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お客様、逸材で御座います

思った通り単純な悩みだった。


剣の才能無し

魔法の才能無し

冒険者適正皆無

ノルマも達成出来ず毎月銀貨を支払っている(親が)

お先真っ暗鬱手前←今ここ


話を聞いてやってる最中に泣き出す始末、まぁ気持ちは分かるが。



「よし、イーヨ泣くな。力になれるかまだ分から無いけど俺達が力を貸してやる。安心しろ」


イーヨは涙をグッと堪え俺を見据える。


と、その時イーヨがぼんやり光った。え?これ支部長が言ってた魂の屈服の合図じゃん! 

(確か光ってる間に何処でも良いから手で触れるんだっけか)


俺はすかさず右手を出して握手を求め、イーヨが俺の手を取る。するとイーヨを包んでいた光が俺に入ってきた。なんか従属したのが分かった。どう説明したら良いのか分からないが俺を慕っているのがハッキリ分かる。飼っているペットが唸っても怖く無い様な感じに近いのかな? とにかく相手のそう言うのが理解出来る。


チョロw 多分だが鬱手前ってタイミングがかなりよかったのかも知れない、これは覚えておこう。


その後信仰する神の話になり、商業の神様を信仰していると判明。神の名は【エビバス】


「なぁイーヨ、その神にちゃんと祈りを捧げてるか?毎日感謝しているか?」


「勿論だよ!」


「なら何でお前はそんなに不幸なんだ? 来たくなかったこんな所で毎日辛い想いをしてるんだ?」


「いや…それは…僕が至らないから」

責任転嫁をしないのは偉いが自分を責めすぎだ。


「失敗はお前のせい?成功は神のお陰?んな訳あるかよ。ご利益は一つも寄越さずバチだけしっかり当てるとか採算が合ってねぇよ。商売の神なら採算合わせるのがスジとは思わないか?」


「…うん、正直それは思ってた」

(従属契約の特徴は共感しやすくなる。本音が漏れてしまうなどの効果が得られる)


「じゃあそんな神は捨てろ、キチンと恩恵をくれる神を信仰するべきだろ?」


「いや、まぁ…でも親が…」

(従属契約は出来ても改宗はなかなか困難だな)


「イーヨ話は変わるけどお前ってさ、誰かの幸せを願う方?」


「え、まぁ」


「毎日? 1日に何回?」


「いや、具体的に誰かを考えてとか回数とかは無いけど」


「だよな、皆んなそうなんだよ。誰もお前の事なんて見てないし誰もお前を気にしていない。誰もお前の幸せを考えて無いんだよ。今この瞬間お前の親兄弟ですら。お前は親の幸せを1日に何回考える?『今親は幸せかな?』って考えるか?」


「いや、考えた事はないかも」


「そう、親も同じだ。親ですら考えないお前の幸せを他人が考える訳ないよな? でもな、今この瞬間『俺』だけはお前の幸せを真剣に考えている。この世界で今俺だけが」


イーヨの目が輝く


「けどな、お前の幸せを邪魔する奴がいるんだよ。誰かわかるか?」


「神?」


俺は首を横に振る


「親?」


また首を横に振る、そして机に身を乗り出しイーヨの目をジッと見て答える。


「お前自身だ、前に進もうとするお前をお前自身が縛り付けて、この世で今1番お前の事を考えている俺の勧誘を断ろうとしている」


パリン


イーヨを守っていた有るか無いかの微弱な結界みたいな物が音を立てて壊れるのが分かった。多分神を見放したからご利益が無くなったのだろう。例え本人が気付かなくても目に見えないようなほんの少しのご利益を休みなく24時間体制で与え見守ってくれてたんだな。



(バリアシャボ!!マジでケチくさいシケた神だな。神の仕事してんのか?俺の神は翼も力も与えてくれたぞ?)



その後は無事ゾディアック教に入団、その夜支部長から通信が来た。



「まさか研修段階で改宗までしてしまうとは恐れ入りました。前回の悪魔的発想の復讐でその手腕の恐ろしさを垣間見たつもりでしたが…その改宗トークパクらせて貰って良いですか?」


この人ほんとシゴデキだな。俺の方が遥かに年下だろうし改宗なんか彼の専門分野だろうになんにでも学ぼうとするこの柔軟な姿勢は尊敬に値する。


「メリッサ、文書に起こしてコピーして全員に落とし込んでおいて」



——翌日——

イーヨを連れて森へ来ている。属性不明の原因を詳しく調べてもらう為遺跡に向かっている。途中魔獣とエンカウントした時ガヤルドと俺の戦闘を見て目を丸くしていた。


「噂には聞いてたけどホントすごいな2人とも!」

憧れのヒーローでも見る様な目で見てくる。照れ臭いが悪い気はしない。



無事遺跡につきショートカットワープで来賓室へ。勿論イーヨは目を丸くしていた。


そしてお決まりコースで隣の部屋へ連れて行かれメリッサさんにグポられ目を丸くしていた。仮に俺がイーヨとホモォしたら従属契約から隷属契約になりステータスをイジれるんだが生憎とその気はない。




「イーヨさん、現在【位階】は第何位ですか?」


魔法の位階は1番下の1位階から始まって修練や鍛錬を積み10位階まで上がる。だが人間の平均は2位階で老齢の域に達して3位階、伝説や歴史上の偉人などは4位階までの記録が残されている。



「位階ですか? 0です…」


実はちょいちょい0の人がいる【稀によくある】タイプだ。『魔力はあるけど放出出来ない』と言う体質で、自身の体内でしか魔力を使えない。これが回復魔法やバフならまだ活用出来るけどイーヨは商売の神様で戦闘向け、しかも自身に向けての魔法なんてのは一つもない。それで冒険者するって言うのはちょっと酷な気がする。



「承知しました。翔平様、ご相談が御座いますので少し隣の部屋へよろしいでしょうか?」


隣の部屋? メリッサさんも腰を上げて隣の部屋へ行くみたいだ。これは…

俺はサッとソファを立ち足早に隣の部屋へ足を運ぶ。そしてベルトを外しズボン



「あ、いえ、その必要ございません」

すぐさまメリッサさんに止められた。何よ期待させるんじゃないわよ。恥ずかしいったらありゃしない。



「ご相談と言うのは彼の位階の事なのですが、結論から申し上げますと第7位階です」


「え!!!!」  シィーーーー!!

思わず大声が出てしまった。だって7位階なんて神や悪魔の神話に生きる者が辿り着ける境地だ。事実歴史が証明している様に亜人種も含めた全人類で未だかつて5位階まで行けた人は居ない。



「恐らく血統的な要因だと思われますが、現在浸透している位階についての考え方は歪曲してまして0〜3位階迄は確かに鍛錬ですが、それ以上は適正による所が大きく彼は正にそのタイプです」



「朗報じゃないですか、一体何が問題なんですか?」

そうだよ、大袈裟に隣の部屋まで案内されて恥ずかしい思いまでしたのに何の問題も無いじゃ無いか?



「お忘れですか?無償で恩恵は与えません。必ず対価を頂かないと」


はいすみません、その設定忘れてました


「先に言っておきますが第7位階は【空間魔法】平たく言うとアイテムボックスですが、これは人間界ではそれだけで宮廷魔術師、王の側近、貴族なら城壁内に護衛付きで屋敷を与えられて伯爵級扱いです。この恩恵に見合うモノを差し出して頂かない限りお話を進める事は出来ませんしヒントを与えるのもダメです」


まいったな…



「イーヨ、えーあーそのなんだ? 力を与える代わりに何か対価を貰わないといけなくてな。詳しくは言えないがお前に与えれる力はお前の価値を高め人生を一変させてしまう大きな力なんだよ、マジで。何を差し出せる?」


この返答で俺が心の底から納得出来る対価でなければ成立しない。


「全てを」


「え?おいおい、それって命も入っちまうぞw」


「うん、家族の命とかは流石に無理だけど僕の決裁でどうにかなるものは全て、勿論命も含めて差し出すよ」



(支部長、これは…)

(耐えろメリッサ、ヨダレが出てるぞ!しかし…何と言う凄まじい量の罪悪感…地球人は全員ハイプリーストか何かなのか?)



イーヨは明るく語る。

「キミ達2人を見て思ったんだ。死んだように生きるより、死ぬつもりで生きたいって。今さっき覚悟が決まったよ」


俺的には完全に納得出来た。てか差し出すものでこれ以上のモノって何かあったっけ?



もうそこに泣き虫はおらず1人の男がいた。








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