ムッチムチは無知
取り敢えずセララのスキルツリーを見るために粘膜に触れたいのだが人目もあるし指を咥えさせるのもなんか恥ずかしいので鼻の穴に指を入れて見ている。それを見てミカが爆笑している。
セララはソウルポイントが結構貯まってる感じだでマジで何にも解放してないし、と言うか…属性すらない。悪魔との従属契約でされるはずの属性強化もされていない。
イーヨも無属性で昔から無能呼ばわりされていたらしいが今は空間魔法が使える、恐らくセララも同じ感じなのだろうか。
と言う事でこれは一度サブナック支部長に見てもらうしか無さそうなので翌日すぐに遺跡支部へ向かう事にした。
——遺跡支部への道中——
「お"ぅえ"っ!!」
セララが吐いた。
彼女の羽は蝶々の様なそれはそれは美しい羽で、半透明の羽は虹色のラメになっていて光を浴びるとダイヤモンドのように七色に表情を変える。
しかし、俺たちの【翼】と違い彼女は【羽】なので飛び方がまるで違った。それこそ蝶々の様に上下に乱高下しながら飛行するので短距離なら問題無いが5分も飛び続けるとリバース、それを繰り返しながらなので一向に進まない。これは漁師が船酔いを克服するのと同じで、とにかく慣れるまで飛ぶしか無いだろうな、可哀想に…でもあんな美人でもゲロはしっかり汚かった。
あまりに進まないので俺とミカで手を取って飛んであげることにした。最悪落ちてもセララも飛べるし怪我はしないだろうから遠慮なく飛べるのでそこからは早いもんだ。
── ミストニア東支部──
「お久しぶりです 御座いますショウ様、ミカ様」
獅子頭の悪魔のサブナック支部長が暖かく迎えてくれる。秘書のラキュムさんも相変わらずお綺麗で。
「ショウ様、それはそうといつも大変多くの罪悪感をありがとう御座います!」
俺は普通にしてても何故か多くの罪悪感を感じているらしく、それはこの人達にとってのご馳走やボーナスみたいなものらしく、もちろんゾディアック教の信者を集めるのは大事だが罪悪感も同じくらい大事らしい。
感謝のお受け取りもそこそこに本題のセララを見てもらうことにした。
「ふむ、セララさんも大変珍しい能力をお持ちで第5位階ですね」
第5位階!これはまたお宝SRを引いてしまったか!?
「ほう瞬間移動ですか、しかもユニークスキルですね」
なんですと? 瞬 間 移 動!? ユニークスキル!?
USSRやんけ。もう勝ち確定やんけ。
と、思っていた時期が俺にもありました。
セララは普通の農村産まれで字も書けない。特に頭がいい訳でもなく、ぶっちゃけどちらかと言えば悪い方だ。特技も無く今の所何か光る素質などは見当たらない上に、せっかくの飛行能力も残念な感じだ。
ただ【美しい】この1点に置いて他に類を見ない。正に比類なき可愛さ。他の追随を許さない所か影すら踏ませない程の隔たりを感じさせる。まさに全ステータスを余すことなく可愛さに全振りしている。
なので空間の概念を説明しても全く意味が分から無いようで説明に行き詰まっている。
彼女の認識ではこの世界は大きな亀の背中にドラゴンが3匹乗っていて、この平らな大地を支えているらしい。さすがUSSR、かなりのリソースを割かないと実戦投入は難しいという事か。とうやら道のりは遠そうだ…
──センチュリオンホテル ラウンジ──
「空間を飛ばして移動出来る?」
「そう、ここに居たのに障害物を無視してあっちに行けるんだよ」
「はぁ…」
こんな感じで授業をしてはいるが瞬間移動の理屈が全く分からない上それが一体なんの役に立つのかと聞かれてしまった。
「そりゃもちろん戦闘にも潜入にも偵察にも何でも役立つよ!」
「ご主人様、私にそれらを期待されているのならばお役に立てません。私の運動神経は並以下でお考え下さい」
だと思った。普段の行動を見ている感じ何となく察してた。特に羽を使うのはほんとに不器用だと思った。
まぁ可愛いさ極上最高峰を好きな時に好きなだけ何でも出来るってだけでも相当価値はあるが、そうじゃなくて自分の身は自分で守れるくらいにはして上げたい。そう思うのはおこがましいだろうか?
「ご主人様の仰る通りですが自身の身を守ろうとする前に多くの殿方は私を命懸けで守りたがりますのでやはり不必要かと」
「それはセララが可愛いからと言うことに起因してるんだけど、それは同性や魔物相手には通用しないぞ、またこの先歳をとって可愛いが無くなっていく事は確定してるワケだが、それでも殿方は守ってくれると思うか?」
「考えた事も御座いませんでしたが確かにご主人様の仰る通りですね…」
セララは頭こそ良くないが凝り固まった固定概念や変な先入観があまり見受けられないし非常に素直だと言える。
「だろ?それに今はこの能力の役立て方が分からないだけで、実際に会得したらやっぱり便利だなと実感出来る能力だと断言しておこう。だから自分が持っているモノを否定せず、まず自分の能力に期待して受け入れる気持ちは持とうな」
「承知しました」
しかし、セララの能力開花は意外な形で達成される事となった。




