第一章 21.借金だけが増えていく
俺とソルさんは「古屋敷連続変死事件」の謎を解き明かし、その原因を発見して見事に依頼を達成したのだが、少々問題が無くもなかった。なにしろ問題の屋敷を半壊させてしまったのだから。
古屋敷に潜んでいた全身甲冑を着込んだスライムメイドのガチャ子(命名俺)の所有権については問題はなかった。ガチャ子もまた屋敷に付属した相続財産のひとつであったが、依頼人がガチャ子の相続権を放棄したからだ。
引取を拒否したとも言う。いくら珍しいスライムメイドであっても、主人の生気を吸って寿命を縮めるだなんて、怖すぎてとても身辺には置けないとのことだそうだ。
まあ、通常ならエルフでなければ制御できない軍事用スライムらしいから、ここはソルさんに引き取ってもらうのが妥当だろう。
「お待たせいたしました。この度の依頼達成の報酬が小銀貨六枚になります。ここから支度金として前渡しした小銀貨二枚と、お立て替えしておいた二日分の宿代の小銀貨二枚と大銅貨四枚を返済していただきますので、お渡しするのが小銀貨一枚と大銅貨六枚になります」
うん、ここまでは想定通りだ。本来は古屋敷に七日間泊まるはずだったのを二日で解決してしまったが、ちゃんと満額貰えたらしい。
「えー、それでですねえ、半壊してしまったお屋敷のことなんですが、……お屋敷の所有者である依頼主の方にですね、現場を見ていただきましてですね、その……」
「あー、屋敷の所有者は損壊の賠償金を請求してきている」
言い淀むマルシアさんに代わってギルド長が声をあげた。
「ふむ、まあ当然であろうな。古びた屋敷とは言え所有している財産を毀損されたのだ、損害について補償するのは当然であろうな。それで幾ら払えと言っておるのだ?」
おお、ソルさん男前! マルシアさんもギルド長も心なしかホッとした顔をしているよ。
「大金貨十枚だ。これでもかなり交渉して値下げさせたのだぞ」
「えっ、だ、大金貨十枚!? えっ、えーと、小銀貨がだいたい一万円くらいで、大銀貨はその四倍だから四万円として、小金貨がその十倍で四十万円で、えーと、大金貨はそのまた四倍で、それが十枚だから……」
「そうか、小金貨で四十枚だな。なんだ随分と安いではないか。たったの四十帝国クレジットでよいのか」
まだ見たこともない大金貨などと言われて一瞬焦ってしまったが、銀河帝国の首都星にお住まいのエルフ様にはどうと言うこともない金額だったらしい。
「なあ、ソルさん。四十クレジットって首都星だとどのくらいの価値の金額なのよ?」
「そうだな、ちょっと良いホテルに一泊できるのではないか?」
「一クレジットが千円くらいかよ!」
「ん? それでだな、ギルド長。知っての通り現在は持ち合わせがないのでな、屋敷の賠償金はギルドで立て替えておいてくれ。なに、安心すると良い。皇帝陛下が御座す首都星のエルフの矜持にかけて、藩国の民からの借財を踏み倒すような真似はせぬからな」
ですよねー。懐事情は俺もソルさんも一緒だもんな。ギルド長もマルシアさんも、わかってましたって顔をしているよ。
ソルさんにしてみれば四万円ほどの借金でしか無いのだろうけど、この星で暮らしていかなければならないことを思えば、大金貨十枚の借金はやはり重い。帝国臣民の御威光のおかげで無理な取り立てはされないだろうけど、頑張って稼がないとなあ。
その後、散々ギルド長からくどくどと念を押されたあとに開放された俺達は、ガチャンガチャンと音をたてて歩くガチャ子を引き連れて、今夜からの宿を探しに街に出たのであった。
今回は短かったので分割は無しで。
次回から第二章です。




