宿敵マリベルとの出会い
クロエはウンザリしていたが怒って帰る訳にいかない。
我慢の時だと思い耐えることにした。
「お父様」従者に呼ばれてなんと例の姫が現れた。
ベージュの髪色、青い瞳、美しく陶器のような肌に生まれ持った華やかさがある顔立ち。
確かに誰が見ても美しい姫だ。
「お父様、こちらは例のクロエ様ね」姫はクロエを見て挨拶をしてきた。
「クロエ様お初にお目にかかります。私マリベルと申しますわ」
「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。クロエでございます。」クロエも挨拶をした。
マリベルはミッドナイトブルーのドレスを着てゴールドのアクセサリージュネの色だった。
クロエは誰にも会う予定がなかったのでシンプルだけど上質なシルクの薄い水色のドレスに例のハスのストールを羽織っていた。
マリベルはクロエを見て言った。
「クロエ様はまるで町娘のようですわね」いきなりストレートに来るとは。
「大変失礼致しました。今晩はどなたにも会う予定がありませんでしたので」
「ああ、そうでしたの?でも普段からこんなんじゃジュネ様も気の毒よね」
クロエは何のいじめかと考えた。
こんなにストレートに言われるとある意味清々しい。
クロエは黙っていた。
言ってもわからないだろうと思ったからだ。華やかさだけが美しさではない。
わからない人には一生わからない。
「あらお黙になって、人を楽しませようとする女王としての才覚も疑われますわね」マリベルは言った。
ブレーズはクロエが止めているのでグッと堪えている。
「本日の月はエメス様、お好きでしょうか?」クロエはエメスに質問をした。
「ああ、綺麗だな」エメスは答えた。
「そうですね、月は太陽のように華やかではありません。月の光は太陽が月を照らすので光っているそうですね。でもその美しさや優しい光は漆黒の空を照らしてくれます。太陽があっての月、月があっての太陽。」
「……私はそんな存在でありたいと思っております。では良い夜を、、失礼いたします」
クロエはその場を離れた。
ブレーズは歩きながらクロエに言った。
「クロエ様はやはり素晴らしい方だ」
「いいえ、そんな事はありません。私は少し怒ってしまいましたよ」と言ってブレーズに微笑んだ。
ブレーズはやはりクロエはジュネの愛する人だと思った。
そして自分の愛する人だと思った。
エメスはやられたと思った。
「あのクロエはやはり一筋縄ではいかんな。さすが陛下が選んだだけあるわ」
「お父様あんな女大したことないないじゃない、早く戻りましょ」二人は会場に戻って行った。
クロエはもう少しだけ夜風にあたりたかった。
嫌な気分のまま戻るには惜しい月夜だった。
クロエはバラが咲いている庭園に入り夜露に濡れているバラを優しくさわって香りを楽しんでいた。
またブレーズが動いた。
クロエはさっきのことがあったので身構えた。
「クロエ様で?」初めて見る貴族の男性が声をかけてきた。
初老の紳士というイメージだ。
「はい、私はクロエでございます。失礼ですが、、」
「あ、大変失礼を、私はシャルルと申します」
「あ、シャルル様?こちらにストールを贈って下さったシャルルさまですか?」クロエは驚いた。
「おお、クロエ様気に入ってくださったのですか?!これは大変嬉しく存じます!」
「シャルル様、私はこのハスの織物が大好きです。人の暖かさを感じられ、この織物を作るまでのご苦労を思うと大変ありがたく羽織るだけで心が洗われるようです。」
シャルルは大変喜んだ。
「クロエ様にそのように仰って頂けるとは本当に感無量でございます。このシャルルこんなに嬉しいことはございません。さすが陛下が選んだお方だ。」
「シャルル様,私は本当にこの贈り物が嬉しかったのです。こうしてシャルル様に直接お礼を申し上げることが出来嬉しく思っております」
「それにクロエ様、いまお召しになっておりますこのシルクのドレスですが、もしやフロハンス王国のシルクで御座いますか?」
「はい、フロハンス王国のシルクも同じように手間をかけて作っておりますゆえ私はシャルル様のハスの織物同様にリスペクトしております。」
「流石クロエ様ですな、本物をよくご存知でいらっしゃる。クロエ様、私一族は今後も陛下に忠誠を誓います。どうぞ私共の領地に遊びにいらして下さい。心より歓迎申し上げます」
シャルルは跪きクロエの手の甲にキスをしてクロエにも忠誠を誓った。
クロエは驚いて「シャルル様、私は何者でもございませんのでおやめくださいませ」
「いいえ、あなた様は私一族が命をかけてお守りするお方でございます。今宵月に導かれてクロエ様にお会いできたことも運命、このシャルル命尽きるまで陛下とクロエ様について参ります」
そう言ってシャルルは下がって行った。
クロエは今日はとんでもない日だと思った。
敵対と忠誠を経験してしまった。




