策束静巡 参 その3
鳴り珠は術者による念の具現化となるので、火属性の使い手が創ると火珠、又は『ひのたま』と呼び、水属性だと水珠、又は『みなたま』と呼ばれる。
呼び方はどちらでも良い。
ちなみのちなみに、、、
先ほど言った基本武装四つとは、鳴り珠を闘いに必要な形態に変える事を指す。
攻撃のための変化を、錚槍。
守りのための変化を、抑止。
治すのための変化を、白戻。
循環のための変化を、爾裸氣。
それぞれ発展術式があり、錚槍と抑止は属性によって大きく変わるが、白戻と爾裸氣はどの属性もほぼ同じ。
レベルが上の者ほどどれか一つは得意としていて、どの形態が得意かによって闘い方が変わったりする。
その中でも上級者に人気なのが、鳴り珠をオートでエネルギー蓄積装置(又は場)に変える事が出来てしまう、『爾裸氣』だ。
爾裸氣に発展させる事によって術を発動するためのエネルギー循環がよりスムーズに行え、結果、術を繰り出す呪詛と発動する術式のタイムラグが少なくなる。
特に投擲系の攻撃なら、連続して攻撃を繰り出せるようになる。
気付いた方もおられると思うが、これはもちろん兼完鋤々が下地にあってこその展開術となる。
戦闘が長引けば長引くほど、基本の術式が重要になって来る。
時代遅れと言われようが高齢の術師たちが口を揃えて『まず基本の術式をしっかりやれ』と言うのは、こういった理由からだ。
聖の師である奈良絵姫だともっと上で、鳴り珠の四形態を同時に具現化し、それぞれを任意に動かす事が出来る。
こうなるとほぼ無敵状態、反則級である。
話しを鈴木がビビったところに戻して、、、。
鈴木がビビった原因は術式名が『錚槍』と言うだけあって、もの凄いスピードで標的を射抜くイメージがあるため。
球体から出るのが、針だったり、矢だったり、それこそ槍だったり、、、。
童子クラスの貴照がこの術式をすると、錚槍は弾丸に成る。
つまりどれもが殺傷能力があり、もの凄いスピードで向かって来るってイメージを鈴木は持っている。
だから、そんなんされたら死ぬやん! と思ってる。
だから、必死で聖にストップを掛けた。
だから、つまり、ちょービビってる。
「やから、ゆっくり出すって言うてるやん」
「ゆ、ゆっくりって、どんくらいゆっくりやねん、、、?」
聖の鈴木を見る眼が糸みたいに細くなって、途方も無くあきれてる。
「どんだけビビんねん。前世ビビン麺ちゃうか?」
「せめて生き物で言うてぇや、、、」
これ以上話しててもビビり特有の時間稼ぎが始まると思った聖は、勝手に錚槍を発動させた。
水珠の表面から、長い尖った水が伸びてくる。
「うわっ?!」
真っ直ぐに鈴木を狙う。
それはまるでスローモーションのように、、、。
「、、、わ?」
本当に、スローモーション。
ビビって一瞬眼を閉じたが、ビビりながら片目で観る聖の錚槍は、まだ尖った水が伸びてる最中だった。
「な、言うたやろ?」
確かに、と鈴木感激。
錚槍が、こんなにもゆっくり、、、いやいや、錚槍を自在に操っている。
――これが、、、童子、、、!!
水珠はこれまた綺麗なまま。
眼をじっくり凝らさないと回転してるのかどうかさえ解らないほどのクリア。
「!?」
回転している?!
なのに表面からは真っ直ぐ伸びる水の針、、、槍?
「これ、、、二重構造??」
術の美しさに、またもや鈴木感激。
「そんなんええから。早うさっきみたいにせんと、ゆっくりでも刺さんでぇ」
「お、おぉよ」
慌てて右手を、、、?
見ると、聖が不思議なポーズを取っていた。
創った水珠を差し出す様に、両手を前に出している。
ひとり“前に倣え”状態。
何だ? と思う前に、聖が急かす。
「早う」
言われ、鈴木が右手を横に払う。
その動きに合わせて、水珠から出た槍状の水が動く。
ほぼ90度。
――なるほど、、、
前に出していた、右手も勝手に動く。
左手は、そのまま。
――なるほどなるほど
聖、ニヤ付く。
術を、解除された感覚は無い。
右手も、押された、引っ張られたって感じじゃ無い。
自転を促された感覚に、近い。
「鈴木満~~~」
「名前呼ばれた思たら、フルネーム呼び捨てか!」
「あんた、、、最高!」
鈴木本人は、気が付いていない。
鈴木の放つ、術式効果の持つ意味を、、、。




