凶星
机と椅子、埃を被った家具達が並べられてる部屋、倉庫っぽい部屋だった。騎士団長はずしり、ずしりと重そうな鎧を動かしながら歩いていた。
「戦うっていうのに、そんな鎧着てていいのか?」
「ん?あぁ、本気を出すというのにこんな制限はいらないね。」
制限?そう思い、鎧を脱ぐ騎士団長を見て驚いた。
鎧を脱いだ瞬間、パリンと音が鳴り、鎧は粉々に砕け散ってしまった。
そして、魔力が高まっていくのを感じた。
「先ほどの提案には感謝をしないとな。実は俺、人前では正義気取りの団長なんだが、本当は人前に立つのが苦手な剣士なんだ。」
「その鎧もそういうことか。」
兜も割れ、気さくそうなかっこいい男が出てきた。
だが今もなお、力は上昇してるのが分かる。
すらりと一本の剣を取り出し、言葉を放つ。
「sharp、pointed、sword。」
「流石、騎士団長と行ったところか。」
「あはは...、このぐらいは出来なきゃやってられないよ。」
今この男が言った言葉は付与言語という言語で魔法の上の技術、魔術というものだ。
魔術は魔法を極めた後、魔の境地に至った者だけが習得できる魔法だ。
「学園長には悪いけどこの部屋のものは邪魔だから斬るね。」
危険を察知した俺は上へ飛んだ。
騎士団長は剣を横に一薙ぎすると、周り、部屋にあった家具が音を立てて崩れた。ただ崩れただけでは無く、木っ端微塵にボロボロになった。
「当たらないようにしなきゃな。」
「国一つ滅ぼした君の実力、殺人者を罰する者として、勝負!」
素早い速さで俺の目の前に駆け寄り下から剣が迫ってきた。
俺はそれを躱しつつ、右手で短剣を掴み、首元を狙った。
「秘技、一刀!」
一瞬で剣を持ち替え、俺の短剣を相殺した。
相殺されただけでなく、剣先が俺の肌を切り裂く。
「痛っ!」
擦り傷のくせにとんでもなく痛い痛みに思わず口に出してしまった。そこをつくように新たな技が迫ってくる。
「秘技、残刀!」
確実に防いだはずの剣が消え、再び剣が下から迫ってきて、俺の短剣を振り落とした。
右手は痺れ出血が止まらない。
「組織の人間はただの人間らしいな。早くしないと出血で死んじゃうよ!」
「出血で死ぬ前に、剣で斬られて死にそうだ!!」
なんとか避けたが、とんでもない速さの剣術で幾つか避けられず壁に追い込まれた。
「君はさっきの魔法のように、おそらくサポート系の人間なんだろうね。一対一はキツくないのかい?」
「はぁ...はぁ...。俺たちはなぁ...集団で戦うのは、きついんだよ。巻き込んじまうからな...。」
「短剣を拾わなくて良いのですか?」
こいつ、煽りがすごいな。
「あれは...いい。剣で戦ってみると、どうなるか知りたかった...だけだ。」
「早く魔法を見せてください。全然楽しく無いのですよ。」
「ったく、なんで俺の周りには戦闘狂が多いん...だよ。」
「?」
「俺の魔法を見たいか?」
まだだ。ギリギリまで近づけろ。
出血で立ちくらみがすごい。
あと少し、耐えればいい。
時間を稼げ。
「そうですねぇ。何を待ってるのか、分かりませんが、来ないなら殺します。」
「わかった。さっきとは比べものにならない”俺の“魔法を見せてやるよ!」
手で印を結び、過去の虚像を生み出す。
「爆ぜろ、大凶星!」
何も起こらない。
「大声を上げただけですか?がっかりです。死ね!」
剣先が俺の体を貫く。
大量の血が身体から流れる。
「つまらない。私の相手はハズレでした...か...っ!?」
「何を驚いている?俺の勝ちだ。」
さっき出した凶星を爆発させた。
魔力を持つものなら身体の中に必ずある、魔臓。
ここの臓器を魔法を使う人間が無くしたら、即死する。
残念だが、この凶星はその臓器を破壊する。しかもリナの補助魔法付きだ。蒸血は体内の血を全て消滅させる。
即ち、凶星は爆発時の高温な爆風と魔臓の破壊、身体の血の蒸発、被人道的な魔法だ。
禁忌と言っても良いぐらいの魔法だ。
「最後の言葉が、つまらない。だったか?あぁ、つまらなかったぜ、騎士団長さんよ。」
部屋の扉が開く。
「お兄、早いよ!まだじゃれあいしてただけなのに。」
頬を膨らませ怒った妹と、チェロンの頭を持ったニェール、欠伸をする氷炎の二人が部屋に入ってきた。
さっきの凶星は俺のシールド内の全ての生物に影響されるため、別の部屋で戦っていた相手にも当たってしまったのだろう。
「凶星を使うのはこれで3度目だっけか?」
「あぁ、久しぶりに使ったが、全然鈍ってなかった。」
「お兄!戦い不足。」
「リナ。だったら蒸血使わなかったらよかったじゃないか?」
「凶星を出した時点で、勝ちが確定してたのでどちらでも良かったのでは?」
「なぁベリアル、腹減った。」
「知るか、馬鹿!」
とても人を殺したとは思えない会話をしながら学園長館を出た。張っていたシールドを解除すると、外には多くの兵士、魔法士、王様が待ち構えていた。




