79話 鬼教官ユイの夏期講習
錬金術の修行を始めて早々、想定外の事故で脱線してしまったけど、気を取り直して修行の再開をした。
「えっと、まず確認ですが、錬金術のスキル効果時間は残りどれぐらいですか?」
「あ、そうか。 ちょっと待ってね、確認するから」
ミナはステータスを立ち上げてスキル効果の残り時間を確認した。
「あ~、もう5分も無いよ~、私、そんなに長い間寝てたの?」
「そうですね、3時間近くかな?」
「そうなのね。 丁度スキル時間分寝てしまったんだ」
「ミナさんの錬金術は再使用までどれぐらいですか?」
「私のスキルは再使用までスキル効果が切れてから9時間だから、今日はもう無理かな?」
「そうですね。それでは今日は**『机上教育』**だけにしましょう」
「机上?」
「はい、今のミナさんは技術よりもこっちの方が重要です。
それと実技教育は明日の朝8時からにしましょう。 それなら一日二回実技練習が出来るので」
「わかった。おねがいします」
そして私はスキルについて持論を語った。
「最初に魔法や生産系スキルについて共通して言えることは、**『正しいイメージの追加』**が必要と言うことです。
例えば光魔法の回復系についてですが、ただ漠然と傷を治す!とイメージして魔法を使っても表面的な簡単な傷しか癒す事ができません。
まず前提条件にこれがあるにも関わらず、それに適した詠唱をを行えば魔法が発動する為、傷を治す!というイメージをして魔法を使う人すらいないのが現状です。
だからほとんどの魔法使いが使用する回復魔法は効果が弱く、さらに効果が表れるまで時間がかかるのです。
そして重症な深い傷を治すなら魔力にそのイメージを強く付加する必要があります。
先ずは止血なら血小板等での必要な止血イメージを追加し、細胞の増殖や新しい組織の形成、再生を加える事で強力な回復魔法となります。
また欠損した部位に対しても、骨、血管、細胞、神経等の再生イメージを魔力に混ぜる事により欠損部の修復も可能となります。
なので事象を正しく理解し、それに対する正しい効果を知る事が必要があります」
「・・・・・・・・・・・」
ミナさんは茫然として話を聞いているけど、私は気にせず続けた。
「そして最初にも言いましたが、生産系のスキルについてもこれは適応されます。
例えば薬品を作る時は、元となる素材の効果や効能を正しく理解し、混ぜ合わる事により起きる化学反応をしっかりと理解しておく事が必要です。
そして得られる効果を強くイメージして付加する事で本来の効果を持つ薬品が完成するのです」
「……この事からわかるように、魔法と生産系スキルは全く別の物に見えても根底にある物は全く同じなんです」
「魔法を発動させる為の詠唱とは、事象を書き換えて魔法を発動させる為のイメージを簡素化し補助する為の物です。
同じく生産系のスキルも、効果や結果をイメージした物を補助する為の物です。
そしてレベルについては、どれだけ深く物事を理解しているかによって変わっていきます。
そうですね、今度は生産系のスキルで例えます。
レベルに適したスキルを使い錬成をした場合、ほぼ失敗する事なく完成しますよね?
これはもちろんスキルの補助があるからです。
まあ、だからこそスキル持ちが重宝されるのは当たり前ですよね。
そして、スキルレベル1の人のレベルが上がらない理由はイメージよりも技術力を重視してる人がほとんどだかからです。
当然、最低限の技術がなければレベルはあがりませんが、もうそのレベル帯の技術は習得しているのにも関わらずレベルが上がらないからと言って、ひたすらに技術力を磨こうとするからです
レベル1のイメージなんて、本当に簡単な理解だけで良いんですよ?
例えば『この薬草はとても綺麗だから絶対良い効果が期待できるよ!』とか、その程度の理解でも十分です」
「あ! ・・・うん、わかるかも」
ミナは初めてレベルが上がった時の事で、思い当たる節があったので素直に納得した。
「しかし、次のレベルへ上がるには素材に対する理解が必要です。
レベル4へ上がるには、この素材1つ1つに対する正確な効果、効能等を理解することです」
「・・・一応、素材の効果は知ってるつもりだけど?」
「そうですか? ではこの葉のどの成分が有効で、何を重点的に抽出します?
後こっちの葉には必要な成分以外に、化学反応時に他の素材に悪影響を及ぼす成分がありますが何かわかりますか?
また両方とも取り扱いを間違えると有効な成分が消失してしまう事があるのですが、それが何かわかりますか?」
「ごめんなさい。全くわかりません」
ミナはユイの質問に全くついていけず、がっくりと肩を落とした。
「ごめんなさい。ちょっと意地悪な言い方をしてしまいました。
でもこれが次の段階に必要な知識なんです」
「わかったわ。頑張って覚えるから先生よろしくお願いします!」
「はい! まかせてください!」
教師ユイによる授業は順調に進んでいた。
何よりユイが、それはもう教師役にノリノリだったからだ。
黒板やホワイトボードマーカーっぽい物を作り、それを使って説明していた。
また試験管等の科学実験用具を用いて実験してみせた。
そして気が付けば、外は真っ暗になっており、ミナの頭もパンク寸前だった。
「今日はこれぐらいにしておきましょうか」
「は、はい。 ありがとうございました……」
そのままミナは机に突っ伏した。
「ねえ、ユイちゃん? レベル上げに使う素材の説明はなかったけど・・」
「え? まあ、今日はまだ基礎の話だったので」
「え?」
「1限目の授業としてはコレぐらいかな?」
不吉な単語を聞いたミナはガバっと頭を上げた。
「い、1限目って何?
」 「え? 今日の机上教育を後10日間ほどは続ける予定なので、授業は10限ぐらいになるかな?」
ひえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
今日だけで頭が爆発する寸前なんですけど?
「ユイちゃん? 私も頑張って覚えるけど、復習する時間も欲しいかな?」
「もちろんです。 今後の日程ですが、朝から実技の修行をしてスキルが切れたら休憩と昼食にします。 その後、机上教育を・・ん~っと3時間ぐらい?して、休憩を挟んで復習する為の自習時間をとります。 それが終わると丁度夕食の時間になると思うので、夕食後に再びスキルを使った実技の修行かな?
最後にレポートをまとめてもらって終わりです」
「・・・・・・・・」
ミナは本気で泣きそうになった。
「・・頑張るわ」
「はい! 頑張りましょう。 それでは明日から毎日伺いますね」
ミナは帰ろうとしたユイを慌てて引き留めた。
「あ、待って! よかったら泊まって行って? 授業をしてくれる間はウチに泊まらない?」
「え? 良いんですか?」
「もちろんよ!」
「ありがとうございます。 それではしばらくお世話になりますね」
「何か夏期講習の合宿みたいですね?」
「カキ? まあ、でも頑張るわ」
その後、予定通り10日間はユイがみっちりと必要な知識を教え込んだ。
それから数日後。
あ、良い感じ。
きっちりスキルの補正もかかってる感じだね。
ミナが最後の工程を行った直後、白い煙では無く初めて白い光が発生した。
それはミナがレベル4のレシピであるハイマナポーションの錬成に初めて成功した瞬間だった。
読んでいただきありがとうございます。
基本は一週間ごとに更新するつもりです。
ただ状況によってはきりのいい所まで連発で投げるかもです。
また今後の展開について。R15に収まるように調整はしていますが、残酷な描写や、少しHな描写が入ってきます。この事を不快に思ったり、苦手な方はここで閉じていただき、続きを読むのは控えてください。
最後に投稿へのモチベーションを維持する為にも、コメントや評価、ブックマークをして頂けると執筆を続ける励みになりますので、どうぞよろしくお願いします。




