表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/60

第46話 神様のお仕事

5/28 後半の会話シーンを修正しました

「というわけで、水城ヒイラギじゃ。よろしくたのむぞ!」

「「「よろしくー」」」


 祭りが無事終わり、その数日後のことである。

 ヒイ子が、うちにやってきた。

 寝具と歯ブラシを鞄に詰め込んで。


「あいかわらずせっまいのー。で、わしの部屋はどこじゃ?」

「十分広いだろこれでも、神社の敷地と比べんなよ。ってか足元気をつけろy「いったーー!」」


 足元のおもちゃを踏みつけ、のたうち回るヒイラギ。


「おねえちゃんだいじょうぶ?」「おくすりのむ?」「おふとんしこうか?」


 そこに集まってきた、長井さんの妹たち。

 家の都合で、しばらく預かっている。

 ちなみに、おもちゃを放置した犯人でもある。


「こらこらちゃんと片づけないから」

「「「……ごめんなしゃい」」」


 そんな妹たちをしかりつけ、一緒に片づけを手伝うシュンカ。


「んで、急にどうしたんだよ、部屋を貸してくれって?」

「むっふふ~~」


 ヒイラギが、にやにやしながら近づいてきた。

 足はもう大丈夫そうだ。


「ほらお前様あれじゃろ。これから忙しくなるじゃろう?」

「いや別に……」


「ほほうそりゃあ今はのう。じゃが新婚さんが暮らすとなればのう、今から忙しくなろうというもの、じゃからわしが直々に手助けにきてやったわけじゃ」


「ばぶばぶぅ」

「おおーっと! 噂をすればなんとやら。おーよしよしわしが来たからの~、立派な当主になるのじゃぞ~」

「いやそいつ、よその子、長井さんとこの一番下の子」


 まあ部屋は余ってるしなと、俺はヒイ子を空き部屋へ案内する。

 広間に戻るとシュンカから、「それで、どうするの?」と尋ねられた。


「どうするって?」

「テイオー君、あの子に例の話してないでしょ?」

「まあな。噂になるといけねえから、爺様やばあちゃんにさえはなしてねえ。知ってるのは俺らと親父と母さんだけだぜ」

「それなんだけど、一緒に暮らすなら鳩ちゃんと一緒にちゃんと話すべきよ。でないと、お互いのためにもよくないわ」

「…………分かった、助かる。ミカを呼んでくる」

「うん、いつでも相談に乗るから」


 それから俺はミカと相談して、3人一緒に出掛けることになった。


「おいおい、デートならわし抜きでせんか」

「いいからいいから車に乗ってくれ、話はそれからだ」

「で、どこに行くんじゃ? 飯ならもう食ってきたぞ」


 あはは、と俺は乾いた笑いを返す。


「墓・参・り・だよ」


 車で片道30分。目的の場所にたどり着いた。

 三つの影が石段を上がる。


「ヒイ子、こっちだ」


 ずらりと並ぶ墓石たち。

 その中の1つに、俺とミカは手を合わせる。

 急にやってきて花も線香も忘れていたので、少し多めに祈っておくことにした。


「さてと、向こうのベンチで話そうか」


 俺達3人は、適当な場所で腰かけた。


「なあヒイ子覚えてるか、俺が昔長屋作りてえなって言ったこと」

「……おおう、えらく急に! そんなこともあったよのう」

「俺の母さんはさ、親父に仕事でこき使われててさ、危うく俺と陽太はイ・ザ・ナ・ミ・送・り・になるところだったんだとよ。特に陽太の方は、あと1日遅れてたらこの世にいなかっただろうってさ」

「……おお、思い出したぞ、ずいぶん前に聞いたぞその話」

「え? ここまで話したっけか、まあいいか。それでさ自分の嫁さんにはそんな苦労させたくねえって、考えて思いついたのが大昔の長屋さ。大勢の家族でまとまって、協力し合えばなんとかなるんじゃねえかってさ」


 結果は、何ともならなかった。

 原因は不明、それが医者の答えだった。


「婚約破棄の件、ほんとはもっと早くに筋を通したかった。けどミカには、なるべく家で安静にさせたかったんだ」

「そんな……じゃあわしがヤマツミ役で無理をさせて、それで」

「……違う、もっと前だ。腹に子供抱えてあんな芸当できるかよ」

「そ、それもそうじゃな、ははは……」


 うっし、と俺は立ち上がった。


「そういうわけだ、子供の話はしばらくなしだ。村の奴らにも言わないでくれ、噂になったらミカに負担かけちまう」

「……気に入らんなぁ」

「あん、なにがだよ?」

「お前様の子ならわしの子も同じ、それを粗末に扱うなどと、文句の一つも言わねば気が済まん!」


 そういってヒイ子は、近くの断崖絶壁をのぼりはじめた。

 「ついてまいれ」とミカも一緒にだ。


「おいおいどこいくんだよ?」

「イザナミのところじゃ、確かこの上じゃろ、奴の社は」

「今から行く気かよ、たく」


 俺は車の方を確認する。鍵も財布も手元にある。

 俺は2人に、ついていくことにした。道を歩くより、崖を上った方が早いからな。


 この崖の上にあるのは、イザナミ神社。

 イザナミは日本を作った国生みの女神で、安産のご利益がある。

 

「休みだとよ今日、門が閉まってら」

「ぐぬぬぬ、卑怯ものめー、わしを恐れて逃げるとは」

「恐れとらん、逃げとらん」

「おほん。ではヤマツミたるわしの力で、おぬしの言葉をイザナミに届けるとしよう。さ、小鳩よ申してみよ」

「……あのー、神様の目の前で、勝手に神様を名乗っちゃ罰が当たるんじゃーないでしょうか?」


 ミカからの突っ込み。

 それに対し、ヒイ子は自分の上着を地面に敷き、ミカにそこへ座るよう指示する。

 座ったミカの頭に、ヒイ子は手をのせる。


「よいか、まず人とは何ぞ。人とは神通力をなくした神のことをさす。サクヤヒメの死後、繁栄の力を失った神々は人となり、今日までの人の世が始まったのじゃ。古事記にもそう書かれている。(←マジで書いてあります)ここまではよいな」

「いえ、はい、大丈夫です」

「では続きじゃ。なので、そもそもわしら人間と神はいわば兄弟や親せきのようなもの、きちんて礼節と真心をもって接すればただの自己紹介を罰することはなかろうて」


 まあ人様の家の前で、アポもなしで騒ぎ建てるのは人も神も関係なく無礼な行為だけどな。

 なので俺は、たたられないようこっそり頭を下げておくことにする。


「じゃからな小鳩よ、お主にも神の血が流れておる。その力を、今からわしの言葉で導いてやろう」

「あの、ボクはあんまり、そういうの得意じxy」


 ヒイ子は、ミカを強く抱きしめる。


「この世は理不尽に満ちておる。科学や医学が進化したとて、人の領分はまだまだ至らぬ部分が多い。それは理解できるな」

「それは、そう、ですね。科学的に解明できてない事って、多分たくさんありますし」

「心や魂、それらは未だわしら神の領域じゃ。瞳を閉じ、心臓の鼓動を意識せよ、鼓動を意識し血液の流れを通じて自身の輪郭をとらえるのじゃ」

「はい……やって、みます」


 ミカにそうさせたうえで、大きく息を吐き出すように指示をする。

 体の中の悪いものを、すべて外に追い出すように。


「どうじゃ、体が軽くなったじゃろう?」

「まあぁ、少しは」

「そうじゃろう、そうじゃろう、また辛いことがあればわしを呼ぶんじゃぞ」

「あの、これってただの深呼吸なんじゃ……」

「ただの深呼吸じゃよ」


 詐欺にあったような、顔つきのミカ。

 そんなミカを、ヒイ子は再び抱きしめる。


「一戦交えたわしには分かる、おぬしは強い子じゃ。その強さ故、不平や不満を吐き出せずため込んでおる。神様はな、そういった人の穢れた部分を預かってもらうためにおる。いわば心のゴミ捨て場じゃ。言葉にせんでよい、今のように心に浮かべ深く呼吸を繰り返せ、さすれば神に言葉は届く」


 いわれるがまま、ミカは深呼吸を繰り返す。

 しばらくすると、つつっと、ヒイ子の肩に水滴が伝った。

 雲行きが怪しくなり、ゴロゴロと雷までなり始めた。


「お前ら車まで走れ、こりゃあ激しくなるぞ!」

「小鳩よ動けるか」

「はい、大丈夫です」


 急ぎ車に駆け込み、エンジンをかける。

 雨が降り始めたのはその直後だった。


「雨か……こりゃ、はよ帰れ風邪ひくぞとイザナミ様のお告げじゃな」

「いんやこりゃ天罰だな、ヒイ子がバカやったせいで」

「なんじゃとーー!」


 俺はミラー越しに、ミカが眠ったのを確認した。


「来てくれてサンキューな、正直助かったよ」

「あまり眠れてなかったようじゃな、席に着いたとたん寝てしもうた」

「過去にいろいろあってさ、あいつ気合と根性でごり押ししちまうところあるからさ、よければこれからも世話焼いてやってくれねえか?」

「むっふっふ~、そのためにわざわざ来たんじゃ、存分に頼るがよいぞ」


 その晩、さっそく役に立ってもらおうと飯の準備を頼んだ。

 なんとまさか、カレーのライスを炊き忘れたんだとよ。


 めでたしめでたし


「めでとうないわ、人の子らよ何とかせい。わしゃ神じゃぞ、うやまえ、たてまつれぃーー!」


 続く

少しでも面白いと思っていただけたら、↓の☆で評価してもらえると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ