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テラ生まれのターさん異世界に行く  作者: うゐのおくやま
第一章 異世界転移
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第一章 10.妹を守る健気な男の子

「くぉらぁ、クソガキ! ぜってー逃さねえからな。金返しやがれ!」


 足音を立ててズカズカと屋内に踏み込む。掃除の行き届いてない室内に、金をスリ取った黄色い髪のガキが、小さい女の子を抱えて固まっていた。


「ひー、ゴメンよ、ゴメンよー。あんたの尻ポケットに銀貨の形がくっきり浮いてて、つい出来心で手が伸びちゃったんだ」


「いーや、許さねえ。警察、があるのかどうか知らねえが、盗人は役人に突き出してやる!」


「そんなことされたら、オイラ、手を切られちまうよ。頼むよ、後生だから堪忍してくれよぉ」


 青白い顔で震えてガキが頭を床に擦り付けていた。オレンジ色の髪の妹らしい女の子も涙目で兄に縋り付いている。

 カッとなって熱くなっていた頭がちょっと醒めた。


「ふむ、其方らの両親は何処におるのだ?」

 ソルさんが静かな声で子供たちに声をかけた。


「母ちゃんは妹が赤ちゃんの頃に死んだ。父ちゃんは半年くらい前に仕入れの旅に出て帰って来ない。噂だと隊商が盗賊に襲われたとか……」


「お、お前が一人で妹の面倒を見てたのか?」


「父ちゃんが残していった貯えがあったから、先週までは食べ物を買えたんだけど、もう金も無くて……」


「親戚だとか、其方らの面倒をみてくれる者はおらぬのか?」


「そんな親切な奴らはいやしないよ! この家だって、父ちゃんが死んだなら自分たちのものだって言って、オイラたちから家を取り上げて孤児院に入れようとしたんだ!」


「かーっ、仕方ねえなあ。……こら、ガキ、まずは金を返せ」


「はいよ。盗んで悪かったよ、にーちゃん。本当にゴメンな」


 小さな手を伸ばして小銀貨二枚を渡してくるのを受け取り、代わりに買い込んだ食料品の入った布袋を渡してやった。


「ほら、代わりにこれをやる。燻製肉だのパンだの入ってるから」


「えっ、いいのかい、にーちゃん?」


「俺の名前はタカシ・マツウラだ。ターさんと呼べよ。お前の名前はなんて言うんだ?」


「オイラ、アレクだ。妹はアディラ」


「アレクにアディラだな。こっちのお姉さんはソルさんだ。ちょっとツンとしてるけど、怒ってはないからな」


「誰がツンとしてるのだ! ……コホン、〈守り手(アレク)〉に〈月の輝き(アディラ)〉だな。良い名前ではないか」


「へへ、父ちゃんと母ちゃんが一生懸命に考えて付けてくれたんだって」


「ふむ。……それでダルタ、これからどうするのだ?」


「ああ、……俺達は冒険者でな、依頼のための準備をしてるところだったんだ。まだ、買い物をしないといけないんだが、アレクにガイドを頼めないかな? この街に来たばかりでまだ街のことをよく知らなくてな。もちろんお駄賃は出すぞ?」


「任せてくれよ、ターサンさん! この界隈なら何処でも知ってるぜ!」


 またターサンさんかよ。笑うぞ。


「ああ、俺のことはターサンでいいや。それじゃあ案内を頼むぜ、アレク。妹は残して行っても大丈夫なのか?」


「ああ、また鍵を掛けて行くから問題ないよ。アディラ、いい子で留守番してるんだよ? これを食べてていいからね」

 先程渡した袋から果物を一つ取り出して妹に手渡している。残りは戸棚に仕舞った。


「じゃあ、ターサンの兄貴とソルさん、何が欲しいんだい? 安く買える店を案内するよ?」


「まずは古着屋だな。それからナイフが欲しいから、武器屋か鍛冶屋を頼むぜ」


 それから三人で連れ立って買い物に出かけた。

 古着屋ではポンチョと言うかエスニックな柄の貫頭衣をそれぞれ買うことにした。一枚布に頭を通す穴が空いてるだけの簡易なもので、これなら雨風避けになるし、毛布の代わりにもなる。もちろん縫って仕立てた服より値段も安い。ソルさんの分はフードが付いている。


 次に案内して貰った古道具屋で俺用にナイフを一丁買った。採集や素材の剥ぎ取りにも使えそうなやつだ。

 アレクの父親の知り合いの店らしく、随分と値引きして貰って予想よりも安く済んだので、ついでに手持ちのカンテラも買うことにした。廃墟探検には必需品だよな。あ、あと水筒や背負い袋も欲しいな。


「アレクのおかげで随分と安く買物が出来たみたいだ。ありがとうな」


 案内賃として釣り銭の中から大銅貨を一枚渡す。


「ありがとう、ターサンの兄貴! 兄貴たちはこれからどうするんだい?」


「今夜はこれから泊まり掛けの仕事があってな。食料品をまた仕入れてからニノ郭に行くんだ。明日の昼間は、街の外へ薬草の採集の仕事に行くけどな」


「お、オイラ、薬草とかにも詳しいよ! 本当は冒険者になって採集の仕事をしようと思ったけど、まだ十歳だからって登録出来なかったんだ。薬草の生えてるとこを知ってるから、明日もガイドに雇って貰えないかな?」


「どうする、ソルさん?」


「私は構わないぞ。薬草の見分け方など知らないから、ガイドが付くのなら随分と助かるのではないか?」


「それもそうだな。俺も薬草の見分け方なんて知らないや。じゃあ、明日は朝の、えーと、水の二刻鐘? が鳴ってからゆっくり家を出て来いよ。冒険者ギルド前で待ちあわせしようぜ」


 この街では、日の出に水の一刻鐘が鳴り、その二時間後くらいに水の二刻鐘が鳴る。水の二刻鐘に合わせて街の門が開いたり、職人や商人は仕事を始めたりするそうだ。冒険者ギルドは日の出に合わせて窓口を開けるらしいけどね。


 俺達はアレクと明日の約束をして別れた。



いつもお読みいただきありがとう御座いますm(_ _)m


次回は金曜日の夜に投稿します。

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