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とある生徒会長の本音は日誌だけが知っている  作者: 『黒狗』の優樹
瑛vs夏煌、ラブバトルのスタート
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第七十六話 心配(worry) 愛梨、夏煌の恋が報われなかった時の事を思い、心配になる

恵夢の追求を、何とかやり過ごした愛梨

一方で、恵夢は紅壱が中身はそのままで、小学5年生くらいになったのなら、瑛や夏煌には悪いが、彼を本気で攫ってしまいたい、と思っていた

愛輝子に劣らぬ、アブノーマルな性癖を慕っている先輩が持っているとは知らず、瑛と夏煌に挟まれている現状に戸惑いながらも、楽し気に話す紅壱

そんな彼を見ながら、愛梨は彼らの恋路は前途多難だ、と嘆息するのだった

 けれども、いくら、大半の女生徒から慕われている瑛でも、この校則を撤廃するのは難しいだろう。

 何せ、学園内には、まだ根強い男卑女尊の空気が蔓延っているし、過激な対応を男子生徒にしている女生徒を先導しているのは、よりにもよって、生徒会役員の一人なのだ。

 わざわざ隠す事でないから言ってしまうが、鳴である。獅子身中の虫とは、この事である。

 瑛への敬愛が強すぎる鳴は、実際に優秀で、高いカリスマ性も持っている。既に、瑛のファンの心を掌握し、上級生からも一目を置かれているようだ。

 それだけなら、まだ良いのだが、鳴は男子生徒を徹底的に排除しようとしている。自分の視界に入れたくない、それもあるのだろうが、何より、瑛に悪い虫が近づくのが、心底、嫌なのだろう。

 瑛が悪い男に引っ掛かるとは、親友の愛梨としては思えないが、盲目的な鳴からすると、塩粒より小さな可能性でも見逃せないようだ。

 さすがに、まだ過激な行為には及んでいないようだ。それは、まだ、今年、入学した男子生徒が自主退学していないから、確かだ・・・と思いたかった。

 動き出す前に、鳴の目を覚まさせられるのが一番なのだが、実に手強い。

 彼女なりの信念があって、男子生徒を目の敵にしている以上は、先輩風を強引に拭かせては逆効果だ。

 最終的な目標が、辰姫紅壱なのは間違いない。頭が良く、根気強い鳴だから、真っ先に紅壱へ攻撃の矛先は向けないだろう。下手に、紅壱を退学にしようとすれば、瑛に勘付かれ、嫌われるのが予想できる。瑛に見捨てられたくない以上、最も、憎い相手に手は出せない。その心中は、穏やかではないだろう。

 紅壱を攻撃できない、そのストレスを、鳴は他の男子生徒にぶつけ、なおかつ、他の女生徒を動かし、ぶつけさせている。

 卑怯、そう思う反面、女子に攻撃されても、「いやだ」と叫べない男子生徒に対し、「情けないな」と呆れていた愛梨。

 彼女だって、男子が紅壱や修一のように心と体が強い訳じゃない、と分かっている。むしろ、高校生と思えないほどの風格と威圧感、一言でまとめるなら、男らしさを放っている彼らの方が普通じゃない、と実感していた。けれど、それはそれ、これはこれ。

 嫌な事は嫌だと叫び、理不尽を押しつけてくる相手とは断固戦う、そう、親から教えられ、そのままに生きてきた愛梨としては、女子らにキツく接せられても、無用な我慢をしている男子を見ると、つい、チ〇コとキン〇マがついてないのか、と股間を握りたくなる。いくら、男勝りな彼女だって自制心と言うか、恥ずかしい事はあるので、やってないが、まだ。

 いよいよ、追い詰められ、プッツンしてしまった男子が、女子に暴力を振るい、下劣な性欲を剥き出しにしたら、容赦しないつもりだが、そんな最悪の事態を起こさせたくはない。鳴が、自分と瑛の為なら、他の女生徒を餌もとい捨て駒にできる冷酷さを持っていると察せるだけに。

 これまで、何度か、狡猾と冷血さを持ち合わせた怪異に遭遇してきた愛梨。鳴のそんな一面を見ると、人間の強い願望が怪異を召喚してしまうのに納得できてしまう。

 手のかかる厄介な後輩の事は、なるべく早めにどうにかせねば、とは思うが、まず何より、瑛と紅壱の方が大事だ。

 禁止されているなら、こっそりと付き合うしかないだろう、愛梨はそう思っていた。

 それでも、生徒会役員ですか、と鳴からは罵倒されるに違いないが、そんなのは関係ない。バレなければ、何の問題もないのだ。

 周囲の空気に同調するしかなく、男子生徒へキツく当たる事に罪悪感を覚え、内心では仲良くなりたい、そう思っている女子生徒もいるはずだ。そんな彼女達からの信望を地道に集め、半ば鳴らの後ろ盾になっている校則の強制力を弱め、少しずつ、敵勢の力を削いでいくしかない。

 回り道になるかもしれないが、瑛と紅壱がコソコソせずにイチャイチャするためには、これが最善手だ、と愛梨は信じていた。


 (まぁ、今の二人の距離感を楽しむのも悪くはないんだけどな)


 明らかに、両片思い状態である二人が、ちょっと視線が絡まったり、指が触れあっただけで赤面し、また、思いを相手に伝えられずに憂う横顔は見ていて、楽しい。

 恵夢から、性格悪いよ、と呆れ気味に言われたら、愛梨は彼女に鏡を突きつけてやろう、と決めていた。

 ともあれ、時間は有限だが、今は慌てるほどではない。誰にも背中を押されず、二人が自分の気持ちに素直になり、それを相手に渡せるのが、一番だ。

 もしも、瑛が紅壱に気持ちを伝えられ、なおかつ、彼の言葉を受け入れる事が出来たのなら、親友かつ先輩として、二人を盛大に祝福するつもりでいた。


 (・・・・・・まぁ、そん時は、ナツの事も、しっかり慰めてやらないとな)


 気は重い。愛梨にとって、夏煌だって、可愛い後輩である事には変わりはない。

 夏煌が紅壱に、瑛に負けないくらい、大きな恋愛感情を抱いているのも知っている。

 瑛と正々堂々、真っ向から戦って、勝利を掴み取る気でいる夏煌の邪魔をするつもりはない。

 瑛も応援するが、夏煌の手助けもしたい、そう考えていた。

 しかし、現状を鑑みるに、夏煌の敗色は濃厚だ。

 夏煌は自身の小指から、必死に赤い糸を伸ばそうとしている。けれども、瑛と紅の間には、とっくに赤い鎖が繋がっているように、愛梨には思えた。

 運命なんて信じちゃいないが、二人が出逢い、恋に落ちるのは宿命だったのでは、と柄でもない事を信じてしまうほどだ。

 今、自分も特別な相手がいるからこそ、夏煌が失恋してしまう、それを想うと胸が張り裂けそうになる。

 だから、その時が来てしまったら、愛梨は全力で後輩を元気づけ、自分の胸で泣かせてやろう、と決めていた。恵夢の乳牛かよ、と引っ叩きたくなるような乳と比較したら、大きさ、弾力、温かさは敵わないかも知れないが、後輩の涙くらいは受け止めてやりたかった。


 「今回は、どうにかなりました。

 運が良かった、とかではなく、アイツの実力が一瞬とは言え、カガリの器を凌駕したから」


 「運も実力の内だよ。

 ちょっとした道路の亀裂に、敵が足を引っかけてくれて体勢を崩したから、駄目だと思った攻撃が避けられた、戦いの前に気まぐれで武器の柄に滑り止めのテープを巻き直していたから、最後の一撃を繰り出す時にしっかりと握っていられた。

 それは、運を自分の方に傾けるだけの、努力を日頃から欠かさなかったから。つまり、運って実力も鍛えられるんだよね」


 恵夢の言葉に頷いた愛梨は「たまたま吹いた風に舞った木の葉が、視界を塞ぐ事もありますよね」と続けた上で、紅壱の広く、逞しく、厚い背中に目を細めた。


 「コーイチって、あの見た目で結構、フレンドリーみたいで、クラスに馴染もうとしてるし、他の男子とも仲良くなろうって頑張ってるみたいなんですよね」


 「見た目は余計だけど、確かに、他の男の子ともコミュニケーションは取ろうとしてるみたいだね」


 「まぁ、やっぱり、見た目でビビられちまって、男子との距離は縮まってないみたいですけど、クラスの女子とは、ちょっと打ち解けてきてるみたいです」


 ふむふむ、と首を縦に振った恵夢は、以前、紅壱に伝言を伝えるべく、彼の教室に行った際、そこの空気が他と違い、冷たく張り詰めていなかったのを思い出した。


 「豹堂の奴とはともかく、アタシらとも結構、仲が深まってきてると思うのは、傲慢な勘違いですかね」


 「勘違いじゃないと思うな、私は」


 「けど、アイツは意識してなのか、無自覚なのかは分かりませんけど、アタシ達との間に、薄いけど硬い壁を作ってるんですよね」


 寂しそうに唇を尖らせる愛梨に、「そうね」と恵夢は首肯する。

 確かに、紅壱は自分達との間に越える事を許さないオーラが出ている一線をハッキリと引き、接しているように思える。好いているはずの瑛すら近づかせようとしないのだから、紅壱が最悪の事態を、どれほど恐れているかは容易に想像できる。


 「誰にでも、知られたくない秘密の一つや二つ、あるよ。

 しかも、ヒメくんは健全な男の子だもん。女子に見せられない、隠しておきたい事があって当然じゃない?」


 「それは、そうなんですけど、そんなライトなもんじゃない気がするんですよね、コーイチが背負しょっているものは」


 その秘密が、紅壱の底知れぬ強さに繋がっているのだろう、と愛梨は推測していた。彼女の意見に茶々を入れつつも、恵夢も概ね、同じ意見だった。

 辰姫紅壱は、普通の生徒だけでなく、自分ら高校生術師とも一線を画す、非常識の枠すら凌駕する、とびっきりの秘密がある、二人がそれを感じたのを気取ったのか、紅壱は首筋に嫌な汗が滲み出てしまう。


 「聞くの、ストレートに?」


 「いや、聞きません。アイツが白状ゲロるの、待ちます」


 「・・・・・・優しいねぇ、エリちゃんは」


 良い子良い子と、恵夢に頭を撫でられ、愛梨は気恥ずかしさと甘い喜びで湯気が出てしまいそうになる。


 「ちょっ、勘弁してくださいよ、アタシ、もう、二年生になったんですから」


 「二年生になっても、エリちゃんが私の可愛い、手のかかる後輩である事実には変わりはないもの」


 「手のかかる、は余計じゃないですかね、メグ先輩」


 わざとらしい不機嫌そうな表情を作った愛梨に、つい、恵夢はクスッと笑ってしまう。それを聞いたら、愛梨も苛立った演技は続けられない。

 朗らかに笑い合う二人の声に覚醒が促されたのか、愛梨に担がれていた鳴が、不意に暴れ出す。


 「ちっ、起きやがった」


 舌打ちを放った愛梨はジタバタとする鳴を、乱暴に下ろす。彼女は足から下ろしてやろうとしたのだが、抵抗していた鳴は尻から落ちてしまう。

 尾てい骨を強かに打った痛みは、脳髄にまで届いたはずだが、鳴は痛みが和らぐまで安静にしようとしている体を、意識の力で強引に動かす。


 「会長ッ」


 涙を振り払いながら駆けていき、瑛の腕に抱きついた鳴に、後ろにいた愛梨と恵夢は溜息を吐いてしまう。鳴はわざわざ、紅壱を突き飛ばして、瑛の腕に自らの腕を絡みつけたのだ。

 普段であれば、後ろから突っ込まれたくらいでよろめいてしまう事はないのだが、紅壱は瑛と夏煌からの怪異対策の講義に耳を傾け、周囲への警戒が少しばかり疎かになってしまっていたようだ。

 しかも、鳴は瑛に気付かれない程度に、身体能力を呪文で強化していた。

 ぶつかった衝撃は一瞬とは言え、軽トラックが80km/h近い速度で突っ込んで来た時に匹敵していた。真正面からならまだしも、背後からぶつかられてしまったら、さすがの紅壱も何歩かは前によろめいてしまう。

紅壱と、何の制約もなく、一つの引け目も持たず、交際するべく、瑛は男子と女子の間にある確執を何とかしようとしていた

だが、彼女は知らない、鳴が自分の邪魔をしている事に

言われっぱなし、やられっぱなしの男子にイライラはするも、愛梨だって、好きな相手とイチャイチャしたいので、鳴の暗躍は止めねば、と思っていた

一方で、愛梨は夏煌が失恋した時の事を思うと、胸が痛くなるのである

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