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ただの俺の話  作者: lucky


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研修と参考書

  2019年1月、俺は落とした単位を取り戻すため後輩と一緒に病院で研修を行うことになった。あと1つの落とした単位は冬休み中に取ることができた。先生が冬休み中に研修が出来るように病院へ掛け合ってくれた。優しい先生方だったよ。本当に。こんなに問題を起こす奴にチャンスをくれた。感謝しきれないよな。

 周りはもう全ての単位を取得し国家試験に挑んでいる。俺もこの研修を除いて全ての単位を取れたが、この研修を落としたら国家試験を受ける権利すら与えられなくなる。何としても研修を無事に終了させる必要があるのだ。

 後輩にとっては初めての病院研修で俺にとっては最後の病院研修だ。何だか複雑な気持ちになる。後輩の中に俺みたいになってしまう人はいないだろうか。悩みを抱えて暗い世界に閉じこもってしまう人はいないだろうか。俺は研修よりも後輩を心配してしまっていた。

 自分の鬱が治ったわけではない。ただ薬を飲まなくなっただけの自分であったが誰かを気にかけたり心配することができるくらい少し心に余裕ができていた。かなりの進歩だったと思う。今までは自分のことばかりで毎日死にたいと思っていたからね。だから後輩には悩みがあれば相談してくれと伝えて研修に挑んだ。

 3週間毎日、研修の記録をとって整理する。1日に書く紙の量はA4用紙5枚分くらいだったか。それに加えて、看護の技術練習や小論文の作成を行う。あまり詳しくは書かないが、かなり大変なんだよね。朝5時に起きて予習をして8時過ぎから病院の研修、17時くらいから21時くらいまで記録の整理、そこから24時過ぎくらいまで小論文を作成したり、寝る時間はほとんどない。でも俺は不眠症を武器にこれらを行っていた。後輩は寝れないとか記録の整理ができないなどの相談を俺にしてきた。うれしかったね。初めてこの学校で誰かに頼られた気がした。記録の取り方や時間の使い方についてアドバイスをしたが、研修や学校の授業に参加することが1番大事だと伝えた。そうしないと俺みたいに本来試験勉強をしなくてはならない時期に勉強が出来なくなるとも伝えた。後輩は妙に納得した様子で

「そうっすよね。この時期に試験勉強できないのはやばいっすよね」

と俺に言ってきた。正論を言われ試験勉強をどうするか考えたがやるしかないとしか思えなかった。

 研修は無事終了し、単位も取れた。後輩には感謝の気持ちを伝えたよ。俺なんかと一緒に研修をしてくれたこと。気軽に話してくれたこと。うれしかったね。そうして俺は国家試験に挑むことになった。国家試験まであと2週間。2週間で試験の準備をしなくてはならない。普通なら夏休みや冬休み中に試験勉強をして今この時期にまとめるのがセオリーだろうが、夏休みにODして冬休みに再研修をしていた俺にとってはこの2週間でどうにかしなければならない。

 看護師の国家試験には必修と一般・状況設定という問題が出される。必修は50問あり、それの8割である40問以上を正解出来なければその時点で失格となる。そして一般・状況設定の問題は190問ある。この一般・状況設定の合格点は毎年変動があるが150点くらいがボーダーラインになっている。

 作戦はこうだ。2週間で全ての科目を勉強するのは不可能。よって一般・状況設定の勉強は捨てる。必修のみを勉強することにする。だって無理だろ。必修科目の参考書は1冊なのに対して、一般・状況設定の参考書は何冊もある。それに冬休みと後輩との研修が一般・状況設定の勉強になったと信じた。普通の看護学生は全部勉強するのだろうが、俺はこの必修の参考書1つに全てをかけることにした。

 よしおさらいしよう。必修の参考書のみ勉強する。ODはしない。臨死体験も幻覚も体験しない。この2週間は勉強しかしない。これでいく。

 実はこの頃、煙草を吸い始めた。若干落ち着けるからだ。家では立ちながら勉強した参考書を読み、目を閉じても暗唱できるまで声に出して読んだ。ファミレスでは参考書にメモを書き手が文章を覚えるまで書き込んだ。たまに覚えられないことがあれば、参考書に根性焼きをした。学校の図書室では友達と勉強した。2週間で参考書はボロボロになった。先生が俺の勉強状態を確かめに来たこともあったが、焦げてボロボロになった俺の参考書を見て何も言わず立ち去って行った。この2週間における毎日の睡眠時間は1時間程だったと思う。ただひたすらに必修科目の参考書を勉強した。周りの友達や先生からその本しか勉強しているのを見ないけど大丈夫なのかと聞かれることがあったが

「大丈夫だ。問題ない。」

とだけ言い、勉強をしていた。

 試験当日、俺は完全に目がきまっていた。そりゃそうだ。寝てないもん。多分この試験会場にいる看護学生の中で1冊の参考書でしか勉強をしていないのは俺だけだろう。あとは再研修で目にした知識に任せる。よし、試験開始だ。

 必修科目の問題はスラスラ解ける。一瞬で解いた。一般・状況設定の問題は感覚で解いた。多分これじゃね?というような感覚で解いていった。だってこの問題の勉強してないもん。試験が終わり、友達と合流する。みんなで、どうだった?どうだった?と話している。中にはアプリケーションを使って自分の合格予想を出し合う連中もいた。そんなことも出来るのかと思ったが怖くてやる気にならなかった。だが帰りの電車の中で友達が合格予想を出してみないかと言い出した。渋々行い、自分の合格率が出た。このアプリは試験に出た問題に対して何と答えたかを入力することで自分の合格率が出るというものだ。友達は80%や90%と出ていて仲のいいA子も70%以上だった。そして俺の合格率は驚異の38%!

「落ちたわ、、、」

そう友達に伝えて家に帰った。

 数日が経ち試験結果が自宅に郵送された。もうすでに看護師になれないと思っていた俺は大型自動車の免許を取りに教習所に通っていた。いつでも働けるように資格だけ取ろうと思ったのだ。試験結果を見てみる。

 必修科目50問中48問正解 一般・状況設定190問中153問正解 試験結果合格

 ?受かってる、、、?????

 FOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


 俺はすぐに学校に電話して合格したことを伝えた。先生から祝福の言葉をいただいたが、それ以上に電話越しに聞こえる拍手の音のほうが記憶に残っている。自分が色んな先生から世話になっていたことを再認識した。友達にも親にも姉にも親戚にも報告した。みんな同じ反応だった。うれしかった。あんなに色んな人に迷惑をかけたのにみんな祝福してくれたのだ。大型自動車の免許なんか取りに行く必要はなかったと思ったが、もう通い始めてしまったのでこのまま続けることにした。

 いやあ、うれしかったね。2週間で何とかなるもんだなって思いながら友達と焼肉に行き、みんなで喜びを分かち合うのだった。


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