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帯に短し襷に長し

「ハァハァちょっと…何よこれ!」

「いや…ハァハァ、俺にもさっぱり」


高地に生える秘薬の元となる薬草を取りに来たらハーピィの群れに遭遇してしまった。指定害獣なのでついでに駆除をしたのはいいが流石に数が多かったので俺もミカもかすり傷を負ってしまい、せっかくなのでセララにヒーリングしてもらい回復はしたものの問題が発生した。


動悸、息切れ、興奮がもの凄い荒波となって押し寄せて来る。要はどちゃクソムラムラしている。


「ご主人様?ミカ?どうされたのですか?」


「お前これ…ハァハァ、媚薬効果入ってない?」

「いえ、心当たりはございませんが回復ついでに敏感になればいいなとは思いました」


どうやらセララの都合のいい様に作られたオーダーメイドスキルのようだ。まぁこれはこれで敵に使えると思う…無駄なムラムラはなんせキツいモノがある。頭が回らないし何も集中出来ない、戦闘中にコレをやられるとたまったもんじゃ無いな。


そんな俺たちを見て何を血迷ったかセララも自分自身に何故か回復をかけて悶え出した。



「何してんだよ!今敵が来たら…ハァハァ」

「もぅ…なんなのコレ…ハァハァ」

「ふぉぉぉ♡」


その後しばらく3人で地面に突っ伏してムラムラ悶えていたら5分程で収まった。


「ふぅ、思わぬ落とし穴があったな、回復と媚薬がセットになってるとは思いもよらなかった」


「じゃあデバフとして敵にかけたら回復しちゃうって事よね?」


「だな。初っ端以外は使えないな」


デバフとしてはかなり優秀で、ムラムラが思考を奪い快感や痛みの感度が増す。音や刺激にも敏感になってしまうので本当に集中力が散漫になってしまう。


しかもたとえ同じ人にかけるとしても場所、時間、タイミングによってメリットにもデメリットにもなると言う近年稀に見るユニークスキルになってしまった。


ま、当の本人はご満悦のようだけど。



俺はデバッファーと飛び道具

ミカは強襲&近距離戦闘

セララは回復&デバフ&暗殺


何が凄いって全員飛べると言うのがやはりアドバンテージだと思う。ま、今の所物騒な依頼は来てないし願わくば平和が続くと良いなと思うのはフラグだろうか?



その夜、いつものように3人でセンチュリオンホテルのラウンジで夕食を楽しんでいる時三人の使者がやって来た。カルデモ共和国理事会トップの御三方の正式な使い、内容は俺達の国外追放。唐突なフラグ回収に質問を投げるもただ決定事項と告げられるばかりで納得の行く返答は得られなかった。


元より俺達の納得など全く意に介さないと言った態度でホテルを強制的に追い出された。


「多分自分達や国に取って大した利益にならないけど脅威だけは高いままだから邪魔になったんでしょうねきっと」


ミカはホテルを出る時にバイキングから取って来たオレンジを食べながら仕方ないと言った様子で語った。


また宿無しか。しかも冬直前、いや夜はすっかり冬と言っても過言では無いほど寒くかなり冷える。


今日は月明かりも無く夜の森はナイトビジョンを使えるミカは別として俺とセララには目を開けても閉じても同じ暗さだ。


とにかく今は木の上で俺の羽毛にくるまりながらみんなで寒さに耐え朝の訪れを待つことにした。



やかて長く辛い夜が明ける

「あぁ…朝日…」


思わず涙が溢れそうなほどの温もりに心からの感謝をしながら全身を温める。流石のドMセララでも寒いと言う苦痛は耐え難いらしい。


三人で薪を拾い焚き火を起こし暖をとる。ホテルから拝借していたハムを枝に刺して炙る。焚き火のパチパチ音とハムの焼ける匂いが辺りに漂う。


いつものホテルの朝食より遥かに質素な筈だがそれでもいつもの朝食バイキングより遥かに美味しく感じるのは苦労のお陰か野外のお陰か。


「さて、これからどうする?」

焚き火を3人で囲みながら今後の方向性を模索するがこれと言った名案は上がらなかったので、取り敢えず昼飯の確保をしようと言うことになった。どんな時でも腹は減ってしまう。



〜数時間後〜

セララはメーター超えの美味そうなサーモンみたいな魚を3匹


ミカはホーンラビット2匹


俺は小型のボア1匹



取り敢えず肉は保存食に加工して魚を頂く事にしたがこれがバチくそ美味かった。産卵の時期も有りイクラもたっぷりと詰まっていた。あまりのデカさに3人で食べても一匹丸ごと食べきれなかったので残り二匹は保存食に。


取り敢えず食べる事と夜の暖を取る事を最優先に動いた甲斐があり、その日の夜は非常に快適に過ごす事が出来た。


そんな感じであっという間に4日が過ぎてしまう。食料さえ確保出来たら後は割とのんびり過ごしてご飯の時間を待つ様な1日は悪くなかった。


その日の夜、焚き火を囲みながらミカが呟いた。


「お風呂の代わりに水浴びだけはキツイけどこれはコレで楽しいわね」

「しかし洗濯が問題ですね、やはり着替えは必要かと」


しばらく文明を離れてキャンプをしたが、やはり現実問題としてこの先の真冬は越せないだろうと言う結論に至り移動を開始する事にした。


目指すは最北の【インペリアル・ニヴァーレ神聖国】

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