峩々吠我 壱 その2
ダメだ。
この女を見れば見るほど勃起する。
痛いほど、勃つ。
――この女、、、?!
潤んだ眼が、カワイイ。
潤んでるのは、そんな眼で見て来るのは、、、まさか好意?
――そんなアホな
アイツは何しに此処へ来たんや?
何て言ってたっけ、、、?
『セックスしに来た』
セックスしに来た。
高野山の僧と、ヤラシイことをしに来た。
、、、しに来た??
――何やこれ、、、
さっきから、変な思考が入って来る。
勝手に脳内に入って来る。
可愛いとか、セックスとか、今は関係無い!
気合を入れ直せ。
眼の前に居るのは、仇。
魯甫と毘袁を、あんな姿にした仇だ。
そう、可愛い過ぎる仇。
カワイイ、、、。
――何でそんな眼で見てくる?
めちゃくちゃカワイイ。
映画のワンシーンみたいな、純粋無垢な笑顔で近付いて来る。
満面の笑み。
――もしかして、俺の事、好きなんか?
抱きしめたい。
近付いて来たら、有無を言わさず抱き締める。
「違うやろ!」
、、、そうだ!
思考を読み取ってやろうと、あの女の眼を見てた。
相手がどう動くか読むことは、戦闘時とても大切だ。
だが見たら、、、眼を見てたら、“カワイイ”と思う。
思ってしまう。
睫毛が長い。
クリっとした瞳。
カワイくて、、、オナニーしたくなる。
人を笑って殺す美眼に見つめられて、イきたくなる。
「くそっ、、、また??」
自分の思考を制御できない。
相手の考えを読もうとすると、見つめられる。
見つめ合い、互いに好意を抱く。
――互いに?
2人は抱き合うために近づく。
彼女の方から近付いて来る。
それは自分とセックスがしたいから。
――違う! 違う違う違う違う違う!! あの女はEG使いや!!
澄宗は口の中で、舌を噛んだ。
痛い。
血の味。
痛みと独特な味が、自分の事を考える自律を与えた。
「ふぅ、、、」
ひとつ、息を吐く。
己の鼓動を聞く。
聞いて、冷静かどうか確認出来た。
ゆっくりと、視線を合わせる。
EG使い、ユキオンナの眼を見た。
狂った眼だ。
――そう、冷静に判断できる
平気で人を殺す、狂人の眼だ。
でも、、、
潤んだ、可愛い眼。
吸いつきたい唇。
喰い千切りたくなる。
この女の乳首を嚙み切りたい。
流れ出る血を、味わいたい。
「違う違う違う違う違う違う!!!!」
自分の知らない欲情を、制御できない?
自分はこんな性癖だったのか?
「ど、どうした? 澄宗、、、」
聞き覚えのある声に、少し現実感が出た。
澄宗は自分を確認するために、勘空を見る。
が、、、。
勘空の顔が、いつもと違う。
そして普段の勘空なら、絶対に言わないような事を言って来た。
「、、、オマエも、あの女を犯したくなったんか?」
言って、笑ってる。
焦点の合わない眼で、顔面の筋肉を引き攣らせて笑ってる。
「違う?!」
声に出して、否定した。
高野山の中でも、マジメ過ぎる僧と半分馬鹿にされるくらいの存在。
それが勘空。
1日に5回は『マジメか!』とツッコまれるような男が、前に立つ女を見て明かに興奮している。
「そんなん勘空やあらへん!」
叫ぶ。
声と同時に、邪気を出す。
これは女から受け取ってしまった念だ。
ヤル事を、声に出す。
「吐き出せ!!」
女の念を吐き出し、正気を取り戻す!
いいぞ、その調子。
勘空は、、、?
「勘空ぅ!」
「なぁぁああににぃいい?」
涎を垂らして、股間を膨らませていた。
近付いて来る女を、抱き締めようと待ち構えている。
そんなの勘空じゃない。
あまりの違和感に、澄宗が奇跡的に我に返った。
「あの女、水属性や!」
勘空の身体を揺さぶり、正気に返れと声を掛けた。
「あ、、、あ!?」
眼をパチパチさせて、自分の頭を叩く勘空。
「くそっ、、、」
何度も首を振って、ユキオンナを見た。
「違う! 見んな!」
澄宗の言葉に、ハッとする。
「経を唱えて、意識をちゃんと繋いどけ!」
的確なアドバイスだった。
意識を一つに集中させ過ぎないよう、自分にしか聞こえない程度の声で呪経を誦経する。
改めてユキオンナを見た。
カワイイ。
その可愛い唇から、官能的な言葉が出る。
「なぁ、しようやぁ」
少し鼻に掛かる、甘える声。
こっちを見てる。
ヤバい。
可愛い。
そう思った瞬間から、眼が離せなくなっていた。
「、、、オンバタバサラタサンカンマンノウ、、、」
ヤバいと感じ、ボリュームを上げる。
「真言は止めるな!」
仮で陰唱していた呪経のおかげで、思考だけはまだ自分の意識下にある。
「あの女見んな! 勘空! 合図出せ!」
勘空は視線を澄宗に固定し、頷いた。
「髦士無為無為髦士無為。髦士無為無為髦士無為、、、」
小さく勘空が唱えると、風が一本、細い竜巻になって天と繋がる。
これが、合図だ。
それを目視した唱僧たちが、創った鳴り珠に念を込める。
攻撃の、想念。
五色の鳴り珠が属性の球と成って、一斉にユキオンナに放たれる!




