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とある生徒会長の本音は日誌だけが知っている  作者: 『黒狗』の優樹
紅壱たちは、危険度が一つ上がるエリアに向かう。
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第四百六十四話  薬貰(get medicine) ハイブルーリザードウーマンは、ハイダークフェアリーから薬を貰う。

ハイダークフェアリーの案内で訪れた川原で、紅壱たちが見たのは、ハイブルーリザードマンとハイブルーリザードウーマンが、オークの一団に圧勝する場面だった。

特に手助けはしなかったが、一応、挨拶くらいはしておくか、と思った矢先に、勘違いから攻撃をされたので、紅壱と輔一は戦闘に突入する。

ランサーであるハイブルーリザードマンは、輔一に任せ、紅壱は流水属性の魔術でオークたちを倒していたハイブルリザードウーマンの相手を引き受ける。

とは言え、あまりにも実力差があったので、それは戦いとは言えず、一方的に過ぎた上に、ハイブルーリザードウーマンは屈辱的な敗北を味わう羽目になったのだった。

やり過ぎたかな、と反省した紅壱は、草むらの中で苦しむハイブルリザードウーマンに、持って行ってやってくれ、とハイダークフェアリーへ薬を渡す。

 有体に言って、陰邪ダーク妖精フェアリー達の肉体は、相当に脆い。

 豊富な魔力量と引き換えに、腕力が無職の魔属よりも劣る事になった魔術師職のパンチであっても、クリーンヒットしてしまったら、大ダメージだ。

 しかし、彼女らの動きは機敏だ。

 バリバリの戦士職ならともかく、身体能力が高くない魔術師職では、その動きを完全には捉えきれまい。

 何より、今、諸事情で、上位ハイ青皮ブルー雌蜥蜴魔リザードウーマン虚弱よわっているのだ、パンチなど繰り出せないほど。

 ある意味、安全が保障されているので、紅壱は安心して、この仕事を上位ハイ陰邪ダーク妖精フェアリーたちに頼めた。

 上位ハイ陰邪ダーク妖精フェアリーらも、紅壱に仕事を託された事が嬉しいのか、満面の笑みを浮かべている。

 彼女達や、今の弱っている上位ハイ青皮ブルー雌蜥蜴魔リザードウーマンの握力では、蓋を捻って開ける事が難しいかな、と思った紅壱が先にペットボトルと瓶を開けておく。


 「じゃ、頼んだぞ」


 「はい、お任せください」


 上位ハイ陰邪ダーク妖精フェアリーは栄養ドリンクの方を一匹で抱えると、サブリーダーに錠剤を預け、残りの陰邪ダーク妖精フェアリーらに全員でペットボトルを持つように指示を出す。


 「皆、中身を溢さないように、真っ直ぐ持ってね」


 「OK、リーダー」と、陰邪ダーク妖精フェアリーらは力強く頷き返した。

 どうにか、草むらからは出来てきたが、限界なのか、その場に蹲り、動けないでいる上位ハイ青皮ブルー雌蜥蜴魔リザードウーマンへ向かって、上位ハイ陰邪ダーク妖精フェアリー達は慎重に飛んでいく。

 上位ハイ陰邪ダーク妖精フェアリー達が近づいてきたのに気付いたのか、上位ハイ青皮ブルー雌蜥蜴魔リザードウーマンは杖を震えわせながら持ち上げ、「石割アクア水弾バレット」を撃とうとするが、やはり、力は出ないようだ。

 それでも、彼女の眼は完全に死んでおらず、最後の一瞬まで、全力で生き足掻こうとする強者の光が、瞳の奥底に宿っていた。

 紅壱の部下になっていなかったら、この光に気圧され、身動きが碌に出来なくなっていたかも知れない、と直感しながら、部下をそこで止まらせ、上位ハイ陰邪ダーク妖精フェアリーは、サブリーダーだけを同行させ、上位ハイ青皮ブルー雌蜥蜴魔リザードウーマンに接近していく。


 「安心してください、私たちは、貴女に危害を加える気はありません」


 「貴女の体力を回復しに来たのです」


 「回復?」


 「そうです、私達の主の命令です」


 「!?」


 上位ハイ青皮ブルー雌蜥蜴魔リザードウーマンが疲弊しきった顔に、驚きをありありと浮かべた理由は、大まかに分けて二つだろう。

 まず、上位ハイ陰邪ダーク妖精フェアリーが「体力を回復しに来た」と言った事。

 今、自分の目の前に飛んでいるのが、上位ハイ妖精フェアリーならば、驚くような事じゃない。

 上位ハイ妖精フェアリーならば、明光属性の治癒魔術が使えても、不思議じゃないからだ。

 しかし、デバフ系の暗闇属性の魔術を得意とする上位ハイ陰邪ダーク妖精フェアリーが、治癒魔術を使える、とは聞いた事が無かった。

 とは言え、この上位ハイ青皮ブルー雌蜥蜴魔リザードウーマンも、このエリアの出身で、情報収集は欠かしていない。

 また、心身が憔悴しきっていても、まだ、頭の働きまでは止まっていなかった。

 なので、少し考えて、彼女は、視線の先にいる上位ハイ陰邪ダーク妖精フェアリーがマンドラゴラの繁殖に成功した妖精フェアリーの一族だ、と気付けた。


 (となると、あれはマンドラゴラから作った回復薬かしら?)


 万能の霊薬とまでは行かないにしろ、確かに、絶叫マンド魔草ラゴラから作った回復薬ならば、期待は大きく出来た。

 だが、上位ハイ青皮ブルー雌蜥蜴魔リザードウーマンを躊躇させたのは、上位ハイ陰邪ダーク妖精フェアリーが「主」と言う単語を口にした事。

 基本的に、妖精フェアリー種は自由気ままで、己の好きな事しかしない。

 食っちゃ寝の自堕落な生活を送っている、とまでは言い過ぎだが、大抵は歌うか、踊るか、だ。

 花を愛でたり、小動物と遊ぶ事もある。

 魔力量は、小さな体に反して多いが、自分から戦うような真似はせず、自己防衛に留め、大体は逃げに徹する。

 もちろん、中には、好戦的な個体もいるが。

 良くも悪くも、楽しい事第一主義であるから、妖精フェアリー種は自分達の女王にしか従わない。

 そこにも、高潔な忠誠心があるからじゃなく、女王の指示に従っていれば、単に楽だから、それだけの話だ。

 そんな妖精フェアリー種の性格と性質を知っていたからこそ、上位ハイ青皮ブルー雌蜥蜴魔リザードウーマンは目の前の上位ハイ陰邪ダーク妖精フェアリーが、「主」、その単語を堂々と、誇らしげに口にした事を訝しむのは当然と言えた。

 陰邪ダーク妖精フェアリー族が、ネガティブな性格から、他の魔属を容易に信じたりしないのも有名だったからだ。


 (でも、あの目は・・・)


 上位ハイ青皮ブルー雌蜥蜴魔リザードウーマンが、上位ハイ陰邪ダーク妖精フェアリーの言葉を、100%の嘘、と断じられなかったのは、彼女の眼を見たからだ。

 暴力や魔術で心を屈服されている者には宿らない、純粋な忠誠心が、上位ハイ陰邪ダーク妖精フェアリーの目には、しっかりと視える。

 上位ハイ陰邪ダーク妖精フェアリーだけでなく、部下の陰邪ダーク妖精フェアリーの目にも同じものがあった。

 何故、それが分かるかと言えば、上位ハイ青皮ブルー雌蜥蜴魔リザードウーマンにも、命を捧げられるだけの主がいるからだった。

 万が一に備え、後ろで待機し、自分の動きを注視している雄の中の誰が、彼女達の主なのか、と上位ハイ青皮ブルー雌蜥蜴魔リザードウーマンは、紅壱らに目をやったが、すぐに、自嘲の形に唇を変える。

 「痛っ」と、脱水症状によって、痛々しく乾燥した唇は笑ったせいで切れてしまったらしく、彼女は痛みに顔を顰める。

 その痛みが、心の中に、ほんの少しだけ残っていた、この戦いに勝つ事への執着を拭い去った。


 (誰が、このハイダークフェアリーたちの「主」か、なんて考える必要もないわね)


 上位ハイ青皮ブルー雌蜥蜴魔リザードウーマンの視線が固定されたのは、誰でもなく、紅壱だった。

 紅壱は彼女ににジッと見られている事に気付いているようだが、彼自身は上位ハイ青皮ブルー雌蜥蜴魔リザードウーマンの方ではなく、こちらに戻ってきている輔一に顔を向けている。

 だが、自分が見られていない事に対し、上位ハイ青皮ブルー雌蜥蜴魔リザードウーマンは気分を害していなかった。

 自分でも不思議だ、と感じたが、何故、苛立ちを覚えないか、を考えるのもバカバカしいので、自問自答はしなかった。


 (私を追い詰めた・・・いえ、素直に認めなきゃならないわね・・・・・・私を完膚なきまでに負かしたアイツが、ハイダークフェアリー達が従っている主だわ)


 自分の力を試されていた戦いならば、まだ、救いがある。

 しかし、紅壱の方に、そんな意図がなかったのは、愚かにも対峙してしまった上位ハイ青皮ブルー雌蜥蜴魔リザードウーマンが一番、理解できていた・・・理解わからされてしまっていた。

 紅壱は思いついた魔術の試射をしたかった。

 そこに、たまたま、自分を殺す気満々の相手が現れてくれた。

 だから、これ幸い、とばかりに戦ったのだろう。つまり、自分は敵扱いされておらず、練習の的同然だった。


 「私は負けた、どころか、戦ってすらいなかったのね」


 納得できた上位ハイ青皮ブルー雌蜥蜴魔リザードウーマンは、辛うじて握っていた杖を離す。

 カラン、その音を自分の耳で聞いた事で、改めて、彼女は自分の敗北を受け入れる事が出来た。


 「回復して貰えるかしら」


 「では、これを飲んでください」


 憑き物が落ちたような表情に変じた上位ハイ青皮ブルー雌蜥蜴魔リザードウーマンへ、陰邪ダーク妖精フェアリー達はスポーツドリンクのボトルを運んでいく。

 初めて見て、なおかつ、触る容器に、魔術師職である彼女は強い興味を抱くが、今は体を回復させる方が先決だ、と冷静な判断を下す。


 (こんな色の液体は初めて見るけど、毒じゃなさそうだわ)


 もっとも、自分は負けたので、毒を飲まされたとしても、文句など言えないか、と上位ハイ青皮ブルー雌蜥蜴魔リザードウーマンは再び、自嘲気味に笑う。

 腹を括った彼女は、一気にスポーツドリンクを飲んでいく。

 初体験な甘酸っぱい味に、彼女はビックリするも、口に含み、喉を爽やかな風味で満たしながら通っていく液体が、あっという間に、乾ききった体の隅々にまで浸透していくのを感じた。

 あれほどまでに苦しかった脱水症状が、容易に治ってしまったので、上位ハイ青皮ブルー雌蜥蜴魔リザードウーマンは言葉も出ない。


 (凄い効き目だな)


 驚いていたのは、紅壱も同じだった。

 栄養ドリンクの事もあったので、多少は予想していたが、まさか、あそこまでの効果が出たのは想定外だった、彼にとって。

 人間であれば、とっくに死んでいるか、ICUに運び込まれ、予断を許さない状況になっているはずの脱水症状は、スポーツドリンクを500ml飲んだだけで、ほぼ治ってしまっている。


 (この世に、有り得ないなんて事は有り得ないにしろ、これは、とんでもねぇな)


 祖父らの強さに比べれば、まだマシにしろ、これはこれで恐怖すら覚えるほどだ。

 魔王・アバドンを宿しているからか、それとも、他の理由があるのか、は定かじゃないが、少なくとも、自分が人間界よりもこちらの世界の方が活力に満ちている、と実感する事も、持ち込んだ食材が魔属らにとってプラスの効果を発揮するようになっている原因に関係しているのだろう、と紅壱は考えていた。

 便利だが、使いどころを間違えると、シャレにならないな、と今後の自戒を胸に留めつつ、紅壱は上位ハイ青皮ブルー雌蜥蜴魔リザードウーマンが命の危機を脱した事に対しては、素直に安堵していた。

 敵意を目に宿した相手に喧嘩を売られた以上、相手が自分の攻撃で死んでしまうのも止む無し、で攻撃しているが、殺さないに越した事はないからだ。

 人を殺せる技術を自分の意志で身に付けたからこそ、人殺しを楽しめてしまう心を持たないように、と紅壱は固く誓っていた。

 どんな綺麗事を語ろうと、一般人からすれば、自分はまともじゃない。

 だが、まともでいたら、自分の恩魔王であるアバドンを復活させる、その野望は叶えられないし、惚れた瑛を怪異から守る事も出来ない。

 世間の「普通」から逸脱してしまう、まともな人間として周りから扱われなくなる、その程度の事で、自分がやりたい事を全力で出来るのなら、紅壱はそれで良かった。

 そう考える時点で、もう、異常だ、と言われても、彼は気にしないだろう。

 色々な意味で自分と同じくらいぶっ飛んでいる祖父達や修一、また、こんな自分を王として敬ってくれる吾武一達だっている。

 巧たちとも、友人になれた。

 そして、一人の例外はいるにしろ、自分を戦場で背中を預けられる仲間として受け入れてくれた瑛達がいる。

 これだけの良縁に恵まれているのだから、有象無象な他人に、犯罪者予備軍扱いされても、紅壱は何も感じない。

 ある意味、羨ましくなるほどの魔王メンタルだ、紅壱は。


 「次は、これをどうぞ」


 「ありがとう」と、上位ハイ青皮ブルー雌蜥蜴魔リザードウーマンは、上位ハイ陰邪ダーク妖精フェアリーから栄養ドリンクの小瓶を受け取った。

 瓶の飲み口に鼻を近づけた彼女は、柑橘系の香りに、ほんの少し、目を細めた。


 (嗅いだだけでは、さすがに、材料が分からないわね。

 彼女の雰囲気からして、毒ではないのだろうけど)


 上位ハイ陰邪ダーク妖精フェアリーが、種族特性で毒の扱いにも長けている事も承知していた彼女は、上位ハイ陰邪ダーク妖精フェアリーの円らな瞳を見て、毒ではない、と確信する。

 体の乾きは治ったが、体力も魔力もほぼ空の自分なら、陰邪ダーク妖精フェアリーでも直接に毒を浴びせれば殺せるだろう。

 わざわざ、甘い香りを付けた毒を飲ませる、なんて回りくどい事はしない、と上位ハイ青皮ブルー雌蜥蜴魔リザードウーマンは考えたようである。

 スポーツドリンクを飲む事を決めた時点で、敗者として毒殺されるのも已む無し、と腹をとっくに括っていた彼女は、躊躇を振り払うと、飲み口に唇を当て、一気に中身を飲み干した。


 「ぅっっ・・・凄い」


 匂いと同じ、柑橘系の味が喉を通って行った瞬間に、上位ハイ青皮ブルー雌蜥蜴魔リザードウーマンは自らの体力が一気に回復したのを自覚した。

あまりにもえげつない勝ち方をした紅壱に尊敬の念を深めると同時に、ハイダークフェアリーは草むらの中から、フラフラの状態で出てきたハイブルリザードウーマンに心から同情した。

紅壱から渡された薬を持って、ハイダークフェアリーたちは、戦える状態でないハイブルーリザードウーマンへ慎重に近づいていく。

ハイダークフェアリーたちを警戒しながらも、既に戦う体力など残っていないハイブルーリザードウーマンは、半ば諦めに近い境地だった。

他者に縛られる事を良しとしないフェアリー族が、紅壱を「主」として認めている事に興味を持ったハイブルリザードウーマンは、毒を盛られてしまっても文句は言えない、と腹を括り、彼女達から薬を貰おう、と決断する。

想像を絶する回復性に、ハイブルーリザードマンは言葉を失うしかなかった。

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