表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/37

第16話 制服好き好き卿

 帰り道、僕は普段と違うと思った。

 朝とは違う。勘違いじゃないはずだ。

 

「あ、あのさ……冬野さん、夏元さん?」

「どうしたの、燿くん?」

 

 明確に違うんだ。

 対応はいつも通り。いつも通りに話をして、いつも通り一緒に帰ってくれてるんだ。冬野も夏元も。でもね。

 

「いつもより、こう距離があるよね?」


 普段はもう少し近い気がしたんだけど。パーソナルスペースが拡大してる。


「……な、何のことかな? ね、美月さん」

 

 思えば昼からそうだったかもしれない。

 

「えーと、今日は別々で帰ろうか? 冬野さんのお家なら夏元さんが知ってるはずだし」


 冬野は首を横に振って。


「わたし、燿と帰りたいから」

「……冬野さん」

 

 あれ、何だろう。冬野の言葉が嬉しすぎて涙出てきそう。

 

「ボ、ボクも燿くんと帰るよ!」

「うん。ありがとう」

 

 僕、一人じゃないよ。

 冬野も夏元もいい子なんだ。かわいくて優しいとか……おのれ。おのれっ、周防暦ィィイイっ!!

 

「それで、この絶妙な距離感は?」

 

 僕がずっと気になってたことを聞くと夏元は申し訳なさそうな顔して。

 

「そ、そのさ……別にボクは燿くんが嫌なわけじゃなくて。と言うか、むしろ燿くんは大丈夫というか」

 

 何だろうか。

 僕何かやっちゃったかな。なんか、やらかしたのかな。だめだ、覚えがないや。

 

「夏元さん?」

「燿くんがっ!」

「はい!」

「制服大好きって聞いたから! 今更だけど、ちょっと……さ」

 

 あ。

 

「あ」

「燿?」

 

 朝のかぁああああ!!?

 僕、なんかやっちゃってたよ!


 春木が。

 春木が心に男子を持ってたから、ついやっちゃったんだ。

 

「ストップ。ちょっと待って、二人とも」

 

 春木と盛り上がった朝の会話から誤解が生まれてる。

 僕が制服フェチだなんていう、とんでもない誤解が生まれてる。それを信じられてしまったら僕は学園で過ごしてる間はずっと発情期ってならないかな。だって学園なんだよ? 学生は制服なんだから。

 それはまずい。

 

「信じてほしい、二人とも。僕は制服フェチじゃない」

 

 僕は人並み程度に制服女子が好きってだけなんだ。狂信の域には行ってない。

 

「制服、嫌い?」

 

 冬野が腕を広げた。

 見せるっていうか、見せつけるっていうか。

 

「大好き」

 

 はっ!?

 違っ、これは制服だからじゃなくて。というか誘導でしょ! 誘導尋問だよ、これっ。

 

「や、やっぱり制服好きなんだ」

 

 夏元がスカートの端を抑えて俯きながら言う。

 それも、これも。

 どれも、これも。

 

「うん、嫌いなわけないよね」

 

 夏元も冬野も美少女だ。そこに制服なんだよ? これは仕方ないでしょ。

 

「制服は好きだよ。でも、僕はそこまで熱狂的じゃないって」


 それだけは本当なんだよ。


「たとえば、夏元さんの私服。ゴールデンウィークに見たけど、あれも魅力的だと思ったし」

「そう、かな……? そんなに女の子っぽくないと思うけど」

「夏元さん。制服はさ、私服があるからこそより良さが際立つんだ。逆も然りだけど」

「よ、燿くん……?」

「私服と制服、全然違うイメージの服。それが大きな魅力なんだよ。スラックスだったよね、あの日は」

「う、うん」

「そう。私服だとスラックス。学園ではスカート。その時点で全然違うんだ。だからこそ良いっていうか、それが────────」

 

 僕が説明を続けようとするも。

 

「燿」

 

 背中を指で突かれた。

 

「わぁっ!? ふ、冬野さん……?」

 

 いつの間に後ろに。

 

「わたし、陽毬の私服見たけど」

 

 あ、それはそうね。

 

「まあ、それは女子同士だからじゃないかな。僕も男子の制服私服はそんなに気にしてないし」

「陽毬」

 

 冬野が夏元を呼ぶ。

 

「どうしたの、美月さん」

「燿の私服、どうだった?」

「ボ、ボクは……その」

「うん、分かった」

 

 今ので何が分かったんだろう。

 夏元、最後までは言ってなかったよ? 女の子同士ってすごぉい。通じ合う何かがあるって事なのかな。

 

「後で休みの時、三人で遊ぼ?」

「分かった! ねえ、燿くんは?」


 夏元の質問に「僕も大丈夫だよ」と答える。誘われたんだ。なら、行かないと。


「で、いつにする?」

 

 僕が聞けば。


「……テスト終わって成績出た後が、良い」


 冬野は苦しそうな顔をしてる。


「冬野さん?」

「……その方が気分良い」

 

 僕と夏元も納得だった。

 冬野はテストのトラウマは拭いきれてない。でも、僕らと遊んで少しでも気分が良くなると思ってくれてるんだ。

 

「じゃあ、予定とかはまた後でね!」

 

 夏元が帰っていく。

 

「……テストは嫌だけど、二人と出かけるの楽しみ」

「僕もだよ」

「燿と陽毬とならどこでも楽しいと思う。帰り道だっていつも楽しいから」

 

 無邪気な笑顔で冬野は言う。

 

「ばいばい、燿」

「うん。ばいばい、冬野さん」

 

 僕は冬野をしばらく見送った。


「私服の冬野さん……うん」


 今から大変楽しみである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ