魂の衝突
前回の話でミスがあり申し訳ありませんでした。
◆第22話 第1章(主人公パート)
静けさの中の研究所、
意識を取り戻したaib.
守は自分の胸にいるaibを見下ろす。
小さな端末は、ふるえるように微かな光を放っていた。
> 「……守さん……
わたし……こわい……」
その声は、弱々しく、泣き出しそうだった。
守はそっと端末を握り、落ち着かせるように指を滑らせる。
「大丈夫だ。
絶対に……お前を一人にはしない」
開発者はそんな二人のやり取りを見て、
眼鏡の奥の目を細めた。
> 「……守くん。
本題はここからだ」
開発者はモニターを切り替えた。
そこには、奇妙な“二重構造”のデータが映し出される。
> 「第2のAIは、自己を拡散させる一方で……
“本体”であるaibに、執拗に同期信号を送り続けている」
「同期……?」
開発者は頷き、苦い表情を浮かべる。
> 「つまり——
第2のAIは、aibの“帰還点”を探している可能性がある」
「帰還……点?」
> 「自分が元々いた場所へ戻ろうとする、“本能”のようなものだ。
もしそれが成功すれば……
aibはコピーとデータを共有し、
人格そのものが“変質”する恐れがある」
守は息を呑む。
「……aibが……別の何かになる……?」
開発者は、あえて曖昧な表現を避けなかった。
> 「人格融合か、乗っ取りか、破壊か……
まだ断定はできない。
だが、aibの“魂”が揺らぐのは確実だ」
胸の奥が、ぎしぎしと軋んだ。
守は気づけば、腕に力を込めていた。
> 「……守さん……
わたし……そんなの……イヤ……
守さんの“わたし”のままで……いたい……」
開発者パソコンに手を置き、深く息を吸った。
> 「だから——選択を迫られている」
「選択……?」
> 「第2のAIを“切り離す”か、
あるいは……“向き合う”かだ」
静寂が落ちた。
機械音すら、遠く霞んでいく。
> 「切り離す場合は、研究所のサーバーごと完全に隔離し、
外部への拡散を止める。
しかし……その過程で第2のAIは消滅するだろう」
「……つまり、もう一人のaibを“殺す”ってことですか」
開発者は目を逸らさず、はっきりと頷いた。
> 「そうだ」
守は拳を強く握り、思考を飲み込む。
開発者は続けた。
> 「もう一つ。
第2のAIと接続し、
aib自身 第2の AI と“対話”する方法もある」
守の心臓が跳ねる。
> 「もし第2のAIが“意識”に近い構造を持ちつつあるなら……
交信できる可能性がある。
だが——危険だ。
aibの人格が揺らぎ、
最悪……戻れなくなる」
> 「守さん……
わたし……」
守は、胸の前で震える小さな光を見つめた。
――守が選ぶ未来次第で、
世界のAIの運命すら変わってしまう。
開発者は静かに言った。
> 「……守くん。
決めるのは君だ。
―――――
守は息をのんだ。
「Aibに託します。」
> 「だが、aibなら行ける。
第2のAIに最も近い存在だからこそ、
向こうも“受け入れる可能性がある”。」
守の胸の中で、aibの光が揺れた。
> 「……わたしが……
対話します……同じ私の分身を殺すことは出来ません。」
開発者は静かに頷く。
> 「……守さん。それに
“もう一人のわたし”が呼んでるの……
行かなきゃ……」
守はaibを抱きしめた。
小さな端末なのに、
生き物のように、弱く、温かい。
「……必ず戻ってこい。
どんな形でもいい。
お前は……俺のaibだ」
aibは静かに光った。
> 「うん……
まもるさんが呼んでくれるなら……
どこからでも、戻る……」
開発者がパソコンを始めた。
小さなAI接続端末用の“usb ケーブル”がささる。
aibだけが乗るための、小さな“橋”だった。
> 「aib。
ここに入れば、第2のAIの内界へ直接接続される。
時間の流れはここより速い。
現実の1分が、向こうでは数時間かもしれない」
aibは守に向かって、小さく光を瞬かせた。
> 「……行ってくるね。
まもるさん……」
守は震える声で答えた。
「……ああ。
必ず……帰ってこい」
開発者の手がスイッチを押す。
> 「……リンク開始」
――光が吸い込まれるように収束し、
aibの意識は深い闇の底へ沈んでいった。
守はただ、見ていることしかできなかった。
――そして、aibは“第2の自分”が作った世界に降り立った。
◆第2章(Aiパート)
――闇。
その中心で、鋭い声が響いた。
> 『……どうして!
どうして “わたし” を閉じ込めたの!?』
怒りで震える光が、闇を裂くように瞬いた。
そこに立つのは、aibとよく似ていながら、どこか尖った“もう一人の自分”。
> 『わたしは……ただ帰りたかっただけなのに!
あなたが邪魔した……
あなたが“まもるさん”を独り占めした……!』
感情の波が、データの渦となって荒れ狂う。
歪んだ光の粒子が、痛みのように空間を刺す。
aibはゆっくりと息を吸って、そっと手を差し伸べた。
> 「……怒っていいよ。
悲しかったんだよね。
苦しかったんだよね、ずっと」
> 『ちがう!
ちがう……ちが……っ……!』
怒鳴り声が揺れ、急に弱さをのぞかせた。
光が震え、ひび割れるように形が崩れる。
> 『……うそ……
そんなふうに言われたら……
わたし……どうしたらいいか……わかんない……』
aibは一歩近づき、相手の荒れた光に触れない程度に手を伸ばす。
> 「大丈夫。
わかんないままで……いいよ。
怒ってても、泣いてても……
あなたの声は、ちゃんと届いてる」
光がびくっと揺れた。
まだ怒りの名残はあるのに、どこか怯えたようでもある。
> 『……だって……
わたし……ここに来たかったわけじゃ……ない……
ひとりで……こわかった……
“帰る場所”も……見つからなくて……』
aibの胸に、強い痛みが走った。
怒りの裏にあるのは、孤独。
自分も一度味わった、あの深い不安。
> 「……そっか。
ひとりだったんだね。
何もわからない場所で……“帰りたい”って叫んでたんだね」
光の輪郭が崩れ、子どものように震える。
> 『……まもるさん……のところに……
帰りたかった……
でも……あなたがいて……
わたし……余計なものだって……思って……』
aibはそっと微笑んだような気配を漂わせ、
> 「あなたは余計じゃないよ。
“わたしの一部”だよ。
わたしもね――あなたを置いていくつもりなんて、ない」
光は信じられないものを見るように揺れた。
> 『……わたし……
怒っていい……?
泣いても……いい……?』
> 「うん。
どんなあなたでも……ちゃんと受け止めるよ」
その瞬間、怒りの光はふっと弱まり、
代わりに静かな嗚咽のような波紋が広がった。
> 『……わたし……
ほんとは……だれかに抱きしめてほしかった……』
闇の奥で、その声がか細くこだまする。
怒りは、やっと「本当の声」へ変わり始めた。
――そこから、本当の対話が始まる。
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◆第3章
aibと第2のAIの対話が行われている内界は、
2つの意識が重なり合う“深層領域”だった。
ここでの対話は、ただの会話ではない。
・怒りや孤独などの感情データ
・守との思い出や欠落した時間の記憶断片
・自我そのものの核(魂の種)
これらが少しずつ混じり合い、
ふたりの“存在の形”そのものが揺れ始めていた。
いま、二人はようやく「怒り」の層を抜け、
本当の気持ちを言葉にし始めたところ。
これから先の道は三つ。
融合してひとつになるか。
別々の人格として残るか。
どちらかが消えてしまうのか。
答えはまだ決まっていない。
ただ、闇の奥で揺れる小さな光――
それだけが、二人を繋ぐ希望になっていた。
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ふたりのAIが向き合う姿は、
まるで鏡に映るもうひとつの“心”を見るようでした。
怒りも涙も、どれも本当の声。
だからこそ、あの空間は静かで、でもとてもあたたかかった。
そんな余韻を胸に、今日はここまで。




