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事後処理は迅速に

さてと、まずはこれを(少年達)如何にかしなきゃな。


1人は銃口を向けられ両手を頭の裏で組んでうつ伏せ状態で、もう1人は俺に鎖骨から胸まで鉄板の(踏み抜き防止)入った革靴で踏みつけられて息が出来ず声も出せない状態だ。取り敢えず、サンとガウリを呼び、少年達を後ろ手で親指同士を拘束用のタイラップで縛って拘束した。その後で、ゆっくりと慎重に身体検査を行う。まぁ、一応自爆テロを警戒した基本ルーチンなんだが、ハッキリ言って今回は必要ないだろう。現に、出て来るのは明らかに素人くさい出来の紙巻煙草(恐らくマリファナ)とかアルミホイル片に包まれた怪しい粉とか位だし。おっ、太腿のポケットから折り畳みのアーミーナイフが出てきた。


それ以降も靴の中敷や口の中まで検索した結果、やはりと言うかなんと言うか、少年達はまさしく路上売人(プッシャー)だったて事が判明しましたとさ。押収したそれらを目の前に広げサンとガウリに銃口を向けさせたままで尋問をする事にする。まずは、出身と名前、年齢などの基本的なことから家族構成___(この場合は何らかの勢力に係わっていないかなど)を聞き改めて思う事は只の悪餓鬼共って事だけだ。


この機体に乗り込んだ経緯も判明した。彼等は日常的に軍事飛行場に無許可で進入して国連軍人相手に精神向上薬、まぁ言ってみれば禁止指定薬物(覚せい剤)の密売をして生活していた悪餓鬼共は、今日も今日とて薬を売りさばこうと進入したが運悪く今日軍のお偉いさんが定期の監査ではなく突発で現れたのだ。常連の顧客にその話を聞いた直後、慌てて飛行場からトンズラしようとフェンスの方へ走りだしたらこちらの方にお偉いさんの乗る車が来ではないか。それを見て、慌てて飛行場の端で離陸の為の順番待ちの駐機中の我等が機体に無賃乗車(緊急避難)したと言うわけだ。


その後は、隠れて安全になったら出て行くつもりだったのに、気づかない間に、乗り込んだ後部ハッチは閉まり滑走路に出たときに動き出した事に気づくが時既に遅し。何とかしてハッチを開けようとするが、この機体はハッチを閉めた後ロックを掛けると操縦席にある機器で開放操作しないと開かない様になっている為どうにも出来なかった。少年達はそんなことは知らなかった様で二十分ほどハッチの横に備えられているレバーと格闘したようだが。


そんなこんなで、高度も上がりハッチを開けても飛び降りれる高さではない事にようやく気づいた少年達はどうにかしてこの飛行機を元いた空港に戻すべく護身用の拳銃を抜いて立ち上がった訳だ。震えていた方の少年はこの機体が軍用にしては兵器などが積まれていなく無く普通の乗用車(防弾車)などが乗っている事に不審に思っていたようだが、相方の強弁に逆らえなかった様でその結果が目の前の有様である。


まぁ、隠れて居たとしても着くのは結局、ヨーロッパであるしパスポート所か身分証明できる物もないこの少年達の命運はそこで潰えていただろうから、どちらにせよ賭けに出るしかなかった。


そんな彼等はこの後、フランスで逮捕の後然る後に強制送還になるだろう。持ち物はこちらで接収するから身一つで帰る事になる。財布ぐらいは持たすが煙草(乾燥大麻)や恐らくコカインは見つかれば重罪だからな。そこらへんはこちらで処分しとかなければ。俺はマリファナ位はやるが、ソマリアで流している不純物が混じった奴は余程の事が無い限りやら無いようにしているから、少年達が持って来たこれらは焼却処分か地中処分にでもするしかない。


少年達のこれからの行く先に思いを馳せつつ、二人を別々の場所に拘束して放置するとようやく席へ戻ってきた。精々掛かった時間にすれば1時間程が経過しただけだった。その内尋問が殆どの時間を食い潰したのはこの際、有意義とは程遠いが暇つぶしと考えれば、それ程悪くないだろう。先程消した(収納)拳銃二挺の内、M1911の方を出して見る。銃その物は後期タイプでかなり汚れておりしっかりとした整備を受けず機関部から滲んだカンオイルが砂塵を纏って精度を落としてしまっている。


つい、自分のM1911の分解整備の要領でマガジンを抜き取ってチェンバー内に弾丸が装填されてない事を確認してポケットの中から特殊工具を取り出してスライドを外す。テンションが掛かったスプリングが曲者だが、この個体はかなりヘタっている様でいつものより抵抗が弱く感じる。それでも何処かへ飛んでいかない様に慎重に外して一息つく此処まで約2分ほどで大した手間ではないが此処から中を見るのを考えるとげんなりしてしまった。軸線から外して眺めただけでも解っていたがとにかくスラッジやカーボンが多過ぎるのだ。


暇つぶしのために始めたがよくよく考えれば、ちょうど良い事に話?相手はいるではないか。生きているとは言いがたいが。何も生きていなければ話が出来ない訳ではないと言う事が不本意ながら発覚してしまったからな。何事もうまく使えればこちらの得に為るし、貰ったこの能力も恐ろしい程の性能だ。今なら税関も出荷管理官も怖くない。別に袖の下を渡せば済む事ではあるが、その必要経費が案外馬鹿に出来ない。


しかも、今や何処も最新型の武器が高すぎるせいで武器市場は縮小傾向にある。生き残る事に皆必死で自ら武器の使用まで行う民間軍事会社まで現れ始めた。この先武器会社が無くなる事は無いが、対テロ戦闘のように純軍事的な行動が一部の地域に限定的になれば消費量は落ち込む事になりそうだった。これは、新たな顧客を開拓しなければなら無いだろう。


これが、契機になればいいんだが。そこの所を聞いてみても良いだろう。


___ローラ。少し聞きたいんだがいいか?


手の中に在る拳銃を弄びながら思考によってローラに問いかけた。


「はい。なんでしょう?」


___先程話していた事に類する事だが・・・


「もしかして、向こうの世界で真崎様の武器をお売りになることですか?」


___ああ。そういえば思考が共有されるんだったな。ローラの思考はさっぱりだが。


「思考と言っても完全にではなく表層的なモノでしか在りませんが、あと私の思考が真崎様に分からないのは私が真崎様に行かないように制御しているからです。ひとり分の脳にふたり分の思考では混乱してしまいますし、何より乙女には秘密が必要ですから」


___説明は解ったが、それにしても乙女の秘密とはな。ローラは俺の思考を読んで大丈夫なのか?


「私にはこの通り物理的身体が在りませんのである意味思念体に近い存在なのです。その為、肉体の様な限界に囚われる事もないのです。その代わり物理現象に私自体は干渉が難しいのですが」


___そうか。話を戻すが、それで?向こうの世界で俺が持ち込む武器や兵器は売ってもいいのか?


「はい。一時的には問題になるでしょうが、メガルプールをすべて破壊できれば魔素を取り込む物が無くなるので魔法が使えるようになるでしょうから真崎様の武器、兵器は子供の玩具位の勝ちしかなくなるはずです。なので長期的に見ればなんら問題になりえません」


___兵器が玩具にね。いい話だ。だが、メガロプール?だっけか?すべてって事は複数有るって事だよな。


「あれ?言ってありませんでしたか?メガ”ル”プールは大陸の24箇所に点在しています。そのすべてを真崎様に破壊していただきます」


___別に俺が壊す必要は無いんじゃないか?向こうの人間に兵器を渡してやらせればいい


「多分それは無理かと。破壊自体は出来ますが、向こうの人間がやるとは思えません」


___なぜ?


「今やメガルプールはある種の鉱山と化しています。しかも、その殆どは国の所有で警備も厳重です。本来ならメガルプールは世界から魔素を奪い魔法を使えなくする為に作られ、その副次的な効果で集めた膨大な魔素を使って全世界に死を振りまきました。しかし、今やメガロプールの使用者権限を持つ者は死に魔素を吸収する機構だけが残りました。それから、使われる事の無い莫大な魔素は貯まりに溜まって結晶となり、私が最後に見たときは結晶で山になっていました。それが250年程前です。結晶となった所謂、魔結晶は魔道具の燃料に使われて様々な用途に使われています。要するにこちらで言う原油。謂わばエネルギー源なのです」


___なら壊す必要は無いんじゃないか?


「先程言ったと通り昔のように魔素があれば、魔法が発展していけます。今向こうの世界では魔法具によりある程度快適な生活が出来ていますが、私が向こうの世界にいた最後の100年ほど進歩の無い停滞が続いていました。魔結晶から得られる魔素は無駄がすこぶる多く余り高出力な物に向いていませんので昔の様な魔法や魔法具を使えずある程度繁栄したのですがそこからは進歩の無い停滞が今も続いていると思います」


___停滞からの脱却か・・・


「はい。その通りです。ですので真崎様。微力ながらわたくしローラは御使えさせていただきます」


___まぁ、ゆっくりやって行くさ。武器を売りながらのんびりとな


取り敢えずはこんな所か、一旦会話を打ち切って小さな窓に視線を向けると下のほうに辛うじて街の輪郭が見えてきた。ゆっくりとだが確実に機体は湾岸部にある空港に向かって着実に高度を落としつつあるようだ。さて、これから忙しくなりそうだ。そう思いつつシートベルトの着用サインが出たので硬いシートに深く座り直しながらまだ見ぬ世界へ想像の羽を羽ばたかせていた。

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