
メイナさんもリビングを退出する。
私も寝る事にしましょう。
「お休みなさい、カルムさん。」
私はカルムさんにお辞儀をしてリビングからあの長い階段の塔に移動する。
階段を登ろうと足を踏み出したその時、
バタン!
は?
私はそのまま綺麗に倒れる。
・・・。長く歩くと私が倒れる理由。
ラルーさんに聞くの、忘れた・・・・。
そして、今までもかなり長く歩いていたのに倒れなかったのは私にとって
重大なミステリーとなった・・・。
頑張って私は倒れながらも階段を登りきり、
部屋に入る。
はぁ・・・。疲れた・・・。
私はベットに横たわる。
私は、本当にラルーさんをあの恐ろしいイヲナさんに差し出すんだ・・・。
本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまう。
今日はいっぱい色んな事が分かった日だ。
私の他にイヲナという力が使える人の存在。
ラルーさんの驚異的な実力。
その素顔。
私達の真実。
カルムさんの正体。
とにかくいっぱい・・・。
ラルーさんは、こんな日々を当たり前のように送っているのだろうか?
明日が、とても怖い。
明日、何が起こるか、何もわからない、誰にも予想なんて出来ない。
もしかしたら、
イヲナさんが約束を破って、救動さんとお兄さんを返さず、ラルーを
捕らえるかもしれない。
・・・。もう、こういう事は考えない事にした。
一度考えると、なかなか止まらないからだ。
「もう、寝る寝る!
大丈夫。明日はきっと大丈夫。万が一にもイヲナさんが約束を破っても、
ラルーさんが許すはずがないもの・・・!だから大丈夫・・・。」
私は自分に言い聞かせるように呟き、
まぶたを閉ざす。
「ええ、もちろん。
イヲナが約束を破ったら
承知なんてしないわ、生まれてきた事を
徹底的に後悔させてやる。」
不意にラルーさんの声が響く。
ラルーさん、オソロシヤ。
「アハハハハ!カタコトになってるわよ?
まぁ、安心なさい。明日は絶対に、
貴女を後悔させるような事をさせないわ!
だから、安心して寝なさい。」
はい、そうする事にします。お休みなさい・・・。
私はラルーさんの優しい気遣いの言葉を聞いて、
安心したのか、だんだん眠くなっていった・・・。
うぅ・・・。睡魔めぇ~・・・。
ZZzzz・・・・。
「寝ちゃった・・・。
大丈夫よ、月希姫。本当に貴女を守って見せる。
・・・。真実はいつだって残酷ね・・・。
こんな小さな少女にも平然と突きつけられるの
だから・・・。」
意味深に呟いたラルーは、真っ白な真っ白な部屋の中。
タンスを開けて、険しい顔つきになる。
月希姫の秘密を悟り、彼女は・・・。涙を流していた。
あえて、月希姫の秘密を一つだけ残す事にしました。
またもや意地悪してごめんなさい・・・。
そして、またもや次回、ラルー視点で行きます!