十ヶ月ぶりの再会
バスチアンとアレチザンこの劇的な奇襲に恐怖した。
まさかこんな時に戦いを挑まれるとは考えても見なかった。
クロエに降伏か戦いか。
究極の選択を早くしなければジェルベージュにやられる。
既にジェルベージュは移動を始めている。
どちらを先に攻めるのか、一緒に攻められるのか、それとも、、
とくにバスチアンは娘の結婚式にクロエが参加することになっている。
先のバジルボトワはクロエが参加する結婚式当日に攻め落とされた。
バスチアンは恐怖に陥っていた。
西のエメスに助けを求めたかったがエメスの娘も来週結婚式がある。
それにクロエも出席することになっている。
状況は全く同じだ。
クロエは攻めるのか、やめるのか。精神戦になった。
バスチアンは即日降伏した。恐怖でまともな戦いが出来そうになかった。
バスチアンの降伏はすぐにアレチザンにも届いた。
アレチザンも降伏した。
クロエはそれぞれの国にエメとセリーヌを送って王家との話し合いを進めた。そしてクロエは残るエルメストに向かった。
エメスはこの同盟国であった三カ国を失ったことに衝撃を受けた。
まさかクロエがこんな時に三カ国を一気に攻め落とすとはおもってもみなかった。
娘の結婚式にクロエは参加することになっている。
参加するのか、戦うのか。
バスチアン同様クロエの出方が読めなかった。
エメスはすぐにジュネに相談した。
「ジュネ様、あのクロエは一気に三カ国を掌握し、このエルメストを孤立させました」
「ジュネ様はどう考えてますか?」
「俺が知っているクロエは戦いが出来る女じゃなかった。今クロエが何を考えているのかわからない。ただ裏切った俺を許さないとは思うが。」
「そうですか、クロエは戦いを挑むと思いますか?」
「……恐らく急にはしないだろう、そう簡単に手の内は見せないし、この三カ国は俺のエルメストに対する警告だと思う。予想はまずは前夜祭には普通に参加するだろう。二カ国に分けた部隊が戻りすぐエルメストを攻めるにはスタミナ切れていて戦えないはずだ。」
「だけどエルメストにとって絶好のチャンスだ。皇帝が自ら勝手のわからない敵地に乗り込んでくる。結婚式が終わり次第こちらが一気に攻める事は可能だ」
「おお、流石婿殿」
「この結婚式はマリベルが楽しみにしている。クロエには邪魔をさせない。早速エルメスト軍を準備させておく」
ジュネはそう言ってエルメスト軍の所に行った。
ジュネはクロエがそこまでやるとは思っていなかった。
クロエはすごい皇帝になった。
どれだけ辛かっただろう。
ジュネはクロエの心配をしている。
このエルメストに入りジュネがいる限り何人たりともクロエには手を出させない。
クロエはジュネの意図に気がついてくれただろうか?それによって全てが変わるのだ。
とにかくジュネは前夜祭で一度クロエに接触しなければならないと考えた。
クロエがどう出るか。
ただクロエにマリベルと一緒にいる所を見せたくない。
マリベルのことは変わらず嫌いだ。
だけど演技をしなければいけない。
ジュネはエディット達が人質として取られたままだからクロエ次第で全てが変わる。
ジュネは変わらずクロエだけを愛している。
愛する者の前で他の人間を愛するふりをする事が辛い。だけどしなければならない。
許せクロエ。ジュネは心の中でクロエに謝った。
前夜祭の当日クロエは普通にエルメストに入った。
まるで戦いなんてなかったように。
ジェルベージュの姿もなくエメ、セリーヌとブレーズを連れて城に入城した。
クロエはその日やはり真黒な細身のドレスを着ていた。
ハイネックの袖まであるドレスだ。
丈は長めで裾が長く引きずるタイプだ。
厳かで威圧感のあるクラシックなドレスだった。
髪は黒く腰まで伸びていて真っ直ぐに整いられておりクロエが静かに歩くと髪が靡きクロエの美しさを倍増させていた。
ジュネは久しぶりに見たクロエがこの世の人間には思えないほど美しく触れたら神罰が下されると思うほど神聖な皇帝の姿になっている事に驚いた。
そしてまたそんなクロエに心を奪われた。
やはりジュネにはクロエしかいなかった。
クロエが背負っている重圧と孤独を取り払ってあげたかった。
この胸に抱いて愛していると伝えたかった。
しかし今はそれが出来ない。
ジュネは辛かった。
クロエは十カ月ぶりにジュネに再会した。
ジュネは変わらず美しくクロエの心をざわつかせた。
ジュネの髪は伸びて肩下まであった。
ジュネの金色の瞳はクロエを見ていた。
クロエはまだ目を合わせる勇気が無かった。
ジュネを見て泣き出しそうになる気持ちをポーカーフェイスで乗り切る事に集中した。
エメとセリーヌはジュネを見て緊張したのがわかった。
クロエはそれすら出すことは許されないので平常心を保つことだけに集中した。
今から挨拶を交わさなければならないから。




